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とある3年4組の卑怯者

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83 帰還

 
前書き
 花輪とその従姉妹のルリ子、そしてマークの五人でスケートしに行った藤木とリリィ。藤木は唯一の取り柄であるスケートでジャンプやスピン、スパイラルを披露し、四人どころかその場にいた多くの人々にその技術を魅了するのだった!! 

 
 藤木とリリィは旅館にある売店でお土産を選んでいた。
(どれにしようかな・・・)
 藤木は永沢にあげる目的でお土産を買おうとしていた。いつも彼から嫌味を言われ続けている藤木ではあるが、それでも永沢についていい所も知っているため、どうしても友達をやめるわけにはいかなかった。
「藤木君、まだ迷ってるの?」
「うん」
 リリィは既に購入を済ませていたのだった。
「リリィは何を買ったんだい?」
「高山の写真の絵葉書(ポストカード)よ。これエミリーやメイベルに送ろうと思ってるの」
「へえ」
「藤木君は誰にあげようと思ってるの?」
「僕は永沢君かな」
「え?永沢君?いつも嫌な事言われているのに?」
「うん、でも僕にはどうしても永沢君を友達だと思いたいんだ。家が火事に会って苦労しているし、学校では意地悪な事をすぐ言うけど、家では家族や弟の太郎君を大事にしている面倒見のいい所があるからね」
「藤木君は永沢君のいい所知っているのね」
「うん・・・」
 
 藤木は少しして永沢にあげるお菓子を購入した。
(永沢君、喜んでくれるかな・・・?)
 藤木は永沢がどうか喜んでくれて欲しいと願った。


 翌日の帰宅日、藤木は列車に乗りながら、旅行の思い出を顧みた。

 高山の古い町並みを歩いた頃、中橋でリリィと写真を撮った事、旅館の風呂の湯の肌触りが気持ちよかった事、そして料理も美味しかった事、ロープウェイで飛騨山脈を堪能する事ができた事、そこで花輪とマーク、そしてルリ子と出会った事、そして高山の祭りの規模の大きさを博物館へ行って実感した事、リリィ達に自分のスケートの技術を披露した事・・・。

 スケートの事を思い出して藤木はふと、妙な出来事を思い出した。
(そういえば僕のスケートに凄いと言っていたおじさんがいたな・・・。確か片山って言ったっけ・・・。あの人は一体何者なんだろう・・・?)
 藤木はスケート場で出会った男がやけに気になった。
「藤木君、どうしたの?そんな気難しそうな顔して」
 リリィが尋ねてきた。
「い、いや、何でもないさ!」
 藤木は誤魔化した。


 そして藤木達は清水に帰ってきた。
「それではミルウッドさん、ありがとうございました。さようなら」
 藤木の母が別れの挨拶をした。
「さようなら」
 リリィの両親も挨拶を返した。
「藤木君。藤木君と一緒でとっても楽しかったわ。どうもありがとう」
「え?うん、こっちこそ誘ってくれてありがとう。僕も楽しかったよ」
「じゃ、また学校でね」
 こうしてリリィと別れた。

 藤木は家に着くと母に永沢に土産を渡しに言ってくると言った。
「わかったわ。あんまり遅くなるんじゃないよ」
 藤木は永沢へのお土産を持って永沢家に向かった。
 永沢家の玄関から永沢が出てきた。
「どうしたんだい?藤木君」
「君のためにお土産を買ってきたんだ」
 藤木はお土産を永沢に差し出した。
「僕にかい!?どれ、ふうん、飛騨高山行ってきたのか」
「うん、そうだよ」
「ありがとう。礼をするよ」
 いつも藤木に嫌味を言う永沢もさすがに今日ばかりは友達として藤木に謝意を示したのだった。
「じゃあ、また学校でね」
 藤木はそう言って帰っていった。
「うん・・・」


 そして学校へ行く日となった。藤木が教室に入るとそこはいつもと変わらない3年4組の姿があった。少しして、花輪が入ってきた。紙袋を3つも持っている。
「Hey、good morning、everyone!今日は皆にお土産を買ってきたのさ。是非受け取ってくれたまえ」
 花輪は皆にお土産を渡した。それも一人一箱。藤木は非常に驚いた。
(花輪クン、皆のためにわざわざそんなに買うなんて・・・)
 藤木はやはり自分は花輪に勝てないと思った。そして花輪は藤木にも渡そうとする。
「僕にもいいのかい?僕も行ったのにわざわざ・・・」
「いいのさ。気にしないでくれたまえ、藤木クン」
「あ、ありがとう・・・」
「あ、そうそう、ルリ子が君のskete姿が格好良かったと言っていたよ。また、日本に来たら君とsketeしたいってさ」
「ルリ子ちゃんがかい!?あ、ありがとう・・・」
 藤木は自分のスケート姿で人を魅了させる事ができる事に誇りを感じていた。みどりも自分を好きになったのはスケートする姿に惚れたからだというし、あの片山という男も自分を高評価していた。ルリ子も可愛くて、あの時は心を奪われそうになったが、自分には他に好きな人が二人いるので、その二人を裏切る事はできない。しかし、またルリ子に会いたいと藤木は思った。
「あれ、一つ余ってるぜ!」
 はまじが紙袋の中のお土産のお菓子が余っている事に気付いた。
「ああ、それは戸川先生の分だよsenhor(セニョール)
「へー、先生にまであげるなんて気が利くなー」
 そして戸川先生が入ってきた。花輪は戸川先生にお土産を渡す。
「先生、これ僕のお土産です。是非受け取ってください」
「え、私にですか?ありがとうございます。是非妻と頂きたいと思います」
(花輪クン、先生の分まで・・・、僕なんて永沢君にしかお土産をあげていない・・・)
 藤木は切なさ感じた。

 休み時間、藤木は永沢に話しかけられた。
「藤木君、昨日お土産ありがとう。父さんに母さんと一緒に食べたよ。美味しかったよ」
「永沢君、ありがとう・・・」
「ところで花輪クンも飛騨高山に行ったのかい?」
「う、うん、そうさ・・・」
「一緒に行ったのかい?」
「いや、別行動だよ!」
「私と藤木君で一緒に行ったのよ。そしたら偶然花輪クンと来てたの」
 リリィが会話に入ってきた。
「そうなんだ・・・。リリィが藤木君を誘うだなんて以外だね。もしかしてリリィも藤木君が好きなのかい?」
「え・・・、い、いや、友達だからよ!」
 リリィは誤魔化した。
「でも花輪クンはどうするんだい?」
「う・・・」
 リリィは返答できなかった。


 アメリカにあるエミリーの家。エミリーが郵便受けを開けるとリリィからの絵葉書が入っていた。
(ヒダタカヤマ・・・?うわあ、日本にはこんな素敵な所があるのね・・・!ありがとうってリリィに返事を送ろう!!)
 エミリーは早速リリィにお礼の返事を送ろうと便箋を探した。


 イギリスにあるメイベルの家、メイベルは母親から呼ばれた。
「メイベル、リリィからよ」
「え?」
 メイベルは母親から絵葉書を受け取った。
「ドレ、飛騨高山・・・、昔の日本みたい。私も行ってみたいな!」
 メイベルはリリィに返事を書こうとした。
「ソウダ、学校の皆にも見せてリリィが元気でやってるって事知らせよう・・・!」

 
 藤木はリリィに声をかけられた。
「藤木君、エミリーとメイベルに絵葉書送ったら返事が来たわ」
「え、本当かい?」
「ええ、エミリーは『また日本に行きたい』って書いてあったし、メイベルは学校の皆に絵葉書見せて私が元気にやっているって伝えていたわ」
「へえ、よかったね」
 藤木はリリィが嬉しがる顔を見て自分もまた嬉しくなった。 
 

 
後書き
次回:「手紙」
 寒くなり、スケートを楽しめる時期。みどりは藤木に会いたいという目的を隠し、堀にスケートしに行こうと誘う。一方、藤木のもとにある手紙が届く・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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