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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  闘争の魔獣


綾女ヶ丘

通常、ここは事件など何も起こらない平穏な街だ。
おそらく、様々な土地でその名を言っても、そこを知っている人間は多くないはずだ。

事件や非日常とは無縁のこの地。
それが脅かされたのが過去、ただ一度だけあった。


闇に生きる存在が、この世界を塗り替え、浸食し、そして飲み込もうとした。


そして今回もまた、この街を脅かすのは闇の―――魔の者に他ならない。


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「渡・・・気を付けろよ。こいつ」

「ああ、得体が知れないってことだね」

「そういうこと!!」


キバとキバットの会話。それが途切れると同時、それを発端にキバの身体が飛び出していくように男の身体と衝突した。


ガシャァ!!とガラスの割れる音がして、キバと男が店外に転がり出ていく。

とにかく男を二人が離さなければ。
その考えのもと、キバの四肢が押しやるように男の身体に叩き込まれた。


それに対し、男と言えば、ただ不気味にその攻撃を受けているだけだ。


そのすべてが当たっている。
基本のキバフォームでも、これだけ打てば通常それなりのダメージはある筈。

しかも、この男はおそらく「怪人」と呼ばれる部類の者なのだろうが、その姿も現していないのだ。


だが

(効いているわけじゃない・・・)

そう。
手応えからして、ダメージがあるとは思えない。

だがそれにもかかわらず、男の身体はツェヴェリアダから遠ざけられていく。

(そう、こっちの目的はとりあえずそれだから別にいい!!)


確かに、キバの目的はそこだ。
二人が狙われているのならば、そこからまずは遠ざける。

そしてそれは成功に近づきつつある。


いけるか?

キバ、そしてキバットの脳内にそんな思いがよぎる。


「ふん」

だがその思いは男の動きに掻き消える。
短い鼻息と共に動き出した男の身体が、疾風のような速さで、暴風のようにキバの前から消えたのだ。



「な!?」

瞬時に振り返るキバ。
そこには、店内から顔をのぞかせていた駆とゆかに向かって駆け出し、腕を広げる男の後ろ姿があった。


「させるか!!」

紫のフエッスルを取出し、跳躍するキバ。
必ず、止めて見せる。



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「ゆか!!」

「へうぅ!?」

渡さんなら、あの仮面ライダーならば、きっと勝てるだろう。

そう思っていたゆかだが、突如として身体が固まった。
駆の言葉に気の抜けた返事しかできなかったが、彼女もかつて、彼と共に変異に立ち向かったのだ。体が自然に反応したのだろう。

だがあれはあくまで非日常。
彼女にとって、やはりこういうのは慣れないものであり、身体が全くついていかない。対処できない。

対して、駆はよく見えていた。
男がこちらに向かう2秒前にはもうすでに、この光景は見えていた。


(狙いはゆかか!!)

駆の見た、未来のビジョン。

男の手は獣のそれへと変貌し、禍々しくも見える鋭利な爪は、彼女の腹部に突き立てられる――――!!!


「させるかァ!!!」

駆の叫び。
それと同時に、そのビジョンは掻き消え彼女の前に立つ自分自身へと入れ替わる。

が、その場合の男の狙いは別の部位へと変わっており


「ッ、こいつ・・・・狙いは・・・・!!!」

「邪魔をするな、小僧!!!」


ゆかと男の間に立つ駆。
その駆の顔面―――――正確には、その右目に秘められた黄金の輝き―――に向かって、男の二本指が突き立てられようと迫る。


瞬間


ドガン!!

「ヌッ!?」

「うわぁ!?」


突き出されようとする男の腕の内側に、つっかえ棒になるようにドッガハンマーが落ちてきた。

重さに身を任せたその落下は、直近の男にはそれなりの衝撃を与え身をひるませ、さらにそれを掴んで同時に落ちてきたキバ・ドッガフォームの剛拳を思い切り脳天に喰らうこととなる。



「ゴァッ!!」

「今だ!!」

「ドッガ・バイト!!!」


頭を押さえ後退する男に、更なる追撃を与えんとキバがドッガハンマーを振り上げキバットが噛み付く。

すると、突如として周囲が闇夜に染まりどこからか雷の音が――――



「それは省略!!!」

「お、おう!!だってよ!!」


魔皇力が充填され、先端が拳になっているのドッガハンマーのそれが、手の平を露わにするように開かれる。

外界にさらされたその掌には、ギョロリと光る一つの瞳。
その視線から放たれる力は煙となって具現化し、その一帯の、一切の者を縛りつける。


「ぐ、これは」

己の身に起きた異変を感じるも時はすでに遅い。

役目は終わりと閉じられたハンマーの拳が、特大の破壊力を持って男に向かって振り下ろされた。



ドンッッ!!!


あまりの衝撃に、地面のアスファルトやタイルが砕け宙に舞い、周囲を砂埃で覆い隠す。


これだけの威力のある一撃を、まともに防御もできない状態で喰らったのだ。
男はまず、ひとたまりもないはずだ。


少なくとも、ゆかとキバットはそう思った。

だが二人は違う。
「眼」で結果の見える駆と、武器を手にしたキバだけがその現実はあり得ないことを知っている。



駆には見えている。
数秒後には煙が晴れ、左斜め上から襲いくるハンマーを、右手で押さえさらに左上腕で支える男の姿が。

キバには見えた。
ハンマーのインパクトが最大になる、即ち命中するそのコンマ数秒前。
男は自力でドッガの瞳――トゥルーアイの呪縛を強引に破り、その真の力を発揮したのを。



「なるほど、これがキバの鎧の力」

掴まれたドッガハンマーが、男の剛力で分投げられる。
その力は、しっかりとつかんでいたはずのキバの手から、そんな強引な動作にもかかわらずハンマーをもぎ取るほど。

ゴンっ、と堅いアスファルトに落ちたハンマーは、紫の光となって空に消える。
同時にキバも基本のキバフォームに戻った。




考えても見てほしい。
いくら何でも、やりすぎだと。

確かに、駆やゆかに襲い掛かったとはいえ
確かに、男はいわゆる怪人という存在だとしても

この男は、まだその姿を現さずに、あくまで人間態として襲ってきた。


それに対し、まあキバに変身程度ならまだわかる。
だがドッガフォーム渾身の一撃をためらいなく放つのはやりすぎだ。



とはいえ、キバ―――渡は自らの判断に間違いはなかったと確信した。

どこかで感じていたのだ。
この男は、それほどの脅威であるということを。




そして、周囲を見て駆とゆかはその光景に奇妙な感覚を覚えた。


赤すぎる。

確かに夕焼けで赤く染まっていたかもしれないが、あまりにも周囲の光景が赤い。
だが赤一辺倒というわけでもなく、まるで闇が黒ではなく赤で表現されたかのような異空間。


かつて彼らはこれを



「あ・・・・赤い夜・・・?」

と、名付けた。



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「綾女ヶ丘において、異空間発生」

「過去のデータに同様にパターンあり。幻燈結界(ファンタズマゴリア)、別名・赤い夜と呼ばれる現象に酷似しています」

「なるほど・・・・いいねぇ」


キバ相手のライダーはそう来るかい



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「赤い夜!?」

「ねえ、僕それよく知らないんだけど・・・・」

「ああ、これか。俺も少しは魔術ってやつに通じててな。昔あったっていう話をきいて、そいつから教わったのさ」


この赤い夜―――正式名称を幻燈結界(ファンタズマゴリア)というこの異空間は、かつてバビロンの魔女と呼ばれたリーゼロッテ・ヴェルクマイスターが、彼女の探し物のために用いられたものだ。



その空間の特徴としては、まずここで破壊された建物などは、現実に戻った際に元通りになる。

二つ目として、得体のしれない闇精霊・ラルヴァ共が沸いて出てくる。

そして三つめは

「魔石を持ったものを取り込んで逃がさない―――お前の狙いは、オレ達の中にある魔石だな」



駆の「劫の目」
そして、ゆかを始めとした計6名の少年少女の体内にある「虚無の魔石の欠片」

それらは魔石と呼ばれ、彼らの世界では絶大な、しかし自らの身をも滅ぼしかねない力を持つものだ。
それらを持つものをこの世界に取り込み、かつての魔女は砕け散った「虚無の魔石の欠片」を集め、再び自らの手に完成された「虚無の魔石」を手にしようとしたのだ。



「じゃあ・・・・あれ?なんでボクも?」

それはわからない。


だが、この男の力は何だ?
というか、自分たちが赤焼けだと思っていたあの店の外の光景は、一体いつから赤い夜だった!?


「そんなことはどうでもいいだろう?」


男は指を曲げながら一つずつ方ある。


一つ、俺はお前たちの魔石がほしい。
二つ、邪魔をするやな容赦はしない。
三つ、ちなみにお前らは逃げられない。
四つ、―――――――

「貴様がキバの鎧を纏う、ファンガイアの王であるということだ」


ブォォッ!!と、男の身体からエネルギーが迸り、その姿が変貌する。

一瞬だけ見たことがあるような姿に変わり、さらにその姿が変貌していくという二段階変身。



その姿は、まるで魔獣が人型になったかのよう。
男の言う通り、レジェンドルガであることは間違いがないようだ。


頭部は人間のようなものだが、まるで殺人鬼のような、それこそ本当に魔鬼のような禍々し表情。
そして剥き出しのその牙は、なんと上下ともに三列に並んでいる。

その首からは、まるでライオンのような鬣が靡き、背には蝙蝠のような羽が畳まれている。

その全身は赤く、そして一本の尾の先端には無数の棘が、まるでウニか栗かのように生えていた。


「俺はレジェンドルガ、マンティコアレジェンドルガ。弱小なるファンガイアとは違う、さらに高次の存在」

語る。
そしてその鬣を無造作に引き抜いた。

その姿に戦慄する駆とゆか。
だが、キバの脳裏には一つの疑問が浮かび上がる。



(確かにこの感じはレジェンドルガ・・・・)


「アークは死んだ。俺がすべてのレジェンドルガ族を復活させ―――――」


(でも、だったらあれは何だ?)


「ファンガイア族を殲滅し、俺が新たな―――――」


(変身の合間に一瞬見えた、あの)


「王になる」

(ライオンファンガイアの・・・あの姿は何だ!?)


「変身」


ガシャン、と



マンティコアレジェンドルガが、引き抜いた鬣を握りつぶす。
すると、いつの間にか変貌していたのか、その鬣はガラス細工のように砕けてバラバラに散ってしまう。


すると、そのバラバラになったガラス片が粒子となり、エネルギーとなり、彼の身体に装甲を纏わせる。


その装甲の色は、多分に漏れず彼らしく赤。
だがその赤は、血の色にも似たクリムゾンレッド。

そしてその装甲は――――装甲というにはあまりにも儚げに見える、あまりにも鋭的なフォルムをした攻撃的な姿をしたものだった。


「くっ、来い!!」

「来い?」


身構えるキバ。
こいつは変身した。


変身した?
確かに最近、仮面ライダーみたいな敵が現れているとは聞いていた。

だが、まさか自分の前にも、しかも今来るとは。

ということは、こいつの力は自分と同等か―――――



「退け」

スッと

通り道の邪魔だからと言わんばかりに、キバの身体を押しのけた仮面ライダーだと思われる怪物。
それによって、キバの身体は20メートル先の建物の基盤を破壊し、数万トンのコンクリートの瓦礫に変え、その全身に衝撃を喰らうことになった。


「渡さん!!!」

「だめだ!!来るな!!」


「ガルルセイバー!バッシャーマグナム!!もっかい頼むぜドッガハンマー!!!!」

「俺も――――」

「 逃 げ ろ ! ! ! 」



瓦礫を、まるで爆破したかのように押しのけて跳び上がるキバ。
そのキバに、肘を引き、小さく腕を広げるような体勢で迫っていく仮面ライダー。



すでにキバはドガバキフォームへと変身しており、さらに右足の鎖・カテナまで解き放たれている状態だ。
仮面ライダーに対し放たれる、全力のダークネスムーンブレイク。


それに対し、敵はまるでどうなるかがわかっているかのように構えた。

「この鎧は、崩れ落ちた紅魔城で発見したデータを基に俺が俺用に作り出した鎧・・・闘牙の鎧、とでも名乗ろう」

いうなれば、彼は仮面ライダー闘牙、ということになる。



放たれるキバの必殺技。
対し、闘牙はおもむろに右腕を上げた。


「ハァッッ!!」

ドンッッ!!!

「ふ・・・・む?」


そしてキバのキックを右手で普通に受け止め、バチンと地面に叩き付ける。

だが、闘牙はそこから追い打ちを掛けるでもなく、駆やゆかに襲い掛かるでもなく、ただ足元のくぼみを見ていた。



「・・・・・」

そして、自らの右手を見る。
そこには、感心と驚きが入り混じった感情があった。


自分がこの姿になった以上、キバなど敵にすらならないと思っていた。
一切の手応えすらなくなると思っていた。

他が実際にはどうだろうか。
この陥没、そして手に残る、確かな衝撃。


先日自分を追ってきていた「あの男」もそうだが、どうやらことはうまく進まないらしい。



「・・・まあいいか」

そういって、自分の見通しの甘さを思いながら、現時点では問題になるほどのものではないと振り返る闘牙。


だが、その瞬間



「フッ―――ハァッ!!」

ビギッ!!と、世界に亀裂が入ったかのように空間が避け、そこから炎が噴き出すように溢れ出し、近くに立っていた闘牙の身を焦がしていった。

どうやら外の現実世界から強引にこの世界に侵入しようとしてきたらしいが、闘牙にしてみればその炎自体でダメージを負うことはない。
あるわけではないが、その中に混じって襲い掛かってきた刃が肩に襲い掛かってきた。


闘牙にやはりダメージはない。
しかしその刃は闘牙の装甲に弾かれ勢いよく跳ね返り、その跳ね返りが炎をさらに大きく渦巻かせて視界を覆う。




そしてその炎が晴れたころ―――――



空間に大穴が空いており、その場に駆やゆか、そしてキバの姿はなかった。



「逃げたか」


ビキビキと広がっていく大穴を背に、変身を解除してその場を去っていく闘牙に変身していた男。


そして砕け散るように赤い夜が消滅し、現実にすべてが戻った時。
そこにはすでに、男の姿はなかった。



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「・・・・危なかったな」

そのころ渡、駆、ゆかの三人を連れて、ある男が周囲を見渡す。


男はあの赤い夜に乱入し、炎と刃で隙を作り出しあの場から三人を脱出させた仮面ライダー―――イクサに変身する、名護啓介その人であった。



「名護さん・・・」

「危ないところだったな、渡君。私がいなければ、やられていただろう」


なぜこの人がここにいるのか。
気になるところではあるが、今はともかく助かったことでいっぱいいっぱいだ。


だが、そんなことは心配する必要もなく、名護はズバリと本題に入る。



「渡君。君が相手をしたあの男は、レジェンドルガだ」

「はい」

「俺はここ数か月、奴を追っていた」

「え」

「数か月前から断続的に発生していたファンガイア殺害事件。奴はその犯人だ」


名護は語りだす。

自らが調べ上げた、あの男の正体について。



to be continued
 
 

 
後書き

キバ編の仮面ライダーは仮面ライダー闘牙!!


イメージする役者さんは生田斗真さんです
静かな魔王的な感じですね


闘牙の装甲イメージは、「仮面ライダー」というよりは「牙狼」みたいな甲冑に近いですね。


真っ赤なんですけど、ガラス細工みたいなもろい「イメージ」を持たすような見た目ですね。
あくまでイメージなんで、実際には防御力も高いんですけどね。

線画みたいな細身です。



「なにあれ滅茶苦茶強いよ」

名護
「私ですら苦戦し幾度か逃しているからな」

名護さんのその異常な自信は相変わらずで。



名護
「次回、私の話を聞きなさい」

ではまた次回 
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