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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第10話

~リーヴス~



「よっ、お疲れさん。」

リィン達が駅前に到着すると既に駅前にいたレクター少佐がリィン達に声をかけて近づいてきた。

「やっほーレクター!おまたせー。」

「お疲れ様です、少佐。」

「そっちこそお守ゴクロー。」

「フン………」

リィン達の様子を見ていたアッシュは鼻を鳴らした後その場から去り

(………?)

「お久しぶりですね、かかし(スケアクロウ)。」

アッシュに気づいたリィンが不思議そうな表情をしている中、アルティナはレクター少佐に挨拶をした。

「なんだ、黒兎。お前さんも一緒だったか。――――そう言えばお前さんは”七日戦役”の件がなかったら、元々情報局(ウチ)に来る予定だったそうだが………どうだ、シュバルツァーの実家は?ユミル襲撃の件や”ルシア夫人誘拐未遂”の件で、さぞいじめられて、情報局(ウチ)に来たくなったんじゃねぇのか~?」

「少佐………父さん達はそんな器の小さい人達ではありませんよ。」

「リィン教官の言う通りですね。テオ様達も1年半前の件をリィン教官やエリゼ様同様、わたしの事をすぐに許した上とても大切にして頂いています。少なくても”七日戦役”と内戦の件で激務になっていると思われる”情報局”に所属するよりは、よほど良い労働環境かと。」

からかいの意味も込めたレクター少佐の問いかけに対してリィンは呆れた表情で反論し、リィンの意見に頷いたアルティナは静かな表情で答えた後ジト目になってレクター少佐を見つめた。



「やれやれ、それを言われると反論できねぇな………それにしても皇女殿下の件といい、シュバルツァー男爵夫妻はつくづく懐が深い貴族だな……まあ、黒兎の場合は息子の新たなハーレムの一員と見ているから、大切にしているかもしれないな♪」

「少佐は俺を何だと思っているんですか……?」

アルティナの指摘に対して苦笑したレクター少佐はからかいの表情で答え、レクター少佐の答えを聞いたリィンは疲れた表情で反論したが

「……まあ、わたし自身もリィン教官の側室もしくは愛人としてリィン教官に引き取られた可能性は未だ否定し切れていないので、その推測については否定しません。」

「あはは、もし本当にそうなったらアルティナがボクの妹だから、リィンはボクの義理の弟になるね~♪あれ?でも年齢はボクの方が下だから、兄になるのかな??」

「ちょっ、アルティナ!?そんな目的で君を引き取っていないと何度も言っただろう!?それとミリアムも、これ以上この場がややこしくなるような事を言わないでくれ!」

ジト目で答えたアルティナの答えを聞くと驚き、更にミリアムの推測を聞くと疲れた表情で指摘した。



「クックックッ………それじゃあそろそろ列車も出る頃だし、名残惜しいが俺達はそろそろ退散させてもらうぜ。」

リィン達の様子を面白そうに見ていたレクター少佐は気を取り直して自分とミリアムがリーヴスから去る事を伝えた。

「えー、もう?うーん、仕方ないか。もうちょっと遊びたかったけど。―――それじゃあまたねっ、二人とも!アーちゃん、ボクの代わりにしっかりリィンを見といてよね!リィンもアーちゃんの事ヨロシク!」

「何故貴女の代わりをしなければならないのかが理解不能ですが、リィン教官をサポートするのがわたしの任務ですから貴女に言われずとも教官はわたしが見ています。」

「はは………色々大変かもしれないがミリアムも頑張ってくれ。」

「ニシシッ、了解!」

「そんじゃーな。」

そしてリィンとアルティナはレクター少佐とミリアムが駅に入り、二人が乗った列車が去っていく様子を見守っていた。



「……行ってしまったか。ハハ、なんだか一気に静かになったな。」

「………………」

「アルティナ?」

自分の言葉に何も返さず黙り込んでいるアルティナが気になったリィンは不思議そうな表情でアルティナに視線を向けた。

「………わたしと彼女は、本当に”同じ”なのでしょうか?形式番号はわたしが最新……少なくとも基本的なスペックで劣る事はないと自負しています。ですが、どうしてあんな………………」

「アルティナ………ははミリアムはミリアム。アルティナはアルティナだ。君にも、いつかきっと見つかる。アルティナが、アルティナらしくあれる道が。」

(ま、”また”ですか、リィン様……)

(”そういう事”を今でも無意識でしているから、まだ増える可能性がある事をエリゼや私達は考えているものね………現にエリゼ達もアルティナもいずれ”自分達のようになる”と思っているもの。)

自分とミリアムを比べて複雑そうな表情で考え込んでいるアルティナの様子に若干驚いたリィンはアルティナの頭を優しく叩いた後優し気な微笑みを浮かべて答え、その様子を見守っていたメサイアは疲れた表情をし、アイドスは苦笑していた。

「わたし、らしく……?………難題続きです………本当に………」

一方リィンの言葉に対して呆けたアルティナは少しの間考え込んだ後疲れた表情で答えた。



~宿舎・リィンの自室~



その日の夜、リィンは宿舎の自室でいつものように今後の授業や演習に備えての準備をしていた。

「……ふう、こんな所か。明日の機甲兵教練と特別演習の為の準備………根を詰めても逆効果だし、このあたりにしておくか。」

準備を一区切りしたリィンはふと今日一日にあった出来事を思い返した。

「……ふう、なんて一日だ。支援課にいた頃より濃いっていうか。しかし、まさかロジーヌやムンクもこの街に来ていたなんてな。そういえば――――」

リィンはふと、今日再会する事ができたトールズ士官学院の卒業生の一人にしてラジオ局に務め、1年半前の内戦にも”カレイジャス”に乗り込みリィン達に協力した元トールズ士官学院の学生であるムンクのある言葉を思い出してラジオに近づいた。

「………ムンクが言ってたな。ビックリする番組が始まるって。そろそろ時間みたいだし、せっかくだから聞いてみるか。」

リィンがラジオの電源を付けると何かの音楽が流れ始めた。

「おっと……ちょうど始まるところかな?」

そしてラジオから離れたリィンがベッドに座ると番組が始まった。



「リスナーの皆さん、こんばんは。トリスタ放送が、4月16日、午後9時をお伝えします。1年半ぶりでしょうか?トーク番組”アーベントタイム(夕べの瞬間)”、本日から再開させて頂きます。」

「―――――!!?」

ラジオの番組の名を知ったリィンは信じられない表情をした。

「初めての方もいるでしょうから改めて自己紹介しちゃいますね。本番組の進行を務めさせていただく”ミスティ”といいます。1年半前、様々な事情があってきちんとしたご挨拶もなく、終了してしまった本番組………皆さんの熱いご要望もあってこうして再開できたこと本当に嬉しく、感謝しています。学生だったリスナーの皆さんは卒業して社会人になったのかな?新入生やそうでない皆さんも改めてお付き合い頂ければ幸いです。」

リィンは番組の進行を務める人物―――”ミスティ”や、”ミスティ”が以前務めていた番組の名からミスティの正体が”身喰らう蛇”の”蛇の使徒”の第二柱――――”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダである情報を思い出し、驚きの表情でラジオを見つめた。

(な、な、な………何をやってるんだ、この人(蒼の深淵)は………!?)

「―――さて、4月も中旬、ライノの花も真っ盛りですね――――――」

その後ラジオが終わるとリィンは急いでリーヴスにあるラジオ局―――”トリスタ放送”へと向かい、番組の事についてよく知っていると思われるムンクに事情を訊ねた。



~リーヴス・”トリスタ放送”~



「……収録場所がわからないだって!?」

「あはは………流石にボクも驚いたけどね。先月、ミスティさんからマイケルディレクターに連絡があったらしいんだ。それで、リスナーのお便りをミスティさんに送ってくれたら録音したトークを返送する――――そんな形でよければアーベントタイムを再開できるって話になったらしくてさ。かなり異例ではあったけど大勢のファンが待っていたから局も腹を括ったみたいだね。」

「無茶苦茶すぎるだろう………それじゃあ、そのミスティさんがどこにいるかもわからないのか?」

ムンクの説明を聞いたリィンは呆れた後気を取り直してムンクに訊ねた。

「うん、各地を転々としているからそういうやり方しか無理らしくて。でもでも、君も聞いたでしょ!?やっぱり最高だよね、ミスティさんのトークは!」

「あ、ああ………1年半前に一度終わったらしいのに、ブランクを全然感じなかったというか………ユーモアもウィットもあって全然押し付けがましくないからつい聞き惚れるというか……――――じゃなくて。どうして居場所がわからないのにデータのやり取りができるんだ?」

「帝都の総合郵便番号に私書箱を用意してるらしくてね。そこにお便りを送ったら5日後くらいにトークが入ったデータが届くらしいんだ。そう言えば、当局に番組を申請した時、少し難癖をつけられたそうだけど……こうして無事、初回が放送できたってことは何の問題もないってことだよね?」

その後ムンクから事情を聞き終えたリィンが外に出ると聞き覚えのある着信音が聞こえ、音に気づいたリィンはARCUSⅡを取り出した。



~リーヴス~



「この音は――――……タイミングから考えると、バリアハートにいるプリネ皇女殿下達の誰かからか?」

ARCUSⅡを取り出したリィンがARCUSⅡを操作して”Ⅶ組の輪”を起動するとツーヤの顔が映った。

「ツーヤさん……!」

「―――お久しぶりです、リィンさん。恐らくリィンさんもラジオを聞いたか誰かから教えて貰って驚いたと思いますが、先程のラジオ番組―――”アーベントタイム”についての情報をお伝えします。確かリーヴスの”トリスタ放送”には1年半前あたし達にも協力してくれたトールズ士官学院の卒業生の方が務めているとの事ですが……もしかして既にその方から事情を聞きましたか?」

「え、ええ、ある程度は。”アーベントタイム”………どうしてあの番組が―――”蒼の深淵”の手掛かりをツーヤさん達は掴んでいるんですか!?」

ツーヤの問いかけに頷いたリィンは信じられない表情でツーヤに訊ねた。

「………あたしやマスター、それにサフィナ義母さんやレーヴェさんですら、最初にその情報が諜報部隊よりもたらされた事を知った時本当に驚きました。あたし達の介入によって内戦での”結社”の”計画”を滅茶苦茶にされた挙句、”煌魔城”での決戦でもあたし達に敗北し、最後は撤退した”結社”の魔女―――まさか堂々とエレボニアに舞い戻ってラジオのトーク番組をしてるなんて、誰も予想できないと思います。―――それこそ様々な”流れ”を読んで1年半前の内戦をほぼ自分が描いたシナリオ通りに誘導したレンさんですらも。」

「同感です……当然、メンフィル帝国の諜報部隊―――いや、エレボニアの情報局の方でも……?」

「ええ、総合郵便局の私書箱に届けられた便りを監視したそうです。ですが―――取りに来る人物はおらず、いつの間にか私書箱から頼りの束が消えたとのことです。トークを録音した記憶結晶(メディア)も同じで、忽然と配送用の私書箱に現れ、料金はも支払われるというまさに文字通りの意味で、”魔法”を使っているのでしょうね。」

「………なるほど、そんな経緯だったんですか。」

「情報局は番組自体を潰す事も考えたそうですが、再開を待ってたファンも多く、ファンたちの反感を恐れた事もありますが、わざと泳がせて”蒼の深淵”の居場所を掴む為に番組の再開を許可したとの事です。―――以上です。また、何かあれば連絡します。」

「わざわざ連絡して頂き、ありがとうございます。”アーベントタイム”の件はセレーネやレン教官達にも……?」

「ええ、後で個別でそれぞれ連絡しておきます。―――ああ、一つ伝え忘れていました。ひょっとしたら来週の演習地でフォルデさんとステラさんと会えるかもしれません。お二人は来週、セントアークで領主見習いとしての実習で向かう予定があり、時間が空けばリィンさん達に会いに行くような事も言っていましたから。」

「え………それは本当ですか!?」

「はい。確か来週の”特別カリキュラム”の演習地はセントアーク地方と隣接していましたよね?」

「あ………え、ええ、言われてみれば演習地はセントアーク地方とも隣接していました。―――って、何で教官陣の俺達もようやく今日知った演習地の場所を………それもメンフィル帝国の諜報部隊経由ですか?」

ツーヤの問いかけに戸惑いの表情で頷いたリィンだったが、すぐにツーヤが自分達がようやく今日知ることができた情報を知っている事がおかしい事に気づき、苦笑しながらツーヤに自分達より早く知る事ができた理由を確認した。

「ふふっ、それについてはご想像にお任せします。――――夜分遅くに突然申し訳ありませんでした。お休みなさい、リィンさん。」

リィンの問いかけに対して微笑みながら答えたツーヤが通信を切ると、リィンのARCUSⅡからはツーヤの映像が消えた。

「…………エマとも手紙でやり取りをしてるけどそんな話は出て来なかったな……それを考えるとエマやセリーヌが知れば、間違いなく驚くだろうな。(………”蒼の深淵”か。敵だった上、エリゼや母さんを狙ったようだけど最後は特務部隊(俺達)に協力してくれた。”彼”の最期も心から哀しみ、怒っていたようだった……それを考えると彼女は根っからの”悪党”じゃなかったかもしれなかったな。ただ、何の為に”アーベントタイム”を再開したのかわからないが………)―――”アーベントタイム”。しばらく定期的に聞いていくか。」

ARCUSⅡをしまって少しの間考えていたリィンだったが、やがて宿舎へと戻っていった――――


 
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