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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第4話

その後探索を続けたリィン達はようやく終点に到着した。



~アインヘル小要塞・終点~



「あ………」

リィン達と共に終点に到着したクルトは階段の先にある外の光が見える出入り口に気づき

「はあはあ……そ、外の光……?」

「地上階――――指定にあったテスト区画の終点なのでは?」

クルトに続くようにユウナとアルティナも出入り口に視線を向けた。

「ああ……そうみたいだな。」

「問題はこのまま、終点に迎えるかどうかですね。」

アルティナの問いかけにリィンは頷き、セレーネは苦笑していた。

「ああもう、ホントエレボニア人って……!学校にこんな訓練施設を作るなんてあり得なさすぎでしょう!?」

「ふう、エレボニア人で一括りにしないで欲しいんだが……――――G・シュミット。本当にあの高名な博士本人なんですよね?」

ユウナの文句に呆れた表情で溜息を吐いたクルトはある事を思い出してリィンに訊ね

「ああ………俺も話には聞いていたが。ただどうして第Ⅱ分校の顧問として来ているかは知らないが――――」

そしてクルトの質問にリィンが答えかけたその時、何かの気配をリィンは感じ取った。

「これは――――」

「センサーに警告。霊子反応を検出しました。」

「”やっぱり”、このまま終点には迎えませんか……」

「へ……」

「霊子反応……?」

リィンは真剣な表情で正面を見つめ、アルティナは報告し、セレーネは疲れた表情で溜息を吐き、ユウナとクルトはそれぞれ不思議そうな表情をした。

「み、皆さん、逃げてくださいっ!」

するとその時少女の警告が聞こえ、警告が聞こえると同時にリィン達の目の前に大型の甲冑の人形が現れた!



「…………!?」

「こ、これって………”機甲兵”!?」

巨大な甲冑の人形の登場にクルトとユウナは驚き

「いえ、これは――――」

「確かユミルの山道にも現れ、”煌魔城”でも徘徊していた……!」

「”魔煌兵”―――暗黒時代の魔導ゴーレムだ!シュミット博士!まさか、これも貴方が!?」

一方甲冑の人形に見覚えがあるアルティナはユウナの推測を否定し、セレーネは目を見開き、リィンは信じられない表情で声を上げた後自分達の様子を見守っているシュミット博士に問いかけた。

「―――内戦時に出現していた旧時代マシナリィを捕獲した。機甲兵よりも出力は劣るが自律行動できるのは悪くない。それの撃破をもって、今回のテストを終了とする。」

「くっ、本気か……!?」

「ちょっとマッド博士!いい加減にしなさいよね!?」

シュミット博士の説明を聞いたクルトは唇を噛みしめ、ユウナは文句を言った。

「(このメンバーじゃ分が悪いな。こうなったら――――)――――セレーネは”竜化”を!来い、”灰の騎神”―――――」

「わかりましたわ!ハァァァァァ………」

一方自分達と相手の戦力を即座に分析したリィンはセレーネに指示をした後2年前の内戦で手に入れた”騎神”――――”灰の騎神ヴァリマール”を呼ぼうとし、リィンの指示に頷いたセレーネが竜化をしようと力を溜め始めたが

「騎神の使用並びに竜化、そしてセレーネ・L・アルフヘイムを除いたお前に力を貸している異種族達の助力は禁止だ。LV0の難易度は騎神を含めた”人”とは比べものにならない”強力な存在”の介入を想定していない。その程度の相手に使ったら正確なテストにはならぬだろう。」

シュミット博士の指摘を聞いてリィンとセレーネはそれぞれの行動を中断した。

「シュバルツァー、せいぜいお前が”奥の手”を使うか――――」

「……………」

(奥の手……?)

シュミット博士の話を聞いたリィンが静かな表情で黙り込んでいる中シュミット博士の話が気になったクルトは不思議そうな表情でリィンを見つめた。

「―――まだ使っていない”ARCUSⅡ”の新機能を引き出してみせるがいい。」

「”ブレイブオーダー”モードを起動してください……!オリビエさん――――オリヴァルト皇子がリィン教官とセレーネ教官ならきっと使いこなせるって言ってました!」

シュミット博士と少女の話を聞いたリィンとセレーネは第Ⅱ分校に来る少し前に、バリアハートを訊ねてきたオリヴァルト皇子の話を思い出した。



――――私の頼みに応じてくれたことに改めて心からの感謝を、リィン君、セレーネ君。



お礼と言ってはなんだが、完成したばかりの”ARCUSⅡ”を”君達全員”に贈らせてもらうよ。



実は通信面でちょっとしたカスタムがされているんだが………他にも”ENIGMA・R(リメイク)”には搭載していない画期的な新機能があるから実戦で役立ててくれたまえ。



「あ………」

「そうか―――了解だ!防御陣――――”鉄心”!!」

オリヴァルト皇子の話を思い出したセレーネは呆けた声を出し、リィンは頷いた後戦術オーブメントを取り出してある機能を起動させた。するとオーブメントから光が放たれ、リィン達全員を包み込んだ。

「これは――――!?」

「な、何かがあの人から伝わってくる……!?」

「戦術リンク―――いえ、それとは別の………」

「これが新たな機能―――”ブレイブオーダー”ですか……!」

リィンが起動させた戦術オーブメントの新たな機能に生徒達がそれぞれ戸惑っている中予め説明を受けて知っていたセレーネは驚きの表情で呟いた。

「――――Ⅶ組総員、戦闘準備!”ブレイブオーダー”起動――――トールズ第Ⅱ分校、Ⅶ組特務科、全力で目標を撃破する!」

「おおっ!」

そしてリィンの号令を合図にユウナ達は巨大な甲冑の人形―――――”魔煌兵”ダイアウルフとの戦闘を開始した!



「……………」

「「!!」」

「くっ!?」

「キャッ!?」

「あうっ!?」

戦闘開始時敵は先制攻撃代わりにリィン達目がけて巨大な拳を振り下ろし、敵の行動に真っ先に気づいたリィンとセレーネは左右に跳躍して距離を取った。すると敵の拳が地面にぶつかった瞬間衝撃波が発生して、リィンとセレーネと違い、回避や防御行動に遅れたユウナ達にダメージを与えた。

「回復します――――アルジェムヒール!!」

「――――――!」

「二の型―――洸破斬!!」

「落ちよ、聖なる雷――――ライトニングプラズマ!!」

敵は巨体の為攻撃の威力も凄まじかったが、ユウナ達はリィンの”オーダー”によって防御能力が高められていた事で受けるダメージも軽減されていた為、耐える事ができ、敵の攻撃が終わるとアルティナは受けたダメージを回復する為にクラウ=ソラスに回復エネルギーを解き放させて自分達の傷を回復し、リィンとセレーネはそれぞれ発動が早い遠距離攻撃を敵に叩き込んで敵の注意を自分達へと惹きつけていた。

「ありがとう、アルティナ!えいっ!」

「ハアッ!」

アルティナとクラウ=ソラスのクラフトによって傷が回復したユウナとクルトはそれぞれ左右の足に武器を叩き込んでダメージを与えた。

「秘技―――裏疾風!斬!!崩したぞ!」

続けてリィンが鎌鼬を纏った電光石火の2連続攻撃で追撃して敵の態勢を崩し

「ブリューナク起動、照射。」

「―――――!」

リィンが作った隙を逃さないかのようにリィンと戦術リンクを結んでいたアルティナがクラウ=ソラスにレーザーを発射させて更なる追撃を叩き込んで敵のダメージを重ねた。一方次々とダメージを受けた敵は反撃をしようとしたが

「光の加護を―――――ホーリーミスト!!」

セレーネが発動した仲間全員を光を纏わせて一定時間戦場から姿を消す”ブレイブオーダー”――――ホーリーミストによってリィン達全員が戦場から姿を消した事によって攻撃対象がわからなくなった為、何もできなくなった。



「ハァァァァァ………受けろ、大地の一撃!!崩したわ!」

「!?」

セレーネのブレイブオーダーによって敵が自分達を認識していない事を利用したユウナはトンファーに地属性の魔力を溜め込んで強烈な一撃――――アースブレイクを敵に叩き込んだ。するとトンファーの打撃力に7属性の中で最も打撃力や衝撃力が強い大地の魔力が重ねられた事による一撃に加えて後方からの奇襲攻撃を受けた敵は怯むと共に態勢を崩し

「双波斬!!」

ユウナと戦術リンクを結んでいるクルトが双剣の片方の剣で斬り上げた後続けてもう片方の剣で斬り下ろしによる2連続攻撃を叩き込んで敵に対するダメージを重ねた。

「―――――――!!」

ダメージを重ねた事によって敵は咆哮を上げて”高揚”状態になって、反撃をしようとしたが姿を消すセレーネのブレイブオーダーがまだ続いていた事によって、反撃はできなかった。

「炎よ、焼き飛ばせ――――灼熱の大熱風!!」

「聖なる光よ、今ここに集いて炸裂せよ―――ホーリーバースト!!」

そこにリィンが発動した魔術による炎の竜巻とセレーネが発動した魔術による集束した光の爆裂が敵に襲い掛かり、”高揚”状態になっている事によって防御が無防備だった敵は大ダメージを受けた。

「―――行きます!トランスフォーム!!――――シンクロ完了。ゴー―――アルカディス・ギア!!よーい――――どん!」

するとその時アルティナは一瞬でクラウ=ソラスと一体化し、敵に突撃した!

「ブリューナク展開、照射。――――止めです。」

クラウ=ソラスと一体化したアルティナは敵に突撃しながら両肩についている砲口から集束エネルギーを敵に向けて放った後敵の頭上へと移動し

「ハァァァァァ………斬!!」

止めにブレードの部分である両腕を縦に回転させて敵に止めの一撃を叩き込んだ!

「――――――――!!??」

クラウ=ソラスと一体化し、強烈な連携攻撃を放つアルティナのSクラフト―――アルカディス・ギアによるダメージに耐えきれなくなった敵は咆哮を上げながら消滅した!



「はあはあ……た、倒せた………」

「………っ………はあはあ………」

「………体力低下。小休止します。」

敵の消滅を確認したユウナ達生徒3人は安堵や疲労によって地面に跪いたりを息を切らせたりし

「何とか全員無事で終えましたわね。」

「…………………」

まだまだ余力があるセレーネとリィンはそれぞれ武器を収めて生徒達に視線を向けた。

「お、お疲れ様でした!テストは全て終了です!―――博士、いくらなんでも無茶苦茶ですよ~!」

「フン、想定よりもかなり早いか。次は難度を2~3段階上げるとして………」

「ぁうぅっ……聞いてくださいよ~っ!?」

小要塞内に聞こえてきた少女とシュミット博士の会話を聞いていたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて呆れた表情をしていた。



「………滅茶苦茶すぎだろう。」

「次って、また同じことをやらせようってわけ……?」

「可能性は高そうですね。しかも会話の内容からして、今回のテストの難易度より更に難易度が上がっている可能性大です。」

「――――いずれにせよ、”実力テスト”は終了だ。」

「皆さん、お疲れ様でした。」

「………ぁ…………」

「………すみません。」

「………ありがとうございます。」

それぞれ疲労している様子のユウナ達にセレーネと共に労いの言葉をかけたリィンはユウナとクルトに、セレーネはアルティナに手を差し出して立ち上がらせた。

「3人とも、よく頑張った。ARCUSⅡの新モード、”ブレイブオーダー”も成功―――上出来といっていいだろう。それぞれ課題はあるだろうが一つ一つクリアしていけばいい。”Ⅶ組・特務科”――――人数の少なさといい、今回のテストといい、不審に思うのも当然かもしれない。教官として所か一人の大人としてまだまだ未熟でロクに概要を知らない俺達が教官を務めるのも不安だろう。先程言ったように、希望があれば他のクラスへの転科を掛け合う事も約束する。だから―――最後は君達自身に決めて欲しい。自分の考え、やりたい事、なりたい将来、今考えられる限りの”自分自身”の全てと向き合った上で今回のテストという手応えを通じて”Ⅶ組”に所属するかどうかを。多分それが、”Ⅶ組”に所属する最大の”決め手”となるだろうから。」

「どうかわたくし達に遠慮せず、ハッキリと自分の”意志”を口にしてください。」

「「「……………」」」

リィンとセレーネの説明を聞いたユウナ達生徒達はそれぞれ黙って考え込み、やがて最初にユウナが口を開いた。



「――――ユウナ・クロフォード。”Ⅶ組・特務科”に参加します。」

「え――――」

「………ぁ…………」

ユウナの答えを聞いたクルトとアルティナはそれぞれ呆けた様子でユウナを見つめた。

「勘違いしないでください。入りたいからじゃありません。あたしはクロスベルから様々な複雑な経緯でこの学校に来ました。エレボニアの事は、あまり好きじゃありません。」

「みたいだな。」

「……だけど、今回のテストで貴方達の指示やアドバイスは適切でした。さっきの化物だって、お二人がいなければ撃破できなかったでしょう。はっきり言って悔しいですし、警察学校で学んだ事を活かせなかったのも不本意です。―――だから結果を出すまでは、実力を示せるまでは”Ⅶ組”にいます。”灰色の騎士”に”聖竜の姫君”――――メンフィル、エレボニアの両帝国の英雄にしてあの”特務支援課”の一員でもあり、クロスベルの英雄でもあった貴方達に一人前として認められるくらいになるまでは。」

「ユウナさん……」

(……滅茶苦茶だろう……)

(……論理的整合性はありそうですが。)

ユウナの決意を知ったセレーネは目を丸くし、クルトは呆れ、アルティナは納得した様子でユウナを見つめていた。



「ふう……その英雄というのは正直止めて貰いたいんだが。わかった、君の意志を尊重する。”Ⅶ組”へようこそ―――ユウナ。」

「――――はい!」

「クルト・ヴァンダール・自分も”Ⅶ組”に参加します。ただし―――積極的な理由はありません。」

そしてリィンの言葉にユウナが力強く頷くとクルトも続くように”Ⅶ組”への参加の申し出を口にした。

「え……」

「それは……」

「この第Ⅱ分校が、自分のクラスをここに定めたのなら異存はありません。強いて言うなら、今回のように実戦の機会が多いのは助かります。受け継いだ剣を錆び付かせてしまったら家族への面目も立ちませんから。」

「受け継いだ剣……」

「ヴァンダール流ですか。」

クルトの説明を聞いたユウナは呆けた表情をし、アルティナは静かな表情で呟いた。

「それと、折角なので”八葉”とあの兄が”剣士として間違いなく双界最強”と称した人物が修めている剣技―――”飛燕”の一端には触れさせてもらおうかと。――――”飛燕”の使い手の方はまだ実際にこの目にしていないので何とも言えませんが、”八葉”の方は正直聞いていたほどでは無かったというのが本音ですが。」

「え、え~と……」

(って、生意気すぎでしょ……!?)

(人のことは全く言えないと思いますが。)

(というか”飛燕剣”の一端に触れたいという事は、クルトさんはアイドス様の事もご存知なのでしょうね……)

(まあ、彼はお姉様やセリカとも親交があるミュラーの弟なのだから、私の存在や”飛燕剣”の事を知っていてもおかしくないわよ。)

クルトのリィンへの評価にセレーネは困った表情をし、呆れているユウナにアルティナはジト目で指摘し、冷や汗をかいて呟いたメサイアの念話にアイドスは苦笑しながら答えた。



「はは……君達と同じくいまだ修行中の身というだけさ。―――了解した、クルト。”Ⅶ組”への参加を歓迎する。」

「………はい。」

「……後はアルティナさん、貴女だけですよ。」

リィンの言葉にクルトが頷いた後リィン達はアルティナに注目し、セレーネがアルティナに答えを促した。

「………?何故わたしにも確認を?その必要はありません。任務内容には準じて――――」

セレーネの問いかけに不思議そうな表情で首を傾げたアルティナは答えを口にしようとしたが

「そうじゃない、アルティナ。君自身の意志でどうしたいか決めるんだ。」

「???」

「………………」

(……意味がわからないのか?)

リィンの答えを制されて指摘され、リィンの指摘に不思議そうな表情で首を傾げている様子のアルティナをユウナは目を丸くして見守り、クルトは戸惑いの表情で見守っていた。



「―――さっきも言った通り、自分自身の意志を示さない限り参加を認めるつもりはない。決めたのが分校長だろうと、たとえリウイ陛下やメンフィル帝国政府だろうとその一線だけは譲らないつもりだ。」

「それにアルティナさんもご自身で仰ったでしょう?分校への入学はお兄様達―――シュバルツァー家がアルティナさんに”普通の子供として”学院生活を経験して欲しいという心遣いも含まれている事を。それなのに、誰かの意図に従ってこのクラスに参加する事はお兄様達は望んでいないと思いますわよ?」

「そうだな……誰かに決められてこのクラスに参加する事は俺達もそうだが、父さん達もきっと望んでいない。……何でもいい。君自身の”根拠”を示してくれ。」

「私自身の”根拠”………」

リィンとセレーネに指摘されたアルティナは考え込んだ。

「ちょ、ちょっと……!何を意地悪しているんですか!?事情は知らないけどよくわかってない子に―――」

アルティナの様子を見たユウナはアルティナを庇う為にリィンとセレーネに文句を言いかけたその時

「……”根拠””は思いつきません。ですが――――メンフィルの捕虜の身であった私を教官のご厚意によって教官達―――シュバルツァー家に引き取られてからこの1年半、内戦を含めて貴方達の事をサポートさせてもらいました。この分校で所属するのなら『リィン教官のクラス』であるのが”適切”であると考えます。それと1年半前内戦終結の為に、”特務部隊”であった私達と協力関係であったトールズ士官学院”Ⅶ組”――――その名前の響きに少しばかり興味もあります。……それでは不十分でしょうか?」

アルティナも自身の答えを出して、リィンとセレーネに確認した。

「あ………」

「……………」

「―――今はそれで十分だ。よろしく頼む、アルティナ。」

「改めてよろしくお願いしますわね、アルティナさん。」

「はい。」

そしてユウナとクルトが見守っている中リィンとセレーネはそれぞれアルティナをⅦ組の一員と受け入れる事を決め、二人の言葉にアルティナは頷いた。

「ふ、ふん……勿体ぶっちゃって。」

「ふう………波乱含みだな。」

「――――それでは、この場をもって”Ⅶ組・特務科”の発足を宣言する。お互い”新米”同士、教官と生徒というだけでなく―――”仲間”として共に汗をかき、切磋琢磨していこう!」

そしてリィンは力強い宣言をその場で口にしてユウナ達を見回した。



「リィン君………」

「うふふ、まさに”青春”をしているわね、リィンお兄さんったら♪」

一方リィン達の様子を地上へと続く出入り口から見守っていたトワは微笑み、レンは小悪魔な笑みを浮かべ

「へえ……どうなってるか気になって来てみりゃあ。」

「クク……さすがは”特務支援課”と”旧Ⅶ組”に深く関わっていただけはあるな。」

ランディとランドロスは興味ありげな様子でリィンを見つめていた。

「……勝手なことを。一教官に生徒の所属を決定できる権限などないというのに。」

「フフ、転科の願いがあれば私は認めるつもりではありましたが。」

一方リィンの行動にミハイル少佐が呆れている一方リアンヌ分校長は意外な答えを口にした。

「分校長、お言葉ですが――――」

「つり合いが取れれば問題はないでしょう。彼らは己で”決めた”のですから。Ⅷ組、Ⅸ組共に出だしは順調、”捨石”にしては上出来の船出です。―――――近日中に動きがあります。激動の時代に翻弄され、儚く散らせたくなければその”時”が来るまでに雛鳥たちを鍛え続けなさい。」

そしてミハイル少佐の注意を制したリアンヌ分校長はその場にいる教官達に忠告し

「も、勿論です……!」

「―――ま、生徒が死なないようにするのも”教官”の務めだものね。」

「おうよ!クク、どんな風に雛鳥達を成長させるか、今から楽しみだぜ!」

「……イエス、マム。」

「やれやれ―――大変な所に来ちまったなぁ。」

リアンヌ分校長の忠告にその場にいる教官達はそれぞれの答えを口にした。



~アインヘル小要塞・外~



「ったく、ラッセルの爺さん以上にマッドすぎるだろうが……留学についてもそうだが、あんなジジイに弟子入りしちまって本当に良かったのか?」

その後小要塞から去っていくシュミット博士を金髪の少女と共に見守っていた赤毛の男は呆れた表情で溜息を吐いた後金髪の少女に訊ねた。

「あはは……でもでも、やっぱり凄いヒトです……!同じ新入生の子達とも仲良くやっていけそうですし……レンちゃんもいますし……―――それに、エレボニアに入れないお姉ちゃんたちの”代理”もちゃんと務めたいですから……!」

「やれやれ、いつの間にかデカくなったっつーか……もう”チビスケ”とは呼べねぇな。」

金髪の少女の話を聞いた赤毛の男は苦笑した後少女の頭を優しくなでた。

「あ………えへへ……」

「”連中”は確実に動き始めてる。帝国政府も、それ以外の勢力もな。スチャラカ皇子のツテで遠距離通信のラインは確保できた。何かあったら駆けつける。遠慮なく連絡しろ―――ティータ。」

「はいっ……!アガットさんも気を付けてあんまり無茶しないでください!」

そして赤毛の男―――アガットの言葉に金髪の少女―――ティータは力強い頷いた。

「――――うふふ、なるほどね。貴方がエレボニア入りした”一番の理由”は”やっぱり”ティータを守る為だったのね。」

「レ、レンちゃん……!」

「なっ、テメェ、何でここにいやがる……!?」

するとその時レンが眼鏡を外して二人に近づき、近づいてきたレンに気づいたティータは驚き、アガットは信じられない表情でレンに訊ねた。



「”何でここにいやがる”とはご挨拶ね~。レンは第Ⅱ分校の”教官”―――”先生”の一人なんだから、この分校のどこにいても当然でしょう?」

「フン…………おい、一つ聞きたい事がある。何でテメェ―――いや、メンフィルやクロスベルの連中はあのスチャラカ皇子の頼みに応じてこの学校の教師として派遣されてきた?幾ら知り合いの頼みだからと言って、皇族の連中どころか1年半前の戦争で生まれた”英雄”まで引っ張り出して1年半前の戦争や内戦の件でそれぞれ国家間の関係が微妙な状態になっているエレボニアにわざわざ入り込むなんて、どう考えてもありえねぇだろう。まさかとは思うが、1年半前テメェの国の”灰色の騎士”の活躍で中途半端になったエレボニアとの因縁の”ケリ”をつける為か……?」

からかいの表情で答えたレンの様子にアガットは鼻を鳴らした後目を細めてレンに問いかけ

「へえ?」

「ア、アガットさん……レンちゃん………」

アガットの問いかけにレンが興味ありげな表情をしている中ティータは心配そうな表情で二人を見比べていた。

「………うふふ、”A級”への昇格祝いに良い事を教えてあげる。1年半前の件で大きく衰退したエレボニアが”衰退した原因”に対する復讐とかを考えていなかったら、レン達は”何もするつもりはない”わよ。――――最も逆に言えば、”何かするつもりなら”、レン達も”相応の対応をする”という意味にもなるけどねぇ?―――――”主計科”のみんなも既にオリエンテーションが終わっているから、ティータも早く戻って合流してね。」

「………チッ………”やっぱり”か。」

「レンちゃん…………」

そしてレンは意味ありげな笑みを浮かべて答えた後その場から去り、その様子を見守っていたアガットは舌打ちをした後厳しい表情をし、ティータは複雑そうな表情でレンの後ろ姿を見守っていた―――――




 
 

 
後書き
閃Ⅲ篇は次の話と序章終了時のリィン達のステータスを更新した後閃Ⅲ篇は一旦ストップして焔の軌跡の続きの更新に戻ろうと思っていますので焔の軌跡の続きをお待ちしている人達はもう少々お待ちください 
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