| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真剣で納豆な松永兄妹

作者:葛根
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十七章 準決勝の戦い



準決勝第1試合、知性チーム対デス・ミッショネルズ。
燕ちゃんに攻撃を集中させる作戦で動いたが、コンビ技に頼りすぎたのが敗因となった。
デス・ミッショネルズが勝負に非情であれば、勝っていただろうに。
主に直江大和君を狙って動けば良かったのだが、どうやら彼女達は直江大和君を気に入っていたようだ。
まあ、俺や燕ちゃんの様に明確な目的を持ってこの大会に出ているわけじゃなさそうだったので甘さが出たというところだろう。
そして、俺達の出番が来た。

準決勝第2試合、源氏紅蓮隊対智略チーム。
試合開始前に初めて椎名京から話しかけられた。

「ワン子に酷いことしたので、真剣でいきます」
「うん。一応、試合とは言え、真剣勝負だったはずだ。それに文句を付けられても困るな」
「義経は険悪な空気に動揺するぞ。同じ学園の学友ではないか」
「ええ、義経さん。お手柔らかに頼みます。あまり、強く攻撃されると私死んでしまいますので」

彼女達の攻撃パターンは決まって、源義経が先行して突出。攻撃を受ける、避けると弓が来る。
逆にこちらから攻撃をするとその勢いを削ぐ様に弓が来る。
ならば、攻略法は弓を封じる事。
この勝負の鍵は葵冬馬と椎名京にある。

「まあケリを付けたいならこの勝負で」
「……ワン子の仇は取るよ」

会話が成立してない気がするが、

「それでは、決勝戦、レディ~、ゴーッ!!」

試合開始と同時に俺と源義経は思い切り前進。
対して、葵冬馬と椎名京は後退。

「はぁっ!」

源義経の斬撃が放たれた。
それを回避。
そのまま、反撃をしようとしたが、いやらしいタイミングで矢が飛んできた。
それをはたき落とす。

「パターンB!」

葵冬馬に指示を出す。
パターンBは俺に攻撃が集中するパターンである。
パターンAは攻撃が分散する時に行う指示だ。
Bパターンの行動は、今まで逃げに徹していた、というか何もしていなかった葵冬馬が動くものだ。
椎名京が弓を弦にかけて引くが、そこに葵冬馬のマシンガンが放たれる。
銃音がリズムよく刻まれる。
椎名京は弾丸を避ける為に動く。
それが、弓を放つのを遅延させる。

「はっ!」

源義経が斬撃を放ってきた。今まで通りのタイミングで援護があると信じて。
黛由紀江の剣速を見れて本当に良かった。
アレに比べれば遅い。
気を掌に覆わせる。
そして、刀身に掌打。
源義経の手から刀が飛ぶ。
一瞬の驚愕。
そこに、俊足の蹴り足を打ち込む。
源義経の顎を穿つ。
バタリと倒れこむ源義経と同時に、

「それまで! 勝者、智謀チーム!」

勝利の名を轟かせた。
危なかった。椎名京はマシンガンの弾を避けながらも、葵冬馬に向けて弓を放とうとしていたのだ。
源義経を助けるより、勝負を先に付ける方に動いていたのだ。

椎名京の失敗はまさにソコに会った。
初めから、葵冬馬を狙っていれば勝負はどうなるか分からなかった。
しかし、川神一子の仇を取る為に狙いを完全に松永久秀に絞ってしまっていたのだ。
また、椎名京が愛する直江大和。彼が松永燕と組んでおり、その回避能力を松永燕に認められて組んでいるとわかっていた。
一方で、松永久秀と葵冬馬の組み合わせは単なる数合わせと椎名京は考えていたのだ。
葵冬馬の持つ銃火器は注意を逸らす為の飾りであり、本選では戦わないと思っていたし、葵冬馬が一般レベルの実力しか持っていないことも知っていたので松永久秀に集中して戦えるという思考に陥ってしまっていたのだ。
用意周到に、まるで蜘蛛の糸に絡められる様に行動を縛られた。
それを理解した時、椎名京は薄ら寒いものを感じた。
……この人は危険だ。
女の直感がそう告げていた。
ワン子に対して酷い事をしたのも、葵冬馬に銃火器を持たせたのも、全ては伏線。
……私の目が良いのが悪く働いちゃったね。ごめん。ワン子、仇を取れなかった。
悔しさとやり切れない想いがあるが、それは川神百代に託そうと椎名京は思い、担架に乗せられた源義経の元へ向かった。

「決勝戦ですが、真に残念な事に、知性チームが棄権を致しましたので、優勝は智謀チームとなります!」

結局、燕ちゃんは直江大和君に家族同士の決闘はご法度だからという理由で棄権したのだ。

「それもそのはず。決勝戦対決は同じ名家の松永。妹である松永燕が兄の松永久秀に勝利を譲りました。そして、優勝の智謀チームからの申し出があり、今から10分後にエキシビジョンマッチを始めます! 観客の皆様をしらけさせない為の配慮だそうです。さあ、どのような試合になるか、楽しみです!」

優勝者インタビューを飛ばしてエキシビジョンマッチをお願いした。
興奮の熱が冷めない内のためと、川神百代が冷静さを取り戻さない内に戦う。
その結果観客からはブーイングも無く、エキシビジョンマッチに興味が向かっていた。
そして、川神百代が試合会場のリングに現れた。

「私がいると邪魔でしょう。どうぞ、2人きりで思う存分戦ってください」
「ああ、冬馬。ご苦労さん」
「いえ、私は何もしていませんよ。強いて言えば、特等席で試合を見れて良かったです」
「……」

俺と葵冬馬の会話に川神百代は入って来なかった。



周到な準備
周到な罠
配点:(戦い方)



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧