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クール=ビューティーだけれど

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第七章

「そうしたものは何があっても」
「誰にも見せない様にしていたんだね」
「学生時代実際によく言われました」
 その運動音痴をだというのだ。
「ですからどうしても」
「それを見せたくなかった」
「隠していました」
「子供や学生なんてそんなものだよ」
 バロアは悠然と笑ってこうも言った。
「そうしたことを言うものだ」
「若いからですね」
「若さ故の過ちだね」
 ここで出した言葉は日本のアニメを彷彿とさせるものだった。
「それはどうしてもあるからね」
「そしてそういうことはですか」
「気にすることじゃないよ」
 こうアンリエッタに返す。
「誰だってそうした経験はあるし過去は過去だからね」
「では私の運動音痴は」
「いいんだよ、それで」
 不得意ならそれでいい、人には誰でもそれがあるからだというのだ。
「確かに運スポーツは健康にいいけれどね」
「それでもですね」
「そう、逆にそれが今君への見方をいいものに変えているから」
 だからこそだというのだ。
「それでいいんだよ」
「そうですか」
「人間ってのは絶対に不得意がある」
 全てはそこからだった。
「それを認めて受け入れてね」
「やっていくことが大事なのですね」
「本当に君への見方は逆にかなりよくなったから」
 逆にそうなったから、だからだった。
 二人で笑顔で言う。そうした話をしてから。
 アンリエッタはこれまで誰にも見せなかった穏やかな笑みになってこう言ったのだった。
「ではこれからは」
「運動音痴のこともだね」
「自分で受け入れてやっていきます」
「そうするといいよ」
「確かに苦手ですがやってもいきたいですね」
「おや、考えが変わったかい?」
「そうですね。確かにスポーツは健康にもいいですし」
 これまでわかっていたが苦手故に避けていた、だが自分が不得意であるのを受け入れて逆にだというのだ。
「やっていこうかと思います」
「そえがいいね。それじゃあね」
「はい、それでは」 
 笑顔で言うアンリエッタだった。その上で食事も楽しんだ。
 人間味があると言われる様になり自分でも不得意を受け入れたアンリエッタはさらに評価が高くなった。。彼女自身もクールなだけでなく人間としての穏やかさも身に着けた、不得意がかえって彼女をそうさせたのだった。


クール=ビューティーだけれど   完


                            2012・9・30 
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