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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第四十五話 帰還への道


第四十五話 帰還への道

宇宙暦788年 帝国歴479年3月1日

■自由惑星同盟統合作戦本部諜報部       チャールズ・ブロンズ

 昨年12月より上司の情報部長、サミュエル・シャントルイユ中将から命令を受けていた、
捕虜交換時に送還捕虜に紛れて帝国内に進入をさせる諜報員の選抜が終了した。
潜入させる諜報員の数は今までと比べものにならない100名であり、
いずれも腕利き揃いである。
早い者では数年前から収容所内で活動し内部にとけ込んできた。

今までであれば、帰還兵は反逆者等に問われ社会秩序維持局による拘束を受けたが、
今回は皇帝の恩赦で自由の身である、その結果安全な潜入が行える。
このチャンスに潜入させねばどうなるのであろうか。

数年にわたり、死亡者や亡命希望者と入れ替わり100名を潜入させた、
あとは、交換を待つばかりである。

さらに前回の様に帝国も諜報員を我が方と同じく多数潜入させて来る事は自明の理である。
それら諜報員を燻り出す準備も順次終了してきている。
我が方の諜報能力の方が優れていることを帝国に知らしめてやる。

帝国暦479年3月1日

■オーディン 統帥本部  情報部  ヨアヒム・キューバウアー  

 俘虜交換に対して情報部は腕利きの諜報員を叛徒の帰還兵に紛れ込ます為、
人材確保、経歴調査、叛徒語の完全なマスター、スラングや生活環境などのレクチャー、
諜報員のなりすました帰還者名簿等の準備を行ってきたのであるが、

昨日統帥本部長シュタインホフ元帥から帰還兵に諜報員を混ぜ忍び込ますことを、
すべて中止せよと命令が下った。
我々はこの日の為に長い年月諜報員潜入準備を行ってきたにもかかわらず、
いきなりの中止命令、全員が納得がいかずにシュタインホフ元帥に意見を述べに行ったが、
この中止命令自体が皇帝陛下の勅命で行われたと知り驚いてしまった。

皇帝陛下が何を考えているか判らないが、
折角のチャンスだ無視してでも潜入させようと準備を続けようとしたが、
シュタインホフ元帥が万が一にも諜報員を潜入させた場合、
いかなる理由があろうと、
関係者全員を不敬罪及び反逆罪に処し一族連座により悉く死罪となると真剣な表情で独白した。

あの様な真剣な元帥は見た事もなく我々もこのまま続けた場合の末路を想像できた為、
今回は断腸の思いで諜報員潜入を中止する事とした。

さらに帰還予定兵の名簿作成に於いて、一定量の死亡者をそのままリストに入れるように命令された。
此にはどの様な意図があるか判らないが、此も勅命だとのことであるから黙々と進めよう。


帝国暦479年3月1日

■オーデイン  ノイエ・サンスーシ   小部屋   テレーゼ・フォン・ゴールデンバウム

緊急の事だった為、ケスラーのみが来られた為ケスラーに連絡です。

「俘虜交換時のことですけど、
帰還する臣民の健康状態を確認し病気等が有った場合直ぐに治療できるように、
出来る限り多数の病院船を随伴させましょう、
あらゆる病気心臓病などの専門医も乗せて下さい」

主にケーフェンヒラー爺様の心臓疾患に対する為だけど。

「了解しました、此も陛下のお慈悲の為ですか?」
「ええ其れもありますが、帰還臣民の健康診断も行います、
形態上健康診断でお父様が臣民の為に行うように見えますが、
実際は健康診断にかこつけ全員の身体的特徴と全身のCTスキャン、網膜パターン、血液、DNA、整形などを記録します」

「諜報員をあぶり出す為ですか」
「ケスラーその通りです、さらに帰還兵の血縁のある親族DNAを検査しその帰還兵DNAと照合します、そうすれば一気にあぶり出せますよ、
いくら整形や網膜パターンを模倣してもDNAは変える事は出来ませんからね」

「DNA検査ですか、此方では余り行われない方式です」

劣悪遺伝子排除法の影響か此は困った。
フェザーンからDNA検査キットを輸入できないかな?
独立商人なら儲け話に乗ってくるはず。

「それでは、緊急にフェザーンから検査キットを輸入できませんか?」
「自治政府がどうでますか」
「其処で独立商人をつかい密輸させます、ある程度の金額を出せば喜んで持ってきてくれるでしょう」
「確かにそう思えます、判りました早急に今回の事準備させます」
「ケスラー出来れば300万セットお願いします」
「お任せ下さい」


宇宙暦788年 帝国暦479年3月10日

自由惑星同盟ネプテイス捕虜収容所       アルフレート・ミュールマイスター

 いよいよ今日が来た、皆ソワソワしている帰れるのだ帝国へ、
皆この日を待っていたのだ。皇帝陛下のお慈悲により家族の元へ帰れる、
大多数の兵達は喜んでいるが一部は未だに、
『信じられない、帰国したら殺される』と騒ぐ者が居るが俺は皇帝陛下を信じる事にした、
社会秩序維持局は恐ろしいが、、まさか陛下の勅命を無視する訳がないはずだ。
荷物の準備は既に終わり、宇宙港へ向かうだけだ。

娘ももう15歳か無事でいてくれればいいが、
あの娘は母親に似て菫色の瞳、クリーム色の髪の美人だから、
変な男に騙されていなければ良いのだが其れが心配だ。
しかしあの子の身のこなしは、燕のようだから逃げ切れるだろう。

いよいよ出発だ、多くの兵が自発的に皇帝陛下万歳を言い始め、
看守に怒鳴られているが、その声は我々の心に染みいっていった。
さあ帝国へ帰ろう。


宇宙暦788年 帝国暦479年3月10日

■銀河帝国 アルタイル星系第7惑星の矯正区   ヴィットリオ・エマニエール 

 なんとか生き残った、あの日以来何時寝首をかかれるか判らない日々だった、
彼方此方で帰る為に他人を落とし入れる事が日常的に行われてきた、
隣の奴も信用できない、信用できるのは自分だけだった。

其れも今終わる、矯正区から宇宙港へ1時間の旅らしい。
3日前に帰還者リストが発表された後、
帰れる奴帰れない奴の間で凄まじい睨み合いが続き一触即発の状態であった、
その夜からおぞましき事件が多数発生した。
思い出すのも震えが出る、あの日からの事は二度と口に出さない思い出したくない。

リストには死んだ人間の名前も入っていた、そうだろう俺達が死んだと届けなかったのだから、
その話が伝わると、集めておいた死者の認識票を持って成りすます者達も続出した。
そして多くの者が自分の名前を棄て死者の名前を名乗っていった、
此処に居るぐらいなら、死人を使っても良心は痛まないのだろう、
俺もその立場なら同じ事をするだろうから。


宇宙暦788年 帝国暦479年3月10日

■タナトス星系惑星エコニア捕虜収容所    クリストフ・フォン・ケーフェンヒラー

 結局は此処を追い出される、所長のコステアが俺を帰還者リストに無理矢理載せたのだから、
儂としては此処で骨を埋める気満々だったが、そうも如何のが人生か面白いわ帝国に帰りたくはないが、
皇帝陛下の企みを知るのも余生の楽しみやもしれん、調べてみるかの。

蔵書も全部持って行けと言われたが、この量は大変じゃ若い者が手伝ってくれるから助かるの。

プレスブルグは相変わらず元気な奴じゃ、皇帝陛下万歳ともう30分も叫んでおる、
五月蠅くて仕方がないの。
さて帰国の時間かどの様な事が待っているのか、楽しみじゃ。

 
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