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Liber incendio Vulgate

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Castillo de hierba
  Intento asesino

 
前書き
_〆(゚▽゚*) 

 
騎城優斗(きじょうゆうと)》が命を奪う快楽の狂気に取り憑かれ凶行へ及ぶようになってから二ヶ月が過ぎた頃になるだろうか。

ある組織では(にわか)に一つの噂が
囁かれるようになっていた。

そしてその真偽を確かめるため組織に所属する優斗と同い年くらいの子供に召集が掛かる。


「任務だ。まあお前にとっては取るに足らないだろうし興味も湧かないだろう内容だがな」

「俺は任務を果たすだけです」

「お前は今、この第0学区に在る【住民区】において殺人鬼がはしゃいでいるのは聞いているか?」

「無差別の大量殺人だそうですね」

「そうだ。そこでお前には噂になっている(くだん)の殺人鬼とやらを観察してきてほしい」

「あわよくば此処へ連れてくる、
ということですか……」

「どうするかは任せよう」

「了解しました」


子供は組織のボスである《マスター》に背を向けて部屋を出る。足音一つ立てず、姿は見えているというのに気配も感じさせず。


「何故だろうな。奴を行かせるまでの事でもないのだろうが予感がするのだよ」


マスターがそう言うと部屋に潜んでいた一人の少年が姿を現して口を開いた。


「私が出て行って殺人鬼の処理をしても
一向に構わなかったのですが……」

「【阿修羅王】とも呼ばれる《石村(いしむら) 俊介(しゅんすけ)》が小さいことを言うでない。奴にNo.1を譲ったのはお前の意志だろう?」

「だからです。こんなことで組織の最強が軽々しく出るものではありません。格が落ちる」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


優斗はもう何人殺したのか覚えていない。

数えるよりも愉しさの方が
優先されるようになったから。

解るのは殺しを始める前からその辺りでくたばっていた連中の死体よりも殺してやった奴等の死体が多くなってしまったことだろう。


(まあ解体(バラ)したのも多いから何人くらいの死体か解んないから数えられないんだけどさ)


変わらないことが有るとしたら朝に目が醒めると懐にパンが入っていることだろうか。


「俺が殺人鬼って解んないのかな?」


もしかしたら狙いが有るのかもしれないが、
そのパンは優斗の腹を満たしてくれる。

住民区では優斗が来る者全てを殺していくので殺人鬼が彷徨っていると噂になり、彼の住む廃墟のようなスラム街からは人気が消えた。

パンを売りに来ていたやつは殺したから別のやつからパンを奪うしかない。それ以外にも物を売りに来ていた者が来なくなってしまったので優斗はこの懐に入っているパンが頼みの綱なのだ。

そして優斗は自分の寝床になっているスラム街の辺りに近付く誰かの気配を感じてナイフを取り出す。

二ヶ月の間で日課のようになった反応だ。


「また獲物の方から来てくれたのか」


うきうきしながら彼は路地裏を出ていく。

そこには自分と同世代らしき誰かが何かの戦闘服らしきものを着て一人佇んでいた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(………なんだ…あれ……)


優斗は戦闘服に付いたフードを深く被り、ボロ布のマントに見える何かを羽織った誰かを見て、直ぐ様自分が命の危機に(ひん)した事を感じる。


「お前が有名な殺人鬼か?」

「俺が噂になるような殺人鬼かは知らねーよ。何人殺ったのか覚えてねーんだから」


優斗は恐怖を抑えて相手へ駆けた。

その手には確りとナイフが握られている。

相手が戦闘服に付けた鞘に触れて待つ。

そこには餓者髑髏(がしゃどくろ)が描かれており、
不気味な印象を受ける。

そして刃を抜いた。


「ッ!」


優斗は相手の刀身に自分が持っているナイフと同じようなものを感じる。恐らく優斗のナイフと同じで数え切れない人間の命を奪ってきたのだろうことを。


(ヤバいの濃さが段違いだがな)


その考えを現したかのように優斗のナイフは相手の刃で楽々受け止められてしまう。


(マジかよおい…ピクリともしねぇ…! 片手のみで支えてるってのに体重を掛けたナイフをこうもあっさりと……!)


体格はあまり変わらないというのに力の差は考えるまでもなく一目瞭然だった。


「武器にばかり気を取られるな」


優斗は不意を突くような蹴りを喰らって吹き飛び背中から地面に落ちてしまう。しかし直ぐに立ち上がって建物へと逃げ込んだ。


「正面からは無理と踏んだか。自分のフィールドに引き込もうって腹なのかな」


相手は優斗を観察してどんな行動を取るか予測していながらも後を追う。そして優斗が入っていった廃ビルへと進んでいく。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(この辺りの建物は殆ど構造を把握してる。勝ち目が有るならこういう戦り方しかねぇ……)


電気は通っていないので真っ暗闇だ。

優斗はトラップを仕掛けてあるポイントまで
相手を誘うことにした。


「子供ながら考えてはいるんだな。まあ所詮は素人の浅知恵と言ったところなんだが」


相手は壁に手を当てて足音の反響を聴覚と触覚で捉えることにより優斗の位置を把握する。

そんなことを知らずに優斗は仕掛けておいた第一のトラップまで後僅かという所まで迫った。

しかしその時だ。

暗闇の中から小刀が突き出される。


「うおおっっ!!?」


優斗は間一髪、その刃を回避した。 


「もしかして目が頼りにならないほど暗ければ位置が解らないとでも思ったのか? 俺は生憎(あいにく)と目や鼻を使わない訓練をクリア済みだよ」

「それは…どういう……」

「耳で捉えた音からも大体の場所は解る。空気の動きを感じるくらいの触覚で建物に響く振動も捉えれば更に位置確認の精度は高まる。そして行動予測による先回りで待ち伏せすれば良い」

「普通の人間じゃねぇな。反響を正確に捉えるとか、蝙蝠や梟じゃねぇんだぞ……」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


優斗は追い詰められていた。

視界が塞がれようと居場所を探り当てられるのなら廃ビルへ逃げ込んだ意味が無い。

わざわざ自分から行動範囲を狭くして
捕まり易くしただけだ。


(この少年の足音は逃げる為のものじゃなかった。行く場所があったんだろう。わざと位置を知らせるために足音を鳴らしたなら頑張った方だが何か罠を仕掛けた方に向かってたってとこかな)


優斗と相手の読み合いは相手が上。

二ヶ月前までは人を殺した事の無い殺人者と長年の訓練を受けて暗殺や戦闘をこなしてきた者。

戦いに費やし生きてきた時間も経験も違うのだから張り合えるようでは困るのだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


優斗は傍に有るロープを切って仕掛けを動かす。彼は廃ビル中に仕掛けられたトラップの位置も内容もはっきりと覚えている。


(賭けだ)


優斗はトラップの効果が出るまでの時間で相手へと突っ込みながらナイフを逆手に構えて振るう。

一撃目は綺麗に止められた。

次はナイフを持ち替えて刺突を繰り出す。

真っ直ぐ前に出される攻撃に対して
相手は後ろへ下がり躱そうとする。


論理(ロジック)的にはそうなるだろうよ)


優斗はこうなることを予想していた。相手は後ろに感じる何かに気付いて回避を中断する。そして体を横に流してナイフを空振らせた。

そこから優斗の腕を自分の腕と胴で固めながら体重を掛けて姿勢を(かが)めて低くする。直後に相手の頭上を背後から飛んできたナイフが通過していく。

腕を()めて折れる寸前まで体重を掛けられたことにより優斗の頭も自然と下がる。

その途中で相手の膝蹴りが優斗の顎へと決まり、頭がボールのように跳ね上げられた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


相手は優斗が怯む隙に
トラップを警戒しながら距離を取る。


「仕掛けは今ので終わりか?」

(まだだ。まだ終わってねぇ)


相手の力が優斗の想像を超えているのは間違いない。しかしこの廃ビルにはまだ仕掛けが有った。

優斗は隠すようにしてボタンを押す。

その途端、相手の足下から閃光が射し耳を(つんざ)くような轟音が響き渡った。周囲が崩壊していく中で優斗は爆発の衝撃を凌ごうと、(うつぶ)せになって耐えている。


(このビルを選んだのは理由が有る)


優斗は以前、このビルで奇妙なものを見た。

彼の住む【住民区】では住人の間で殺し合いが起きる。武器も能力も使うので破壊痕が至る所に有るのだが、その中でこのビルの一角はやけにダメージが少なかったのだ。

優斗はそこがシェルターだと判った。

快楽殺人するようになってから殺した奴に武器商人が混じっていたことを知った彼は武器商人が残した武器を奪って廃ビルに仕込んだ。

先程の爆発も奪った武器である。


(爆弾が有るのを見た時にシェルターの有るこのビルで使うって考えてたからな)


優斗は爆発が治まって辺りを見るがさっきの相手は居ないようだ。恐らく瓦礫の中だろう。

頭に浮かぶのは相手のことだ。

本当に手強かった。


(たぶん背格好からして俺と同い年くらいか。あんな奴が居るなんてな。たぶん『処理者』でもなかなか御目に掛かれるようなレベルじゃないだろ)


そう考えていた優斗は不意に後ろから肩から背中に掛けてバッサリと斬られてしまう。


「油断するとは詰めが甘いな」


相手は無事だった。潜んで優斗が気を抜くのを待っていたのだろう。倒れた優斗からは夥しい血が流れ出している。


(動けない。力が抜けていく)

「終わり…か……」


相手は優斗を仰向けにして腕を引く。手には怖気(おぞけ)が走る小刀が危険な光を放っていた。

優斗は目前に有る【死】に対して初めて恐怖を覚え、そして全てを諦めてしまう。


来世(つぎ)は報われると良いな」


しかし相手の腕は動かない。

何かに絡め取られたように。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(何が起きた……?)


優斗の目には動揺しているように見える。


(こいつは能力者なのか? そうでないと腕が動かない理由の説明がつかない)


これ以上やれば無傷では済まないことを
考慮する必要が有るだろう。


「お前は運が良い、って言って良いかな」


相手は小刀を納めて去っていった。

優斗は相手の肩に有る刺青(いれずみ)がやけに記憶へ残る。それは髑髏に蛇が巻き付いたものだ。

考え事をしている優斗の足下で音がした。視線を向けると地面には『大丈夫』と書かれている。毎日パンを懐に入れてくれる誰かだろう。


(何で見えないのかね)


その後、相手は組織へ戻り優斗について報告した。しかし確証の無い能力については触れていない。それに戦闘技術は素人同然なので組織へ連れてきたところで無意味だろうと判断した。


「御苦労だった。《IS(イズ)》」

「いえ」

「殺人鬼は殺したのか?」

「その必要も無いと感じたので見逃しました」

(組織で訓練を受ければ伸びそうだが)


この組織は内乱で壊滅する時まで優斗と関わることが無かった。戦った相手とは互いに知らないままで再会を果たしているのだが。

奇跡的に生き延びた優斗は自らの殺意を抑えて戦えないなら再びあのような相手が現れた時、勝てないという考えに至っていた。

相手からの明確な殺意をはっきりと感じた優斗は誰も彼もに対して無闇矢鱈に不必要な殺意を向けないことを意識する。

生きる為には自制も必要だ。


「強くなって生き残る以外に見えない誰かのことも知らなきゃいけないわけだしな」

課題は山積みである。 
 

 
後書き
やっぱり別けて書いた方が良かったかな?
(^_^;)

おかしくなってすいません。

グダグダになってしまった気がする。

纏まってる方を読むのなら
二次の方を読んで下さい。

あの二人は既に知り合いだったのか。

もし知ったらどうなるのかな。 
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