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とある3年4組の卑怯者

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81 飛騨高山

 
前書き
 ミルウッド家から飛騨高山への旅行の誘いをもらった藤木の家族。藤木はリリィと共に旅行に行けることを非常に喜ぶのだった!!

 ちなみに飛騨高山にした理由は私がただ岐阜県にゆかりがあるから・・・。ただそれだけの理由です。 

 
 藤木達は荷物を置いた後、高山の街を歩き回ることになった。

 高山市。岐阜県北部の飛騨地区にある市で、市街地は江戸時代の城下町・商家町の姿がそのまま残されている。その街並みから「飛騨の小京都」の別名を持つ観光都市になっている。

 藤木達は高山の市街地を歩き回っていた。
「これが日本の昔の姿なのね」
 リリィが感心した。
「うん。まあ僕も初めて来たけどね」
 藤木はリリィの誘いに乗ってよかったと心の中で思うのだった。一行は日本で唯一残る郡代役所の高山陣屋の前に来た。ここは五年前は県事務所として使用されていたのだが、移転したため、文化財として保存しており、江戸時代の状態へと修復中であった。
「ここで昔は政治をやっていたのね」
 藤木の母は感心した。
「ああ、これが修復すれば江戸時代の時の姿まんまの状態が見れるんだ」
 藤木の父が続いて言った。
「でも、いつ終わるんでしょうね。私達それまで生きているのかしら・・・」
「その前にまたここに行けるのか・・・」
 暗い話をする藤木の両親に、何も言えない藤木とリリィの家族であった。

 一行は中橋に着いた。観光客はここで写真を撮っていた。それを見てリリィはある事を思いついた。
「パパ、ここで私と藤木君の写真を撮って!」
「アア、いいとも」
「ほら藤木君、一緒に並んで!」
「え!?う、うん・・・」
 藤木はリリィと並んでリリィの父に写真を撮ってもらった。藤木は好きな子とツーショットで写真を撮るという経験は以前家族で遊園地に行った時、そこで偶然出会った笹山と記念写真を撮って以来の事だった。まさか似た事がリリィとでもできるとは藤木にとって素敵な事であった。その後、藤木は自分の両親と三人でリリィの父に撮ってもらい、そしてリリィの家族が集まった写真も藤木の父が撮ってあげたのだった。

 日が暮れてきたので一行は旅館へと戻った。藤木は部屋でくつろでいた。
「茂、そろそろ父さんとお風呂行っといで」
「あ、うん・・・」
 藤木は父と共に大浴場へ向かった。体を洗い、湯につかった。飛騨高山温泉の源泉をかけ流しているもので、肌触りは気持ちのいいものであった。
「ふう~気持ちいいなあ」
「ああ、やっぱり来てよかったな」
 藤木も彼の父も湯に入って楽しめたようだった。

 藤木達が湯を出ると女湯の方からリリィとその母が出てきた。
「あ、藤木君も入ってたの」
「うん」
「凄いいいお湯だったでしょ?」
「そうだね。温泉のかけ流しって気持ちいいもんだね」
 藤木は感想を言った。リリィはそう言われて嬉しかった。

 食事もまた豪華なものであった。地元で有名な飛騨牛の鍋を始め、山菜や高原野菜、川魚の刺身や焼魚などいろいろな料理が出てきた。
「ふう、こんな美味しいもの僕初めて食べたよ」
 藤木は食事が済むと、動けなくなった。
「私も苦しいわ」
 リリィも同じようだった。藤木にとってここでリリィと共に食事できるなんて滅多にできない経験であり、いつも以上に料理が美味しく感じたのだった。

 
 翌日、一行は開業して四、五年の新穂高のロープウェイに乗るつもりでいた。バスで1時間40分。バスに乗っている時間が長いせいか、藤木もリリィも途中で寝てしまった。やっと着いた所で二人は起きた。
「あれがロープウェイね」
「うん、僕も始めてだけどね」
 一行はロープウェイに乗った。リリィも藤木もお互いの両親もロープウェイの窓から見える飛弾山脈の風景に見とれていた。
「日本にもこんな素敵な風景があるのね」
「うん、清水から見える富士山よりも綺麗かもしれないね」
 ロープウェイが鍋平高原に着いた。藤木達は降りると、自然の中ならではの澄んだ空気が漂っていた。
「うわあ、広々としてて綺麗な所ね!」
「イギリスにもこういう所あったのかい?」
 藤木が聞いた。
「ええ、色々な高原があったわ。その多くが観光(リゾート)地になっているわよ」
「へえ、僕もイギリスに行ってみたいなあ」
「おいおい、茂。今度は海外旅行に行きたいなんて無理言うなよ。金が凄くかかるんだからな」
 藤木の父が口を挟んだ。
「う・・・、ただ行ってみたいって言っただけで、今すぐ連れて行ってくれって意味じゃないよ・・・」
 鍋平高原の散策が済むと、第2のロープウェイに乗り、山頂を目指した。
 
 山頂の眺めも美しきものであった。山脈には雪が積もっていた。
「藤木君、あそこにパン屋さんがあるよ!パパ、ママ、いいかな?」
「ハハハ、まったく・・・」
「いいわよ。藤木君もどうぞ?」
「はい、是非頂きます・・・」
 藤木達はパン屋のクロワッサンを食べる事になった。藤木はそのクロワッサンが非常に美味しく感じた。
「うわあ、美味しい!!」
(リリィが美味しさで声を挙げた。
(リリィと一緒にクロワッサン食べるなんて本当に僕はついてるよな・・・。いつもは運が悪い僕でも今日の運はとてもいいよな・・・!)
 藤木は今回は幸運に恵まれていると思っていた。その時、後ろから・・・。
「Hey、そこにいるのはリリィクンに藤木クンじゃないか」
 皆が振り向くと、そこには花輪がいた。ヒデじいに花輪の両親もいる。
「は、花輪クン・・・?」
「花輪クンも来てたの!?」
「ああ、そうさ、僕のpapaとmamaが日本に帰ってきたから記念に旅行しに来たのさ。」
「Hi!Lily,Shigeru!!」
「マーク!」
 アメリカに住む花輪の友人・マークもその場にいた。
(はあ~、せっかくリリィと二人で入れると思ったのに、花輪クンに会ってしまうだなんて・・・)
 藤木はやはり自分は運が悪いと思った。その時、花輪やマークらのそばに一人の美しい少女がいた。
「和彦、どなた?お友達?」
「ああ、僕のclassmateさ」
(ん?あの子は・・・?)
 藤木はその少女を見てどこかで会ったような気がした。リリィはその少女が花輪を「和彦」と名前で呼んでいることに驚いた。
「は、花輪クン・・・、そ、その子はまさか花輪の彼女(ガールフレンド)・・・!?」
 リリィが震えながら聞いた。花輪の恋人か彼女だと思ったのかもしれない。
「え?ああ。ルリ子の事かい?」
 藤木ははっと思い出した。以前花輪からどうすればモテる男になれるかその秘訣を教えてもらおうとして花輪家に行った時、そのルリ子という少女に会った事がある。そしてその子は・・・。
「ルリ子は僕の同い年の従姉妹(いとこ)さ。アメリカに住んでいるんだけど、たまたま日本に来ているんだ。だから彼女もついでに旅行に連れて行こうと思ったのさ」
「ルリ子と、申します。よろしく、お願いします」
 ルリ子が丁寧に挨拶した。リリィはルリ子が従姉妹と知ってやや安堵した。もし恋人だったらリリィは花輪を諦めてしまったかもしれない。
「君達も旅行かい?」
「うん、僕はリリィに誘われて連れてきてもらっただけだけどね・・・」
 藤木は気落ちしながら言った。
「でもまあ、楽しんでいるんじゃないのかい?その一時は貴重だからね。じゃあ、僕達もここのcroissantを頂こうじゃないか。Papa、Mama、いいかい?」
「ええ、いいわよ、カズちゃん」
 花輪達はクロワッサンを買いに行った。
「花輪クンにあんな綺麗な従姉妹がいたのね」
「うん、そうだね」
 藤木は暗い表情で言った。藤木はリリィはやはり、花輪の方に気持ちを向けていると思い、自分が切なく思った。
「藤木君、どうしたの?」
 リリィが気にかけた。
「いや、なんでもないさ」
 藤木は悟られないよう誤魔化した。

 その後、駅の上の階にある軽食コーナーで麺類を食べた後、下山する事になった。そこには花輪達も乗り合わせる事になった。
「What a very nice view!」
 マークはロープウェイから見える飛弾山脈に感激していた。
「Papaにmamaと一緒に行けて本当に嬉しいよ」
「ハハハ、外国もいいが、日本の旅行もいいものだな。今度はまた別の所に行こうか」
 花輪家の会話は盛り上がっていた。リリィもその輪の中に入っているが藤木は少し離れてリリィはやはり花輪とお似合いだと感じていながら見ていた。
「茂、お前の友達だろ?一緒にいなくていいのか?」
 藤木の父が息子が一人になっているようで気にかけた。
「いや、いいよ、僕は・・・」
 その時、リリィが藤木の方へ来た。
「藤木君もこっちへ来てよ」
「え?うん・・・」
 藤木はリリィに引っ張られて花輪達の話の輪に入った。
「この人が友達の藤木君よ。氷滑(スケート)が得意なのよね」
 リリィがルリ子に藤木を紹介した。
「うん、ど、どうも・・・」
 藤木はルリ子に挨拶した。
「こんにちは。スケート、好きなの?」
「うん、それしか取り柄がないけどね」
「それなら、明日、スケートに行かない?和彦達とも、行く予定なの」
「う、うん・・・。でも、こっちも予定あるし、僕達の用事が・・・」
「別にいいわよ。午後は空いているから行ってらっしゃい」
 リリィの母が現れて言った。
「え、ありがとう、ママ!」
「ありがとうございます」
 藤木とリリィはリリィの母に礼を言った。
「ところで君達はどこの旅館に泊まっているんだい?」
 藤木は花輪たちに聞いた。
「高山の旅館さ。あとでヒデじいがmicro busを出してくれるのさ」
 花輪が答えた。
「そうか、じゃあ、近くだね」
 こうして一行はロープウェイを降りた後、それぞれが泊まる旅館へと戻るのだった。 
 

 
後書き
次回:「氷滑(スケート)
 高山の街を歩き回った藤木達は午後に、花輪達と共にスケート場に向かう。そこで藤木は自分の唯一の取り柄を皆に見せようとする・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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