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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第四十四話

 
前書き
どうも、二週間ぶりです。その間に艦これの弾薬が六桁に乗ったり、ボーキがヤバくなったりと、充実した提督ライフを送っていました。 

 
 
「起こしてくれよぉ!目覚まし時計ぃ!!」
 
俺はそんな悲鳴にも聞こえるような情けない声を聞いて目を覚ました。
 
…………昨日は三人でかなり飲んだなぁ。少し頭が痛い。いや、むしろあれだけ飲んで『少し』で済むのが流石艦娘といったところか。
 
俺はそんな頭を無理矢理起こして、声のした方を見る。
 
そこには、昨日と全く変わらない姿の長門さんがいた。目覚まし時計を片手に絶望の表情を浮かべていた。
 
…………え、待って、今何時だ?
 
俺は長門さんが持っている目覚まし時計を見た。
 
一〇〇五。
 
……………………か、
 
「完全な寝坊じゃねぇかよ!」
 
俺は長門さんと同じように大きな声を上げた。やべぇ、木曾とトレーニングする約束と間宮さんの手伝いと朝礼すっぽ抜かした。
 
…………えーっと、取り合えず。
 
「千尋、急いで着替えてこい!私は青葉を起こす!着替えが終わり次第執務室に行って、提督に謝るぞ!」

「了解!」
 
俺は勢いよく廊下に飛び出ると、自分の部屋に一目散に向かった。
 
…………なんだろ、頭は妙にスッキリしていた。
 
 

 
―執務室―
 
 
 
 
「…………これはまた、珍しい三人が寝坊したね。」
 
執務室に入った俺たちは、書類整理していた提督に報告と謝罪をしていた。あくまで凛々しく報告する長門さん。逆にすげぇ。青葉は青葉でカメラ使ってるし。
 
俺としては初めての寝坊でかなりテンションが下がっていた。
 
「…………それじゃあ、今から十二時間自室謹慎。ご飯は誰かに頼むといい。」
 
提督はそう言うと、俺たちに部屋を出るように言った。
 
…………これ、普通に怒ってるよなぁ。昨日のピンク雑誌擦り付けも合わせて。
 
後でこれとは別に謝っとこう…………。
 
「了解した。それでは、失礼する。」
 
長門さんがそういって提督に敬礼をしてから背を向けたので、俺たちもそれにならって外に出る。
 
ギィー、バタン。
 
「「「……………………はぁ。」」」
 
俺たちは三人揃って溜め息をした。
 
ここに来てから、初めての謹慎処分。
 
「やっぱり、意外ときっちりしてるところはきっちりしてるなぁあの提督。」
 
長門さん、それ、反省してる人のセリフじゃあ無いです。
 
「でも、寝坊で半日って、長くないですか?」
 
青葉は、若干首を傾げながらそう言った。まぁ、それもそうだよな。
 
…………そういや、前にも長門さん謹慎受けてたな。あんときは金剛さんとの喧嘩だったな…………あ。
 
「分かった。酒だ。」
 
ちなみに、これは後から大淀さんに聞いた話だ。
 
提督は昔、酒が大好きな軽空母を沈めてしまったらしい。
 
別にそれは提督のせいでもないし、酒のせいでもなかったらしい。それでも上層部の連中は、酒のせいにしたらしい。
 
それから提督は、酒絡みのミスに対して厳しくするようになったらしい。以上、閑話休題。
 
「酒かぁ。確かにそうかもな。」
 
「酒は飲んでも飲まれるなですもんね。」
 
若干青葉のセリフに棘があった気がする。

「取り合えず、自分の部屋に行くかな…………あーあ、半日どうやって過ごそうかなー。」
 
俺はそう言うと、自分の部屋に向かって歩き始めた。
 
「…………そうだな。では、失礼する。」
 
悪かった、と最後に一言言って、長門さんもその場を後にした。
 
「…………えっと、失礼しましたー。」
 
青葉はそう言うと、床を二回爪先で蹴った。
 
すると、そのすぐ横の床が開いた。
 
そのままその中に入る青葉。
 
「あ、青葉は自分の部屋から自由に外に出れるので、お構いなくー。そうでないとあなた方にこのお話をお送りできませんしね。」
 
どこからともなく、そんな声が聞こえた気がした。
 
 
 
―自室―
 
 
 
「…………いや、バカだろお前。」
 
俺は天龍にそう言われた。返す言葉もコございません。
 
あれから、青葉の口から俺たちが謹慎を受けたことを知った天龍が見舞い(?)にやって来た。
 
なぜ謹慎を受けたのかという質問に答えると、そんな厳しいお言葉を貰った。
 
「まぁ、後で木曾と間宮さんと春雨に謝っとけよ?」
 
…………ちょいまち。
 
「……お前、なんでそこで春雨の名前が出てくる?」
 
春雨とドイツ語の勉強をしていることは、アイツから口止めしてくれと言われたから誰にも言っていない。そもそも、あそこに来る奴なんて艦娘になってから見たことがない。
 
「ん?多分全員知ってるぞ?青葉が写真付きで教えてくれたからな。」
 
…………青葉、お前明日ブッ飛ばす。
 
「んで、当然ながら二人が付き合ってるのでは無いかという噂が出てるんだが。」
 
まぁ、当然だよな。年頃の女の子しか居ないわけだし。
 
「付き合っては無い。」
 
俺はそう言うと、ベッドに寝転んだ。
 
「…………ふぅん、そう言えば、今日から遠征があるんだよな。」
 
と、いきなり全く違う話題を振ってきた。
 
「俺は今回休憩なんだけどさ。メンツが、摩耶さん、愛宕さん、望月、春雨なんだよな。」
 
「…………ほう。」
 
なるほど、そこで繋がるわけか。
 
「んで、いつまでなんだ?」
 
「えっと、出発が一二〇〇で、帰投が明後日の〇四〇〇だな。」
 
「……………………うわぁ。」
 
物凄い悪いことした気分だ。
 
俺はチラッと時計を見た。
 
一一四五。
 
「……………………まぁ、あれだ。ドンマイ。」
 
どうやらかなり落ち込んでいるのがわかったらしい。励ます言葉をかけてくれる天龍。
 
「…………もしさ、謹慎処分中に外に出てるのがバレたらどうなる?」
 
「延長だな。二倍に。」
 
「…………………………。」
 
二倍か…………二倍なら全然大丈夫かな………………いや、明日までずれ込んだら他の人に申し訳無いな…………。
 
「…………あれだよな、恐らく今、遠征の準備中だよな?」
 
「おう。遠征に行くときは二、三時間前には知らされて、そこから準備だからな。お前はその間寝てたり提督にお叱りを受けてたりしたわけだ。」
 
…………傷口をどんどん広げられてそこに塩を擦り付けられてる気分だ。天龍、かなり容赦ない。
 
「……………………んで、提督は見送りに来るのか?」
 
「おう。」
 
…………詰んだ。
 
「ちなみに、木曾も同じ時間から出撃だ。木曾と時雨と島風と阿武隈で鎮守府近海の対潜哨戒だってよ。」
 
……………………トドメだよ。木曾にも謝れねぇ。
 
「まぁ、出撃となると提督と大淀さんは執務室で指示を出さなきゃいけないしな。その間は完全フリーだ。」
 
……………………まぁ、間宮さんには謝れると。
 
「……………………千尋?大丈夫か?」
 
散々傷口を痛め付けておいて、心配するような声をかけてくる天龍。これは、傷付けているという自覚の無い奴だな。
 
「……………………一気に信用を落とさないか不安で仕方ないっす。」
 
「…………んー、無いと思うけどな。寝坊なんて誰でもあるわけだし、と言うか、ここにいる殆どの奴が寝坊は経験してるし。」
 
「天龍、そう言うことじゃねぇ。」
 
俺は天龍の言葉を遮るように言った。
 
「…………約束を破るってのは、一番信用を落としやすいんだよ。」
 
俺は昔から、約束を破るってことに相当な嫌悪感を抱く。
 
そんなことを三ついっぺんにやったんだ。自分で自分が嫌になる。
 
「…………あれだな。お前ら揃いも揃ってめんどくさいな。」
 
「うるせぇ。」
 
俺はそう言うと、再びベッドに寝転んだ。
 
「…………まぁ、謹慎頑張れ。後で飯持ってくるから。」
 
天龍はそう言うと、部屋から出ていった。
 
「……………………はぁ。」
 
俺は溜め息をひとつすると、そのまま目を閉じた。
 
…………不貞寝してやる。
 
 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。前回の話の中で言いましたが、本日より、この作品の前日談の方も投稿開始いたします。宜しければ是非。あと、『アタエルモノ』も再開いたします。そちらも是非。
それでは、また次回。 
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