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ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~

作者:白泉
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
1章 すべての始まり
  6話 ツカサとアスナ

 
前書き
 どうも、最近ようやくプログレッシブ3巻まで買い、読破した白泉です!やっぱりSAOは面白いなぁなんて、改めて実感しております。

 さて、今回はツカサとアスナの関係が明かされ、そしてボス攻略会議までたどり着きます!さてさて、これから面白くなるところです!
 では、どうぞ! 

 
 
 あれから3人は、フィールドでは危ないという判断を下し、NPCが経営するカフェを訪れていた。リアがツカサの隣に座り、その向かいにアスナが座る。3人が飲み物を注文すると、すぐにそれらが運ばれてくる。待ち時間がほとんどないこういうところは仮想世界の良いところだとつくづく思う。

「ええっと、アスナって、この間レクチャーした時にいたアスナ、だよね?ケープかぶってた?」
「そうです」

 リアがそういうと、素っ気ないととれるほど完結にアスナは返事をする。声で同世代ぐらいの女の子だとはなんとなく思っていたが、ケープをとった彼女は長い栗色の髪に、大きなハシバミ色の瞳が特徴的で“可愛い”よりも“美人”という言葉が似合う。

 
 そして、ちらりとツカサを見やると、その視線に気づき、ツカサが
「明日奈は俺のはとこなんだ」

 はとこ。つまりツカサからみて祖父母の兄弟姉妹の孫。2人は親戚関係ということだ。それにしても、はとこなんて、結構遠い関係のように思えるのだが、この2人はお互いのことをよく知っているらしい。

 正直なところ、リアはあまりツカサの親戚関係のことは知らない。なんとなく、そういう話題を避けているのを敏感に感じ取って、リアからツカサの親戚を訪ねたことはない。ただ、唯一知っているのは、ツカサの父親は、かなりの大きな会社の社長だった、ということだけだ。もしかしたら、そちらのつながりがあるかもしれない。


 
 リアはぼんやりとそんなことを考えながら。運ばれてきたコーヒーに口を付けた。やたらと酸味が強く、香りが立たないインスタントコーヒーにかなり似た独特の味。味も悪い上に、なんとなく居心地の悪さを感じ、結局、一口だけ口を付けたカップを置いて、席を立った。

「ごめん、今日はもう疲れちゃったから、先に寝てもいい?」
「ん?ああ、わかった」
「この間の宿屋にいるね」

 リアはそういうと、いつもより足早になって、店の外に出た。季節設定もきちんとされているアインクラッドの11月の夜の冷気を感じ、リアは詰めていた息を吐く。そして空になった肺に、その冷気をいっぱいに吸い込むと、気分が落ち着いてくるような気がした。

 
「…まったく、何をやってるんだろうね」

 そういって、自嘲気味に笑う。だが、どんな時も隣にいて、返事をしてくれる人は今はいなかった。

 リアは、ゆっくりとした足取りで、宿屋へと足を向けた。







 リアが出ていってから、ツカサとアスナの間には、沈黙が流れていた。どうやって切り出そうか、悩んでいるのがお互いにもわかる。結局沈黙を破ったのは、アスナのほうであった。
「ツカサさん…生きていたんですね…」
「ああ…連絡の一つも入れなくて、悪かったと思ってる」
 
 ささやくような小さな声の問いに、ツカサはカップに視線を落としたまま答えた。6年近くも音沙汰がなかったのだし、テロから行方不明になったのだから、死亡と判断されるのは至極当たり前だと理解しているが、生きているのに墓を作られ、祈られていたと思うと非常に奇妙な気持ちになる。リアもこういう気持ちだったのだろうかと、ふと思ってしまった。

 だが、顔を上げ、目の前にいる彼女のハシバミ色の瞳を直視すると、その思考は彼女に対するものへと変化する。最後に会ったのは、ツカサが10歳で、アスナが9歳の時で、6年たった今ではすっかり大人びて、美しく成長している。アスナから見ても自分はずいぶん変わっただろう。あの頃は140㎝ほどだった背丈は、今では176㎝までになっているし、声変わりだってした。髪型は変わっていないが…。

「いえ、いいんです。また、生きていてくれただけで、こうしてまた会えただけでいいんです」

 そういってアスナは微笑んだ。ツカサは顔を再び下に向けると、曖昧にうなずいた。
 
 以前はどうやって彼女に接していただろうか。ツカサはふと、そんなことを考えてしまう。何年もあっていないせいで、接し方もわからなくなってしまった。まるで初めて会う人のようで、居心地が悪い。かなりの人見知りのツカサにとって、2人だけというこの状況はかなりの苦痛だった。いや、昔のままだったのなら、話せていただろうが、お互い外見も、恐らく中身さえも違うのだから、難しいと言ったらこの上ない。ツカサは、こんな時にコミュニケーションスキルが欲しかったと心の底から後悔する。リアというパートナーを見つけてからは、彼女に任せ、人付き合いはとことん避けてきたことが災いした。

 だが、ポタリ、という雫が木製の机に落ちる音を聞いた瞬間、そんな思考は一瞬にして消え去った。
「え…」
 昔からどんな時も気丈にふるまっていた彼女。恐らく、今でもそんな性格は変わらないはずなのに、そんな彼女が涙を流していた。それは一向に止まる気配がなく、逆にますます増えていく。
 
 ツカサは大いに慌てた。そもそも、なぜ泣いているかということが全く意味が不明なうえに、泣いた女性を慰めるなどというマニュアルはツカサの頭の中には存在しないからである。リアが泣いている姿はここ数年、まったく見ていないし、彼女以外に親しい女性など、環境のせいもあって、いるはずがない。

 たらりと仮想世界の冷や汗がこめかみを伝う。いったいどうしたものか。

 頭を最近の中で一番にフル回転をさせる。リアに連絡を取ってみる。…いや、寝ている可能性もあるし、何より、今はメニューウィンドウを開くべき時ではないと、直感的に思った。つまりは…自分一人で、彼女と対峙するしかないわけだ。しかし…

「ほんとに、ほんとに生きててよかった…!」
 
 ツカサの息は、一瞬止まってしまった。そして、同時に心の中に、温かいものがあふれてくるのを感じる。いや、あのような人たちなうえに、表面でしか心配していないだろうし、アスナも、こんなに長い間会わなかったのだから、自分のことなど忘れてしまって当然だろうとずっと思っていた。

 だが、アスナが涙を流した理由は、ツカサが生還したからだった。そのことを理解した瞬間、ずっと肩に入っていた力が、抜けていくようだった。

「遅くなって悪かった…」

 そういって、ツカサはアスナの頭へと手を持っていくが、触れる直前でびくりと手が止まる。…だが、結局その手はアスナの頭を撫でるに至った。

 アスナが泣き止むまで、ツカサはずっと彼女の頭を撫で続けた。






 
 そのあと、アスナといろいろな話をして、リアのいる宿屋に行ったのは、すでに10時を回ったころだった。今日は朝から晩までフィールドを駆けまわっていたのだから、リアはもう寝ているだろう。
 そう思いながら、扉の解除をして開けると、案の定リアはベッドの中で寝息を立てていた。武器や防具を解除し、身軽になった体を、リアを起こさないように、慎重にベッドの中に滑り込ませる。体にじんわりと温かさが染み渡ってきたとき…
「ツカサ君…?」
 
 どうやら、起こしてしまったようだった。横を見やると、灰茶色の瞳がのぞいている。

「起こしたか」
「ううん、いいの」

 リアはそう言って、息を吐いた。

「ねぇ、ツカサ君…手、握ってもいい?」
「いいよ」

 リアは、布団の中にあるツカサの左手を両手で包み込むようにして握った。布団のよりもさらに温かいリアの手に包まれると、なぜだか安心するような気がする。

「ツカサ君…」
「何?」
「ふふ…なんでもない」

 急にツカサの名前を呼んだと思えば、なんでもないという。

「ツカサ君…」
「だから何?」
「なんでもないよ」

 2回目となり、そろそろリアの頭を小堤いてやろうと、ツカサは左を向く。だが、その瞬間固まった。
 リアの閉じられた目から、雫が零れ落ち、枕に吸い込まれていく。

「リア…?」
「何でも、ないよ…」
 
 かすれた、小さな返事。やがて、リアが再び寝息を立て始めるころまで、ツカサは固まったままだった。



















 



 
 

 
後書き
 はい、いかがでしたか?

 今回はアスナとツカサでお送りしました。アスナとツカサは、はとこでした。僕は、はとこには一度もあったことがありません。まあ、アスナの家柄をおそらく知っているだろう皆様は、なぜはとこでもかなりの顔見知りなのかはご察しでしょう。

 それにしても、リアが結構複雑な心情をしてそうですね。あの一滴の涙の意味をいろいろと考えてみてくださるとうれしいです。

 

 次回はボス攻略会議です。お楽しみに! 
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