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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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MR編
  百五十一話 スイッチ!!

 
前書き
はい、どうもです!

と言う訳で前回から続き、今回はボス攻略戦になります。

総勢20人越えの大戦闘、主に前衛組をメインに描写してくつもりでおりますが、どうかよろしくお願いいたします!あ、もしお暇でしたら、もし周りに誰もいないようでしたら、今回のタイトルにもなっているあの言葉を、声に出してお読みくださいw

では、どうぞ!! 

 
第28層フロアボス、《Unsui the shield general》は、その見た目の通り、非常に高い防御能力を持つボスモンスターだった。攻撃を中心に、動作の一つ一つは予備動作もわかりやすく読みやすいのだが、とにかくどのタイミングで打ち込んでも下手な打ち込みではびくともしない。と言うより、いともたやすく剣を跳ね返すのだ。その分かり易い例が、また一つ起ころうとしてた。

SSのエフェクトが瞬き、加速した剣が空を切る音に続いて……ガァン!と鉄棒を叩くような盛大な音が、周囲に響き渡る。

「硬ったい!?」
ビリビリと手に伝わる振動につんのめるように後退しながら、リーファが涙目になりながら怒鳴った、

「何あれ!?鉄の壁殴ってる感触なんですけど……!」
「まぁ、高く売れる素材にゃなりそうなんだが、なラァッ!」

両手斧 重二連撃技 《エクスプロード・カタパルト》

大きく隙が出来たリーファをカバーするように、エギルが押し返すように振るわれた巨大な盾状の鋏を弾き上げる。

「スイッチ!!」
硬直から回復したリーファが後退するのと入れ替わるように、レコンが盾の内側に在る顔面部分を狙って飛び込んできた、が……

「ッ、気を付けろ!」
「ハイっ!」
盾となる鋏の引き戻しが予想以上に早いのを見て、エギルが自分の脇を抜けようとしたレコンに警告を発すると同時、抜けるのが不可能だと判断したレコンが数本の投げナイフを投擲する。ナイフは盾の向こう側へと刺さったようだったが、HPを示すバーの減りは微々たるものだ。
後退するレコンとリーファを尚も庇いつつ、褐色の大男は在る筈の無い額の汗が流れるのを感じた。

「確かにかてぇな……!」
すると、逆サイドで今度は高い声が上がる。

「いっくよぉ!!」
飛び込んだ小さな身体が、空中へと跳ね上がり、軽く右に向けて引き絞られる。

「でぇぇぇぃ!!!」

カタナ 重範囲 ソードスキル 《旋車(つむじぐるま)

薄緑色のライトエフェクトを纏って、空気を切り裂く音と共に野太刀が鋭く振われた。ただの一撃ではあったが、樹の幹のように太い蟹の脚の一本の関節部に、浅い切り傷が付くのを確認して、アイリは姿勢を低くしながら砂埃を上げて着地する。

「(切れた!けど、かったぁ……!)クラインさん!スイッチ!」
「おっしゃあ!」
即座に飛び込んだクラインの刀が、猛火と火の粉を振り撒きながら同じく関節部を狙って振りかざされる。

「オォラァッ!!」

カタナ 八連撃技 《紅蓮煌焔》

切り裂くたびに傷口が爆発を起こし、焔が踊り狂う中、朱色の侍が高速の八連撃を見舞う。ボスのHPが明らかに多く削れ、その巨体が一瞬硬直した、が……

「っ、クラインさん!」
盾の爪の向こうから、小さな蟹の目がクラインを見る。タゲが移ったのだ。しかし、彼は今大技直後の硬直で動けない。そこに……

「オォッ!」
巨体が割り込み、払うように外側に向けて振るわれた左の爪を重たい金属の音が阻んだ。

「ナイスだぜテツゥ!!」
「ウス!」
立て続けに振るわれる右の爪を防いで一歩後退しながら、後退するクラインにテッチが返す。と、更に続けて蟹が大きく身体を引いた。

「ッ、テッチ、泡ブレスが来ます!!」
「!タル君、手伝って!!」
「た、タル君!?」
言うが早いが走りこむアイリが笑顔で呼びかけた当の本人が、若干顔を朱くしながらも後ろに続く。

「ヌゥッ!」
「テッチ君伏せて!」
「!ウッス!」
ブレスの為に引いた頭を引いた蟹は、現在頑なに守っていた顔面を開けている。逆に言えば、ブレスを打つ段になる寸前まで、顔面を守っていたということは……

「割れ、ちゃぇっ!!」
テッチの身体を飛び越えて踏み込むと同時に、掬い上げるように縦に一閃を叩き込む

カタナ 単発技 《浮舟(うきぶね)

「────!?」
「(入った!!)」
明らかに先程まで斬りつけていた関節部よりも軽い感触と共に、蟹の顔面が切れたのを感じる。一瞬の怯みと共に、テッチからこちらにタゲが移ったのが分かった。そこへ

「スイッチ!」
「シッ!!」

両手槍 七連撃技 《セブンスシャープ》

鋭く息を吐きながら、メガネをかけたシルフの少年が、立て続けに七つの刺突を叩き込む。槍の間合いから放たれたそれに合わせて後退しながら、アイリは相手を観察する。

「(ッ、リカバーが早い!)」
早くも鋏を引き戻し、タルケンを払いのけようとする蟹に、反射的にアイリは警告を叫ぼうとした、が……

「アイリ!スイッチ!」
「二人とも!そこどけぇ!」
「え、うわっ!?」
「わぁっ!?」
突然響いた大声に飛びのくように進路を開ける、紫色と紅いライトエフェクトの尾を引きながら少年と少女が飛び込んた。

「シッ……!」

クロ― 六連撃技 《ルイシ・カズーニ》

「スイッチ!」
「ぜぇりゃぁっ!!」

大剣 重突進技 《アバランシュ》

高速でたたき込まれるクローの連撃に続いて、飛び込んだ小柄な少年が重々しい風切り音を立てて蟹の頭めがけて大剣を振り下ろす。メイスにも近い音を響かせながら蟹の顔面に向けて巨大な縦傷を付けるその一撃にはさしものボスモンスターと言えどたまらず大きく怯む動作を見せ、おかげで後退する時間が稼げた。

「さ、サーンクスー!ヤミ―!」
「ジュン、ナイスフォローです!」
「おう!」
「はぁ、あぶなっかしいったら……」
兜の向こうから除く瞳と共にサムズアップするジュンとため息をつくアウィンが後退すると同時、がら空きになった顔面に向けて、高威力の固定弾道型(フィクスバリスティック)を中心とする魔法が、支援砲撃のように弾着し、さらに巨体が後退した。ゲージが切れ目へと到達し、威嚇するように甲高い音で蟹が鳴く。

「ッ、パターン変わるぞ!前衛少しずつ後退しろ、気ィ抜くな!!」
「遊撃隊!いったん後退して様子を見る!距離を取って回避優先!」
「前衛隊の回復をテンポアップして!アリシャさんとサチは状況に応じて支援を!」
即座に、各所でリーダーからの指示が飛ぶ、と同時にウンスイが動く。巨大な蟹は背負った寺を頻りに振り回すと、大きく背中側を周囲に立つ彼らに向けて薙ぐように振り払った。しかし寺が薙ぎ払う範囲からは、既に全員が退避している、渾身の薙ぎ払いは虚しく空を切る……筈だった。

「うぉぁっ!?」
「危ないっ!」
「ひゃぁ!?」
振り払った寺の一部であろう木材やら瓦やら、果ては仏壇や鐘まで、あらゆるガラクタが次から次へとメンバーの方へランダムに飛んでくる。大きいものはまるでゴムか何かで出来ているのかと言いたくなるような勢いでバウンドしつつ、速度はさほどでもないが、小さい瓦などは野球ボール並みの剛速球だ。ランダムに発射される瓦礫の弾丸に、メンバーは大混乱に……“陥らなかった”。

「タンク隊!盾持ちは動きの鈍い奴を優先して庇え!」
「了解よ!」
「う、ウッス!」
「おっしゃぁ!」
エギルの指示で、ジュン、テッチ、リズが遊撃隊の前に出る。のこったノリとリョウ、アイリはと言うと……

「ほっ、よっとぉ!」
「ノリお前よく動くなぁ」
昆を起点に軽々と攻撃を回避するノリに、感心したようにリョウが声を掛ける、すると彼女は苦笑しつつ別の所を指さして言った。

「なぁに、あの子やアンタらにはかなわないさね」
「あぁ、あれなぁ」
「えいっ!っと、せいやぁッ!!」
吹き飛んでくる瓦礫を、片っ端から叩き切って防ぐアイリを見ながら、リョウが苦笑する。彼女はGGOにおいて、キリト以外の唯一の「銃弾切り」の成功者なのである。これくらいの瓦礫程度であれば、多少動きの鈍る太刀を使っていても防ぐのは容易いだろう。かくいうリョウはと言うと……

「まぁ俺のはスキルだしなぁ」

薙刀 防御技 護輪旋《ごりんせん》

両の前で振り回される深い緑色のライトエフェクトを纏う斬馬刀が、着弾するガラクタを次から次へと跳ね返して見せる。武器の重量によってスキルの破られにくさが変わるこのスキルだが、リョウの筋力値に寄ってかなり重量の在る武器を扱っていることもあって、中々に堅固な防御能力を発揮している。

「正直どっちもどっちだと思うがねぇ、よっと!」
「お前さんが言うかそれ」
その曲芸のような避け方も大概まねできないだろうと苦笑しながら、リョウはさらに飛んできた仏像を跳ね返す。そんな中、その後ろに居るメンツはと言うと……

「リーファ、クライン!大丈夫か!?」
「大丈夫~!」
「おう、テッチがいるからな!」
「ウス!」
そう返してきた二人に頷いて、キリトは目の前に迫る瓦礫を悠々と切り裂いて迎撃する。同じように、エギルの後ろにはタルが、ジュンの後ろにはヤミが退避している。一方、レコンは流石にこの中でも指折りの軽装なだけあって、動きまわって自力で躱しているようだ。ユウキはというと……

「ほっ!やぁっ!」
「はは……こう簡単にまねされると、自信無くすな」
既にキリトと同じく、吹き飛んできた瓦礫を切り裂き交わしながら対処していた。とはいえ、これ以上ないほど頼もしくもある。流石に軽い瓦礫以外は後方組の居る場所までは届いておらず、届いた瓦礫も数が少ない為後方組の心配の必要はなさそうだ。

「(これだけの大技なら、終わった後に少しは隙が出来るかもな……)」
そのパターンを確認したなら、その時は其処に付け込むことも念頭に入れて動くべきだろう。とにかく、今は見の一手。
やがて動きが止まると、蟹は疲れたように少し制止した。

「よし!距離を詰めるぞ!」
エギルの指示で前衛隊がじりじりと距離を詰めていく。凡そ4秒ほど硬直した蟹が再び起き上がると、今度は正面でぴったりと盾を合わせた。

「防御態勢か……?」
いぶかし気にジュンが言う中、アスナは目を細める。縮めた蟹の脚元に、力が籠るように亀裂が走るのがその瞬間に見えた。

「ッ!違う、みんなウンスイの正面から離れて!!」
「!?退……」
アスナの声が部屋中に響き、全員が動き出した丁度その瞬間、まるで砲弾のように、巨大な盾を真正面に携えた蟹の身体が前方への突進を開始した。

「グッ!」
「テッチ!」
「っ、シリカごめん!」
「ひゃわぁぁっ!?」
退避の間に合わなかったテッチの身体が軽く3.4mほども吹き飛ばされるほどの凄まじい質量と初速の突進が、部屋を一直線に貫いて後方支援組の居る場所まで飛び込む。ギリギリのタイミングでちょうど丁度正面に立っていたシリカを首根っこを掴んで投げ飛ばしながらシノンが退避させる。しかし代わりに、彼女の方が余波を受けて転倒(タンブル)を起こしてしまった。

「まず……ッ!」
起き上がろうとしたシノンの目の前で、体制を戻したウンスイが鋏を振りかぶる、起き上がって回避するにはどう考えても近すぎる、衝撃を覚悟してシノンが身構えた次の瞬間……

「オォォッ!!」
「サクヤちゃん!?」
飛び込んだ緑がかった黒色の影が、金属音と共に裂帛の気合で以ってシノンを庇った、鞘から抜きかけた刀が、振りかざされたウンスイの鋏との間に火花を散らす。

「フッ!」
ギィーン!!と甲高い音が響く。受け止めたもののそのまま振りきられ用とした鋏の一撃を、サクヤが刀を逸らして受け流し、その振動が大太刀全体を震わせたのだ。

「動けるか!?」
「え、えぇ……!」
「な、ナイスカバーですサクヤ様!!」
「せぇっ!」
次いで飛び込んできたヤミとレコンが引き継ぐように蟹をけん制するのに合わせてシノンとサクヤは後退する。後に続いて到着した遊撃隊と前衛隊が、続いて戦線を再構築し始めるのを確認して、シノンはサクヤに声を掛けた。

「助かったわ、サクヤさん、ありがとう」
「なに、普段は飾り程度の太刀(こいつ)だが、偶の訳に立って良かったさ」
謝意を示すシノンに肩をすくめてサクヤは美しく光る刀の刀身を示す。その彼女の背中を、ボンっと叩く影が一つ。

「モー!いきなり飛び込んでいくからビックリしたヨ!」
「すまんすまん、久しぶりに無意識に身体が動いたよ、やはりたまにはこういうのも悪くない」
「こっちはヒヤヒヤしたんだってバ―!」
はっはっは、アリシャにとがめられるのも構わずと楽し気に笑うサクヤに、随分おてんばな領主もいたものだとシノンは苦笑する。と、高めの声が彼女を呼び止めた。

「シノンさん大丈夫ですか!?」
「シリカ?えぇ、平気、貴女こそ、大丈夫?」
「は、はい!あの、すみませんでした……」
申し訳なさそうにうつむくシリカに、どうしたものかとシノンは困ったように頬を掻く。

「気にしないで、なんていうか……」
「キュルゥ!」
すると、ピナがシノンに緑色の息吹を吹きかけ、先ほどの余波で減ったHPが全快するのが分かった。

「ありがとピナ……こういう事、お互いさまだしね?」
「は、はい!ピナ、ありがとね!」
「キュクルゥ!」
相棒の小竜と笑い合う少女に微笑ましいものを感じながら、シノンは弓の具合を確かめる。幸い特に武器に問題はない、先ほどまでと同じ精密射は可能だ。小さく笑いながら、彼女は再び弓を引いた。

「後衛隊、なるべくウンスイの正面に立たないように立ち位置に注意して!」
「隙を見逃すな!一発一発当てて行こう!」
「鋏食らうなよ!切断喰らったら多分即死だぞ!」
その後も互いに声を掛け合いながら、徐々に徐々にとウンスイのHPを削っていく。しかし最後のゲージに入ってからのウンスイは、それまでに輪をかけて防御能力がまし、攻め切るのが難しくなっていた。とにもかくにも鋼殻が硬いだけではなく、唯一の明確な弱点である顔面に関しても、盾の引き戻しがますます早く、スイッチのタイミングがシビアになり、SAOでスイッチに慣れ切った攻略組面子でようやくと言った所である、そうなると、必然、状況は消耗戦の様相を呈し始める。しかしあくまでも即席で組んだパーティである分、そうなってしまうと不利を強いられるのは目に見えている。
残りの一ゲージが、半分まできた辺りで、アスナが勝負に出た。

「全隊に通達!次の瓦礫飛ばしで決めるわ!エギルさんクラインさん、キリト君とリョウも支援砲撃の後で連続スイッチ!決めに行きます!」
「分かった!」
「了解だ!」
「まかしとけ!」
「あいよっとぉ!どれ……」
そのタイミングで、計ったようにウンスイが再び身体を揺り動かし始める。がれき攻撃の予備動作に、タンクたちが防御の体制をとった。

「来るぞ!」
エギルの声に合わせるように、ウンスイが体を振り回す。飛んでくる瓦礫をある者は防ぎ、ある者は躱し、ある者は叩き落しながら、その彼らはその瞬間を待つ……そして……ウンスイの動きが……止まった。

「今だ!GOGOGO!!」
「ォオオラァッ!!!」
凄まじい怒号を巻き上げながら、コーヒー色の肌をしたスキンヘッドの大男がカニの顔面に真正面から斧を叩き込む。

両手斧 最上位重単発技 《ゴライアスフォール》

跳ね上がったエギルの身体が、一直線にその斧を叩き落す。轟音を上げて巨大な縦傷がウンスイの顔面を傷付け、その巨体が大きく後退する。しかし瓦礫投げの硬直をその怯み動作で上書きされたウンスイは、即座に両の鋏を引き戻し、ふたたび弱点で在る顔を庇う、筈だった。エギルのスキルが終わるか終わらないか、本当にギリギリの一瞬を見極めて、紅い影が飛び込む。

「スイッチ!!」
「ウルァッ!!」

カタナ 最上位八連撃技 《刀八毘沙門[全断]》

荒々しく、それでいて規則性を持つ軌跡を描く八発の斬撃が、ほぼ同時にも見えるタイミングでウンスイを切り裂く。再び後退したウンスイの盾が引き戻されるよりも早く……

「スイッチ!!!」
「セァァッ!」

片手剣 最上位十連撃技 《ノヴァ・アセンション》

片手剣において最速の出だしから繰り出される十連撃が、嵐のように立て続けにウンスイの鋼殻を削り取っていく。切り裂かれた顔面がダメージエフェクトだらけとなり、いよいよ蟹の口も眼も判別できなくなってきた頃、ようやく連撃が終わる、そして……

「「スイッチ!!!」」
全くの、同じタイミングで叫んだリョウとキリトが、その声と同時にすれ違った。

「勢ィ!」
下にもぐりこませた斬馬刀が振り上がり、反転すると同時に柄が付きされる。

「打ァラッ!」
鋼殻の割砕ける音を響かせながら更に三連、

「奮ッ!」
更に振り下ろし、から、踏み込み、振り切った斬馬刀の柄で再び一撃。から……

「雄ォ!」
振り上げた右の膝蹴りが更に下からウンスイを強打する。と、同時に、トドメとばかりに振り上げた斬馬刀を……

「ッッ断ッッ!!」
振り下ろし、一閃。地面毎ウンスイの顔面をもはや原型も分からなくなるほど破壊して、ようやくそのスキルは止まった。

薙刀 八連撃複合OSS 《獅刺舞(ししまい)

武器動作のみの物と比べてもはるかに判定成立難易度の高い体術複合型のOSSを撃ち尽くして、硬直するリョウの目の前で、ウンスイのHPが一気に減っていく、しかし……

「っ!(ダメ……!)」
アスナが小さく呻く、ほんのわずか、一ドットだけ、ウンスイのHPが残るところで、HPバーの減少が止まる。しかしこの次は用意していない、盾を引き戻されるのと同時に、確実に誰かが被害をこうむる。やはり四人だけでは流石に不足だったか、と今更な公開を浮かべた……刹那、

「嬢ちゃん!!“スイッチ!!!”」
「えっ!?」
「ハイっ!!」
リョウの声と共に、威勢のいい返事が木霊する。と、同時、リョウの後ろからもう一人、少女……ユウキが跳ねる様に飛び込んだ。

「や、あぁぁっ!!!」
彼女の剣の黒い刀身に、紫色のライトエフェクトが灯ったかと思うと、翼の如く広がったその光を尾に引いて刀身が霞むほどの速度へとその動きが加速する。大きくバツの字をを描くように連続して撃ち込まれる十連撃の突きが終了すると同時、弓を引くように引き絞られたその剣にユウキが左手を添えると、その刀身が一際すさまじい爆光を放って光の剣と化した、全霊の破壊力を込めたその光剣の全てを込めてユウキはその突きを交差する着弾点の中心へと爆発させ、ウンスイの身体を一直線に刺し貫く。あまりの勢い故か、剣から広がった光がウンスイの全身へと広がりその身体を爆散させて尚も、その身体は数メートルも前進して、ようやく止まった。

片手剣 十一連撃OSS 《──────》

「やった……」
キラキラとポリゴンの欠片が降り注ぐ中誰かが呟いた声と共に……全員の目の前に、ファンファーレと共にリザルトウィンドウが表示され、部屋全体を揺らす声量の大歓声が、ボス部屋に響き渡った。

────

鍵の開いた迷宮区の扉をくぐり、迷宮区から出たメンバーを出迎えたのは、夕焼け色に染まりつつあるアインクラッドの第29層の情景だった。

「ふわぁ……」
「よっと」
「ぇ、ぅわぁっ!?」
そこかしこから健闘をたたえる声が上がる中、力の抜けた身体をへたれこませそうになって、不意に後ろから支えられる。見上げると目の前にリョウの顔が会ったことで、ユウキは慌てて飛びのいた。

「おっと、おいおいなにビビってんだ」
「ご、ごめんなさい」
何故かどこか肩を縮ませて謝るユウキの彼女らしからぬ態度に、これは嫌われているのかと思いつつ、まぁそれも仕方がない事ではあるなと納得してリョウは苦笑する。あれだけアスナとトラブっていたわけだし、そのダシに使われていたのが自分であると彼女が知っているとしたら、それはリョウに対して良い気はしないだろう。

「あー、まぁなんだ……GJ、助かった。サンキューな嬢ちゃん」
「え、いやでも、あれはリョウさんが……」
そう、あのタイミングでユウキが飛び込んできたのは、偶然ではない、いざという時は止めを刺すために飛び込んでくるように、事前にリョウが声を掛けていたからだ。スイッチのタイミングに多少不安はあったが、ユウキの反応速度なら多少のタイミングのずれを埋めるに足ると、リョウは踏んでいた。とはいえ……

「っつっても、タイミング完璧だったぞ?流石だな、絶剣」
そう言ってヒラヒラと手を振りながら、リョウはユウキの前から立ち去ろうとする。しかし……

「あ、あの!」
「ん?」
その背中を、不意に呼び止められた。

「間違ってたらごめんなさい、ボク……り、リョウさんに嫌われてますか……!?」
「……は?」
いやまて、何故そうなる?
予想外の言葉に久々に間抜けな声を出して振り向いたリョウはしかし、ふと自分の言動を思い出して気付く。成程、確かにユウキにしてみれば(実際がどうであれ)彼女がきっかけで自分とアスナはギスギスする羽目になっていたのだし、自分がユウキと関わる事をよく思っていないようにもとられたかもしれない。嫌われていると判断されてもおかしくはないだろう。

「あー、いや、別に嫌ってねぇよ?」
「ホントですか……?」
「おう、正直そう思われるのも仕方ねぇとは思うけどな?寧ろ、骨の在るいいゲーム仲間になりそうだ位には思ってんよ……マジだぜ?」
「…………」
「…………」
真偽を見定めるようにジッと見つめてくるラズベリーのような赤い瞳を、リョウも真っすぐに見つめ返す。嘘は言っていない。確かに思うところはあったが先ほどのアスナとの事もあった以上、これからはユウキとも普通に付き合っていくつもりなのだから。とはいえ、ユウキの方もやはりこういう事にはいろいろな経験があるのだろう。少しまだ表情が硬い。そこへ……

「あの……リョウ?なんでユウキと、その……」
「ちょっとリョウ!?ユウキの事なんで睨んでるの!?」
「ん?」
「あ、アスわぷっ!?」
と、脇から聞きなれた少女二人の声がして、二人はそちらを向くと同時に飛び込んできたアスナがユウキを抱きしめてリョウを睨んだ。

「おい騎士姫さんよ、オレがガン飛ばしてたみたいに言うなよ」
「だって目つき悪い感じでユウキをジーって……」
「生まれつきだわ、つか知ってんだろお前!?」
全力で突っ込むリョウにようやく微笑んだアスナを見て、サチが口を開いた。

「えっと……それで、どうしたの?」
「おう、ちょうどいいや、お二人さんよ、この嬢ちゃんにオレが嬢ちゃんをちゃんと好きだっつー事を説明してやってくれや」
リョウが何気なくそう口走った瞬間に……

「ふぁ……○×△■!!?」
「ちょっ……リョウ!?」
「あ?」
「?」
スナとサチが同時にが顔を赤らめたり青ざめたりさせた。首を傾げたリョウに、フラフラとサチが近づいていく。

「え……え……?り、リョウ……?今、ユウキのこと……す、す……」
「……?おう……って、あぁ。ったくめんどくせぇな……ちげぇよ、男女じゃねぇ、好意を持って接しているって意味な?」
「あっ……」
「そ、そうだよね!?もう、紛らわしい言い方しないでよリョウ……!」
「寧ろボス攻略したばっかの今の流れで寧ろよくそういう勘違いできるな!?お前ら何か?俺がこの嬢ちゃんに秘めたる思いをもってて、ボス攻略を機に告ったとでも、本気で思ったか!?」
「わぁ、それロマンチックだねぇ!」
「お前さんは割と呑気だな」
心底安心したようにサチの顔に血色が戻るのと同時に、アスナがリョウに突っ込んでいくのを、心外そうにリョウが突っ込み返す、ユウキはと言うと、二人の様子から彼女達が何を思ったのか察しを付けるのに時間がかかったらしく、ようやく理解してポンッと手を叩いていた。全く危うく告白された立ち位置にされそうになったとは思えない呑気っぷりだ。

「でも……突然、どうして?」
「その……ボク、リョウさんに嫌われてるのかなって……」
「え?リョウ、そんな風な事……」
「言ってねぇよ。ま、けど色々あったからな」
「あぁ……」
少し困ったように言うリョウに、事情を察したようにアスナが頷く。彼女はサチと確認するように頷き合うと、ユウキとリョウを交互に見て、パンっと一つ手を叩いた。

「じゃあ、私達が間に立つ、ってことで!」
「うんっ」
「えっと……」
「考えてみたら、リョウの事はもっとちゃんと紹介しないといけなかったよね……ユウキは、リョウの事どれくらい知ってるんだっけ?」
「え?えっと、アスナとサチの友達で、キリトさんの家族で、あとはサチの……」
「そ、そう!サチの幼馴染なの!」
「?」
「好きなひと」と言いかけて、リョウの死角でサチが必死に首を横に振っているのに気が付きユウキは慌てて口を閉じ、同時にアスナが後を引き継ぐ。いぶかし気にするリョウを何とか笑ってごまかして、三人は話を続けた。

「えっと、幼馴染って……」
「小学生……より前の頃からの友達、かな、中学生の頃は別の街に住んでたけど……えっと……五歳からだから……」
「ま、大体付き合いは総計十年ってとこだな」
「十年!」
ほえぇ、と感心したように言って、不意に納得したような顔をする。成程、それならサチの様子にも納得が行こうというものだ。

「アスナとは?」
「私とは、三年くらいかな」
「へぇ~……」
改めてユウキはリョウを見る。少しくすぐったそうにしているその表情は、先ほどまでよりも少し威圧感が薄らいで見えた。

「で、まぁ……ちょっと目つきは怖い所あるけど……でも、悪い人じゃないのよ、でしょ?」
「当たり前だお前。世の中に俺程の善人はそうはいねぇぞ?」
ニヤリとわざと怪しく笑うリョウにクスリとユウキが吹き出すのを聞きながら、アスナはため息をつく

「……こういう所あるけど、気にしないでね?人をからかうのが好きなだけだから」
「うん!わかった!」
「失敬な奴だなぁ……」
「あはは……あのね?ユウキ」
腕組みをするリョウの隣から、サチが進み出てユウキに目線を合わせる、そこには、絶対の信頼と自信の色が見て取れた。

「リョウは、こんな風に言うけど、理由も言わずに人を嫌ったりはしないし、ユウキともきっと仲良くしたいと思ってると思うから……だから、仲良くしてあげてね?」
「あのなぁ……俺のお袋かよお前は……とはいえまぁ、そう言う訳だ。よろしくしてくれると助かるぜ、嬢ちゃん」
「……!うんっ!」
辟易賭したような声でそう言いながらも、しかしリョウは特に訂正も悪態も口にはせずに、少しぶっきらぼうにそう口にする。そんな様子にユウキは大きくうなづいて、それまで迷うように上下に動かしていた右手を、ようやく大きく前に差し出した。リョウがそれを握り返そうとする……と……

「あ、でも、一個絶対言わなくちゃ、って思ってたんだよリョウさん」
「あ?なんだ嬢ちゃん」
「それ!その嬢ちゃんっていうの!いっつもそう呼んで僕の事名前で呼んでくれないから、ボク嫌われてるのかなって思っちゃったんだ、だから、ボクの事は「お嬢ちゃん」じゃなくて、ユウキって呼んでほしいなって!」
「あぁ……」
成程、そう言えばこれまで、たしか一度も彼女の事を名前で呼んでいなかったなと考えて、成程、それでは確かに意図的に名前を呼ぶのを避けていると勘違いされても仕方ないかと思い当たる。そこに、思い出したようにアスナも口をはさんできた。

「そうだよ、それ私も前から言いたかったのリョウ、女の子の事、あんまり「嬢ちゃん」って呼ぶのやめた方が良いとおもうよ?子供扱いされているみたいに聞こえるんだもの」
「ん?まぁ、実際年下だろ?」
「一つしか違わないじゃない!それにリョウ、正直その呼び方、おじさん臭いよ?」
「…………ほっとけ」
珍しく苦虫を噛み潰したような顔をしたリョウに、してやったりと言った表情でアスナはユウキ、サチと顔を見合わせて笑う。一方のリョウはと言えば、一度大きくため息をつくと、今度こそ、ユウキの手を握って軽く振る。

「わぁったよ、んじゃ、これからもよろしく頼むぜ、“ユウキ”」
「うん、リョウ!よろしくね!!」
しっかりと結ばれた手と手を見て、一連の物事にようやくの区切りが付いたことを、サチとアスナは視線を交わして喜び合うのだった。
 
 

 
後書き
はい、いかがだったでしょうか?

と言う訳で、原作にも例の無い超スイッチラッシュの戦闘でございましたw
ブレイクを作ってそこに飛び込むことで、本来存在するSSの技後硬直と言う大きなデメリットを互いに埋めながら攻めて行く、と言う手法であるこのテクニックですが、映画版SAO「オーディナル・スケール」でも描かれていたように「スイッチ!!」の一言が一種の必殺技のようで以外とカッコいいなと思っておりますw

今回の事で、ユウキとリョウとのわだかまりも解けて、関係はひとまず完全に修正されました。
次回からはまたテーマを変えての展開をお送りしようと思っております。

ではっ!! 
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