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ラピス、母よりも強く愛して

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17ピカチュウがんばりまチュウ

 木連艦隊出撃より前、どこかのピカチュウみたいな声の女は、いつも通り思い上がって、いつも通りの舌禍で敵を作っていた。
 それも今度は不敬罪、ラピス皇帝陛下への暴言であった。
「あの明人って奴~、陛下とデキてるって話ジャン、それとも生き神様の方~? どっちにしろムリスギ~www いくらお兄ちゃんの同僚で父さん同士が同僚でも、アタシの好みじゃないワ~、もう会いたくないってカンジ~」
 まるで地球人のような流行りの話し方をして、誰からもチヤホヤされ過ぎて思い上がった女子中学生の言葉。
 それを聞いていた両親の顔色が変わり、夕食時にも関わらず即座に両親から殴打され、エアロックに連れて行かれる。
「ちょっとっ、何してんのっ? まさか娘をエアロックから放り出すつもりじゃないでしょうね?」
「そのまさかだ、私は娘の教育を誤った。祖先からの大恩がある御方に向かって、何と無礼な言いようだ。私はお前を放り出した後、腹を切って陛下にお詫びするつもりだ。そうすれば罪一等を減じられて母さんも九十九も救えるはず、きっと婚約者の明人君の助命嘆願も有るだろう、ラピス様の親衛隊員でもあるから、生き神様から救って頂けるかも知れん、あいつを生かしてやるには、もうこうする他は無いのだ」
 軽く手錠など掛けられて連れ出されたが、ユキナの自宅前では「非国民通報装置」が緊急警報を鳴らして、近所の隣組で五人組の伍長、その上の郷長が走って来て、非国民を吊るし上げようと腕まくりをしていた。
 演出のため、多少は大事にしているが、このぐらいが標準的な木連のご家庭で、子供が泣いて許しを請い、頭を下げて二度としないと誓えば許される。
 これ以下のゴミクズは養育する意味が無いので、一家丸ごと放り出され、木連でも遺伝的な淘汰を繰り返していた。
 補充人員は優秀な遺伝からいくらでも増やすことも可能で、培養槽を稼働させれば昭和のご家庭のように各家庭7,8人の子供を養っていける。
「いや、お騒がせを致しました。どうやら娘の育て方を間違ったようでして、これからエアロックの外に放り出しに行く所です、お見届け下さい」
「そうでしたか、若い者というのは、すぐに調子に乗って大言壮語を吐くものです。息子さんは素晴らしい少年になられたのだから、気を落とさず、また男の子でも育てられては如何ですか?」
「いえ、そうも参りません、陛下や生き神様への不敬ですので、家内と息子を救うには私の首も差し出さねばなりませんし、親族にも迷惑を掛けてしまいます。これにてお別れです、今までお世話になりました。葬儀でもご迷惑をお掛けしますが、息子の事だけは宜しくお願いします」
「え? ちょっと待ってよっ、何言ってるの? この程度で? いつもの事でしょ? こんなんじゃ学生全員死刑でしょうがっ!」
 アホな娘は伍長さんに自分の靴下を口の中に捩じ込まれ、これ以上不敬な発言でもして、町内全部の空気が抜かれないよう処置された。
「ううおっ、おむううっ」
「確かに承りました、奥様と息子さんのお命だけは、私共でお助けします、ご安心なさって下さい」
「左様ですか、お手数をお掛けします」
 学校ではこの程度の不敬は日常で、警報が鳴りっぱなしでも笑いさざめく女達だが、ラピス達にも操られている連中の前では冗談では済まされないのを見誤ったピカチュウは、宇宙の藻屑になる寸前であった。
「遺伝情報は残されますかな? ここに手を当てさせれば記録できますし、女の子ですから卵子だけでも残せば子供だけでも…」
「いえいえ、こんな娘の遺伝では、また非国民が生まれるだけ、お恥ずかしい限りです」
「そうですか、それでは」
 簡単な手順だけでエアロックの開閉手続きが終わり、内壁が開いて放り込まれたユキナ。
 後は外壁が開いて吸い出されれば、レンジの中の卵になって、外に吸い出された瞬間爆発炎上して、月面よりも綺麗に分解される。
「うおおっ、おもううぃっ!」
 内壁が閉まるまでにどうにか起き上がって、扉の間に挟まって自分の投棄を防いだピッカチュー。
「往生際の悪い子だねえ、ご両親もご立派で、お兄さんは親衛隊の隊長まで仰せつかる人なのに、どこからこんな子が?」
 ドアに挟まったユキナを蹴り出し、戻ってこないようにしながら閉鎖ボタンを押す郷長。
「あみゅえyfhsがsjkghzfdぐsdせがshじゅdがwghっ!!」
 普通はここまで連れてこられる間に腰が抜け、立つこともできなくなり、土下座謝罪でもすれば許されるが、見苦しく足掻き続ける無様なピ~カチュー。
「これ以上家の恥を晒さないでおくれ、妹がこれでは、九十九の値打ちまで下がってしまうわ。今まで一等だった胤も、お前のせいで三等は落ちるよ、家の格どころか、家が終わった、本当に親不孝な子だよ、お前は」
 母からも汚物を見る目で見捨てられ、絶望のままエアロックの中に残ったユキナ。
「心配するな、すぐに私も後を追う。しかし、お前は女神様の天国には迎えられんだろうから、ここでお別れだな」
「ううううう~~~っ!」
 父からも汚物を見る目で見下げ果てられ、噂の天国にも迎えられない自分。ここでようやく腰が抜けて、自分の愚かさに気付いて、諦めて床に転がった。
(お兄ちゃん、ゴメン、もう会えない)
 兄に別れを告げて目を閉じ、エアロックの外壁が開いて、外に放り出されるのを待ったが、そこでようやく救いの手が現れた。

「待って下さいっ!」
 そこには帰宅したはずの影山明人が立っていた。ジャンプして来たので走っていないはずだが、演出のために息を切らせて大汗をかいている。
「明人君、どうして?」
「雪菜さんを捨てないで下さいっ、お願いしますっ」
 その場で膝を付いて、伍長、郷長にも頭を下げる明人。
 これは「白鳥明人」なので、皇帝直属、最高級品のブラックアキトとは違うが、優人部隊での肉体改装は受けている明人である。
「まだ子供の雪菜さんですから、学校と同じように話しただけです。どうかお許し下さいっ」
「手をお上げ下さい、女神様の親衛隊の制服が汚れてしまいます、あの娘にそれほどの価値はありません」
 ラピス親衛隊で優人部隊の隊士に土下座などさせると、郷長の方が後で呼び出されて命が危ない。
 そこに、かぐや姫にでも出て来そうな天人の行列と牛車が跳躍してきて、文武百官が並ぶ。
「「これは、まさか?」」
「姫様?」
 従者のアンドロイドが牛車の御簾を開け、中の貴人が降りて来た。
「女神様の、おな~り~~」
 随伴の者が声を上げると、その意味を理解した者は明人と同じように土下座をして、天女のような貴人を迎えた。もちろん顔を上げることは許されない。
「面を上げよ」
 鈴の音のような声が響くと、顔を確かめられるよう頭を上げたが、まだ視線を合わすような真似も、声を出す事も許されない。
「「「「「ははーー」」」」」
 簡易な外出着の着物の上に笠を被り、傘から薄絹が降りて顔が見えないようにしている貴人、ラピス29号Rである。
「兄上、妹にそのような礼は不要です、お立ち下さい」
「え? ああ」
 ラピスが言ってしまったので、世間体を取り繕う芝居をやめ、立ち上がって並ぶ明人。
「聞いたように、我が兄は皇帝である母が産み落とせし赤子(せきし)、同じ母の胎内で共に育った双子、その言葉は我と同格である」
「「「「はーー」」」」
 息子の同僚で、親衛隊隊士と思っていた少年は、皇帝の皇子で、生き神様とも双子の関係であらせられる天人であると教えられ、恐れ入って深く頭を下げる一同。
「白鳥雪菜をここへ」
「はっ」
 皇女、皇子の前でエアロックを開けるような不敬は許されないので、外側の防爆シャッターを一枚閉じて、ようやく内壁を開け、腰を抜かしたユキナが連れ出された。
「白鳥雪菜、我が兄の助命嘆願である。皇子、皇女に与えられた特権により罪二等を減じ、不敬の罪を問わぬ、その罪親族にも及ばず、下がって良い」
「え? あ? あの?」
 父親に頭を押さえ付けられ土下座し、意味も分からないまま許されたユキナ。しかし死罪、遠島の次、入牢と手鎖は免れないので、随伴の警官に連れて行かれてしまう。
「雪菜さんっ」
「兄上、これ以上は不粋と言うもの、入牢し教育されるのもまた一興、この国の決まり事を守って貰いましょう」
「ああ……」

「皆の者、お陰で思いがけぬ所で兄と逢えた、褒めて遣わす、下がって良いぞ」
「「「「ははーー」」」」
 姫様よりお褒めの言葉が出たので、随員から各員に恩賜の品が下賜された。「下がって良い」と下知が出たので、明人との逢瀬の邪魔になると判断された連中は、頭と視線を下げたまま歩いて下がらされた。
「兄上、久方ぶりです、優人部隊に配属されてからは、逢えずに困っておりましたのよ」
「ああ」
 この明人も「お前と明人は血を分けた兄妹、我が胎内で共に育った双子である、よってお前たちは結ばれる事は無いのだ」「い、いやあああっ!」みたいな小芝居を見せられたので、ラピスとは結ばれないと知り、距離を取ろうとして九十九達と一緒に入隊した。
 親友からも「よし、俺の家に行って、妹をファックして良し」と言われたらしく、今後ユキナを伴侶として選ぼうと思わされている明人である。
「兄上は雪菜さんを選ばれるのですか? わたくしとの約束は…」
「言わないでくれっ、決意が揺らぐ」
 火星で共に育った記憶もあり、8歳まではチューしまくり、これからもそれが続き、いつか結ばれると思っていた二人だが、自分は皇帝が産み直したテンカワアキトのコピーで、受精卵を分割したクローンだとも知った。
 更にラピスの母は火星で自分の父と愛人関係に有り、その娘であるラピスは、血を分けた兄妹だと知って絶望し、手近にいた雪菜との見合いを承諾して、ラピスを忘れるために家庭を持って距離を取ろうとしていた。
 多少の不整合は記憶を調整され、ラピスを愛したまま雪菜と結ばれる明人。
 まあ家庭を持って子供ができれば情も移り、ユキナタソと赤ちゃんラブラブになるので問題ないが、束の間の悲恋を楽しんでいるラピス。
 このラピスは自分専用のアキトを与えられて、暇があれがキャッキャウフフ、パコパコと子作りまでしているので何一つとして心配していない、腐った女であった。
「ああっ、こんな事なら先程、雪菜さんを許さず、処刑してしまえばよかったっ、これからも兄上に近付く女は全てっ」
「やめろっ」
 抱きすくめられて、兄妹では決してしない抱擁を受けて泣くラピス。
「どうか、一夜の過ちでも構いません、今生で、たった一度の契りを兄上と……」
「だめだっ、駄目なんだっ」
 泣きながら抱き締めてくれる明人を感じ、薄衣の下でアヘ顔をして喜んでいるクソ女。
 当然出撃前に「たった一夜の過ち」を犯して、どこかの「日出処の天子」の、毛人(えみし)の妹の刀自古郎女(とじこのいらつめ)みたいに、入れ替わってでもシてもらうつもりだが、その時はある場所を新品に戻して置かなければならない。ピカチュウも騙すため、ラピス達の活動は続いた。

 白鳥家。
「明人君、いえ、皇子殿下。娘の不始末と今までの不敬をお許し下さいっ」
 ラピスと別れた後、九十九の父と母を訪ねた明人の前で、這い蹲って頭を下げる二人。
「いえ、手を上げて下さい、この件はご他言無用でお願いします。先程の伍長さんと、郷長さんにもお伝え下さい」
「はい」
「それに、俺は一人ではないんです。陛下直属の頭脳である俺も、同じ受精卵を分割したクローンなんです」
「ええっ?」
「こんな、皇子の予備である身分で、お嬢さんとの結婚を願えるとは思っていませんが、一人の人間として、九十九の親友として、お嬢さんとの交際を認めて下さい」
 逆に頭を下げられてしまい恐縮する両親、すぐに頭を上げさせて、また頭を下げた。
「こちらこそ勿体無いお話、娘の命まで救って頂いて、皇子殿下と交際して頂けるなど、ありがたい事です、是非あの馬鹿娘を末永くご指導下さい」
「そうですか、ありがとうございますっ、きっと「娘はやらん」なんて怒られると思ってましたから、緊張しました」
 ようやく少年らしい笑顔に戻り、それでいて自分が受精卵を分割したとは言えアキトのクローンであり、ラピスとは決して結ばれない位置にいる悲痛な表情を隠して笑った。
「ささ、もう箸を付けてしまいましたが、宜しければお召し上がり下さい」
「その話し方もやめて下さい、親父の親友で九十九の親父さんですから、叔父さん同然ですし、これから本当に親子になるかも知れないんですから、今まで通りでお願いしますよ」
 皇子の身でありながら、驕らず、命令もしない明人にさらに好感を持つピカチューの両親。
 しかし、同僚は火星で庶民として暮らしていた女神様と肉体関係があり、皇子皇女の父であると知り(ちがいます)、家族ぐるみの付き合いがある奥方と違う相手、それも皇帝と不倫関係に有る(ありません)相手と、翌日からどう付き合えば良いのか困った。

 その頃のピカッチューー!
 ユキナが警察に連行された後は、綱紀粛正のため、芋蔓式に女子校の生徒全員が捕まり、泣き叫んで死罪を嫌がって、ユキナの牢の前を引き摺って行かれた。
「雪菜っ、お前があたしらを売ったんだなっ、そうなんだろっ?」
「裏切り者っ、お前がっ、お前が自分だけ助かるためにっ! 私達全員をっ、仲間を売ったんだ!」
「ち… ちがう、違うっ!」
 耳を塞いで背中を向けて縮こまって震え、親友達の悲鳴や罵りを聞かないようにするが、「何故か」全員ユキナの牢の前で一旦停止し、呪詛の言葉を並べてから連れ去られて行く。
 級友の場合、録音された証拠もあり、皇女殿下からの恩赦が無いので、取り調べを受けた後に十三段階段を引き摺られてでも登らされるか、毒杯を自ら仰いで自決。それが嫌ならエアロック直行で数人まとめて放り出される。
「イヤアアアアアアアアッ! 殺さないでっ、まだ、まだ死にたくないんですっ、許して下さいっ、どうか、どうか~~~っ!」
 わざわざ連行されて外に放り出される前にも、ユキナの牢の前で泣き叫んで、刑務官の足に縋り付いて助命嘆願する少女。
「下賤な非国民の分際で何を言うか? 汚らしい体液で制服が汚れる!」
 蹴り倒され、土足で頭を踏み躙られたクソブサイクな表情まで見せ付けられる。
 こう言う演出なので、全員ここで腰を抜かして失禁し、泣き叫んで命乞いして、死の直前の本物の悲鳴を聞かされるユキナ。
 生まれて来て今までで最高の恐怖を与えられたピカチューは、ライチューに進化して、二度とこのような失態を犯したり、皇帝陛下、皇女皇子殿下に逆らうような不敬はしないと誓い、絶対に明人とラピス達に逆らえないよう心の根幹をへし折られて、一匹の従順なポケモンが作り上げられた。

 その状態でガッタガタ震え、恩赦により死の恐怖は無くなったが、それよりも級友たちの死の叫びで、また失禁しそうなユキナの前に明人が現れた。
「刑務官殿、皇女殿下よりのご下命です。女子生徒全員に対し恩赦が発せられました。勿体なくも賢くも」
 ユキナにも聞き覚えのある声が聞こえて、耳を塞ぐのをやめて牢の外を見た。
 明人が証拠の品である勅令を開いて読み上げるが「勿体なくも~」の文節が発せられた後は、皇女、皇帝自身の言葉なので、刑務官達は踵を合わせて直立し、腰を90度に曲げて頭を下げてから勅令を拝領した。
「皇女殿下は死を賜る女生徒達に哀れみを示され、こう申されました。「その罪二等を減じ、親族にも罪を問わず、即座に開放せよ」と」
 頭を下げている刑務官と違い、ユキナはその勅令が白紙なのを見た。
 それはラピスは生徒達を見捨てたにも関わらず、明人が書類と勅令を偽造してまで級友や親友を救い、自分達を嘲笑ったはずの相手を「皇子の権限により赦免」したのを足りない頭にも理解させられた。
「ご下命、確かに頂戴致しました」
 本来、証拠品が手渡されるはずだが、下級の刑務官には勅令は手渡されず明人の懐に仕舞われ、ユキナに向かってイタズラ小僧の表情で微笑んだ。
 相手もラピス親衛隊隊士、優人部隊の制服を着ている人物の言葉なので、何も疑わずに勅令を信じた。
「ありがとうございますっ、ありがとうございますっ」
 先程土足で踏み躙られていた女生徒も、明人に向かって全力で頭を下げ、感謝の言葉を続けた。
「あ… 明人様、いえ、皇子殿下。わたくしだけでなく、他の生徒の生命まで救って頂き、ありがとうございました……」
 全身の穴全部から水分を垂れ流している無様なユキナも、どうにか感謝の言葉を紡いだ。
 そこで「皇子殿下」と言ったのが女生徒にも聞こえ、噂の中心、白鳥雪菜の見合い相手である影山明人とは、皇帝の愛人ではなく息子なのだと理解して、その話は解放後に即座に拡散して、問い詰められた雪菜からも事実だと伝えられた。
「いいんだよ雪菜さん、ご両親からも交際の許可を頂いたよ。これからは婚約者だ、そんな畏まった話し方はしないでいい、今まで通り「アタシの好みじゃないワ~」って言ってよ」
「も、もったいのうございます」
「だからそれは駄目だって」
 屈んだ皇子殿下に手を取られたが、ブサイクな所を見せられないので顔を上げられないユキナ。
 この上下関係が崩せないのは脳の芯にまで叩き込まれ、ラピスや明人が人間宣言をしようがどうしようが、このままの関係が維持された。

 やがて生徒達も親兄弟が迎えに来て開放されたが「大恩ある皇子殿下」は、アホボケカスマヌケ低能のピカチュー如きには勿体無いと、救われた女生徒達からも慕われ続けた。
 女神様救出のために優人部隊も決死隊の一つとして出陣すると聞いた時には、即座に女生徒全員で千人針を用意して馳せ参じ、壮行会として茶会を開いた。
「皇子殿下、この度の戦、生還は望めないと聞き及んでおります、せめてわたくし共に「胤」をお残し下さい」
「エ?」
 主催者は当然妹ラピス達で、ユキナを始め数人に詰め寄られ、ユキナが一番槍を受けて順番に種付けをさせられた。
 有り体に言えば、茶に痺れ薬と強精剤を一服盛られて、縛り上げられた上で女子全員に上から乗られたのだが、二人目に紛れ込んでいた白人、銀髪桃色、光彩の色は金という人物とも、薄明かりの中で無理やり交わられて乙女?を捧げられた。
「ラ、ラピスじゃないかっ!」
「しー、お静かに、兄上」
 みたいなお約束まであり、無事に刀自古郎女プレイをやってのけたラピス。
 出撃後の私信でももちろん。
「おめでとうございます兄上、全員身籠りました。一発必中、百発百中とは流石兄上様です。選に外れた希望者にも胤を配布し、わたくしが身籠ったのが霞んでしまうほどの大事になっておりますのでご安心ください」
 などと「さすおにのキモウト」より怖い通信が入って、安心どころか戦地で戦士するしか無いような失態を犯したのを知らされ、女子全員排卵誘発剤を用意した上での計画的犯行が発覚。
 雪菜とラピスから零れ出た胤を全員に配布して受精、大量妊娠までされたので女嫌いで人間嫌いになり、自殺特攻作戦には喜んで参加した明人だった。
 
 

 
後書き
ロバート・A・ハインライン先生も、超右翼作品「宇宙の戦士(スターシップトルーパー)」を書いて、リベラルな人間が多い作家連中から吊るし上げられ、編集者や関係者からも罵られ、絶交を宣言されたり、社会問題になったりしたしたそうです。

後に火星人に育てられた男の子が地球に来て人々を魅了して、火星人的な思想に理解が有る男女と同居する話を書くと、ヒッピー文化に影響された若者が家にまで押し寄せて、自分達を一番理解している作家として持ち上げられ、思想的にはどちらの人間なのか分からず、また責められたそうですが、「作家なんだから左右どちらを書けても普通」というオチだったと聞いています。

こちらもGS美神SSを書いて「今回は魔族だから、神族はアキトくんみたいに退場、ルリルリが主人公になるのと同じで、神様は敵」と書いていると、夜に咲く華管理人様を始め、住人に激怒されて蛇蝎の如く嫌われて追い出されましたw

「え? これお話の中の、さらに付け足しの二次創作ですよ?」と書いても、他の皆さんには神族のキャラは実在の人物らしく、ヘイトだか二枚舌の腐れ役人として扱われたのが耐えられないようで、結局許して貰えませんでした。

後でボツネタの、おキヌちゃんと神族の話を書くと、「アンタどっち側なの?」と聞かれましたが、その時も「作家だったら、どちらも書けて普通じゃないの?」と返すと呆れられました。書いている話と作家の思想も直結、と考える人が多くて驚かされました。

書いている側の人間と、そのキャラは心の中で実在している方の間には、大きな溝があるようです。

ここからも木連パートは超右寄りですので、ご不快な方、嫌いな方はご容赦ください。地球側は無能な役人、政治家として書いていますが、「世界同時革命バンザイ」「コミンテルンとマルクス・レーニン主義よ永遠に」みたいな内容が書ければ書いてみます。 
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