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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第四十三話 男爵ラインハルト


今回もテレーゼがむっちゃ黒いです。
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第四十三話 男爵ラインハルト

帝国暦479年2月20日

■オーディン ノイエ・サンスーシ  黒真珠の間

 銀河帝国皇帝フリードリヒ4世の戴冠23周年記念と叛徒軍撃退記念の宴がこの日行われていた。

美しく着飾った紳士淑女が集まる、
その数1万人以上という帝国中の貴族、高級軍人が集まっている。

フリードリヒ4世が皆を見ながら、国務尚書リヒテンラーデ侯に目配せする。
リヒテンラーデ侯が陛下のお言葉であると言うとざわめきがスーッと消える。
フリードリヒ4世が徐にマイクの前に立つ。

「今日は予の為よう来てくれた、卿等の忠誠を嬉しゅう思う」

多くの貴族軍人が一斉に言う。
「皇帝陛下の御為に」

その言葉を聞きながら陛下が話す。
「そこで、今宵は長年にわたり帝国の為に叛徒共と戦いし者達に褒美を取らそうと思う」

会場がざわめく、誰が褒美を貰うのだろうか気になるところなのだろう。
彼方此方で話し合う為に固まりが作られ、ヒソヒソ話が行われる。
    
「ミュッケンベルガー上級大将を此へ」
「はっ」
ミュッケルベルガーが打ち合わせ通り、直ぐさま陛下の前で跪く。

「ミュッケルベルガーよ、卿は長年にわたり叛徒との戦いで多大なる功績を挙げた、
よって予は卿に帝国貴族たる、エッシェンバッハ子爵位と所領を下賜する」

「身に余る光栄、臣は皇帝陛下に永遠の忠誠をお誓いいたします」
「よいよい、卿は今より、エッシェンバッハ子爵じゃ」
「御意」

彼方此方からざわめきが聞こえるが、
悪口や不満じみたモノは殆ど聞こえない。
むしろ叙爵を賞する声の方が多いようだ。

ミュッケルベルガーも御前から下がったあと、
知り合いの貴族や、同僚の提督達から口々に祝いの言葉を浴びている。

『ミュッケンベルガーおめでとう』
『違うだろう、エッシェンバッハ子爵だろう、おめでとう』
ミュッケンベルガーも夫人も照れくさそうだ。

続いて陛下がお言葉をお話しした。

「さて此だけではなく功績を挙げし者には階級の昇進と一時金を下賜する」
頷く軍人達。
「さらにじゃ、この度叛乱軍に囚われし我が臣民を100万帰国させる事とした」

会場がざわめく、それは犯罪者を連れ戻すようなモノではないかと言う声も聞こえる。
「よいか、囚われし我が臣民を予の戴冠23周年記念と叛徒軍の撃退の記念をもって恩赦といたす」
ザワザワとなる黒真珠の間。

「100万の兵の恩赦は予の決めし事じゃ意見はならぬぞ」

ここまで言われ、何かを言う貴族軍人はいなくなった。

「其れとじゃ、テレーゼも8歳じゃ、其処で今回所領を与える事とした」
この話には色めきだつ貴族が多く出た、
先ほどの事など消し飛んだように明るい話が始まっている。

打ち合わせ通りに、リヒテンラーデ侯爵が陛下に尋ねる、
「皇帝陛下、皇女殿下におきましては、どちらの御領地をお与えなさるのですか?」

「うむ、国務尚書、ローエングラム領を与えるつもりじゃ」
またざわめきが聞こえる、ローエングラム領は豊かな星系だ。
しかもローエングラム伯爵家は銀河帝国開闢以来の名門、
その門地を皇女殿下に御継がせあらせらる。

それはつまり皇女殿下の配偶者がローエングラム伯爵と成ると言う事ではないかと、
多くの者が程度の差はあれど思いつくのに時間は掛からなかった。
多くの者から祝福の声が上がる。

「おおこのランズベルグ伯アルフレッド感嘆の極み、
皇女殿下の為に詩を捧げまする」

相変わらずの大げさなランズベルグ伯アルフレッド。
実は前日、陛下より内々に皇女に所領を与えると、
聞きその為の詩を作ってくれるようにと頼まれていたのである。

陛下より直々のお願いに、
感動したランズベルグ伯アルフレッドは、
その夜一晩考え下手な詩を作って居たのである。

ローエングラム伯爵家一門は少々不満そうだが、あからさまには顔に出さない。
「ローエングラム領を与えると言うても、予の直轄地とし其処からテレーゼに、
与えると言う事じゃ、ホンに与えるのはもう少し後じゃな」

皆納得したような顔をし始めたり、
それでも目出度いとなにやら算段する者達も多く見られた。

フレーゲル男爵は、ブラウンシュヴァイク公に話しかけている。
『伯父上、此でわたくしもローエングラム伯爵ですぞ』
なにか勘違いしているフレーゲル男爵、
もう既にテレーゼの婿になる気満々である。

「それとじゃ、各省庁に勤め功績を上げし者に帝国騎士位を下賜するものとする」
其れの関しては殆どの貴族が気にとめない様子であった。
今更価値の殆ど無い帝国騎士を誰が貰おうと些かも関係がないからであった。

所がである、皇帝陛下の次のお言葉に黒真珠の間に大いなるざわめきを巻き起こした。
「予の寵姫グリューネワルト伯爵夫人の弟が幼年学校に行っておってな」

皇帝に言葉に何が始まるのかと聞き耳を立てる貴族や軍人達。

「その者が幼年学校で爵位も持たぬ貧乏人めと言われたそうじゃ、
仮にも予の義弟じゃ、その様な事をアンネローゼが言いおっての、
予としては彼の者に男爵を授けるつもりじゃ」

ざわめきが大きくなる、
フレーゲル男爵などはブラウンシュヴァイク公爵に、
『伯父上、あの金髪の成り上がりモノの下賤の餓鬼が私と同じ男爵ですと!!』
と怒り狂っている。

小声ではあるが、他の貴族や軍人も一様に困惑や文句を述べている。

勇気を持ったヒルデスハイム伯爵が皇帝陛下に質問をぶつける。
「皇帝陛下におかれましては余りにもお戯れが御過ぎでございましょう」
見事に引っかかる馬鹿貴族。

宮内尚書ノイケルン辺りは、あの馬鹿なんて事を言うのだという顔で見つめている。

陛下が怒気を露わにヒルデスハイム伯を睨む。
「予に意見するとはヒルデスハイム、
卿は予より偉いのか、どうなのじゃ!」

黒真珠の間の貴族軍人間に緊張が走る。
ヒルデスハイム伯は後ずさりする。
「どうなのじゃヒルデスハイム伯」
「申し訳ございません、平に平にご容赦を」

「うむ判ればよい」
ホッとするヒルデスハイム伯

黒真珠の間に安堵の空気が流れる。

しかし、グリューネワルト伯爵夫人は煽情の極みじゃと言う声も聞こえる。
幼年学校生徒の親であろうか、ラインハルトの所業を話す貴族や軍人もいる。
皆一様に悪感情を抱いているようだ。

『陛下はあの女に誑かされておるのじゃ』
『帝国騎士出身が伯爵夫人だしの』
『下賤の分際で男爵だと』
『煽情の極みじゃ』

逆にこの所大人しく静かに暮らしている、
ベーネミュンデ侯爵夫人に対して社交界に出ない事を惜しむ声が多々聞こえている。
『ベーネミュンデ侯爵夫人であればあのようではなかった』
『自らの一族の栄達を求むような事はしなかった』

『やはり子爵家のご令嬢だけの事はある』
『テレーゼ様を慈しみお育てしておるのじゃ、お優しきかたじゃ』
『社交界にまた来て頂きたいですな』
 
等々好意的な話が話されていた。
   
こうして宴は過ぎていった。


■オーディン ノイエ・サンスーシ   テレーゼ・フォン・ゴールデンバウム 

お父様の演技は完璧でした、ケスラーと指導した甲斐がありました。
彼処まで怒気を出せばみんな驚きますし、
アンネローゼの話で、アンネローゼが色々とお強請りしているように見せる事も、
成功したようです。

爺様の関係者も色々話を誘導してくれました、ご苦労様でした。

前日から煽てておいた、ランズベルグ伯アルフレッドは、
見事なタイミングで合いの手を入れてくれたしね、
本当下手なへぼ詩人も使いようだね。

人間に使えない人間なんて居ないんだよ、
ラインハルトやキルヒアイスは自分の基準で、
ラインハルトに役立つ人間以外は無視するけど、

たとえノルデン少将でも使い方はあるんだよ。
其れを考えずに只嫌い役に立たないと排除や無視すれば、
後に残るのは悪感情と憎悪なんだよ。

アホのヒルデスハイム伯だって使い方次第で、
父様の本気度を見せる為に、
見事に引っかかってくれたしね。
そしてラインハルト叙爵で、恩赦については有耶無耶になった。

見事にみんな踊ってくれたね、悪いのはラインハルトとアンネローゼに成ってるね。
アンネローゼは気の毒だけど、危ない弟を持ったと諦めて下さい。
お母様の好感度UPです、よかったです。


■オーディン  某所

「本日の宴如何でございましたか?」
「うむミュッケンベルガーが叙爵されたわ」
「それは大したことではございませんな」

「そうよ、あとは俘虜100万を帰還させ恩赦するそうだ」
「犯罪者ではございませんか、其れを野放しにするとは」
「そうよ、内務省や社会秩序維持局が動けるようにせねばな」

「御意にございます」
「帝国騎士叙爵もあるそうじゃがあのようなモノ今更役にたたんじゃろう」
「そうでございますな、以前ならいざ知れず今は特典はありませんので」

「そうそうあの女の弟が男爵に叙爵されるそうじゃ」
「なんと男爵でございますか」
「あの女が強請ったらしい」

「危険やもしれませんな」
「そうじゃな、今は身内の事だけを強請っておるが、
その弟が成人し権力を欲して姉に強請らせたら、
陛下は与えるやもしれん」

「非常に危険な兆候ですな」
「あの女と弟の監視を強化せよ」
「御意」

「そうじゃあの娘が所領を貰うそうじゃ」
「ほう、してどちらを」
「ローエングラム領だそうだ」

「なるほど陛下も娘可愛さですか」
「そうなるじゃろうな」

「娘は無邪気なだけじゃ、
どうせあと8年したらローエングラム領を持参金に何処の門閥貴族へ降嫁するのだからな、
ほうっておいても何ら脅威ではない」

「母親は如何でありましょうか、最近陛下が4日ほどずつ通っているようでございますが」
「あれも大丈夫じゃ、この前の出産で体をこわして妊娠出来ないそうじゃ、
これ以降あの女に子が出来る事はない」

「なるほど」
「それにじゃ、陛下が通うわけは、あの女を励ます為と、娘に会う為じゃ」
「そうなりますと、如何致しますか?」
「ふむ伯爵夫人に重点を置け、侯爵夫人はほぼ無視で良かろう、娘の分の人数を伯爵夫人に回すのじゃ」
「御意」
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フレーゲルの話と爺様工作員を増補しました。

黒幕増補、

煽情の極みじゃはわざと使ってます。
 
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