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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第五十三話 本局での生活

 本局に来て慌ただしく二日目に突入。

 ユーノと違い管理外世界の人間である俺。
 さらに魔導師ならまだしも魔法ではなく魔術技術を持つ人間であるため余計に手続きがあった上に本局での仕事の手続きもややこしかったのだ。

 ちなみに基本的な居住区として本局に一部屋用意してもらっている。

 フェイト達、テスタロッサ一家も本局内に部屋を持っているらしいが、身元引受人がリンディさんなので仕事で本局にいない間はアースラ内で用意された部屋を使う事もあるらしい。

 俺もテスタロッサ家と同じようにリンディさん達が本局を離れる間はアースラで生活する事になるだろう。

 今回もアースラは裁判の合間にあった仕事を片付けて一度本局に戻る途中で俺とユーノを拾ったらしい。

「士郎君、どうかした?」
「いえ、自分のいた世界に比べて科学技術が発展しているのでまだ慣れないだけです」

 で今はリンディさんと共にテスタロッサ家が生活している本局の部屋の隣の部屋に向かっている。
 なんでもテスタロッサ家の隣の部屋が俺の部屋らしい。
 
 なんで今更向かっているかというと手続き関係でほぼ丸一日かかり、昨晩は用意された部屋ではなく手続きを行っている転送ポートがある建物のソファーで寝たのだ。
 というわけで地球を離れて二日目にしてようやくテスタロッサ家と再会するのだ。

 もっともプレシアは仕事で部屋を留守にしているだろうが。

 ちなみにいつもの戦闘用の服ではあまりにも怪しいので私服と来る前に用意した魔力除けのブレスレットをつけている。

「そういえばユーノは?」
「ユーノ君は流浪の旅をするスクライア一族といってもミッドの関係者だから昨日のうちに局が用意した部屋に行ってるわ。
 勿論、フェイトさん達にも会ってるはずよ」
「まあ、この世界での仕事に関する手続きが一番時間がかかるのは当然だとは思いますが、よくアレが通りましたね」
「士郎君は実績があるもの。
 それに丁度いい場所もあったしね」

 まあ、手続きに時間がかかったとはいえちゃんと仕事場を確保してもらっているのだから文句の言いようもない。

 だがこうして本局の中を歩くと至る所から視線を感じる。
 もっとも視線を感じるといっても読唇術で話している内容を確認する限り俺が魔術師という事ではなく、リンディさん程の役職を持っている人間と並んで話している私服を着た少年という事で注目を集めているようだ。

「リンディさん、俺が魔術師という事は他の局員は?」
「大半の局員は知らないんじゃないかしら。
 士郎君に関する資料は一定の役職や地位にないとみれないように閲覧制限がかかってるから。
 管理外世界の中に魔術師、独自の魔法技術が見つかったいう話は知ってるかもしれないけど士郎君自身の個人情報はほとんど知られていないはずよ」

 なるほど。
 俺の情報は一部しか知らないのか。
 その方が動きやすくていいが。

「この建物よ。後これが士郎君の部屋のカードキーね」
「ありがとうございます」

 リンディさんと話ながら歩いていると自分が滞在するマンションに辿りつく。

「フェイトさん達には」
「荷物を置いたら会いに行きますよ。
 鞄の荷物を片づけるのは夜にでも出来ますから」
「そうね」

 エレベーターをあがり自分の部屋をカードキーで開ける。

 一時的な滞在の割に部屋が広い。
 リビングにキッチン、そして寝室。
 部屋数と間取りから考えて一人暮らしではなく二、三人暮らしぐらいの広さだ。
 まあ、フェイト達が住んでいるマンションの同じ階なのだが当然といえば当然か。

 その他にも家電なども一通りそろっている。

「一応、一通りは揃えてるけど他にも必要なのがあったら言ってね」
「はい。ありがとうございます」

 それにしても改めて部屋を見回して思うのが

 海鳴の世界とは全く違うのだという事。
 科学技術は当然としてだが魔導に関するものでしか見た事がない字が並ぶ。

 正直使い方がわかるのかが不安だ。
 まあ、英語などに似ているところが若干ながらあるので如何にかなる……かな?

「どうかした?」
「いえ、ちゃんと使えるかと思いまして」

 俺の言葉にリンディさんが首を傾げるが、すぐに納得したように

「もしわからなかったらいつでも連絡して。
 それに隣にフェイトさん達もいるし、逆隣りはユーノ君だから」
「それは助かります」

 ユーノが逆隣りとなると、今回の裁判の関係者がここに集まっているのか。

 まあ、ちゃんと使いこなせるかどうかは実際に使う時に考えるとして

「じゃあ、フェイトの家に」
「ええ、行きましょう」

 荷物を寝室に置きフェイト達の部屋に向かう。
 といっても隣の部屋なので本当に一分もかからないのだが。

 隣の部屋のインターホンを鳴らす。

「はい」

 帰ってきた返事はビデオメールで聞いた懐かしい声。

「フェイトさん、リンディです」
「リンディ提督。今開けますから」

 フェイトの返事から十秒としないうちにロックが外れる音がする。
 そして開く部屋のドア

「お待……え?」
「久しぶりだな、フェイト」

 リンディさんと思って開けたドアの先に俺がいて固まるフェイト。

「し……ろう? 士郎!!」

 俺の名前を確かめるにように口にして次の瞬間には弾かれたように抱きついて来た。

「ちょっ、フェイト!?」
「士郎、士郎、士郎」

 俺の名を呼び胸元に顔を擦りつけてくるフェイト。
 傍から見ればかわいらしい光景なのだろうが、されている俺からいえばまずい。

 リンディさんの

「少しインパクトがあった方が感動的よ」

 との言葉を鵜呑みにしてインターホンでは俺の存在を悟られないようにしたのは確かにインパクトはあったかもしれないが失敗だったかもしれない。
 正しくはインパクトがあり過ぎたというべきか?
 どちらにしろ抱きつかれるのは予想外だ。

「フェイト、そろそろ離してくれると助かるんだが」
「う~、わかった。
 でも士郎も悪いよ。
 ビデオメールほとんど映ってないんだもの」
「うぐっ」

 フェイトの言葉に返す言葉もない。

 フェイトとなのはとのビデオメール。
 なのはと一緒に写ったのが二、三度だけで後は俺は撮る方ばかりしていた。

 なにせ送り相手がジュエルシードの事件の中心人物であるテスタロッサ家。
 フェイト達が見る前に管理局の手によって中身を確認される可能性が高い。
 その危惧もありビデオメールの出演は可能な限り断っていたのだ。

 それはともかくこれだけ騒いでいれば奥から何事かと覗く人物が二名
 一名は

「士郎! 久しぶりだね」

 フェイトの使い魔のアルフ。
 そして、もう一人は

「手続きに丸一日かかったんだね」

 一日はやく手続きを済ませたユーノであった。

「まあ、こちらの世界でのバイトの件とかあったからな」
「なにさ、士郎こっちでもなんかすんの?」
「生活がかかってるからな。裁判の間収入がなくなるのは避けたい」

 正しくは生活するだけなら問題はないのだが宝石の補充等で出費がかさむのであると助かるという話なのだが。

「プレシアは?」
「研究室でお仕事。
 でも今日は定時で上がれるって」

 それなら買い物に行くついでにここら辺の店を案内してもらって食材も揃えるか。

「なら今晩は俺が腕を振るうとしよう。
 リンディさんもどうですか?」
「そうね。
 あ、ならレティ、士郎君の魔術の事を話してる私の友人も呼んでもいいかしら?」
「構いませんよ。
 俺も一度挨拶しておきたいですし、クロノ達も来れるのでしたら」
「ええ、連絡しておくわ」
「ならフェイト、来て早速で悪いがここら辺の店の案内頼めるか?」
「うん。ちょっと待ってて着替えてくるから」
「じゃあ、僕もちょっと着替えてくるから」
「ああ、準備が出来たら俺の部屋に」
「あいよ」

 ユーノやアルフと一旦別れ、部屋に戻る。
 お茶でも準備したいところなのだが海鳴より持参した茶葉が荷物の中だ。
 食器類もある程度揃えてもらっているのでこちらは買う必要はなさそうだ。

 フェイト達を待っている間に冷蔵庫の中を確認するが、中にはミネラルウォーターが入っているのみで食材は買う必要がある。
 調味料の類もないので必要と。

 なかなか大量の買い物になりそうだな。

「士郎君、買い物の前に下見しておくでしょう?」
「そうですね。買い物が結構多くなりそうなので最初に下見しておきたいですね」
「じゃあ、案内するわね」
 
 フェイトに案内してもらう前に行く場所が一つ出来たが、それほど時間もかからないだろう。

 そして着替えてきたフェイト達と共に家をでてマンションの入り口まで戻ってきた。

「じゃあ、どんなお店から行こうか?」
「フェイト、悪いんだが一か所だけ先に行きたいところがあるんだが、いいか?」
「え? うん、大丈夫」
「ならリンディさん」
「ええ、案内するわね」

 リンディさんを先頭に歩き始める俺達。
 俺の言葉に頷いたフェイトだったが不思議そうな顔をしている。
 フェイトと同じように不思議そうな顔をして首を傾げてながらついて来るアルフとユーノ。

 無理もないだろうな。
 初めてやってきた俺が時空管理局本局でいきなり行きたいところがあると言う事自体がおかしい。

 そして五分ぐらい歩いて目的の場所に到着した。
 
「……これって」

 茫然と店を見上げるフェイト達。
 店の看板には『翠屋~本局出張店~』と日本語とその下にミッドの言葉で書かれている。

「……翠屋?」

 ちなみに翠屋にてなのはの家族を紹介するためのビデオ撮影もあったのでフェイトとアルフもこの店の存在は知っている。

「もしかして士郎の仕事先って」
「そ、翠屋の出張所の店主だな」

 フェイトの言葉に頷く俺に呆れた表情を浮かべるユーノとアルフ。

 当たり前だが桃子さんと士郎さんには許可をとっている。

 海鳴の翠屋のバイトでも厨房でのケーキ作りやコーヒー、紅茶を淹れたりはしていた事もあり、期間限定の出張所としてリンディさんが話をつけてくれたのだ。
 それにしてもよく裁判の期間中、しかもリンディさん達が本局にいない間は閉店する様な特殊な環境で開店の許可が取れたモノだ。
 余談だがアースラ内でも『翠屋~アースラ出張店~』という食堂の中にスペースが用意されている。

「でもさ、これって従業員は?」
「今のところ俺だけ。
 魔術師という立場もあるから下手に雇ったりするのも難しいし」
「えっと……なら私も手伝っていいかな」

 どこか期待した目でそんな申し出をしてくれたフェイト。

「勿論だ。
 それどころかこちらからお願いしたいぐらいだ」
「フェイトが手伝うなら私もやろうかな」
「本当に助かるよ、フェイト、アルフ」

 二人に感謝しつつ、こちらに来る二、三日前に桃子さんから
「フェイトちゃん達がもしお店を手伝うって言ったらこれを渡してあげて、それまでは絶対開けちゃだめよ」
 という言葉と共に渡された物の事を思い出していた。
 中身は知らないがあとで渡すとしよう。

「ユーノはどうするんだい?」
「え? ぼ、僕?」

 アルフの言葉に眼を丸くするユーノ。

「う~ん、手伝いたいけど裁判の合間に一度スクライアの皆に顔を出すって言ってるから、しばらくいないと思う」

 ユーノは一旦戻るのか。
 まあ、そんなにお客が来るとも限らないから三人で何とかまわせるかな。


 後にこの考えがどれだけあまい考えだったというのを実感するのだが


 その後、フェイト達と周辺の店を案内してもらいながら必要な日用品や今晩の食料を仕入れる。
 それにしても意外なのが、地球にあるのと同じ食材や調味料が多いという事。

 リンディさん曰く
「祖先に第97管理外世界の出身者の者もおり、意外と地球の文化が入ってきているのよ」
 とのこと。
 その祖先がなのはのように魔導師としての資質があったのか、それとも偶然来たのか、または魔術師だったのかは知らないが意外と昔から第97管理外世界と繋がりはあるようだ。

 そして、日も暮れる前から俺の部屋にて夕食の調理に取り掛かる。
 もっとも調理に取り掛かる前に家電品に書かれているミッドの文字をフェイトに訳してもらったり、食器が足りないのでフェイトとユーノの部屋から持ってきてもらったりと前準備にも時間がとられたが

 さて本日のディナーのメンバーは俺とユーノ、フェイト、アルフ、プレシア、リンディさん、クロノ、エイミィさん、そして初対面となるリンディさんの友人であるレティさんの九名。

 メニューは生ハムのサラダ、ホタテのソテーレモンソースかけ、エビの香草焼き、ローストチキン、パスタは二種類ホウレン草の和風とカルボナーラ、一口サイズのガーリックフランス。
 人数が人数だけに量が多いので大皿に載せて、各自好きにとってもらうとしよう。
 
 そして、女性が多いので食後のデザートも忘れずに
 デザートはプチシュークリームとベイクドチーズケーキ、アップルパイ。
 小さめだが種類と量は多めにする。

 調理を開始してしばらくして

「お邪魔しま~す」
「お邪魔するよ」

 エイミィさんとクロノが一足先に到着。

「うわ~、すごいね」
「士郎、これだけの量作るのか?」
「ああ、この量なら何とかなる」
「「「「「何とかなるんだ」」」」」

 俺の言葉に呆れたようにつぶやく面々。
 俺からすれば元いた世界で一緒に生活していた人数が人数なのでこれぐらいどうという事はない。

「とりあえず私も手伝うよ」
「助かります。ならそっちのパスタのソースを」
「了解」

 エイミィさんがいれば負担は減る。
 リンディさんはプレシアとレティさんを迎えに行っているから合流して家に近づいたら連絡をしてくれる手筈になっている。
 電話がなればパスタを茹で到着する頃に料理が完成するという計画だ。

 ほとんどの料理が最後の仕上げに入った時に

「士郎、母さん達もうすぐつくって」

 リンディさんからの電話があった事をフェイトが教えてくれる。
 いいタイミングだ。

「ありがとう、フェイト。
 エイミィさん、飲み物を」
「了解」

 エイミィさんがグラスと飲み物を準備すると同時にパスタをゆで始める。
 そして

「ただいま」
「「お邪魔します」」

 パスタをさらに盛っているときにプレシア達が帰ってきた。

「母さん、おかえりなさい」
「ただいま。フェイト、アルフ」

 プレシア達を出迎えるフェイト。
 俺もエプロンを外して

「エイミィさん、あとは」
「はいはい。クロノ君、ちょっと手を貸して」
「ああ、わかった」

 あとは並べたりするだけなのでエイミィさんとクロノに任せて出迎える。

「久しぶりだな、プレシア」
「久しぶりね、衛宮士郎君」
「士郎で構わないよ」
「なら、そうさせてもらうわ」

 プレシアと半年ぶりの出会いに挨拶をかわし、リンディさんの背後にいる女性に視線を向ける。

「紹介するわね。私の友人で時空管理局提督」
「レティ・ロウランです。
 噂はかねがね」
「レティは士郎君が魔術師という事も件の槍も知ってるわ」
「お初にお目にかかります。
 海鳴の管理者を務めてます、魔術師・衛宮士郎です」

 リンディさんの紹介にレティ提督と握手を交わす。

 件の槍、ゲイ・ボルクも知っているという事は、リンディさんが
 「魔術師、俺の情報公開前に信用できる人に確認してもらった」と言っていたが、その確認を行った人だろう。

「いろいろ話はあるでしょうが、まずは夕食を。
 準備してますので」

 リンディさん達と共にリビングに戻る。

「わあ、すごいわね。
 これって士郎君が?」
「エイミィさんにも手伝っていただきましたが」
「私は士郎君のサポートを少ししただけですよ」

 そんな事を話しつつ全員が席につき

「では、いただきます」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」

 リンディさんの言葉と共に夕食が始まりそれぞれが思い思いに料理をとり和やかな夕食が始まった。
 自分でも料理を取り納得する出来に頷く。

「おいしい」
「ほんと、フェイトさんには聞いていたけど」
「うまうま」
「アルフ、お肉ばかり一人占めしたらだめだよ」

 などなど好評のようでなによりだ。


 そして見事料理は全てここにいる全員のお腹に収まっていた。

「少し食べ過ぎたかもね」
「あはは、でもおいしかった~」

 プレシアの言葉に空笑いをするエイミィさん。

「デザートも用意してますがどうします?」
「ぜひいただくわ」

 即答するリンディさんとリンディさんの言葉に頷く女性陣
 ユーノとクロノは頷かなかったがまあいいか。

 大皿に並べられたデザートをテーブルに置き、取り皿とフォークを配り、それぞれに紅茶またはコーヒーを注ぐ。

 それぞれがお茶を楽しんだり、デザートを楽しんだりして一段落した時

「さて、改めて自己紹介と少しだけ真面目な話をしましょうか」

 リンディさんの言葉に少しだけ空気が引き締まった。 
 

 
後書き
さて今週も無事更新。

しばし管理局でののんびりとした話となります。

今回の週末は先週手に入れたなのはのMove2edを見たりと充実したものでした。

来週は遂にメイド第二弾
フェイトメイド登場予定です。

にじファン時代でも反響が大きかった一枚です。

それではまた来週にお会いしましょう。

ではでは 
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