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変わらない味

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第三章

「僕はそうした美食家やってことや」
「そうやねんな」
「高いもの出して美味いもん食うなんてな」
「あんたの流儀やないか」
「そうや、高いもん出して美味いとは限らんやろ」
 作之助は今度は笑って話した。
「そういうものやな、それでな」
「自分は今もか」
「大阪の美味いもんを食べてるけどな」
「その美味いもんはか」
「こうしたもんや」
 そのお好み焼きを食べながらの言葉だ。
「安くてそしてな」
「美味いもんか」
「そういうことや、今も明日もな」
「食うてくか」
「そうしてくわ、ほなな」
 ここでラムネを飲んだ作之助だった、するとここで彼はこうも言った。
「変わらん味も楽しもうか」
「ラムネはか」
「そや、僕は酒はあかん」
 これは彼が最初の人生を歩んでいた時からだ、彼は酒は飲めなかったのだ。とはいって東京のバーでの写真もある。
「それでラムネとかサイダーをな」
「よお飲んでるな」
「それで飲んでるけどな」
「ラムネの味は変わらんか」
「ほんまにな、昔からの味や」
 そのラムネを飲みつつにこにことしての言葉だ。
「ほんまにええ味や」
「自分それ自由軒とかいづも屋でも言うてるやろ」
「そや」
 その通りだとだ。作之助は自分にラムネのおかわりを入れてくれた客に礼を言ってから笑って話した。
「そやから今もよお行ってるんや」
「そやねんな」
「夫婦善哉もな」
 そこもというのだ。
「今も行ってるで」
「そやねんな」
「色々美味いもんが増えたけど変わらん味もある」
 作之助の最初の人生の時の味がというのだ。
「それも楽しんで新しい味もな」
「どっちもやな」
「楽しんでそしてな」
「執筆をして大阪の為にもか」
「戦ってくで」
 笑顔で応えた作之助だった、昔と変わらない味のラムネを楽しんで今のお好み焼きの味もまた楽しんでの言葉だった。


変わらない味   完


                 2017・12・23 
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