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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  217 〝アンブリッジ先生〟の初講義


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

〝嫌な時間〟と云うのは、えてしてあっという間に訪れるの様で──今年度、初めての〝闇の魔術に対する防衛術〟の授業が目前に差し迫っていた。

「………」「………」「………」「………」

今日最後の授業だと云うのに、俺、アニー、ハーマイオニー、ネビルの口は重い。この雰囲気で二年の時──三年前を思い出したのは俺だけではないはず。

奇しくもロックハートの受け持っていた学科である〝闇の魔術に対する防衛術〟の教室へと向かっている道程で、俺達はおそらくだが同じ事を考えていた。

……〝ロックハートの二の舞にならなければそれでいいや〟──と。

教師でない以上ファーストネームで呼ばれる事を許された──リーマスや、≪死喰い人(デス・イーター)≫だったが──マッド‐アイ以上は望まない。……アニー、ハーマイオニー、ネビルの心情を詳しくは()いていないが、俺と同じ様な足取りなのできっと同じ心情なのだろう。

足を止める一同。

いつの間にやら〝闇の魔術に対する防衛術〟の教室の前に辿り着いていたらしく、教室に入ると〝アンブリッジ先生〟が既に教壇に座っているのが否が応でも目に入った。頭のてっぺんで黒いリボンを結んでいるその様は、(さなが)ら自分の頭に好物(ハエ)が乗っているのに、それに気付いてない滑稽なガマガエルである。

……そう思えばいくらか溜飲も下がり、全員が席に座った頃…。

「こんにちわ!」

無駄に威勢の良い挨拶である。しかしその挨拶に返したのは、俺の記憶が正しいのなら──親族が魔法省に勤めている何人かだけだったのだが、アンブリッジはどうやらそれがお気に召さなかったらしく、全員に挨拶を改めさせるとハンドバッグからかなり短い杖を取り出した。

([基本に返れ]──ねぇ…)

アンブリッジは取り出した杖で大仰に黒板を叩くと、黒板に[闇の魔術に対する防衛術][基本に返れ]と浮かび上がった。俺はその一連の出来事を白けた気分で見ているだけだったが、そんな俺を〝知らぬ存ぜぬ〟とばかりに、〝アンブリッジ先生〟は講義を始めた。

「さて、皆さんのこれまでのこの──〝闇の魔術に対する防衛術〟と云う学科の授業内容は、かなりの〝バラつき〟がありましたね。それもそのはず、教師がしょっちゅう変わっていて──更に、その先生方のほとんどが魔法省が推奨している指導要領に従ってこなかったせいで、魔法省が期待している〝ふくろう〟の年齢としてのレベルを大きく下回っています」

(……確かに〝バラつき〟はなぁ…)

ロックハートとかロックハートとかロックハートとかが教鞭を執っていたことがあるので、そこらは一応納得出来る話だ。……寧ろ〝魔法省が推奨している指導要領〟とやらに一番沿っていたのはクィレルである可能性すらある。

「しかし、ご安心をそういった不幸はこれから正されます。今年度は理論の学習を中心に構築されたカリキュラムによって〝闇の魔術に対する防衛術〟を学べるのですから」

と、〝アンブリッジ先生〟はそう言葉を続けながら黒板を叩き、「これを書き写してください」と皆に板書を促す。黒板に在った[闇の魔術に対する防衛術][基本に返れ]の文章が消え、新たな文章が浮かび上がった。

――――――――――――――


※授業の目的


1.防衛術の基礎となる原理を理解すること

2.防衛術が合法的に行使される状況認識を学習すること

3.防衛術の行使を、実践的な枠組みに当てはめること


――――――――――――――

数分して、皆が板書を終えたのを確認したのか〝アンブリッジ先生〟から次の指示が入る。いつもの、まるで5歳児に話し掛ける様な──馬鹿にしているとしか思えない口調でだ。

その指示自体は簡潔で、要はウィルバート・スリンクハード氏の【防衛術の理論】の5ページ、【第一章:初心者の基礎】を読めと云う話だったのだが…。

(目が滑る…っ)

〝アンブリッジ先生〟から指定されたページを開いて2分くらいしてからの所感がそれ。

視線を止めたくなる様な記述が全く無く、視線が紙上を右往左往するのが自分でも判る。しかも似たような語句(ワード)が何行かに一度のペース出てくるので軽くゲシュタルト崩壊すら起こしかける始末である。

……つまり、何が言いたいかと云うと、ウィルバート・スリンクハード氏には悪いが──ぜんっぜんっ面白くなかったのだ。それはもう絶望的に。

別にホグワーツに眼球の運動会に来たわけでもないので、ハーマイオニーが〝アンブリッジ先生〟に物申す前に俺の口から提言しようとしたが、どうやら一歩遅れてしまった様で──ハーマイオニーが挙手したのが判った。

最初はハーマイオニーの挙手を無視していた〝アンブリッジ先生〟だが、(やが)てハーマイオニーの頑固さに白旗を上げたのかハーマイオニーに応対する。

「何でしょうか、ミス──どなたでしたっけ?」

「グレンジャーです。〝アンブリッジ先生〟」

「ではミス・グレンジャーは一体どうしたのですか、この章で判らないところはありますか?」

「ええ、判らない事があります。……この本には防衛呪文を使う事に関しての記述が在りません」

そこまでハーマイオニーが語るとアンブリッジは〝私の授業では杖を使わない〟とでも反論しようとしたのだろうが、口を開きかける──その前にハーマイオニーは矢継ぎ早に続けた。

「これでは先ほど書き写した〝アンブリッジ先生〟の授業方針の三つ目の項の[3.防衛術の行使を、実践的な枠組みに当てはめること]と矛盾するのではないのでしょうか?」

(矛盾はしていないんだよなぁ…)

「矛盾はしませんよ、ミス・グレンジャー」

「〝どうして〟とお伺いしてもよろしいですか?」

俺は〝枠組(ケース)〟に当て嵌めることと〝実践(トライ)〟するとでは意味合いが違う事に気付いている。そしてアンブリッジも、「ええ、よろしいですよ」と云う切り出しからそれを引き合いに出してきた。

「〝枠組み〟に当て嵌めることと〝実践〟するとでは若干ニュアンスが違うと云うことなのです──判りましたか、ミス・グレンジャー?」

「でも、知識だけでは意味がありません。……もし(なにがし)かに襲われた時に…」

「まぁ、ミス・グレンジャーは平穏極まりないこの世界で、一体何に怯えていると云うのです?」

「……っ、それは…」

さすがに見かねたので、出遅れ感はあるが──ハーマイオニーを助勢することに。

「何でしょうか? えっと──どなた?」

「ウィーズリーです。〝備えあれば憂い無し〟と云うように、〝実戦(ゆうじ)〟に備えて防衛術を身に付けておく事に越した事はないでしょう。……それに、〝怯えるべき相手〟と云うのも、今日日(きょうび)の魔法界には存在していると思いますが…」

「ミスター・ウィーズリーの云う、その〝怯えるべき相手〟を詳しく()いても?」

「……例えば、≪死喰い人(デス・イーター)≫ですね。……よもや去年のクィディッチ・ワードカップの≪死喰い人(デス・イーター)≫による強襲テロをお忘れではないでしょう?」

ここで〝お辞儀さん〟の名前を出さないのがミソ。……注意を促すけならわざわざ爆弾──〝お辞儀さん〟の名前を投下しなくても≪死喰い人(デス・イーター)≫と云うワードでも充分だと思っての事である。

……しかしそれはある意味の成功であり──あるに()いての失敗だった。≪死喰い人(デス・イーター)≫と云う語句でも教室をざわつかせるのは充分だったらしい。

「授業中ですよ、静粛に! ……それにミスター・ウィーズリー、〝あの事件〟は≪死喰い人(デス・イーター)≫の仕業と断定された訳ではありません」

「〝闇の印〟が上がったと云うのに?」

「あれが〝闇の印〟だという事も断定されていません!」

(うわぁ…)

〝アンブリッジ先生〟の苦し紛れとしか云い様が無い言い訳に、思わず内心で嘆息。もはやここまで来れば逆に──もちろん、悪い意味で感心してしまう。……そして、よく見れば他のグリフィンドール生たちも〝アンブリッジ先生〟のことをどこか白けた目で見ているのが判る。

……シェーマス・フィネガンなんかも、【日刊予言者新聞】を使って魔法省が実施しているネガティブキャンペーンで槍玉に挙げられているのはダンブルドア校長くらいなものだから、こと〝闇の魔術に対する防衛術〟においてはどちらかと云うと〝こちら側〟の様だ。

閑話休題。

そんなこんなで時間が過ぎ──多数のグリフィンドール生に〝つかえ〟を残しながら、今年度初めての〝闇の魔術に対する防衛術〟が終わった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「飲むといい」

「ありがとうございます」

「どうも」

〝アンブリッジ先生〟を教師と仰いでの、初めての〝闇の魔術に対する防衛術〟から数日。俺とアニーは校長室へと足を運んでいた。

俺とアニー末席曲がりなりにも≪不死鳥の騎士団≫に在籍しているので、四方山(よもやま)話をしに来たわけではもちろん無く、今日校長室を訪れた理由はある種の定例報告だった。

ダンブルドア校長に淹れてもらった紅茶を一つ、二つと口にしていると、ダンブルドア校長が口を開いた。

「して、〝闇の魔術に対する防衛術〟はどうじゃったかの?」

「案山子を置いているのと変わらない授業でした」

「教科書を読むだけで〝ふくろう〟をパス出来るなら文句はありませんがね」

まずダンブルドア校長の問いに返したのはアニーだがその言葉はかなり辛辣で──次いで俺だが、俺もどこか語調が強くなってしまう。

しかしそれだけなら四方山話なので…。

「〝アンブリッジ先生〟の授業に(かこ)つけて、〝大方の〟グリフィンドール生の意見統制は完了しています。……アニー、〝あれ〟を」

「うん、判った。……校長先生、〝これ〟を」

「どれどれ──ほう…?」

アニーに頼み、ダンブルドア校長に一枚の羊皮紙を渡してもらう。フレッドとジョージ、ディーンやシェーマスなどの男子と、アンジェリーナにラベンダーやパーバティなどの女子の署名がある羊皮紙だ。

……もちろん、俺、アニー、ハーマイオニーなどの──〝言い出しっぺ〟の署名もあり、他にもセドリックを始めとして、パドマ、チョウなどの他寮の生徒の署名も散見される。

「見ての通り、他の寮生にも声を掛けてあります」

「よくぞたった数日間で集めたものじゃな…。……よし、このクラブの設立を認定しよう」

「ありがとうございます」

これが後に≪不死鳥の騎士団≫の後継ともまことしやかに囁かれる自衛団──≪プロメテウス≫の設立の経緯だった。

SIDE END 
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