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真剣で納豆な松永兄妹

作者:葛根
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第二章 予定調和の筋書き



3-Fクラスメイト達はハラハラして様子を見守る。
武神と呼ばれるクラスメイトの川神百代に対して顔の可愛い妹と同じ顔を持つ双子の兄が挑むのだ。

「では、両者あくまで稽古という事を忘れずにネ」

川神では女が強い。
その極みが川神百代という女だ。それがクラスメイト達と多くの人間の認識だ。

「では、レーーッツ! ファーーイト!!」
「いきなり川神流無双正拳突きー!」

距離を置いて対峙していた川神百代がその距離を一瞬で詰めてきた。
……ただの右ストレートパンチだな。けど、それを必殺技までに昇華させたか。
伸びのある右ストレートを左手で捌く。
右の拳の表面を左手の掌で力の流れを右へ捌く。川神百代からすれば勢いがある右ストレートが左に流される為、バランスが崩れる、その隙を付いて腹部に蹴りを打つ。前蹴り、相手を尻餅させる為に結構な力で蹴った。
しかし、ビクともしなかったので蹴り足を利用して後ろに飛んだ。

「猪突猛進だな」
「――俄然面白くなってきたぞ!」

またしても突撃してくる川神百代を迎撃する。
闘牛士の気分だぜ。
舞う。あくまでも長引かせる為に力ではなく、技で対応する。

「川神さん相手に1秒以上もってるぞ!」

蹴り、捌く。
そして、回転して肘打ち。
受けられる。
反撃がくる。
今度は拳のラッシュだ。
それを、被弾しないよう掌で受ける。
受ける。捌く。躱す。
反撃。追撃。カウンター。
しかし、川神百代の左ストレートに裁きが間に合わない。
よって、両手で防ぐ。
威力に押されて後ろに弾き飛ばされた。

「おおっと、っと」



歓声がグラウンドを包む。

「うおー。すげぇ」
「きゃー。がんばれー」
「おおー、すごいぞー」

歓声の中でルーは久秀の強さに感心をしていた。
それでも、あくまで稽古相手としては強いと言う程度であるが。
……相手が悪すぎルネ。百代には及ばないネ。でも、これは稽古ダ。
稽古とは言え、百代の拳を受け止める、か。やるネ。



「掌が焦げるわ!」
「いいぞ。久秀。もっと力を出してみろ。そんなんじゃないだろ」

嬉しそうにステップを踏んでいるのを見てアンタは動物かと俺は心の中でツッコんだ。

「もうちょい力込めるけど、期待するなよ!」
「ああ! 期待してるぞ! 松永久秀!」



グラウンドの喧噪は2年がいる教室まで聞こえていた。

「なんだあれ。姉さんとやりあってる人がいる」
「そして珍しく勝負になってる」

直江大和はその光景を椎名京が言ったように珍しいと思った。
そして、その相手の顔は見たことがあった。
昨日屋上であった人物だが、性別が違った。

「大和、知り合い?」
「声に出してないのに良く分かったね。でも――」

直江大和のクラスメイトが色々と話す中、担任である小島梅子が感嘆を漏らす。

「3-Fの転入生か。素晴らし技だな……」
「先生、川神さんの相手、知ってるんですか?」
「彼は、松永久秀。双子の妹に松永燕がいる。あの、松永だ」
「松永……聞いた事あるわ。転校してきたのね!」



拳を躱して迎撃の上段廻し蹴りを放つ。
カウンターとして上出来……!
それを川神百代は受け止める。
ガードをしたが地面を滑る。
川神百代の足元には両足の平行線が引かれていた。



「うわ! あの川神百代相手によくあそこまで戦えるな」
「地面をズザザーって漫画だけじゃないんだな」
「空手、テコンドー、カポエイラ、日拳に、アレは柔道じゃな。それに見たことのない拳法か、豊富な技が多いのう。素手でようやりおる。柔道のみでなら此方《こなた》の方が上なのじゃ」

2-Sの面々はそれぞれに感想を口にした。

「重そうな一撃。義経は見ないの?」
「義経達のために歓迎会を……なんとしても与一を連れて行かなくては――」

一部の人物は観戦どころではなかったようだ。
しかし、

「見よ。どのクラスも窓にへばりついて観戦しているな」
「川神百代とあれだけ戦えてたら魅入るわな」
「松永久秀君ですか。私のタイプですね、男ですけど充分魅力的です」



「――次はもっと力を込めてこい。私が受け止めてやるから!」
「ふー。いや、今日はここらでやめよう」

俺は力を抜き始めた。コレ以上戦わないと、体で示す。

「なんでやめる? 久秀と戦うのは面白いからもっとやろう」
「楽しいのは確かに。でもほら、HRも終わる」

HRの終了を告げる鐘が鳴り響いた。

「なんだってー。そんなに時間が経過してたのかー。残念だなー。もっとやりたいなー」
「両者良く戦ったネ。手に汗握ったヨ」

ルーは自分の未熟を少しばかり感じた。
続けていれば川神百代の勝ち、と前半はそう思っていたのだが、後半で松永久秀が徐々に川神百代の動きを捉えていたのだ。
戦闘中に相手を学び、強くなっていくように思え、ルーは戦慄した。

「楽しかったぞ。技もそうだが、もっと力を出せ」
「結構必死だったつーの。よければ、今度は燕ちゃんに稽古つけてやってよ。俺より技の種類多いよ」
「それは楽しみだ。これからも時々稽古をつけよう。もちろん正式な真剣勝負もしてみたいが」
「許可が出たらね」
「楽しみにしているぞ。久秀」

教室で行ったよりもガッチリと握手を交わした。
それとともに、各教室から声援が飛んできた。

「いいぞー。松永久秀! よく戦い抜いたな!」
「俺達は、川神学園は君達を歓迎するぜー!」

それに対して俺達は、ルー先生からマイクを借りて答える。

「皆さん、暖かいご声援、ありがとうございます」
「京都からきた松永燕です。兄共々これからよろしく」

そして、松永納豆を宣伝した。

「――試食したい人は俺か燕ちゃんが試供品を持っているので遠慮無く松永納豆を食べてねー」

転校初日の掴みはバッチリ行きそうだ。



ネバネバ
グチョグチョ
配点:(納豆)



 
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