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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!

作者:織部
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邯鄲之夢 10

 空を浮遊する巨大な岩盤により陽光が遮られ、あたりは群青色の帳に包まれた。

「ら……、ラピュタだ」
「ちがう」
「ラピュタはほんとうにあったんだ」
「ちがう!」
「父さんはうそつきじゃなかったんだ!」
「くどいわっ! ちがうと言っているだろう! あれこそは天翔ける相馬の天空内裏。新皇陛下のおわします御所だ」
「内裏だ、御所だって……。まさかあの大岩の上には平安京でも丸ごと乗っているのか」
「そうだ。さすがにいにしえの平安京ほどの広さはないが、東西に1・2キロメートル、南北に1・4キロメートルの広さを持つ大いなる空中都市よ」
「マジかよ! いまの京都御苑より広いじゃないか」
「おまえはどこの田舎者だ、そんなことも知らんのか」
「ああ、知らない。日照権の侵害になりゃしないのかな、あの大岩」
「畏れ多くも新皇陛下の前に下々の権利など知ったことか」
「……あの大岩の下に連なる環状列石、あれは呪法陣になっているな。あれによって重力を打ち消し、都市全体を空に浮かべている。それだけじゃあない、周囲に無数の防御陣や式神が潜んでいる……」

 複数に張り巡らされた結界や隠形している式神の気配がする。霊的な存在はもちろん物理的なものに対しても備えはできているようだ。

「見鬼もそれなりに使えるようだな」
「あの浮いている小島に生えている木。ありゃあ梅の木か? ずいぶんデカいな。しかしなんで梅の木があんな場所に……、まぁ風流といえば風流だが」
「畏れ多くも御所であるぞ、それ以上みだりに視てはならん!」
「ちょっと木気が強すぎないか、ただの梅の木じゃないようだが」
「だからいらんことを口にするなと言っている!」
 
 秋芳と地州がそのようなやりとりをしている間に京子は神龍武士団らに暴行を受けた人々の介抱にまわる。

「大丈夫ですか? あ、血が」

 中身がこぼれぬよう必死になって鍋を守っていたため手ひどく痛めつけられた長身の男性を手当てしようと近づくと、目深にかぶったフードから赤いものが見えた。
 すぐに治癒符を出して手当てしようとしたが、やんわりとことわられた。

「……俺は平気だ。それよりもはやくここを離れたほうがいいんじゃないか? すぐにでもやつらの仲間が駆けつけてくるぞ」
「けが人がいるのに、そういうわけにもいかないわ。あら? あなた……」

 妙に押し殺している感じがしたが、まだ若いと思われる男の声には聞き覚えがあった。この声はもしや――。
 すると地州とおなじように額に呪印があり、防戎瘴衣を身につけた男たちがあつまってきた。
 長身の男が言ったように地州の仲間、神龍武士団の連中だろう。彼らは問答を続ける秋芳のまわりをかこむ。

「こやつは闇鴉(レイヴンズ)の一派だ。水樹、金山、蒲地、火野坂、佐々木、土部、天野、海原の八人は厳重に捕縛しろ。仲間が潜んでいる可能性がある、あとの者はモスク内の連中をひっ捕らえよ」

 地州がそう命じると水樹と呼ばれた者をはじめ八人の神龍武士団員たちが口々に呪を唱える。
 淡い光の線が浮かび上がり、それぞれをつなぎ、秋芳を包囲した。

「八陣結界か、しかしなんとまぁずさんな」 

 対霊災用遁甲術の八陣結界。おもにフェーズ3以上の霊災を封じ込めるために祓魔官がもちいるもので、人間相手に使用されることは基本的にありえない。それだけ強力な術であり、これに結ばれると基本的に内側から破ることができない。
 だが神龍武士団たちの身に帯びた霊力は凡庸で、術の練度もお粗末なものであった。
 
「禁術則不能現、疾く!」

 術を禁ずれば、すなわち現れることあたわず。
 包囲している神龍武士の中でも特に霊力の低い相手、金山と呼ばれた男に狙いをつけて呪禁にある持禁の術をもちいて強引に封じようとした。八陣結界は八人の呪術者がそろわなければ展開できない封印結界だ、ひとりでも欠ければとたんにほころびが生じる。
 秋芳と相手の霊力差は雲泥の開きがあり、いとも簡単に無力化されるはずであった。
 しかし――。

「ぐむむっ!? ハアァーッ!」

 秋芳の呪に抵抗しようと金山が気合いを入れる。すると額の呪印が輝きを放ち膨大な呪力があふれ出して呪禁を弾き返してしまった。

「おおっと!?」

 予想外の抵抗力に弾かれ、返しの風となって我が身を害しそうになった呪をあわてて抑える。持禁の術は現実を歪める力技。呪力の消費も多く、術を失敗したり相手に抵抗された場合の反動が大きい。

(なんだこいつの霊力は!?)

 片目をすがめて相手を視る。
 凡庸だった先ほどの霊力とは比較にならないほど高い霊力を帯びている。いや、帯びているのではない。
 出ている。
 額に印された梵字のような呪印から滔々とあふれ出る霊力が呪力に変換され、金山のものとなっていた。
 それはまるで龍脈の流れを読み、見極め、みずからのものへと変える京子の如来眼を彷彿とさせた。

(こいつの霊力は他所から供給されている!)

 自前のものではない強力な霊力が額の呪印を通じて送られてきている。他者に霊力を付与し、一時的に能力を上昇させる術は存在するが、どうもその類でもないらしい。
 秋芳の知識にはない未知の呪術だ。

(さすが〝現代〟が舞台だな。今まで巡ってきた古代や中世の世界とは異なり、俺の知らない新技術でも存在しているのか)

 結界の力がいよいよ強まり、秋芳の自由を奪いかける。

「眩め、封、閉ざせ。急急如律令(オーダー)

 異変が生じた。
モスク内の人々を強引に取り押さえようとしていた神龍武士団の半数以上がばたばたと倒れだす。
 京子の放った眠りの呪によるものだ。
 さらに八陣結界を構成する武士団員たちも昏倒し、結界が解除されかけたそのとき八枚の呪符が放たれた。
 呪符は空中にとどまり、武士団たちが直前まで結んでいた結界の呪力をそのまま掠め取るかたちで八陣結界を再構成。八枚の呪符から伸びた青白い霊光は秋芳のみならず地州までその内部に封じ込んだ。

「……京子?」

 呪符を放ち結界を展開したのは京子だ。
 本来は八人のそろわなければ完成しない封印結界を呪符で代用しているので結界の結びは弱くなるものだが、その術の完成度の高さは先ほどの比ではない。
 
「おのれ、仲間がいたのか!」

 呪力(ちから)まかせだった神龍武士団たちのそれとは異なり、京子の結界は精緻かつ剛健、巧妙にして堅固。高い技術と呪力によって構成されていた。
 あわてた地州がいそいで結界を解除しようとするも、間に合わない。

「俺ごと封印するだなんて、いったいなんのつもりだ」
「さっきの質問、はぐらかしたままでしょ、答えて」
「しつもん~?」
「そう。いったいだれとラブホなんかに行ったのよ、恋人? それともそういう人?」
「いや、まぁ、それはその……」
「秋芳くん、前に女の子とつき合ったのはあたしがはじめてって言ってたわよね」
「そうだぞ」
「じゃあやっぱりそういう系の仕事の人だったの?」
「ちょ、なぜにこのタイミングでそんなことを……」
「はやく答えて」
「いや、それはなんと言うか、まぁ……あれだ。俺も男だからな、キャバクラはもちろん遊郭のような場所に行ったりして、湯女や飯盛女の類と遊んだことも多少はある」

 湯女に飯盛女。いずれも江戸時代の娼婦で、前者は銭湯で垢すりや髪すきのサービスを、後者は旅籠で客に食事の給仕をするほか春も売っていた人のことで、こんにちでいうソープ嬢やピンクコンパニオンのようなものだと思っていい。

「だがそれは君に合う前のことだからな! 君とつき合うようになってからはそういう店にも嬢とも無縁だ。信じてくれ」
「ええ、信じるわ。いままで服にちがう香りがついていたこととかなかったし、変な会員証や名刺がお財布の中に入ってたこともなかったし」
「お、おう……」

 世の中には浮気などしていないか、おたがいのケイタイをチェックするという恋人たちがいるが、秋芳と京子の間にそのような習慣はない。
 一般の女性でも恋人から二種類以上の香水や消臭剤の香りが漂っていればピンとくる。さらに男の胸にやましいところがあるときの目の動きや、口調。かもし出す空気のちがいに気づく勘の良さを持っている。
 ましてや京子は星詠み。それも森羅万象を見通す仏眼仏母の相、如来眼の持ち主である。そんな彼女に隠し事をするのは不可能だ。

「好きな人の過去に興味はあるけど、むかしの女関係に嫉妬するようなことはしないわよ、あたし。あとそういうお店の人とそういうことしても、べつに浮気じゃないし怒らないわ」
「そうとも、ああいうのは浮気なんかじゃない」
「本気にならないならいいわよ」
「本気になんかならないさ、たんなる遊びだ」
「悋気は女の謹むところ、殿方の女遊びにいちいち目くじらを立てるものではない。て、お祖母様が言っていたわ」
「さすが倉橋塾長は話がわかるな」
「あたしもおおむね同意」
「そうか。だが繰り返すが俺はもうその手と遊びとは無縁だからな、ほんとうだぞ!」
「べつにいいのよ、いまでも行っても」
「なぬ!? いいのか?」
「ええ、いいわよ。あたしをふくめて、他の人にもまったく、全然、ばれるようなことがなければね」
「いやぁ、なかなかどうして本妻にふさわしい度量じゃないか」
「…………」

 男性の女遊び・風俗通いに対する女性の許容は人それぞれだ。
 ある人は行ってもかまわないけど、わからないようにして。と言うし、別の人は行くことすらゆるされない。行って当然、素人の女を相手にするよりはよっぽどマシ。という女性まで、さまざまだ。
 どうも倉橋家の女性は男の女遊びに対して理解をしめしているように思えたのだが――。

「ただしばれた場合はお仕置きよ、こんなふうに――。焼けつく風よ、血肉を蝕み錆と化せ。急急如律令(オーダー)

 京子が中空に文字を書くように指をなぞらせ詠唱をおこなうと結界内の空気が変質し、わずかだが鼻をつくような異臭が混ざる。

「京子、おまえなにを……」
「あたしからの個人的ミッション。結界内の空気がすべて毒になる前にそいつをたおす」

 そう言うとふたたびけが人の介抱にまわる京子。

「お、おいっ。やっぱり怒ってない? 俺が過去にした女遊びのこと気にしてない?」

 気分を害したのは過去の女性遍歴ではなく、いまでもそれ系の店に未練があることをしめした態度なのだが気がつかない。

「おいこらきさまぁっ! くだらん痴話喧嘩に巻き込むなっ」
「うるさい、とっとと眠れ!」

 秋芳は一気に距離をつめて地州の喉に貫手を打ち込んだ。呪文の詠唱や集中するいとまをあたえず、肉弾戦に持ちこんで倒す。
 対呪術者戦における秋芳の常套手段だ。
 だが放った貫手は寸前でガードされた。
 間髪を入れずに突きや蹴りの連激をくり出すも、これらも手足で受け止められ、まともに当たらない。
 地州という男、呪術だけでなく格闘の心得もあるようで、そのまま素手で反撃をしてきた。
打つ、突く、蹴る、投げる、崩す、極める、締める、固める、組み伏せる、挫く、受ける、避ける、捌く――。
 拳と拳、脚と脚、身体と身体がぶつかり合う目まぐるしい素手の応酬。

「ええい、呪術者なら呪術を使わんか呪術を。この脳筋術師!」
「先に素手で挑んできたおまえがそれを言うか、バラガキが!」

 打撃は相手と接触するためのきっかけにすぎない。格闘戦はどうしても密着するものである。こちらから相手との接触点を作り、そこから手首をつかんだり、側面や背後にまわったり投げたりと、バーリトゥード(なんでもあり)だ。
 地州につかまれ、あやうく投げ飛ばされそうになるところを、相手の身体にしがみついてやりすごす。柔道式の受け身なぞとらない。下が畳などではないのが実戦だ。音の出るような柔道式の受け身をアスファルトや砂利の上でしたらけがをするだけで受け身をとる意味がない。
 そのまま羽交い締めにしようとするが、うしろにまわした手に顔面を掻き回されそうになったので上体を反らした瞬間、背中から地面にダイブされる。息がつまり手がゆるんだ隙を見逃さす身を起こした地州はそのまま起き上がりざまに秋芳の顔にむかって膝蹴り。
 両手でガードしつつ打撃の勢いを殺すために後ろに跳びすさる。
 素手の間合いから離れ、あらためて対峙するふたり。

(こいつ、ケンカ慣れしてるな)

 おたがいに相手の武は道場拳法などではなく実戦で練られたものだと痛感した。

「……武術はもっとも実践的な呪術のひとつと言うが、なかなかどうして。先ほどうちの連中を退けた腕といい今の技量といい、闇鴉には〝鬼喰らう鬼〟阿刀冬児をはじめ、武辺者がよくいるらしい」
「鬼を喰う鬼とはまたおそろしい。アベル・ナイトロードみたいだな、この世界の冬児は」
「アベルとかいうやつは知らん」

 無駄口を叩いている間にも結界内の空気が変質しつつある。鼻をつく臭気は強まり、目に染みるような痛みを感じはじめた。

「おまえのツレは空気を酸性の毒気にする呪を唱えたようだな。まったくえげつない」
「うん、でもまぁ恋人の悋気で一〇〇tハンマーや電撃を喰らうのって、男の夢でもあるしね」
「きさまの趣味嗜好など知るか! ――オロロ・シンバラ・アラハバキ・カムイ・ニギヤ・ハヤニ・ナガスネ!」

 アラハバキの神呪を唱え終えたとたん、地州の身体が秋芳の視界から消えた。
 否。
 消えたのではない、高速で移動したのだ。またたく間に地州の身体は数メートルを移動したのだ。
 アラハバキ。
 荒覇吐、荒吐、荒脛巾などと表記される、おもに関東や東北で信仰されている神。
 その起源には諸説あり、道祖神や塞ノ神、製鉄神や蛇神としての神格を持つ、謎多き異貌の存在。
 そのアラハバキ神には健脚の神としての側面も持っている、地州は自身の素早さを劇的に上昇させる術をもちいたのだ。
 地州の世界から音が消えた。
 結界の外では神龍武士団たちが逃げる人々を追いかけたり、京子に立ち向かっていたが、それらはすべて静止画像のように動かなくなっていた。
 いや、ちがう。
 ひとりがぶちまけた鍋の中身が顕微鏡で見るアメーバのようにゆっくりと形を変えている。
 加速状態にある地州の目には周囲の景色がスローモーションに見えているのだ。
 足を一歩踏み出す。
 重い。
 まるで水中での動作のように抵抗がある。それでも一歩一歩と距離をつめる。無音だった地州の耳にごうごうという音が聞こえる。
 風を切る音だ。
 地州の主観では秒速二〇センチでしか動かしていなくても、実際には秒速八〇メートル。時速にして三〇〇キロに近い速度で移動しているのだ、手足を振るたびに風切り音がするのは当然だ。
 また水中にいるかのような感覚がするのは空気抵抗のせいだ。
 相手がいかに武芸百般を心得ていようが、単純なスピード勝負に持ちこめば意味がない。神経伝達速度のちがいは決定的であり、反応速度がちがう、思考速度がちがう。
 超高速の攻撃を受け止めなどできない。
 ゆっくりと(あくまで地州の主観で)秋芳に近づき、拳を振るう。
 大ぶりのフックだが避けられる心配はない。この一撃で決まる。相手は攻撃されたことすら気づかず斃されることだろう。
 地州はおのれの勝利を確信した。
 しかし――。
 するり、と拳が躱される。

「んなぁッ!?」

 避けた。
 超高速による攻撃を回避した。
 空振りに終わり動作が崩れる。すぐには体制を立て直せない。なにせ猛スピードで動いているのだ。秒速一〇〇メートルでも約一〇センチの減速区画が必要となる。いったん開始した動作を急停止することはむずかしいのだ。

「アラハバキ神呪とは恐れ入った。そんなレアな呪の使い手ははじめてだよ」

 足をそろえて両腕を少し広げた状態で宙に浮いている秋芳の声がはっきりと地州の耳にとどいた。
 それはつまり相手もまた自分とおなじ加速状態であることをしめしている。

「きさまぁ……」
「地州といったな、お世辞抜きで凄いよ、あんた。こうまで肉体操作系の術を制御できるなんてな」

 祓魔官や呪捜官のなかには呪術によって自身の能力を上昇させて戦いにのぞむ者もいる。俗にいう魔法戦士タイプというやつだ。
 膂力を上げる仁王真言や素早さを上げる韋駄天真言などがよく使われる。
 地州が使用したのも韋駄天系に分類される敏捷性(アジリティ)俊敏性(クイックネス)を上昇させるものだが、通常の韋駄天真言による加護をはるかに上まわるものであった。
 並の術者がもちいる韋駄天真言では、せいぜい身を軽くしたり足を速くする。反射神経を良くするのが精一杯だろう。
 時速三〇〇キロの動きにまで高める呪力。そしてその高速移動に対応するための動体視力の強化。空気抵抗をやわらげたり、衣類や皮膚を守るための最低限の結界を同時に展開する必要も生じる。
 速くできるからと考えもなしに速度だけ上げれば滑稽かつ悲惨な目に遭うことだろう。
 猛烈な空気抵抗で服は破れ、髪の毛は引きちぎられる。速さについていけず転倒したり壁にでも衝突すればそれでおしまいだ。
 それらを地州はやってのけたのだ。

「……ぬかせバラガキ。この地州をダシにして自分を褒めているだろう」

 そう。秋芳もまたそんな地州の動きについてきているということは、地州のそれと同等レベルの術を使えるということだ。
 地州の練り上げた術式を視て加速・倍速系の術だと判断した秋芳もまた自身に高速移動を可能にする道術、神行法をもちいたのだ。
 秋芳がゆっくりと着地した。四〇〇倍に加速された時間のなかでは重力は一六万分の一G、ほとんど無重力になる。

「さて、おたがい8マン状態になったことで毒が満ちるまでかなりの余裕ができたな」
「きさまいくつだ、そんな古臭いキャラ今の若いやつらは知らんぞ」
「じゃあ『NEEDLESS』のセツナ。好きだったなぁ、後藤沙緒里のお姉さんキャラ。あと楼閣寺離瑠のおっぱい」
「そんな萌えキャラ知るか!」
「萌えキャラってわかるってことは知ってるってことじゃないか……」

 いまのふたりは常とは異なる時間の流れのなかにいる。だれかがその会話を聞いていたら、その口から出た言葉は短いパルス音にしか聞こえないだろう。

「じゃあ、あらためて〝速さ〟勝負というこうじゃないか」

 両者が動く。
 ゆっくりと、風よりも速く――。 
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