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フランケン

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第三章

「しかしいいことだ」
「そうですか」
「乗馬はいい嗜みだしな」
「移動も速くなりますし」
「だからだ」
「乗馬を教えてもですね」
「いい」
 実にというのだ。
「むしろ私の方から先にだ」
「乗馬を教えるべきだと」
「そう思った」
「そうですか」
「神学や人間の美徳だけでなくな」
「さらにですね」
「そうした、貴族の嗜みもな」
 教えていき、というのだ。
「気品も備えてもらおう」
「そうしていきますか」
「ヴィクターは呑み込みが速い」
 十代の頭脳を持っているだけにというのだ。
「これからも成長していってもらおう」
「わかりました」
 助手も頷いてだ、二人でヴィクターに乗馬以外にも貴族社会の身だしなみや礼儀作法についてのことも教えていった。
 そしてだ、気付けば。
 ヴィクターは優れた知識と教養、人間性と気品を備えた人物になっていた。その彼を見てだった。
 博士は笑みを浮かべてだ、助手に話した。
「いい人間になったな」
「そうですね」
 助手もそのヴィクター、今は教会に入り神父と神について話している彼を見つつ話した。
「非常に」
「聖職者と神について話せるまでになった」
「しかも喋り方も礼儀正しく」
「非の打ちどころがない」
「実に立派な人物になりました」
「そうだな、それでなのだが」
 ここでだ、博士は助手にこうしたことも話した。
「彼が言っていることだが」
「何とですか?」
「修道院に入りたいそうだ」
「ではそちらで」
「学問を続けさらに神に近付きたいとだ」
「言っているのですか」
「そうなのだ」
「それはまた」
「意外か」
「いえ、意外ではないですが」
 それでもとだ、助手は博士に話した。
「予想以上です」
「そこまで学問に向上心が生まれてだな」
「神に近付こうとするとは」
 まさにというのだ。
「思いも寄らなかったな」
「はい、このまま学問をしていくと思いましたが」
「修道院に入りそこでさらにとはな」
「思いませんでした」
「全くだ、しかし」
「このことはですか」
「素晴らしいことだ」
 まさにというのだ。
「彼の意識を尊重したい」
「では」
「修道院に入りたいならな」
 ヴィクター、彼がそう思っているのならというのだ。
「喜んでだ」
「認めてですか」
「さらに学んでもらおう」
「そうしてもらいますか」
「彼が望む様にな」
「博士がそう言われるなら。しかし」
 助手はここでこうも言った、深く思案する顔で。
「わからないものですね」
「人の手で生み出された人間でもというのだな」
「はい、あの様に高潔な人間になる」
「私達が教育したからだ」
「それで、ですか」
「ああした人間になってくれた、どういった生まれでもな」
 それでもというのだ、例えそれが死体の手をつなげて造られた生命であろうとも。 
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