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流麗なる者

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第一章

                流麗なる者
 宋柳勝の名を知らぬ者は天下にはいない、皇帝に忠実に仕える将軍としてだけでなく彼の立場のことからも。
 宋は代々武門の名門の家に生まれ彼の三人の兄達はいずれも武挙に及第して今は将軍となっている、彼も武挙は受けていないが軍の采配も自身の武芸も見事なものだ。
 剣も弓矢も見事だ、特に馬術に秀でていて馬に乗りつつ弓矢を使う即ち騎射については宮中でも右に出る者はいない。
 だがそれと共にだ、彼の立場のことがよく言われていた。
「何故宋将軍は宦官なのだ?」
「幼い時に自身が是非と言われたそうだが」
「ご両親も兄君達も反対されたというが」
「幼い宋将軍がどうしてもと言われてのことだったそうだ」
「それで宋将軍は幼くして宦官になられた」
 宦官となるその手術を受けてだ。
「そうして後宮にも出入り出来る」
「そうしたお立場だな」
「実際に役職は後宮の守護だ」
「戦の場に出られて大軍を率いられることも多いが」
 彼の軍略がよく知られてのことだ。
「しかしそれでもだ」
「将軍は本来は後宮を護っておられる」
「陛下を護っておられる」
「宦官であるからだが」
「しかしあれだけの武の名家で宦官になるなぞな」
 それこそ異例中の異例のことでだ、誰もがこのことを不思議がっていた。
「どういうことなのだ」
「将軍は何をお考えだったのだろう」
「わからないことだ」
「家の方々もよく許されたな」
「全くだ」
 誰もがこのことを不思議に思っていた、宋の美女と言っても通じるまでに白く流麗な顔立ちと見事な武人姿を見つつ。
 その彼は戦の場に出ていない時はその役職を果たしていた、後宮においても常にその警護を怠っていなかった、その後宮でだ。
 ある日事件が起こった、何と皇帝の妃の一人である洋妃が産んだ幼い女子即ち皇帝の子が突如として死んだのだ、死んだ原因は首を締められてであった。
 最初にその皇帝の娘つまり公主が死んでいるのを見付けたのは母である洋妃自身であった。洋妃は寝床で何者かに首を締められ死んでいる妃を見て娘の亡骸を抱いて泣き崩れた。
 すぐに下手人は誰かという話になった。疑いをかけられたのは洋妃と皇帝の寵愛を競っていた藍妃と皇后だった。
 このことは後宮はおろか宮中でも話題となり多くの者が藍妃そして皇后に疑いの目を向け皇帝もであった。
 重臣達に対して怪訝な顔で言った。
「まさかと思うが」
「皇后様と、ですね」
「藍妃様が」
「洋妃様のことで」
「陛下の公主様を」
「そうだ、本当にまさかと思うが」
 こう前置きしつつも言うのだった。
「あの二人が」
「では、ですか」
「以後お二方はですか」
「遠ざけられますか」
「そうされますか」
「そう考えている」
 実際にとだ、皇帝は宮中の重臣達に難しい顔で述べた。
「これからはな」
「そうですな、やはりです」
「このことは放っておけません」
「それではですな」
「これからはです」
「お二方は遠ざけますか」
「そうしますか」
 重臣達の殆どもこうした考えになっていた、だがここでだった。
 宋は皇帝の前に片膝を折り左手で右手の拳を包んだ礼をしてそのうえで皇帝に言った。
「陛下、お待ち下さい」
「将軍、どうしたのだ」
「このこと調べて宜しいでしょうか」
「後宮を護る者としてか」
「はい、それがしどうも腑に落ちぬものがありますので」
「それでか」
「一度調べて宜しいでしょうか」
 こう皇帝に言うのだった。 
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