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とある3年4組の卑怯者

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78 後宴(うちあげ)

 
前書き
 球技大会総合結果
男子サッカー
1位:4組 4勝0敗
2位:1組 3勝1敗
3位:3組 2勝2敗
4位:5組 1勝3敗
5位:2組 0勝4敗
女子バレー
1位:1組 4勝0敗
2位:4組 3勝1敗
同率3位:2組 1勝3敗
同率3位:3組 1勝3敗
同率3位:5組 1勝3敗
 

 
 藤木は花輪家へと向かっていた。球技大会への打ち上げの為である。この打ち上げは、クラスのみならず、3年生の皆を労わるために花輪が催す事を提案したもので、他のクラスの児童も参加する事が予想されていた。途中で藤木は長山と遭遇した。
「やあ、藤木君」
「長山君・・・」
「今日は楽しみだね。藤木君はよく頑張ったからきっと皆から祝って貰えるよ」
「ははは、そうかなあ・・・?」
 藤木はやや照れた。そして長山は本当に立派でいいなと感じていた。昨日もしかしたら仮病で休んだかもしれなかったなどと言ったり、気遣って貰ったにもかかわらず嫌味で返した永沢と違って長山は素直に藤木を賞賛していたのだ。永沢も長山みたいになってくれたらいいのにと藤木は思っていた。
 
 二人は花輪家に到着した。藤木がインターホンを押した。
『どちら様でしょうか?』
 お手伝いの女性の声が聞こえた。
「花輪クンの友達の藤木と長山と言います。打ち上げに参加しに来ました」
『畏まりました。お入りください』
 藤木と長山は花輪家の敷居を跨いだ。その時、他のクラスの児童が現れた。2組の学級委員の横須が高浜、熱田、朝倉と共に来たのだった。
(2組の横須君達!?ってことはまさか堀内も・・・!?)
「やあ、君達」
 長山が横須らに挨拶した。
「ああ、4組の長山君に藤木君。花輪クンもいい人だね。よそのクラスの僕達まで誘うなんて。僕達は全部負けに終わったのに」
「うん、花輪クンは皆が頑張っていたから勝ち負け関係なく皆と楽しみたかったんだよ」
「へえ、そうなんだ。僕はそっちのクラスの丸尾君から聞いたんだ。それでウチのクラスも皆で誘おうと思ったんだ」
「それで、俺達も連絡網で回したんだ」
 朝倉が横須に続いて言った。
(全員、もしかして堀内君も来るんだ・・・。嫌だなあ・・・)
 藤木は堀内もこの場にいると考えて気が重くなってしまった。堀内が居合わせるとなるとどんな嫌な目に遭わされるかわからなかった。朝倉が続けていった。
「でも堀内は誘う気にならなかったよ」
「ええ!?本当かい!?」
 藤木が驚いた。
「ああ、あいつは勝手な事ばかりしてしかも負けた原因を誰かに突き付けて殴っていたんだ。熱田も色々やられて可哀想だったしな。だから誘わないようにしたんだ」
(そっか、ならよかった・・・)
 藤木は堀内が来ないと知って安堵した。
「もしかして藤木君も安心してるのかい?」
 横須が藤木に聞いた。
「う、実はそうなんだ・・・。そんなこと喜ぶなんてやっぱり僕は本当に卑怯だよね。それも分かっててやるなんて・・・」
「いや、そんなことないよ。僕達だって正直あんな奴といるのはお断りだよ」
「そうだね・・・」
 皆は笑いあった。

 花輪家の大広間に入った。既に多くの児童達が先着していた。
「おーい、藤木ー!!長山ー!!」
 はまじが藤木と長山を呼んだ。ブー太郎に関口と一緒だった。
「浜崎君に富田君、関口君・・・」
「オイラ達、お前に乾杯するブー!」
「え?僕にかい?ありがとう・・・」
 はまじ、ブー太郎、関口は藤木にグラスを差し出した。藤木はやや照れた。3年生の殆どの皆が集まった所で花輪が進行を始めた。
「Hey、everyone、よく来てくれたね。それじゃ球技大会で楽しかったことを食べたり飲んだりしながら語り合ってくれたまえ」
 こうしてパーティーが始まった。

 藤木ははまじやブー太郎、関口、長山にキーパーとしての活躍を祝った後、山根やケン太らにも労られた。
「藤木君はやっぱり最高だったよ!俺の中では藤木君がMVPだよ!」
「ケン太君、でも僕もケン太君から叩き込まれなければヘタクソのままだったし、卑怯だからもしかしたら仮病で休んでたかもしれないしさ・・・」
「でも今の藤木君は卑怯じゃないよ!自分に誇りを持てよ!」
 山根が藤木を励ました。
「うん、ありがとう!」
 その時、彼らの元に本郷と楢崎が現れた。
「やあ、君達、俺達は負けたけど本当に凄い試合だったよ!ありがとう!」
「本郷君・・・」
「藤木、お前のキーパーとしての実力凄かったぜ!俺より上手い気がしたよ!」
 楢崎が藤木を賞賛した。
「いやあ、たまたまだよ。ケン太君から練習させられなかったらここまでは上手くいかなかったよ」
「そんなことないよ!!」
 皆で笑いあった。

 その頃、小杉は、置いてある料理をひたすら食べていた。永沢が嫌みを言う。
「小杉君、君は食べることしかできないんだね」
「何言ってんだ!!打ち上げと言えば食い物じゃねーか!!俺は食うためだけにここに来たんだ!!」
「まったく、君の図々しさには呆れて物も言えないよ・・・」

 さらに大野と杉山がいる場所では冬田が大野に呼び掛けていた。
「大野くうん、お疲れさまあ、凄くかっこよかったわあ」
 冬田が目を光らせながら言った。
「あ、ああ、サンキューな・・・。冬田も良く頑張ってたぜ・・・」
「あらあん、ありがとう~。大野君に褒められると私もっと嬉しいわあ~」
 大野は冬田の暑苦しさから逃げたくなった。それを見て杉山は面白がっていた。その時、杉山もある女子から声を掛けられた。
「あ、あの・・・。す、杉山君・・・」
 かよ子が照れながら話しかけた。
「山田・・・」
「お、お疲れ様・・・。杉山君、か、かっこよかったよ・・・」
 かよ子は恥ずかしがりながら言った。
「あ、ああ。お前もよく頑張ってたな」
「え?う、うん・・・。で、でも私なんておっちょこちょいだし、し、試合だってしょっちゅうミスばっかりしてたし・・・」
「何言ってんだ。失敗したって全力でやったつもりなんだろ?それでいいじゃねえか!!」
「う、うん、そうだね、ありがとう!!」
 かよ子は杉山に労わられた事が非常に嬉しかった。大野は二人のやり取りを見て冬田もかよ子のようにもう少し控えめになってくれればいいのにと内心で思っていた。その時・・・。
「お、おい、山田、ジュースこぼれてるぜ!!」
「え?あ、あ~!!」
 かよ子は嬉しさのあまり、手に持っていたグラスを傾けて中のジュースを床にこぼしてしまった。

 リリィはまる子、たまえ、とし子と橿田とその友人達と共にいた。まる子が橿田らに自分がなぜ家族から「まる子」と呼ばれるのか由来を話した。
「へえ~、いい名前だね。まるちゃんにたまちゃんってなんかお笑いのコンビみたいだね!」
「ちょっと、ひろ子ちゃん・・・」
 皆はハハハ!と笑い合った。
「そうだ、私あの凄い高いレシーブ驚いたんだ。よくあそこまで飛ばせたよね」
 とし子が桃山の東京タワーレシーブが気になっていた。
「ああ、あれ?あれは私レシーブを高く上げすぎちゃう癖があって、自分では情けないと思ってたけどからひろ子ちゃんがそれを得意技にしてみたらどうかと言われてね。そしたら自分でもこんなに役に立つとは思わなくてさ・・・」
 桃山は恥ずかしがりながら言った。
「でも5組は結構強かったわよ。私たちも負けそうになったし・・・。それにあの練習のときも凄くまとまってたしね」
 リリィが5組を高評価していた。
「え?ありがとう・・・」
 リリィはたまえと橿田の溝は消えたようで安堵した。 
 

 
後書き
次回:「活躍」
 藤木は本郷やケン太に笹山と打ち上げを楽しむ。しかし、山田の大騒ぎに巻き込まれて料理を落としてしまったり、ケーキを取ろうとして小杉に取られたりと運の悪さを発揮する。そしてリリィに自分の活躍を伝える事ができず・・・。
 
 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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