DOREAM BASEBALL ～ラブライブ～

『先制点は音ノ木坂学院！！残す攻撃はあと2回！！UTX学園、果たして追い付き、逆転することができるのか！？』

打席にはここまでヒットがない7番の木村。穂乃果は打席で構える彼女を観察し、狙い球を探る。

（1打席目は三振、2打席目もライトフライ。はっきり言ってストレートに差し込まれてるように見えるからここは・・・）

まずはストレートを外角に。いいところに決まったかのように見えたボール。だったが・・・

「ボール」
（え！？）

審判の手は上がらない。これには打者もラッキーといったような顔をしておりニヤニヤが止まらない。

（初球はストレート。これが外れちゃったから次は・・・）

2ボールにはしたくない。確実にストライクが取れるのはストレートにスライダー。穂乃果はスライダーを要求するが、これが高めに浮いてしまった。

ｷﾝｯ

変化量が大きかったため芯を多少外すことができた。だが、高めに浮いた変化球は力がなく外野まで悠々運ばれる。

『UTX学園失点直後の先頭打者が出ました！！これで先ほどの打席長打を放っている統堂に打順が回ります』

額の汗を拭う花陽。その表情は疲労を色が見て取れるほど火照っている。

（ダブルプレーを避けるためにここはバントをしてくるはず。やらせるべきか失敗を狙うべきか）

ベンチからの指示を煽る。剛はバントを成功させてもいいからとストライクを投げさせるように指示する。

ｺｯ

一塁線に転がった打球。勢いを殺したそれをことりは楽に捌いてタッチする。

「1アウト！！外野前進！！」

打順は9番。サードを守っている高橋には長打はない。外野前のヒットもホームで刺せればと外野を前に詰めさせる。

（それでいい。次の回には確実にツバサとあんじゅに回る。ダブルスプリットを使わないようにするには、点差は大きい方がいい）

初球はストレートを無難に外角へ。長打を避けるための投球だったが、打者は以外な行動に出た。

ｺｯ

（バント！？）

打者がやってきたのは送りバント。セオリー通り三塁線に転がっていったボールを急いで出てきたにこが捕球し一塁へ送る。不意を突かれたことでギリギリだったがなんとかアウトにすることができた。しかし、これでランナーは三塁まで進んだ。

『UTX学園送りバント2つでランナーを三塁まで進めました。ここで迎えるのは今日1番に入っている統堂！！』

仲間が作ってくれたチャンス。これでワンバウンドするボールは投げにくい。よって高低の揺さぶりよりも左右の揺さぶりが多くなるはず。

（初球からナックルとスプリット系は恐らくない。ここはストレートとスライダーでカウントを整えに来るだろう）

狙うはセカンドの頭上。無理に長打を狙いには行かず、単打で点数を取ることを狙う。

初球は外へ逃げていくスライダー。大きく外れてしまったため見送られ1ボール。次はストレートを投じるが、外角にわずかに外れて2ボール。

（2ボール。これは勝負を避けてくることもありえるか？）

投手不利のカウントになってしまったことで勝負を避けられるかもしれない。そう思っていた矢先、内角に厳しいボールが来る。

「ストライク！！」

右腕を挙げた審判の顔を思わず見上げる。意識が外角に向かっていたせいで反応できなかったのか、それともただ単に審判が見えてなかったのか。

（2ボール1ストライク。私ならここで一度スプリットを入れるな。できるならダブルだが、あれはほとんど使っていないからな。来るなら高速スプリットか普通のスプリット！！）

セットポジションからいつも通り足を上げて投球する。放たれたのはコースは厳しいが、高さはベルト高。

（ここから落ちる！！）

彼女の読み通り手元で小さく変化する高速スプリット。英玲奈はそれをコンパクトなスイングで捉えると、狙い通り凛の頭を越えていくタイムリー。

「よし！！」

打った瞬間思わずガッツポーズが出た。飛んだコースが良かったためセカンドも狙えるかと一塁ベースを蹴るが、希が回り込んでいたため自重する。その間に三塁ランナーはホームへと生還し、無事に1点を返した。

「英玲奈！！ナイスバッティング！！」
「ミズキ！！続きなさい！！」

ベンチからの声に手を上げて答える英玲奈とうなずいて打席に入る越智。なおも追加点のチャンス。バッテリーは慎重に攻めようと変化球中心の攻め。2ボール2ストライクからの5球目、外角へのスライダーを痛打される。

「ニャハ！！」

痛烈な打球が一、二塁間を襲う。しかし、凛がこれを横っ飛びで止める。グローブでなんとか止め、地面に落ちたボールを拾うと一塁へ送る。クリンナップに回る前になんとか攻撃を終わらせることができた。

「すごいよ凛ちゃん！！」
「ファインプレーね！！凛！！」
「よくやったわ！！まぁ、にこほどじゃないけど」
「何言ってんのにこっち、牽制で刺されてたくせに」
「そ・・・そんな～・・・って絶望みたいな顔してたよね♪」
「ウッサイ!!/////」

まだなんとかリードを保ったまま攻撃に入れる。1点を取られたショックを引きずることなくベンチに戻ってくる。

「かよちん！！あと1回だよ！！」
「う・・・うん、ありがと、凛ちゃん」

嬉しさのあまり花陽に飛び付いた凛だったが、彼女の表情を見て目を丸くさせる。

「かよ・・・ちん？」

汗が滲み呼吸が荒くなっている幼馴染み。さらには抱き付いた時、涼しいはずのドームで投げているのにすでにユニフォームもビショビショ。それだけでどれだけ彼女が神経をすり減らしながら投げているかわかった。

「凛、あんたネクストでしょ？準備しなさい」
「あ、ありがと、真姫ちゃん」

抱き付いたまま固まっていた少女を引き剥がしバットケースの前に連れていく。

「凛、花陽は今すごい疲れてるわ。それはわかってるわよね？」
「うん。ごめん」
「別に抱き付いたのが悪い訳じゃないの。ただ、点差はたったの1点。しかも次の回はツバサとあんじゅよ。できるならここで1点取れれば、あの子はかなり楽に投げられるわ」

いつにもなく真剣な表情で真姫の話に耳を傾ける凛。彼女は投球練習を終えた相手投手を見てスイッチを入れる。

「あんたが出て私が返す。行けるわよね？」
「うん！！任せるニャ！！」

拳を合わせて気合いを入れる。凛はネクストに向かい、打席に立ったキャプテンを見つめる。

（穂乃果ちゃんが出たら凛が返す。真姫ちゃんが打ったら凛は絶対ホームに返ってみせるニャ）

指揮官の目から見ても集中力が上がっているのがわかる。その気持ちは打席に立つ穂乃果にも伝わっていた。

（凛ちゃんすごい気合い。よし！！穂乃果も絶対出るよ！！）

やる気満々でツバサを見据える。その初球、積極的に振りに行くスタイルの彼女がスイングすることができなかった。

「ストライク！！」

137km・・・あまりの速さにあんじゅもミットを弾かれボールを拾い、ユニフォームで拭ってから返球する。

（来るってわかってても、このスピードはやっぱり怖いわね）

女子野球世界最速のボールを間近で見れるのはありがたいが、これだけの速度ではケガをしてしまいそうで怖い。捕手に慣れている英玲奈でさえ取り損ねたストレートを、初体験のあんじゅが確実に捌くのは少々無茶な願いだ。

（それでも捕るわよ。来なさい）

ミットの芯を見せ構える。そこに寸分違わず132kmのストレートが投げ込まれる。

（スピード表示にばらつきがある。まだ力を制御しきれていないか？）

西村もその速度に立ち上がり戦況を見据える。力の送り方にムラがあるため球速差が生まれているが、それがかえって打者のタイミングをずらしている。

（最後はナックルをやってみましょう。たぶん打てないでしょ？）
（緩急ね。腕は思いきり振らないと）

ストレートとほぼ同じ腕の振りから放たれた100kmほどのナックル。穂乃果はこれに腰砕けになり、空振りの三振を喫してしまった。


 

いかがだったでしょうか。
2対1の超好ゲームとなっている今回。凛と真姫は約束通り点数を入れれるのか！？