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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート

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36:この世の真実のように

「――ユミルッ…………お前はっ……ミストユニコーンの《ビーストテイマー》……だったのか……」


 俺の引き攣った言葉に、ユミルは大きく瞳を震わせ、歯を食いしばる。
 しかし、彼はユニコーンを庇いながら、細かく震える両肩で俺へと大鎌を向け、見上げる体勢のまま言葉を紡がない。

「どうしてだっ……」

 俺は声を震わせる。
 驚愕でいっぱいだった俺の胸の内には……今はふつふつと、怒りの念が沸いて来ていた。

「……どうして黙っていた!? どうして俺達にっ、そのユニコーンは自分の使い魔である事を話さなかったんだっ!!」

 叫ぶ。
 そうなのだ。元よりユミルがそう話してさえいれば、これまでの惨状が起きる事もなかったのだ。
 それに俺は腹を立てていた。

「そう言ってさえいればっ……お前も、俺も、アスナ達やマーブルさんだって……誰も傷付かずに済んだんだぞ!? 誰一人としてだ!! それなのに……なぜ黙っていたんだ!!」

 ユミルは荒く息を続けるだけで、答えない。
 その姿がますます俺の心の業火に油を注ぐ。

「答えろユミルッ!! その事を話しても、それでも俺達がユニコーンの恩恵欲しさに、お前の使い魔を殺すとでも思っていたのか!? そんなっ……そんなにも俺達が……信じられないのかっ!?」


「――ああ信じられないねっっ!!」


 ユミルはとうとう、俺の癇癪(かんしゃく)に引火されたかのように大きく口を開けて叫んだ。

「そうしない保障がどこにあるっ!! なにが『信じられないのか』だよっ!? 信じられないに決まってるだろっ!! 人は口先じゃどうとでも言えるんだっ!!」

 彼は喉を引き裂かんばかりに声を荒げ、言葉を俺達に叩きつける。それは最早人というより……獣のそれだった。

「ボクは知っている!! 人間なんて、いつも笑顔で嘘をつく……!! いつでも平気な顔で人を裏切れる……!! そして、どんな時でも醜く争っている……!! そんな……愚かで汚らわしい生き物なんだっ!!」





 そして彼は、一際大きく咆哮する。

「人が信じあえる存在だなんてっ……ボクは絶対に認めない!!! 人はっ――」


 ――それはまるで、この世の真理のように。



「――――人はっ……傷付き、傷つけあう為に生きている!!!!」



 ………………
 …………
 ……
 …


 ――そう。……あれは、忘れもしない。

 ボクと……大切だったあの子との、もう終わってしまった物語。

 
 

 
後書き
それは、決して嘘とは言えぬ、この世の真実。


……ユミルが、冒頭の《死神》の最後の一言を、ついに口にしました。
プロローグと、繋がりましたね。
この一言に、一体どのような意味が含まれるのか……

次回、とうとうユミルの過去が語られます。
一体何があったのか。どうして彼はこんなことに成り果てたのか。
この事件の起因たる全てが、この話に内包されることでしょう。(執筆中……汗)
次回をお楽しみに。


今回の挿絵:
喉を裂くかのように叫ぶユミル。
この構図、実はこの辺りのシリアスシーンでいつ使おうか、どこで使うかかなり迷っていました。
マーブルの「だったらどうすればいいのよっっ!?」や「全ては、この子を守る為……!!」の叫ぶシーン。
ユミルの「――だからこそ! ボクはっ、キミ達が憎くて憎くてたまらないっ!!」のシーンなど。
ですが同じ構図を何度も使うとマンネリしちゃうので……
このシーンで一度のみ、バーンと使いたかった。



蛇足:
12/16
今回、割と大事な事を「つぶやき」ました。
最初から読み、ここまで読み追いついた方にはぜひ読んでいてもらいたいです……。
よろしくお願いします。 
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