DOREAM BASEBALL ～ラブライブ～

今日はFNS歌謡祭でAqoursが出ますね！！
仕事から帰るまでは出ないでくれと祈ってます(笑) 

ﾊﾞｼｨｯ

「ストライク！！」

外角へのストレート。高さは決して厳しいとは言えないようなものだが穂乃果のバットは当たる気配がない。

（速い！！昨日のブルペンから投げ方が変わったが、それが球速アップに繋がっているのか？ならなぜそんな突然・・・）

エースの成長に驚くことしかできない。3球目のサイン。これにツバサは首を振り、次のサインにうなずいた。

（次もストレートが来る！！それ以外ならごめんなさい！！）

ストレートに狙いを絞って投手の動きを観察する。ツバサはセットポジションに入ると小さく息を付いた。

（重心が上下しないように足を上げ、お尻から沈み込むように前に移動していく。テイクバックで一度腕を伸ばしきって足が着地したと同時に腕を振り上げ、一気に解放する！！）

小さい体を大きく使い投じた豪速球。穂乃果はストレートに食らい付いていくがバットは無情にも空を切った。

「ストライク！！バッターアウト！！」

真ん中高めのストレート。見送ればボールかもしれない際どい球だったが、あまりの速さに手が出てしまった。

『高坂三振！！マウンド上の綺羅、日本女子最速となる133kmを記録しました！！』

またしても記録を更新するスピードボール。それを見ている音ノ木坂のベンチは唖然としている。

（今の投げ方・・・まさか・・・）

そして剛は先程のツバサの投球フォームがある人物に似ていることに気が付いた。ベンチに駆け足で戻ってきた穂乃果に彼は問いかける。

「穂乃果、花陽のあのボール、誰から教わった？」

ピリッとした空気が流れる。穂乃果はベンチに入ると剛の横に立ち説明する。

「準決勝の後、孔明さんに会ってその時に教えてもらいました。ツバサさんも色々教えてもらってました」
「そうか」

わかったと伝えて穂乃果は声出しに戻る。マウンド上の少女の動きを観察しつつ投球フォームを見つめる。

「ストライク！！」

129kmのストレート。ツバサはそれに首を傾げボールを受け取りサインを見る。

（凛、ストレートだけに絞れよ。変化球は絶対ない）
（わかったニャ）

剛はツバサがストレートのスピードに拘っていることをすぐに理解した。今はまだ未完成。本人も投げ方にバラツキがあるからか納得できずにそればかりを投げている。真ん中にくれば狙い打てる。

ﾊﾞｼｨｯ

そう思っていた。打席に立つ凛も以前沖縄で見た150kmよりも遅いから打てると考えていた。それなのにボールはバットに当たってくれない。

「孔明と同じストレート・・・なのか？」

ストレートとわかっていても打たれないかつての旧友のストレート。それと類似したその球に額から汗が流れる。

「ストライク！！バッターアウト！！」

最後はアウトローに決まった126kmのストレートを見送り三振。球速は出なかったものの決まったコースが良すぎて凛は手を出すことができなかった。

（真姫にも全部ストレートだろう。初球でタイミングと球筋を見極めろ）
（了解）

いつになく真剣な眼差しで相手を見据える。その初球、高めに外れるストレートを見送り1ボール。

（今のじゃ軌道が見えない。もう1球待ってくれ）

続くストレートも見送り1ボール1ストライク。だがこれでタイミングも軌道も見れた。真姫は次のストレートを狙っていくが空振り。バットの上をボールが通過していく。

「まだ下を振ってるの？」

悔しそうに投手を睨むスラッガー。ツバサはそれを睨み返すと、セットポジションから腕を振り下ろす。

（今度こそ！！）

全力投球にフルスイングで答える。タイミングはバッチリ。それなのにボールはかすることなくミットへと吸い込まれた。

「ストライク！！バッターアウト！！」

三者三振。かすりもせずにその場で唖然とし投手を見つめる真姫。ツバサはそれに一瞥もくれることなくマウンドを降りた。

『両校エースがこれ以上ない完璧な立ち上がりを見せました！！かつて甲子園を沸かせた東日本学園佐藤のダブルスプリットを思わせる小泉のフォーク！！それに対しUTXの綺羅は日本女子最速のスピードボールで対向！！この両エースを果たしてどちらが先に打ち崩すのか！？』

守備に散っていこうとするナインの中、真姫ににこや凛が声をかける。ミカからグローブを受け取った彼女は顔をうつむけながら守備に付いた。

（真姫ですら捉えられないか・・・こりゃあ投手戦になりそうだ）

監督としては乱打戦の荒れた試合の方が気が楽だ。投手戦になるとどうしても采配が試合に影響を与えるため胃が痛くなる。そんな無責任な監督もどうかと思うが、対する西村も同様に嫌な顔をしていた。

「英玲奈、あんじゅ、ちょっと来い」

この回先頭のあんじゅとなぜか英玲奈が呼ばれる。

「今日のツバサはヤバイ」
「そうですね。今までにない出来ですよ」
「これなら私たちが打てば勝てるわね」
「違う、そうじゃない」

2人の意見を真っ先にぶったぎる。彼は悪人のような表情でベンチに腰かけるツバサに視線をやる。

「今の調子じゃあいつはどこかで必ずパンクする。だが1点で大きく状況は変わって来るはずだ」
「1点先に取ればってことですか？」
「それもある。だが、それだとあいつは止まらない。1点くれてやることが重要になってくる。英玲奈」
「はい」
「ピンチの場面で、出来ることならタイムリーで1点くれてやれ。それであいつは頭が冷えるはずだ。あんじゅ、1点取られたらうちは何をしなきゃいけないかわかるな？」
「点を取らなきゃいけない、ですよね？」
「そうだ。頼むぞ」
「はいは～い」

初めての4番にテンションが上がり気味のあんじゅ。彼女は打席に立つと、見渡す限りの人で埋め尽くされたスタンドに目をやる。

「完全にフルハウス♪1本いっちゃおうかしら」

ルンルンとした目で花陽を見据える。それに怯むことなく彼女は初球を投じると、あんじゅはピクリともせずに見送った。

「ストライク！！」

際どいところだがこれはストライク。あんじゅはボールの軌道をイメージするために目を一度閉じると、すぐに構え直し準備する。

（次は同じところからボールになるスライダー。低くお願いね）

外角のストライクから低めに外れていくスライダー。あんじゅは手を出しかけたが懸命に堪えカウントを1つ戻す。

（手を出してこなかったか。なら少しゾーンを上げさせて空振りを取るのも一種の手だが・・・）

同じ球種で今度はストライクからストライクへのボール。穂乃果もこれを要求し三塁線へのファールとなる。

（追い込まれたわね。小泉さんはダブルスプリットと高速スプリット、普通のスプリットの三種類を持っているって話だったわね。ならここは・・・）

恐らく決め球はこの3つのどれか。読みが外れると当たりそうもないとなれば、決め打ちするしかない。

（ダブルスプリット！！これに狙いを絞る！！）

小さな手から放たれたボール。それは真ん中へと向かってくる。

（ここから落ちる！！）

彼女の予想通りバッテリーが選択したのはダブルスプリットだった。英玲奈のスイングを見て完全に合わせたはずだったのに、あんじゅのバットから快音は響かない。

「あんじゅ！！振り逃げ！！」
「もう！！わかってるわ！！」

ボールがワンバウンドで捕球されたため一塁へと駆けていく。穂乃果は前に弾いたボールをすぐさま拾い慌てることなくアウトにした。

「わかっていても打てない・・・これがダブルスプリットなのか・・・」

キレ、落差、スピード。どれを取ってもかつてない強敵であることは言うまでもない。絶対王者UTXの表情が、曇り始めた。


 

いかがだったでしょうか。
次からは多少テンポが上がりつつ行くはずです。恐らく・・・