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真剣で納豆な松永兄妹

作者:葛根
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第四章 問題解決と接近



昼休み。
俺はある人物に接触するために1-Cにいた。

「あれが黛由紀江か。マジで刀持ってるんだな。しかも誰もいないのにブツブツ喋ってる。噂は事実だったか」

国から帯刀を許可されているので何ら黛由紀江に問題はないが、女子高生が日本刀を持っていると言うのは些か不釣り合いだと思う。
それを容認する川神市と、川神学園はやはり面白い。
さも、自分のクラスに入るように1-Cの教室へ侵入。
そして、黛由紀江の目の前に立つ。

「……」

座っている黛由紀江が俺の方を上目遣いで見てくる。
選択肢は
・俺の女になれ
・決闘を申し込む。
・いきなりですが、友達になりませんか?
碌な選択肢がない。そもそもノープランで訪れたわけではない。
黛由紀江の友達はこのクラスでは1人。しかもよく独り言を呟いている。
それが、クラスメイトの女子達に怖がられていると。燕ちゃん経由で聞いた。
情報収集能力で言えば女である燕ちゃんは有利だ。女の子は噂や、クラスで誰と誰が付き合っているとか、誰が誰を好きなどの恋話や噂話が好きだ。
それを同じ女の子で、転校してきたばかりの燕ちゃんがクラスメイトに聞いたり、納豆を配る際にさり気なく聞いたりして情報収集をしていた。
逆に、男同士の話は俺が情報収集した。どこがパンチラスポットなのか、誰が胸が大きいか。誰が童貞であるか。無駄な情報が多かった気がする。

「君が黛由紀江で間違いない?」
「え? はい……」
「なんだー。オラを無視するなー」

ストラップが喋った。
腹話術――いや、これは何だ?

「コラ、松風。初対面の人に失礼ですよ」
「――いや、初めまして。黛由紀江と松風。俺は松永久秀。ちょっと話があるんだが、いいだろうか?」
「イエーイ、オラの存在が認められたー」
「えええ、松風を初めて見る人に認められた?!」

腹話術にしろ、気が宿って何かに成長した謎の生物にしろ黛由紀江に取って大切な何かである以上、認めた方が交流しやすくなる。

「黛由紀江、松風。よかったら俺と友達にならない? ほら、俺転校してきたばかりであんまり友達いないんだ。それに、君。風間ファミリーの一員だろ? 風間君とかと連絡先交換したんだけど、その時君いなかったからさ。良ければ君も友達になってくれない?」
「ええー!? いきなり友達が! 友達ができました!」
「やったぜ。まゆっち。オラにも友達ができたぞ!」



黛由紀江のクラス、1-Cはこの出来事で話題が持ちきりになった。
いきなり、上級生が現れてクラスメイトの黛由紀江と友達になった。
それも、あの川神百代と一戦して見事に戦い抜いた話題の人物がクラスでも半ば不気味と思っていた黛由紀江にだ。
そこから、昼休み中クラスメイトと黛由紀江は松永久秀が仲人役となり誤解を解いていった。
それにより、黛由紀江はストラップに話しかける不気味な女の子から有名人の友達という流れになり、松風も彼女が友達が少なくて話し相手になっていると良い話風にまとめていた。
ストラップに話しかけている不気味な女の子から、寂しさ故にストラップに話しかけていると言う認識がクラス公認となり、怖い、不気味だと言う誤解は解けた。
ちなみに、松風は彼女の腹話術と言う事になった。
クラスメイトの女子に囲まれて連作先を交換したり、話しかけられて黛由紀江は嬉しさのあまり、松風を九十九神から腹話術の人形にランクダウンさせていた。
黛由紀江の初めての友達である大和田伊予は、あっという間にクラスメイトと黛由紀江の間にあった蟠りのような物を解いた松永久秀を素直に尊敬した。
今度、黛由紀江と共にお礼を言いに行こうと松永久秀に会う口実を頭の中で考えていた。
それが恋心なのか、尊敬によるものなのか、本人は今の所わかっていなかった。



「兄ちゃん、早速噂になってたよ。1年女子の仲を取り持ったって」
「女子の噂の伝達力に驚愕した! 燕ちゃんの二の腕を揉んで落ち着くんだ俺!」

むにむに、と二の腕を揉む。
女の子の二の腕は偉大なるおっぱいと同じ感触と言う。

「はは、二の腕位ならまだしも! 気安く私の胸には触らせないよっと」

ベチっと手を叩き落とされた。
引越しの荷物を分担作業で分けていた時に、思わず燕ちゃんのパンツを見つけてそれをかぶって以来冷たくなっている。
俺が一体何をしたというのか。
スキンシップが減少してやや不満だ。

「兄妹で仲がいいね。あ、ご飯できたよ」
「おとんの目は腐ってるね……」
「兄妹仲良く。おとんとおかんは知らん。おかんは友達と旅行してるなんて教えてあげないんだからね!」
「うんうん。久秀はツンデレ君だね。どうやっておかんの行動を知ったの?」
「え? 普通に携帯で連絡来たけど?」
「私にも来てたよ」

おとんは崩れ落ちた。仲間外れはおとんだけであったらしい。
実のところ、おかんはそろそろおとんを許そうかと言う気らしい。
しかし、羽を伸ばしたい。
ということで、松永の名が旅行先である地方まで聞こえて来るようになれば松永も安泰と言うことで戻ってくると言っていた。
それを、俺はおとんに教えた。

「ますます頑張らないとね。アレの制作にも力が入るってもんだよ」
「使う機会があればいいけどね」



先輩らしく後輩の問題を解決。
配点:(人間関係)



 
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