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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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正規空母・赤城の話

 
前書き
 今回は怪談話の為、特殊な書き方をしております。地の文はタイトルに出ている艦娘……語り部役の喋っている声、という事にしてあります。また、会話中心の為に誰が喋ったのかを解りやすくするため、卜書きをしてあります。

読みにくいかも知れませんが、それでもOK!という方はどうぞm(_ _)m 

 
 皆さんは見た事があるでしょうか?私達空母はあまり夜間の出撃をする事がありませんから、無いかも知れませんね。ですが、遠征をよくこなしている他の娘達や夜の警備が大好きな川内さん辺りは見た事があるかも知れません。……え、何の話か?ですか。そういえば説明してませんでしたね。これから話すのは、私が実際に見た海の上に浮かぶ不思議な光の玉の話です。

……皆さん不思議そうな顔をしてらっしゃいますね。という事は皆さん知らないだろうお話なのでお話させてもらいます。既に知っている話だったりすると、興醒めですしね。

 私がそれを見たのは、数年ほど前の事です。丁度その頃AL・MI作戦の発動が間近に迫っていて、柄にもなくナイーブになっていたのでしょうね。寝付けない時期があったんです。それでこっそり鎮守府を抜け出して、夜の浜辺に散歩に出たんです。

蒼龍「でもさぁ、ウチの警備の厳重さでバレずに脱走は無理臭くない?」

提督「あぁ、そりゃ俺が止めてたんだ。赤城は今更逃げ出すような奴じゃねぇし、気分転換したら帰ってくるだろうからよってな」

瑞鶴「さっすが提督さん!妻を気遣う夫の鑑っ!」

提督「うるせぇ、茶化すな」

 ……あの、お話に戻っていいですか?はい、じゃあ続きを話しますね。それで、何度か鎮守府を抜け出して、近くの浜辺に行くようになりました。波打ち際を裸足で歩いて、砂浜と波の感触を楽しみつつ、月と星空を眺める……。独りでそんな事をしていると、独り占め出来ているみたいでなんだか凄く贅沢な時間でした。ですが、その時間も終わりを告げました。




 ある日、その日も同じように夜の浜辺に来て目を瞑り、波の音を聞いていたらふと、妙な気配を感じたんです。殺気や怨念とも違いますが、とても奇妙な気配……ハッとして目を開けたら、波打ち際から少し沖、私の目線より少し上くらいだったでしょうか?そこに黄色く光る玉のような物が浮いていたんです。蛍のようにぼんやりとした光り方で、点滅もせず、かといって虫のように動く訳でもなく。ただそこにピタリと止まって滞空している、という表現が一番しっくりくる。そんな不思議な物が浮いていたんです。

 普通、夜の海でそんな物を見たら、人魂とも思えて不気味に思って逃げ出すと思うんですが……何故だかその時の私はその玉に触れてみたい、触れて正体を確かめたいという激しい衝動に駆られて手を伸ばし、海に一歩踏み出したんです。今思えば、あれは『魅入られた』という奴なんでしょうね。

 一歩、また一歩と海の中へと進んで足を波に浸して光の玉の方へと近付いて行ったハズなのですが……何故だかその距離は縮まらず、やがて私は腰の辺りまで水に浸かっていたんです。でも、その時には自分が濡れる事よりも光の玉に触れる事の方が重要に思えて、歩みを止める事はしませんでした。艦娘として海に出て、その怖さは嫌と言うほど知っているハズなのに。





 ーーですが、流石に胸の辺りまで水が来たら可笑しいと気付いたんですよ。『どう考えても可笑しい、これは危険な行為だ』って。そこで浜辺に引き返そうとしたんですが、足が動かないんです。まるで自分の物じゃないかのように。それどころか、私の意思に反してゆっくりとですが更に沖に進もうとします。必死に止まろうとするけど、身体が言う事を聞かない。誰かに操られているようなあの感覚は、今思い出してもゾッとします。沖に進むに連れて深くなって行く水深はついに、私の身長を越えて全身が海水に浸かってしまいました。もがこうとしても身体は動かず、為す術無く肺に海水が流れ込んで来ました。苦しくて、寂しくて……いよいよダメかと思った時に過ったのは提督の事でした。

『あぁ、あの愛しい人の下にはもう帰れないんだ。御免なさい提督』

 と、後悔の念が心を満たした時にフッと目の前がブラックアウトしたんです。恐らく酸欠で気絶したんでしょうね。その寸前、『あぁ、これは死んだな……』って何の感慨もなく思ったわ。

飛龍「というか赤城さんがシレッとノロケてる件について」

提督「飛龍」

飛龍「うん?どしたの提督」

提督「口閉じとけ。ぶっ飛ばすぞ」

飛龍「……あい」




 ですが、私は声を掛けられて目を覚ましました。目の前には心配そうに私を覗き込む舞風ちゃんの顔がありました。話を聞くと、その日の夜間警備担当の舞風ちゃんは少し遠出して砂浜の辺りまで歩哨に来ていたら偶然砂浜に横たわる私を発見したそうです。私も飛び起きて、あの光の玉は……!?と尋ねましたが舞風ちゃんには見当もつかないようでした。しかも不思議な事に、びしょ濡れの筈の身体や服が全く濡れていなかったんです。それで私は夜の散歩で疲れて寝てしまい、悪夢を見たんだと無理矢理自分を納得させました。ですがその夜以来、夜の浜辺には近付いていません。作戦中の移動などでは仕方無いとしても、進んで夜の海には近寄らないようにしています。

 これで私の話は終わりです。別にお化けや化け物が出てくる訳でもなく、ただただ不思議で不気味な感じのするお話という
事で、少し盛り上がりに欠けましたね。でも、未だに時々思うんですよ。

『もしも、あの光の玉の正体が人をどこかへ連れ去る存在だったとして、失敗したら全てを無かった事にするのはズルくないかな?』

 って。

赤城「……どうでした?」

瑞鶴「怖っ!十分すぎる位怖いよ!」

翔鶴「凄い臨場感でしたね……」

赤城「そうですか?」

蒼龍「その証拠に、加賀さんがホラ」

加賀(オフトゥン装備)「」ガクガクブルブルガタガクガクガク

赤城「アルマジロとか亀さんみたいですね」

飛龍「枕で耳まで塞いじゃってるし」

提督「若干涙目だし」

一同(可愛い)




瑞鶴「でも……夜の海に浮かぶ光の玉、ねぇ。誰か他に見た事ある?」

飛龍「どしたの蒼龍、顔色悪いよ?」

蒼龍「……私、見たことあるかも」

一同「え゛っ」

翔鶴「ど、どんな感じのでした?」

蒼龍「赤城さんが見たのは、黄色い奴だったんでしょ?でも、私が見たのは確か赤い奴だなぁ……同じ艦隊で出撃してた駆逐艦の娘……誰かは忘れちゃったけど、その娘も見たって言ってた」

提督「黄色と赤……色の違いに何か意味があるのか?」

加賀「蒼龍とその駆逐艦の娘に、何か共通点は無かったの?」

瑞鶴「お、加賀さん復活」

蒼龍「う~ん…………あ!二人とも大破してた!それで急いで鎮守府に帰ろうとしてて」

提督「その道中で赤い玉を見た、と?」

蒼龍「」コクコク

翔鶴「大破……という事は、瀕死の重傷。つまりは死が身近にあった状況、という事でしょうか?」

赤城「なら、あの光の玉は……もしかして、死神?」

瑞鶴「でもさぁ、赤城さんは死にかけてもいないのに連れていかれそうになったんだよね?」

赤城「……もしかしたら、黄色い方は無差別なのかも」

加賀「お、恐ろしい話ね」ブルッ

提督「ま、お前らも気を付けろよ」
 
 

 
後書き
 こんな感じで怪談話を語らせていきます。しかし今日は大晦日。明日には新年です。……何で俺はこんな時期に怪談話を書いているんでしょうか(^∀^;)←自業自得

 恐らく今日は忙しい(料理の仕込み的な意味で)と思うので、これが2017年最後の更新だと思われます。それでは皆様、よいお年を~!ノシ 
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