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ソードフィッシュ

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第四章

 彼等は上空に見た、それは。
「何だあの速さは」
「緑の機体!?日本軍か」
 日本軍の航空機は大抵緑に塗られていた。このことは彼等も知っていた。
「ゼロか、あれが」
「零戦か」
「機動部隊からの迎撃の戦闘機だな」
 シーファイアからこの言葉が来た。
「それだな」
「頼めるか?」
 ソードフィッシュの隊長がシーファイア隊に言った。
「ここは」
「わかっている、その為に来ているからな」
 シーファイア隊からの返答は明瞭だった。
「それではだ」
「よし、それじゃあ俺達は予定進路で敵の機動部隊に向かう」
「そうするからな」
 ソードフィッシュ隊はこれに応える、そしてだった。
 シーファイア隊は迎撃に来た零戦に向かう。零戦は彼等が引き受ける筈だった。
 だがそのうちの数機がソードフィッシュ隊に来た。零戦のパイロット達はその二枚羽根を見て驚きを隠せずにこう言った。
「おい、噂は本当だったな」
「ああ、二枚羽根だ」
「こんなものをまだ使っていたのか?」
「あれが本当にビスマルクの足をやったのか」
「信じられないな」
「嘘じゃないのか」
 こう言う、彼等にしてみればソードフィッシュはある意味において驚愕の機体だった。
 そして戸惑いを隠せずにこんなことも話した。
「それじゃあな」
「ああ、俺達だけでやるか」
「動きも鈍いしやれるな」
「俺達だけでな」
 ソードフィッシュの動きも見て攻撃にかかる。早速だった。
 彼等は羊の群れに飛び込む狼の如くソードフィッシュ隊に襲い掛かった。それを受けてソードフィッシュ隊は逃れようとする。だが。 
 零戦は速かった、しかも運動性能もかなりのものだった。ソードフィッシュ達が上に逃げても下に逃げても幾ら旋回しても追いすがってくる、そして。
 二十ミリを放ち火の玉にしていく。次々と火を噴き空中で爆発し燃料と血を空中に撒き散らし爆発していく。
 一機、また一機と撃墜されていく。それを見てソードフィッシュのパイロット達は目を剥いてこう言い合った。
「何だこの強さは!」
「これが零戦か!」
「零戦の強さか!」
「速いぞ!」
「しかも何という運動性能だ!」
 何もかもが彼等の予想を超えていた。
 二十ミリを受ければ一撃で爆発した。僅か数機の零戦に彼等は為す術もなく倒されていく。
 迎撃は無理だった。敵機を撃とうにも。
 零戦はくまなく動き照準を合わせない。そしてソードフィッシュ達はさらに倒されていく。
 瞬く間に機体は半分以下になった、何とか生き残っている隊長機から残っているメンバーにこう通信が入った。
「駄目だ、もう無理だ」
「撤退ですか」
「攻撃中止ですか」
「このままでは全滅するだけだ」
 今も零戦は暴れて味方を撃墜している、それならばだった。
「もう逃げるべきだ」
「そうですか」
「それしかありませんか」
「シーファイア隊にも連絡を取る」
 零戦の主力を引き受けている彼等にもだというのだ。ここで零戦の主力が来ていれば残っている彼等の命がないことは明白だった。
「いいな」
「わかりました。それでは」
「仕方ありませんね」
「何とか振り切るぞ」
 敵機をそうしてだというのだ。
「空母まで帰るからな」
「ええ、何とか生きて帰りましょう」
「ここは」
 残っている面々も死にそうな顔だった。それで何とかだった。 
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