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夢幻水滸伝

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第三十四話 博多と大宰府その六

 北原が自分で言った通りに入っていた、金棒を縦横に振るいそのうえで自軍の兵達を逃がしている。
 その彼と今も闘いつつだ、芥川は言った。
「今はやな」
「負けを認めるでごわす」
 北原は芥川の三光手裏剣を金棒で受けて弾き返しつつ言った。
「そうさせてもらうでごわす」
「潔くやな」
「そうでごわす」
「そうか、しかしやな」
「おい達は諦めていないでごわす」
 それは目にも出ていた、死んでいる目ではない。
「これからもでごわす」
「戦うんやな」
「そうするでごわすよ」
「わかったわ、しかしな」
「簡単にはでごわすな」
「退かさせる訳にはいかん」
 中里はこう言ってだ、再び右手に三光手裏剣を出した。三つ出してそれを己の顔の前に出してだった。
 そしてだ、こう言ったのだった。
「敵を攻める時は何時が一番ええか」
「退く時でごわす」
「そうした時にこそ攻めてや」
「徹底的に叩く、でごわすな」
「そやからな」
「ここはでごわすな」
「こっちも攻める」
 こう言うのだった。
「覚悟するんやな」
「それはこっちもわかっているでごわす」
 退く時こそ攻められる、北原も戦のこのことはわかっている。戦の常道の一つであるからだ。
「だからおいが残ったでごわす」
「そういうことやな」
「そして強者達も」
 兵の強さで定評がある九州の兵達の中でもというのだ。
「とりわけ強い者を置いたでごわす」
「それで戦ってやな」
「そうでごわす」
「僕等を攻めさせんか」
「そのつもりでごわす、こうしてでごわす」
 鉄砲が一斉に放たれる、九州の軍勢も鉄砲の数が多いがその鉄砲をふんだんに使った形と言うべきか。
「撃ってそしてでごわす」
「兵を出来るだけ逃がしてか」
「おいもでごわす」
「そうか、転移の術も使ってるしな」
 その術を傷付いた兵や大砲やそれを使う兵達に使って逃がしてもいる、この世界での撤退の仕方の一つだ。
「ここは出来る限り損害を出さずにか」
「逃げてみせるでごわす」
「成程な、しかしな」
「そっちもでごわすな」
「攻めるもんやからな」
 その三光手裏剣を放つ、今度は一旦上に飛ばし。
 急降下させる、野球で言うと大きなフォークボールだった。
 そして正面からはだ、鎌ィ足の術を放って攻撃する。上から下にだった。今度は多面的な攻めだった。
 しかしその多面的な攻めもだ、北原は。
 己の前に氷壁を出して正面からの鎌ィ足を防ぎ上から来る手裏剣達は今度も金棒で受けて防いだ。そして。
 凌いでだ、金棒を横に振るって竜巻を出して芥川に放つ。芥川は竜巻を右に動いてかわしてまた言った。
「見事なもんやな」
「そう言うでごわすか」
「ああ、守りも攻めもな」
 そのどちらもというのだ。
「見事や、そやから是非な」
「仲間にでごわすか」
「したいわ」
 こう言うのだった、それも笑みで。
「ほんまにな」
「それは同じでごわす」
「そっちもやな」
「おまんさあ達を倒してでごわす」
「そしてそのうえで」
「仲間にするでごわす」
 こう言うのだった。 
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