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ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~

作者:白泉
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
2章 生き様
  13話 マスタースミスが欲しい物

 
前書き
 お久しぶりです、白泉です!いやぁ、大変長らくお待たせしてしまって申し訳ありません(-_-;)学生という身、なかなか大変ですwしかし、めげずに頑張っていきますので、どうかこれからもよろしくお願いします!
 

 さて、いよいよリズ編!今回はオリジナル回となります。前々から思っているのですが、僕、戦闘シーン書くの苦手なんですよ。友達にそう言ったら、「じゃあなんでバリバリ戦闘物のSAOの二次書いてんの!!」と言われました。僕もそう思いますw

 前置きはこのあたりにして、では、早速どうぞ!

  

 
 リアとツカサの姿は、第一層“始まりの街”にあった。既に10時近くで、始まりの街で生活している人たちも多く行きかう。

 転移門を出てすぐにある小綺麗な噴水の奥には、女性が両手を広げたぐらいの横の長さの、長方形のボードがある。これは所謂掲示板だ。

 オールラウンダーに依頼する者は、ここに依頼を書き込むのである。


 いつもは大抵3件以上は依頼があるのに、今日は珍しくあったのは1件だけだった。

「今日は珍しく少ないね」
「だな。依頼内容は…金属採取。鍛冶屋の人からの依頼みたいだな」
「リズベット武具店って、リンダースにある鍛冶屋だよね」

 リアは、リンダースの町の一角にある、水車付きの小綺麗な建物を思い出しながら言うと、ツカサが頷いた。

「なら、今回は直接覗いてみるか」
「いいね、それ」

 というわけで、本日の予定はリンダースにある“リズベット武具店”訪問となった。







 48層主街区リンダース。たくさんの木が植えられている街路樹、石畳のわきにある水路には、透き通った水が涼しげな音を立てて流れている。

 夜中までやっていたオーダーメイド品を何とか仕上げたリズベットことリズは、睡眠不足で、店先のポーチに据えられている揺り椅子でうとうととしていた。

 小学校時代の夢をうつらうつらみていると

「ごめんなさい、ちょっといい?」
「は、はいっ‼‼」

 誰かの声に起こされ、リズはばね仕掛けのように飛び上がった。と、目の前に2人のプレイヤーがいることに気が付く。

 一人は、この世界でも珍しい女性プレイヤーだった。ディープブラウンの長い髪と、白を基調に、袖口や裾が薄紫色から桜色へと変化するグラデーションが美しい服が、澄んだ風に揺れている。もう一人は、肩上に切りそろえられた漆黒の髪に、同じく漆黒の瞳、そして黒を基調に、白銀の装飾が入ったコート。

 そして、2人は人間とは思えぬほど端正な顔立ちで、おもわずリズは見惚れてしまった。そして、同時に彼らが誰なのか理解した。

「オールラウンダー、ですか?」
「そう。突然押しかけてごめんなさい。今空いてる?よかったら今ここで依頼内容聞いてしまおうかと思って」
「ああ、はい、大丈夫です!あ、中に入ってください」

 そう促して、作業場に案内し、備え付けの椅子に座らせると、リズはお店の扉にかかっていた“open”の札を裏返しにして、“close"にする。そして、少し前髪を整えると、2人のもとに行き、慣れた手つきで作業場にある紅茶を出した。

「それで、どの種類の金属採集?」

 リズが自分の目の前に腰を下ろしたのを見てから、リアがそう切り出した。リズは自分の紅茶で口を湿らせ

「はい、今回頼みたいのはヒートヘイズ・インゴットという金属です」

 リズの返答を聞くと、リアは紅茶のカップ越しでウィンクした。

「言い忘れたけど、敬語いらないよ。どうせ歳だって同じくらいだしね」

 リズは思わずリアの顔をまじまじと見てしまう。女にしては高めの身長や、雰囲気からなんだかすごく年上のような感じがするのだが、こうしてみると確かにそうかもしれない。だが、それでもこの世界では有名かつ偉大な人なのは変わらないため、少々迷う。だが、結局

「…わかったわ。私も敬語好きじゃないから。リズって呼んで」

「うん、そっちのほうがいいね。よろしく、リズ」

 リアはカップを置くと、リズに微笑みかけた。同性なのに、思わず胸が高鳴ってしまうような笑顔だ。男だったら絶対惚れてる自信はある。

「で、ヒートヘイズ・インゴットだったね。私、そのインゴットの名前聞いたことないな」
「最近発見されたばかりだしね。しかも、最前線の2層下のダンジョンらしいから、まだ誰も採取したことがないのよ」


「なるほどね。金属関係の情報は鍛冶屋のほうが早いだろうから、私たちが知らないのは当たり前か。…誰も踏破してないってことは、その情報はNPCから?」

 誰も手に入れたことがない金属の存在がうわさされるということは、NPCからしかありえない。リズは頷いた。

「そう。しかも、どうやら一回きりのクエストらしいから、急がないと…」

「なるほどね…オッケー、その依頼、受けさせてもらうよ」

「ありがと!」





―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―





「「あづい…」」

 口から吐き出されたリアとツカサの言葉は見事にシンクロするが、それに反応する気力もない。









 あれからリズと別れ、最前線より2層下の層に来て、リズから聞いていたNPCを順序良く発見した。ここに南に真っすぐ行った山のふもとに地下へと降りられる階段がある。その奥に居座る巨大なドラゴンを倒せば、ヒートヘイズ・インゴットが手に入るという説明を聞き終え、早速その山のふもとに行ってみると、確かにその洞窟の入り口があった。石造りの扉を押し開け、階下へと続く階段をゆっくりと下っていくと…

「…ねぇ、なんだか暑くない?」
「俺も今それ思ってた…」

 階段を下るほどに気温が上がってくような気がして、リアとツカサは首を傾げた。やがて、耐えがたいほどまで気温が上がったとき、やっと階段が底にまでたどり着く。

 その時、目の前に広がった光景に、思わず2人はフリーズした。そして、心の中で納得した。…そりゃ暑いわけだ、と。

 ドロドロに赤く輝くマグマが壁の両側を流れ落ち、用水路ならぬ用マグマ路をゆっくりと流れていく。そんな道が、先が見えないほど遠くまで続いているのだ。

 

 なにせ、熱の発生源であるマグマがすぐそばにあるのだから、体感温度は50度以上だ。まさに灼熱地獄だ。



 この世界では、エモーションの一環として、冷や汗などは表現されているものの、暑さによる汗の発生はないので、汗で肌がべたつく心配はなく、それだけはいいかとリアは暑さで思考力が落ちる頭でそう思った。


 
 


 階段ではモンスターのポップはなかったが、この通路ではポップするようだった。それらのモンスターと戦いながら、攻略組でも攻略できないだろうとリアは思った。最前線より2層下のこのダンジョンだが、最前線より5層分ほどはレベルが高いと思われる。普通の攻略組を呼んだとしてもおそらく無理だろう。このダンジョンが発見されても攻略できなかった意味がよくわかる。






 始めのうちは、燃え盛るカタツムリのようなものなどの、レベルは高めだがそこまで強くないモンスターだったのだが、奥に進めば進むほど強くなっていくのはあきらかであった。




 
 
「キシャァァァァ!」

 と襲い掛かってくるのは、火を司るトカゲ、サラマンダー。しかし、トカゲはトカゲでも巨大トカゲだ。全長は、2メートル近く、まるでコモドドラゴンが火をまとっているような見た目だ。

 ずるずると長い尻尾を引きずっているくせに、敏捷値がかなり高い。目にもとまらぬ速さで体当たりをしたり、その長い尻尾ではらってきたり、纏っている火をブレスのように飛ばしてくる。


 そこまで横幅はないのだが、天井はやたらと高い。そのため、上に飛べばいいのではないか、という判断を下し、飛び火攻撃の時にリアとツカサは上へと飛びあげる。が…

「うそだろ!?」
「あっつ!」

 まさかの、上に飛べば、そのまま上に飛んでくるタイプだったのだ。確かに、ブレスではないので、首が上に向かないから上に攻撃できないとか、そのようなことはない。


 今の攻撃で、リアの2割ほどのHPが持っていかれる。ツカサは2割強だ。ツカサは敏捷よりなので、防御力も、HP総数もリアに比べ少ないのだ。

「どうする!?ツカサ君!」

「マグマに放り込…んだとしても、いつでも火だるまなんだから意味ないか…うーん…」

 悩んでいいる間にも、サラマンダーは体当たりをかましてくる。炎をまとっているため、近づくだけでHPが削られていく。それでも考えていると、ツカサの頭に一つアイデアが浮かんだ。

「リア!閃光弾、持ってるか!?」
「閃光弾?…うん、持ってるよ!」

 閃光弾は、強烈な光を起こし、モンスターやプレイヤーから逃げるのに使われる。リアは素早くアイテムストレージを開き、手のひらサイズの丸い弾を取り出すと、ツカサになげて渡す。ツカサはそれを器用に受け取ると、

「目、瞑ってろよ!」

 という言葉を残して、その弾を思いっきりたたきつけた。目をギュッとつぶっていても、瞼を通り越して届く光で、いかにその光が強いかがよくわかる。一秒足らずで光は収まり、目を開けると、なんと目の前のサラマンダーは腹を見せ、けいれんしながら転がっていた。

 そのすきを逃さず、リアが最大威力の片手剣6連撃のファントムレイブを、その柔らかそうな腹にお見舞いすると、弱点だったのか、あっという間にHPをなくし、その身を散らせた。


「お疲れ。よく閃光弾が弱点だってわかったね」
「サラマンダーの弱点は水と光ってことを思い出したんだ。ここには属性がないから、アイテムでいけるのは閃光弾だけだしな」

「なるほどね」

 
 






 閃光弾という弱点を知ってからは、サラマンダー相手にもてこずることはなくなり、すいすいと攻略が進む。だが…









 5回目の戦闘を終え、先に進んだ2人の前には、3本の分かれ道が立ちはだかった。

「…どうする?」

 気化熱がないので意味がないのに、ぱたぱたと手で顔を仰ぎながら、リアが言う。ツカサは、3本道の向こう側に広がる暗闇に目を向けながら

「流石に、茅場は必ず死ぬようなダンジョンは造らないはずだから、たとえはずれだとしても、どの道を行ってもいいと思う」

「じゃあ、真ん中にしよう」

 ツカサの言葉を聞いた途端、即座にリアがそういった。ツカサが胡散臭そうな横目でリアを見る。
「…ちなみに聞くけど、理由ってあるのか?」
「この道が私を呼んでるような気がするんだ」
「聞いた俺が馬鹿だったな」

 相変わらずぶれないリアに苦笑するが、結局いつものお決まりパターンでリアの意見が採用された。





 道に入り、2回の戦闘を終えたところで15分ほど経った。

「これって、永遠に続くとかないよね?」
「流石にそれはないと思うけど…ほら」

 そういうツカサの視線の先には、人一人が通れるほどのアーチがあった。2人がそれをくぐると、その中は、一つの部屋だった。しかし、ほかに出口はなく、行き止まりのようだ。

 そして、目を引くべきは、部屋の中央に据えられた黄金の輝きを持つ宝箱だった。







 宝箱。それは、ある意味それを開けるのは賭けといってもいい。もちろん、普通にレアアイテムやレアなポーションなどが入っていることがほとんどだ。だが、宝箱に見せかけたトラップというものがある。その中には、かなり悪質なものがあり、命を落とす者さえいるほどだ。だからこそ、宝箱を開ける時にはかなり注意が必要なのだ。


 かなりハイレベルなうえ、灼熱地獄という、決してプレイヤーにやさしいとは言えないこのダンジョンだ。トラップの可能性は大いにある。…のだが…

「よし、開けよう」
「そう言うと思った…」

 迷いなく、宝箱を見た瞬間、リアはそういった。やれやれ、と首を振るツカサを置いて、リアは宝箱を躊躇なく開けた。












 ツカサの心配は、結局杞憂で終わることはできず、その宝箱は耳をつんざくようなけたたましい声を上げた。すると、途端に部屋の隅から、先ほどリアたちが戦ってきたモンスターたちがぞろぞろと部屋に侵入してきたのだ。



「やっぱりトラップだったかぁ」
「知ってて開けたのか」
「え?」

 満面の笑みで聞き返すリアだが、それはすなわちイエスだ。まったく、と相棒の無茶苦茶ぶりに呆れ半分、知らぬ間にツカサの口角は上がっていた。

「まあ、いい。()ろうぜ」
「言われなくても!」

 リアの愛剣がまだ鳴き続ける宝箱を粉砕した音が、試合を告げるゴングとなった。


 
 

 
「なかなか楽しかったね」

 肩に剣を乗せ、リアはすっかり片付いた部屋を見回しながら満足げに言った。また背に槍を吊るし直すツカサの顔も明るい。

「レベル上げには最適だな」

 ハイレベルなうえに、大量だったため、2人のレベルは1つ上がったほどだ。リアはうーん、と声を出しながら、大きく伸びをした。

「ここは行き止まりだったし、また分かれ道に戻ろっか」







 そういって、再び分かれ道に戻ってきたリアとツカサ。

「今度はどっちに行くか、ツカサ君が決めてよ」
「えー…じゃあ、左」
「オッケー」

 というわけで、今度は左に進む。だが、同じく15分ほど歩いた先に会ったのは、先ほどと同じアーチ。まさかと思いながらそれをくぐると、そこには、真ん中の道の突き当りに会った部屋と広さも見た目も何もかも同じだった。…そう、中央の黄金の宝箱さえも。

「よし、開けよう」
「…懲りないな…」


 再びの即答。あれだけ戦ったのに、リアはまだ足りないらしい。なんだか、宝箱の中身に臨むものが一般プレイヤーと違うのは気のせいだろうか…?


 ツカサはまた自分の得物に手をかけ、いつどんな敵が来てもいいように構える。それを確認してから、リアは躊躇なく宝箱を開ける。










 …だが、いつまでたっても、先ほどのような大音量の音は聞こえなかった。

「あーあ、アイテムだったみたい」

 モンスターのトラップよりも、アイテムを発見して残念がるプレイヤーはほかにはいないだろう。かくいうツカサもその部類に入ることは、自分でも少々自覚はしている。

 

「イヤリングだね。えーと、アイテム名は、“コングジスタンス”。…へぇ…」

 鑑定スキル持ちのリアが、鑑定結果が示されているだろう画面を凝視していた。彼女の反応からすると、なかなか良いものだったのだろう。それは予想を裏切らず、

「これ、片方ずつ違うプレイヤーが付けられるんだって」

 
 普通、2つで一対のものは、片方ずつ違うプレイヤーが装備することはできない。あくまで、“2つでセット”として認識されるのだ。だが、そのイヤリングは、違うという。情報提供も行う2人でも、そんなアイテムは聞いたことがなかった。


 リアが、イヤリングの片方をツカサの手のひらに置いた。ティアドロップ型の薄紫色をした宝石が、きらりと光った。


 リアの話を聞いていると、それにはツカサとリアにお誂え向き、と言おうか、まるで2人のためだけのような特性がある。ツカサがそれを装備すると、耳朶に軽い錘を付けたような感覚がする。それにしても、本来の物質の重さよりも耳朶を引っ張るような気がするのは気のせいだろうか。











 この分かれ道に来るのは、もう3回目になってしまった。真ん中と左の道は行ったので、最後の右の道が恐らく最深部へと続いているのだろう。







 右の道をまたまた歩くこと15分。そこには、部屋などはなかった。…その代わりに、大きな口を開けている2つの分かれ道があった。

「また分かれ道か…どっちに行く?」
「……え?ごめん、何?」

 考え事でもしていたのか。

「どっちに行くかって聞いたんだ」
「うーん、そうだねぇ…」

 リアは数秒悩んでいたようだったが、不意にその口角が片方だけ上がり、灰茶の瞳がきらりと光った。

「ね、ツカサ君。たまには別行動してみない?」
「別行動?また藪から棒に」
「いや、いつでも一緒だからさ、たまには~って。時間短縮にもなるし」

 ツカサはじっとリアの目を見つめた後、ゆっくりとため息を吐いた。

「まあ、いいんじゃないか。リアがそう言うなら」
「それじゃあ、どっちに行く?」
「…右で」
「じゃあ、私は左に行くね」
「わかった。またあとでな。…くれぐれも気をつけろよ」
「ツカサ君もね」

 音符マークがつきそうなぐらいな言い方でそう言うと、リアの背中はあっという間に左の通路へと消えていった。



 一人残ったツカサは右の道を見据えると、その口へと一歩を踏み出していった。

 



 
 

 
後書き
 はい、いかがでしたか?

 さてさて、これからの話は、リアとツカサの単独行動編になります。実は、僕のこの小説を愛読してくれている友人に、どうしても「リアとツカサの単独行動が見たい!」と言われたのであります。というわけで、急遽このような話を入れることになりました。


 言われてみると、はじめからリアとツカサはいつでも一緒だったので、別々の行動が見たい!というのは当たり前かな、と思ったので。


 コミュ力がかなり低いツカサは毎回、空気になることが多いので、次回はたっぷり活躍させたいなぁと思っております!

 というわけで、次回はツカサの単独行動&ボス戦です!ツカサの活躍、お見逃しなく!

 ではまた次回、お会いしましょう!

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