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Blue Sea 『空と海の境界線』

作者:03-Moonlight
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Operation 02-発令、ファーバンティ解放作戦-
取り戻す為に
  Mission22「集結、そして出撃」

 
前書き
1/1に公開できませんでした。そのおかげで過去最高の7000字超えたのとポケダン空でリオルが威圧感取得+Lv70突破できたので許して下さい。 

 
「そう言えば、私が本当はどんな存在か知ってるか?」

 セレンは照月の船体に共に向かいながら質問らしきものをしてくる。

「妖精、だろ?」
「違う。これもまた、説明するとややこしいからいやだが」

 また何か隠し持ってるんだろうな。っていうか、前に要請って言って今さら違うと言うのは流石にどうかと思うが。


「まあいい。んで、照月はレーダー網に何か引っかかったとか通信は?」
「何もない。この様子だと艦載機などは飛ばしてなさそうだ」

 気付けばすぐに照月の艦橋に到達していた。さっさと中に入るが、照月は何かを開いたままだ。

「あれ、照月?」
「……って、あ、提督?ごめんごめん、入ってたことに気付けなくて」

 そういいながら照月は何かあわてながら開いた物を閉じる。彼女の表情はあまり晴れてはいなかったが、それでも笑顔で明るくしてくれる。

「何かあったのか?」
「いや……なにもないよ?でも……本当に始まったんだな、って思ったの」
 彼女は表情を曇らせながらも正直なことを伝える。

 自分は心配したのか言葉を掛けた。
「疲れ、たまってるか……?」
「ううん。平気だよ?」

 平気ならいいけど、と思いつつ彼女をそっと抱擁する。大丈夫なのに、と耳打ちしてくるがそれでも彼女はなんだかんだ言ってそっと抱き締めてきた。

 いつも身につけている手袋を取った彼女の手は繊細そのものだった。どうしてこんなにも、さりげなく誘おうとしてるように思ってしまうのか。



「あらあら……2人ってそういう関係だったのかしら」
「「え?」」

 普通にミーナが入ってきて2人の関係を勘違いした。と言うよりそうやって見えただろう。

 照月は、はわわとした表情を浮かべて恥ずかしそうにして何故か自分の胸に顔をうずめるが、結局それが余計な勘違いを生んでしまった。



 何とかこの状況を打開したい……と思いきやセレンはじっと見てるし、照月は両手でがっしりホールドしているが故離れてくれず、結局30秒くらい抱擁する羽目になった。


 正直、恥ずかしい。




「……とりあえず、その話は置いておこう」

 セレンがこの場を沈黙に変えたが、個人的には助かった。幸い今のメンバーの9割が居なかっただけいいとしよう。


「先ず、イーヴォ提督、もとい竹井翔花提督がこちらに来る。別に歓迎はいらないらしい。そして、同時にウィスキー回廊近海へと出撃する。その際、ウィッチは別ルートだ」
「あの近辺はメガリスが近くにあって危険なはずだが、大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。ウィッチについては航行ルートを後に渡す」

 と言いながらセレンは普通に航行ルートを渡してきた。ルート自体はファーバンティへの航行ルートとほとんど一緒だが、違うのは出来る限り沿岸部に近く、同時に航空戦力を別方面から当てるという。

 艦隊上の制空権については竹井提督(以下、イーヴォ提督)の航空部隊によって確保するとのことだ。この点は問題ない。

 寧ろ問題なのが制海権。当然メガリスに近いことから反撃も激しいだろう。ネウロイが来る可能性も否定できない。そのため、同行しろとのことだ。


 ハッキリ言えば、2隻だけで足りるとは思わないが。イーヴォ提督がそれをどれだけカバーするのかは自分にはわからない。セレンにはわかるらしいが。


「竹井提督から入電……数分後にはそちらに到着するとの事」
 早いな、と思いながら水平線を眺めるのであった。










「この編成で大丈夫なんですよね?怪しまれないようにするためにも」
 吹雪が隣で問いかけてくる。

「501の方々にも場合によっては飛んでもらうことになってるから大丈夫だが……まあ、そこまで気にする必要はないか」

 洋上を航行するのは旗艦の吹雪、後ろには修理を終えた大鳳。わずか2隻。防衛自体は可能なレベルであるからか、護衛をほとんど必要としない編成だった。

 吹雪だけでも可能なのだが、大鳳を連れていく理由がある。それは『戦力の引き渡し』が一番近いといえばいいだろう。

 ウィッチの数を考えれば大鳳がなければ運用能力が落ちる。その穴埋めにも出来るのが狙いだ。


『航行は問題ありません。機関出力安定、艦内の問題もなし。唯一の
問題はストライカーユニットの機動補助装置ですが……』
『それなら問題ない。機体各所に魔力補助装置を付けた』
 とシャーリーが無線で話した。


「了解した、彼らに打電で数分後につくと言っておいてくれ」
「わかりました。って、数分後って……まさか」
 吹雪がはっとした目で此方を見てくる。使うシステムを知ってるからだろうか。

「各艦防護システム展開、同時にオーバードブースターを起動しろ。一気にセントアークまで移動する。ウィッチの諸君、衝撃に注意しておけ」

 こうして、2隻は数分でセントアークまでたどり着いたのだが、この時にエーリカが派手にピンボール状態になりかけて今度は瑞鶴はおろかウィッチの4人に被害が出たのは言うまでもない。なおエーリカ曰く「寝てた」とのこと。







「超高速で接近する艦隊を探知……港の近くまで来ています。反応の波長が一致しているのと、同時に低速になりました」
 サーニャが固有魔法で竹井提督が来たことを知らせる。

「ずいぶん彼らしいな。敵がいなかったからか?」
 まあ、そうだろうなとセレンは呟きながら艦橋から海を眺める。

 あちらから来てくれるとはいえ、割と内心やばい人では?と思っている。艦橋から見えるあたり空母1隻と駆逐艦1隻。明らかに強行突破してきたとしか見えない。何を使ったのかは知らないがセレンは大体察しているようだ。

『久しぶり、だな。広瀬響少佐。まあ、君にとっては記憶にはないかもしれないが』

 耳には聞いたことのあるような若くも渋い声が貫いた。同時に、2隻が吹雪と大鳳であることを認識した。



「竹井翔花元帥、初めまして」
『そう暗い雰囲気で言わないでくれ。お前とは、面識があるんだ』


 面識。記憶にあっただろうか。

 いや、1度だけ1年前の夏に、あったかもしれない。
 照月も、その時に一緒にいたのだろうか……。


「ボーっとするな。さっさと迎えに出るぞ」
 そう美緒が言ったので全員が照月の艦橋から出た。ただ、照月が広げていたものが頭に引っかかりつつ。

 後に自分だけが頭に引っかかっていたのに気づくのは、そう遠くない。









「見えてきたぞ、あれが大鳳なのか」
「坂本さんも、見た事がないんですか?」
 外に出た芳佳と美緒は大鳳の話をこぼす。

「あの世界でも装甲空母は初めてのはずだ。あれならサーニャ達のストライカーもすべて運用できるらしい」
 美緒は大鳳を見ながら、ストライカー運用についての話をする。少なくとも芳佳がわかるかは美緒でもわからない。
 まあ、芳佳が「へぇ~」なんて言う顔をしているから少しは判る、のだろうか。

 そうだな、と言いながらもう一隻の吹雪を美緒は眺める。
 美緒が違和感を感じたのは、その時だった。



「あの吹雪は……?」
 美緒はじっと吹雪の装備を見る。そう、吹雪は美緒たちの世界では行われていない「If改装」が行われているからだ。

「実は、私が秋月型を見たときも照月を見たことがないんだ」
「あっ……そう言えば1度見る機会がありましたね」
 美緒が記憶を頼りに宮藤に話す。事実、彼女たちは見ているのだから、そうとしか言えない。


「にしても、この別の世界で照月を見る事になったとはな。実物ではなく、艦娘という形ではあるが」

 美緒は感心したように照月を眺めていた。そうしているうちに、吹雪と大鳳は停泊した。



「どうやらお出ましのようね」
 美緒の左隣に来たミーナがそう呟く。

「久々の軍事交渉、みたいなものか」
 美緒は吹雪から下りてくる竹井提督を眺めていた。









「久々に来ましたね。セントラルアークに」
 停泊して吹雪がそっと囁く。
 そうだな、なんて頷きながら階段を下り広瀬響を探す。

「何処だ……いた」
 どうやら照月の近くにいたようだ。降りつつそっちへめがけて吹雪と共に歩く。

 ぎこちない吹雪との距離は今は縮んでる。彼と照月は、今ぎこちない距離なのだろうか。それを考えながら彼に向かって歩く。


「自分にとっては初めてじゃない。だがお前にとっては初めてか」
 彼は何を考えてるだろうか。照月に何を想うのだろうか。

「初めてですね……流石に覚えてないです」
「そうか……とりあえず、照月とお前、2人に話したい」
 話を聞いて2人は頷きながら吹雪の方に行き艦橋に入る。

 そして、吹雪に防音状態にするよう指示した。これで、話がセレンに聞こえる事はない。



「さて……単刀直入に聞こう。他と手を組むつもりはあるか?」
 最早ストレート。聞きたい事を直に聞く。

「考えてみれば……そのつもりはないです」
 彼は素直に答えた。まあ、セレンがいるから少なくとも問題はない……はず。

 そうか、と思いながら意見を切り出す。

「これは率直な意見だが聞いてくれ。ウィッチの運用でそちらに空母がないという懸念事項に目がついた。おまけに、資材のバックアップも少ない。そこで、だ」
 艦隊の運営状況的に、単独でやるのは厳しそうだが。
 これで考えが変わってくれるのだろうか。


「確かに足りないです。でもなぜ……」
 彼は疑問を持って聞いてくる。その眼差しは真剣そのものだ。


「それは照月にもかかわってくる話だが、いいか?」
 2人は頷く。落ちついて呼吸をしつつ、語り始めた。


「これは、1年前の話。照月が酷く落ち込んでいたときに、ニューフィールド島の夏祭りに連れてった時のことだ」







2007 Sep.17
ノースポイント ニューフィールド島 夏祭り会場

「これが……祭りですか?」
「そうだ。色々なものがある。食べたり見たり、遊んだりってな」
 照月や吹雪など、何人かいつものメンバーを連れてこの夏祭りに訪れた。昔から変わらない風景だな、と思いつつ。

「一緒に回ってもらっても、いい?」
 照月が一人で歩き回るのが怖いからか、一緒に回ることになった。よく考えてみれば、久々にこうやって回るのもありかな、と。

 あまり人目にはついておらず、気づかれることがあまりない事に安心するが……問題は他の提督に見つからないか、ということだった。

 見つかったら後があまりにも面倒だ。大体、上層部のせいだが。


 そう考えてるうちに照月がある店の前で止まる。
「どうした?」
 照月は水風船を指で指しながら「ほしい」と耳元で囁いた。そうだな、なんて思いながら財布を取り出して硬貨を1枚取り出す。

「買っておいで」
 そう言って照月の手のひらに硬貨を渡すと、頷いて店の方に行って恥ずかしながらも買っていた。



「似合う……?」
 照月は右手の人差し指に水風船を吊り下げて見つめる。

 その視線は悲しいけれど美しく見え、似合うかどうかなんて結論は出ない。

「似合うさ……」
 そう言ってたら脳が危険を告げる。第六感が駆け抜け、視線を感じた。まずい……
「すまない、隠れるぞ」
 照月は戸惑いながら手を離さないでついてくる。周りにざわめきが広がり、同時に感じる視線が増える。



(離すなよ……)
 そう思い人ごみの中に隠れつつ、突き進んだ。


 夜の中心街を駆け抜ける中、一つの屋台に目を付けた。後ろに通路がある。

「すまない……後ろを通してもらえ……」
 屋台にいた人に声をかける。だが、その人は少年だった。


(セレンの言っていたやつは……この少年の事か?)
 少年からは提督の資質を、若干ながら感じる。冷たい視線が刺さっていたが少年は判ってくれた。

「わかりました。ならいい抜け道が」
 そう言って少年は屋台に「買いたいのであればお金と持っていく商品をメモ書きに書き、持っていくこと。監視カメラを起動させているので不正をした場合は調査する」という脅迫文らしきものを置いて、裏道に入ると「来い」というように手招きをする。

「先に行ってくれ」
 照月は裏道に入っていき、それを追う様に自分も入っていく。



 大通り近くの裏道には廃れた店が多く、同時に治安も良くない印象を受ける。これでも暴力事件などが一切起きていないあたり、寧ろ平和なのだが。

 そうして網目のような裏道を通っていると少年がふと何かを見たのか止まる。自分も見た視線の先には「奴ら」が依然として警戒していた。それを見て、何か気づいたのだろう。

「ここから大通りに戻るは難しい」
 少年は冷静に考えていた。正面突破は無謀だ。何か裏を掻かなければならない。気づかないようなところで――――――。



「ちょっと遠回りする。見た感じ警備が薄い大通りの山側を通る」
 少年は来た道を少し戻ると、大通りを突っ切った。


「少年……なぜそこを」
 自分は疑問に思ったが、大通りからの銃声が全く聞こえない。警備が手薄なところが見つかってよかった、と思いつつ照月と共に走り、突っ切ろうとした。


 道路の真ん中当たりで、突如銃声が一発だけ響く。その刹那、照月の左腕から血が飛び散る。飛び散った血は地面を所々赤黒く染め上げた。

 それを見た少年は、表情を変えてはいなかった。

「うっ……」
 照月が声を押し殺して苦しみ、渡った直後から歩く速度を遅くしている。

「すまない………」
 少年は自ら持っていたハンカチを使って止血をしつつ、左腕を高くさせて少し安静にする。

 上手く闇に隠れるためか少し奥の方で処置したのが幸いなことに、見つかることはなかった。


 3分近く待ってすぐに「鎮守府のほうへ戻った方がいい」と言って少年が照月を背負い自分は鎮守府へ案内した。正確に言えば、戻ったのだが。


 15分近く歩いた自分たちは鎮守府に着くなり照月をすぐに医務室に運び、安静にさせてから少年を応接室に回した。



「今日はすまなかった……屋台は大丈夫なのか?」
 少年の身を案じるように屋台の事を聞く。

「大丈夫ですよ。尤も、生きるなら食料自体は自分で蓄えてる分があるので」
 少年は何か悲しい眼差しをテーブルに落しながら答える。

 頭の中が考えことで埋まる。思考がすべて埋まっていく。
(さっきからこの少年に何かを感じている。何故だ?何故この少年は……)
 気づけば午後10時を過ぎていた。これから少年はどうするのかを聞く事も出来ないのが、少しつらい。

「今日はもう遅い……鎮守府に泊まっていってくれ。今日の件のお礼も含めている、がな」
 了承したようにうなずく少年。同時に部屋が余っていない事に後悔し照月に了承を得て2人で寝てもらうことにした。


 しかし、なぜ少年は食糧を蓄えてるのだろうか。自分がそれを知った日は、これからもう少し先の事であって、同時に2人の記憶を消してしまった自分の後悔を含めていた。





「そういえば……ありましたね」
 彼は思い出したのか、はたまた曖昧な思い出し方なのかわからない。覚えていてくれたようだ。

 吹雪に合図をしてあの紙とペンを2人の前に出す。
「これが合意書だ。すまないが、書くか書かないかは今決めてくれ」
 彼の眼差しは、紙ではなく自分に刺さっているような気がしてならなかったが2人は紙を見続けた。

 書いてある内容は、大鳳の譲渡とウィッチ4人の編入、そして資材云々と協力関係(とはいえ実質的にはこっちが後ろ盾になるだけだが)についてだ。これを受け入れるかは彼に任せる。受け入れられなくても、ウィッチ云々についてはほぼ強制的だが。

「わかりました。書かせてもらいます」
 そう言って彼はペンで合意するサインをした。

「これでいいですか?」と言って見せてくるあたりまだ新米だが、それでも自分は構わない。


「ありがとう。さて、大鳳の甲板でブリーフィングだ」
 自分は吹雪から降りつつ、大鳳へと向かう。彼もまた、ウィッチを集めて大鳳へ向かう。






「照月……本当は、もっと前に自分と出会ったことがあったのか」
「そうですね……照月も、忘れていました」
 501のみんなに集合をかける前に話す。あの1年前の話で、照月を助けて、まさか同じ部屋で寝ていたということを知った自分が、少し恥ずかしい。尤も、覚えてはいないのだけれど。

「全員、大鳳の甲板に集合。以上」
 501のみんな(セレンと熊野含めて)が持つ固有回線に通信し、即座に切る。

 照月は自分を見つめながらも歩く。自然と彼女と歩調を合わせるようになってしまうのは、やはり照月に自分の心が捕らわれてるのだろうか。
 自然に捕らわれてしまう自分は、依存しているかもしれない。


 再びそんなことを考えてしまっていたが、考えに耽らないですぐに大鳳の甲板に移る。

「あれが提督なの?」
 と、緑髪の少女は何か不満げそうにつぶやく。
「ああ、あれが私たちの提督だ」
 答えたのは美緒。行ったとしてもその少女は不満げそうな顔をしていたが。何か期待していたのだろうか。よく解らない。


「さて……これでそちらのウィッチも全員そろったか」
 竹井提督は準備ができた、というような表情をしながら全員の前に立つ。

「これより、今回の作戦要項を確認する」

 彼が説明したのは、大体はキャロルの説明に近いものだ。
 今一度の確認、とのことだからいいのだが、今回はウィッチの動かし方で作戦の成敗にかかってくるとのことだ。



 この確認は10分ほどなのだが、寝ているウィッチが1人。それ以外は特に問題はなかったが、なんで寝るんだろうか。
(501って、ここまで個性が豊かなのか?)
 軍人としては個性が若干強いのでは?とは若干思ったがそれはさておき。


 解散すると全員が準備に取り掛かると同時に、エイラ達の基地に置かれていたストライカーユニットが大鳳に運び込まれる。

「竹井元帥、これは?」
「ああ、バラバラにしておくより帰ることができる場所を1点に集中させておく。それだけだ」

 そう言って手元の端末で所属を変更させているとセレンから通信が入る。『出撃準備が終わったから早く来い』と。

 また後でと言って、大鳳を降りて照月に向かう。





「この作戦……失敗する可能性が高い………のに」

 照月は一人既に始まった戦闘を地図で見つつも、同時に嘆く。
 なぜ失敗すると想うのか。それは、誰もわからない。だが、彼女のシステムが特殊な故の結論。

(成功するなら……すべてウィッチの皆さんに託すしかない……)

 そうしている内に響が艦橋の中に入る。
「提督、この作戦の鍵はウィッチの皆さんだと、伝えて」
 照月は開口一番に言った。システムを起動しながらだが。

「わかった………抜錨、出撃するぞ」
「了解」

 短く会話が終わる中、周りが一斉に抜錨したのを確認しつつ打電をする響の横に照月が並ぶ。
「どうした?」
「提督も私も、一人じゃないから……」
 言葉を詰まらせながらも想いを伝えようとする照月の瞳は、なんだか寂しくもあった。

「気にするな……照月も一人じゃないんだから」
 そう言って響は打電を終え、地図を見つめてこれからの旅先を見続ける。




(やっぱり、照月の言っていた通りになるかもしれない)
 響はそう想いつつ、通信を入れた。 
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