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RSリベリオン・セイヴァ―

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リベリオン・セイヴァー2 第一話「正義の味方」

 
前書き
久しぶりの更新ですね! 二期の前半は狼と弥生はあまり登場しません。 

 
その上空には紺碧の空が広がり、水面にはその蒼穹をどこまでも映し出している。
そんな幻想的世界に俺、鎖火狼がいた。
嘗て、臨海学校での時に生死をさまよう俺が迷い込んだ世界。しかし、なぜ再びこのような世界に招かれてしまったのかはわからない。
「ここは……あのときの?」
また、死にかけるようなことをしてしまったのだろうか? いや、覚えがない。
『狼……』
何者かの……いや、かつての零の声が聞こえてくる。
「零……!?」
再び舞い戻ってきた俺のもとへ姿を現したのは、白銀の甲冑を身に纏う雄々しい風格をした武者が仁王立ちしていた。
「零……お前、なのか?」
『狼……我が主よ? 其方に伝えなくてはならぬ事態が起こった』
その力強い声が俺に言う。
「どういうことだ!?」
『相容れぬべき其方の影が、刻々と主に迫ってきている。いずれ、その影は主と対面するであろう……』
「影……? いったい、何を言ってるんだ!?」
『狼よ、もう一人の自分に気を付けろ……あれは主の力を遥かに凌駕した恐るべき「影」であるぞ……』
「俺の、影……?」
『狼、今其方はその影との因縁を絶ち、愛する者を守り抜かなくてはならぬ。これまで封じていた我が真の力を来たるべき戦いに備え、解き放つ……』
「!?」
零は、眩い光を放った……

「……!?」
目を覚ますと、そこは玄那神社の社務所兼自宅の中だった。隣には弥生が同じ布団で添い寝していて、すやすやと可愛い寝息を立てながら寝ている。
「……」
うなりながら俺は起き上がった。
――夢、か……
俺は、夏休みに弥生の自宅へきて、彼女と共に八月を過ごしているところだった。
「……」
俺は、ぐっすりと眠っている弥生の前髪に触れた。
――愛する者を守れ、か……
夢の中で、零が俺に言い残したことを思い出した。
しかし、それは単なる夢か、それとも未来を知らせる零からのメッセージだったのかは、今の俺には見当もつかなかった。
ただ、俺は彼女の傍にいられるだけで幸せに感じた。
そろそろ、この夏休みも終わるな? 俺は、再び布団に潜ると弥生に寄り添って再び瞼を閉じた。


エリア11、居住エリアにて

俺の名は、草加了。エリア11に住む「ヒーローマニア」だ。っと、いってもその実態はその辺のゴロツキと変わらない。
御袋は、女尊男卑にかぶれて見知らぬ男と不倫して離婚。親父はその後自殺し、以来一人になったところを、発明家の爺ちゃんのもとで引き取ってもらうことになった。
しかし、発明ばかり続けている爺ちゃんには他のことに回す金などはなく、俺はやむを得ず高校を中退して先ほども言ったようにゴロツキとなったのだ。
まぁ、別に学校なんて大嫌いだし行けなくなるならいいと吹っ切れた。元より学校では常に孤立気味の俺だから、友達なんて興味ないし必要はなかった。

「しまったぁ~!」
日曜日の朝、大急ぎで二階の自室から階段を駆け下りてドタバタとテレビのある居間へ押しかける。
この時間は、俺の大好きなヒーロー番組がやっている。「特捜戦士ジャスティスライダー」だ。
大人も楽しめるシリアスなストーリー展開が売りで、毎回見逃さずにこの特撮を見ていた。
しかし、今回は惜しくも見逃してしまい目覚まし時計を見て大急ぎで居間へ急行し、慌ててテレビのスイッチを押す。
録画しておけって? それも一理あるが、俺は何よりも大好きな番組はリアルタイムで見る主義、こだわりがあるのだ……
「あ~! 見逃しちまった……」
ちょうどそのころで、エンディングに入っていた。
一生の不覚! と、自分を責めつつ番組を見終わった後、暇つぶしによく行く爺ちゃんの研究室へと向かった。
鬱な気分になりながらも、地下に通じる階段を下りていく。
「爺ちゃん、爺ちゃんいるか?」
「お?」
屋中問わずパソコンを睨み続ける白髪だらけの老人。そんな彼は、こう見えて元学会では知らぬ者はいないとされる超有名な科学者らしい……
「今度は、なーに作ってんだ?」
「ああ、これはな……」
爺ちゃんは、椅子から立ち上がると、先ほど完成した物質を掌に載せて俺に見せた。
「何これ?」
銀色のビー玉……の、ようだ。
「力作じゃよ?」
「それよりもさ? 早く、俺に『変身アイテム』を作ってくれよ?」
「ほうほう……いずれな?」
しかし、今日も爺ちゃんは相変わらずな返事だった。
「もう、その返事は何度も聞いて飽きたよ?」
「しばし待たれよ?」
「……」
俺は、爺ちゃんの目を盗んで、爺ちゃんが作ったという先ほどのビー玉を素早い手つきで懐へ入れた。
何となしに胡散臭そうであったが、爺ちゃんの作った発明品だ。信用は出来る。
「……して、今日は何処へ向かう予定じゃ?」
どうせ、今日も外へ出て何かしでかすんだろ? と、いう予想の顔で俺に問う爺ちゃん。もちろん、俺は今日も外へ出る。
「お、おう……ジャンクかな? 今日も、ゴミ捨て場漁ってくる」
「そうか、近頃は警察がウヨウヨしておる。十分注意しろ?」
「ああ……」
俺は、爺ちゃんに背を向けると地上へ元来た階段を上って地上の事態くへと出たら、続けて外へ出た。
「さて……」
孫が出ていったところで、完成した発明品の動作テストを行おうと立ち上がったが……
「……!?」
ビー玉は消えていた。

ここエリア11は、かのエリア20からもっとも近い居住エリアである。ちなみに、日本列島の各エリアは番号がゾロ目ではなく順序がバラバラだ。
だから、ここからでもエリア20より「IS学園」がはっきりと聳え立って見える。
――悪の組織の根城め……!
俺にとって、ISは「絶対的悪」、「悪の怪人」、としか思っていない。また、女尊男卑の象徴ともいえる、IS学園はもろ「悪の組織の本部」として捉えている。
いや、それ以前に俺を嫌う女はみんな「悪の怪人」なんだ。小さい頃から身近に自分を支え続けてきた存在は特撮などに登場する「変身ヒーロー」だ。それを見ながら育った俺は、自然と劇中に出てくる悪い怪人を、自分を苦しめる、女尊男卑に染まった女たちに重ね合わせていた。
「……」
いつか、きっと俺に強い力が手に入れば……あんな物、ぶっ壊して世の中を平和にしてやれるのにな……
今は無理でも、爺ちゃんがきっと作ってくれる、こうみえていつも爺ちゃんにお願いしているんだけど、爺ちゃんは相変わらずのスルー……
そして、ついにしびれを切らして、俺はコイツをかっさらった!
「……」
しかし、一見ただのビー玉にしか見えない代物だ。もしかすると、何らかの機械に使うために作られた動力源のコアかもしれないな。ガムシャラになって盗んでくるんじゃなかった……
なら、ハズレを引いてしまったかもしれない。
「やれやれ、あとでバレないよう返しておかないとな?」
溜息をついて、俺はビー玉を懐へしまい込んだ。
その後、俺はよく通う御なじみのガラクタ置き場へと向かった。そこは、誰も寄せ付けない危険区域であることから、俺以外は誰も近寄ろうとはしない。
俺は、そこらへんに転がり埋もれるガラクタを慣れた手つきでガサゴソと漁り始めた。
半壊し、汚れた冷蔵庫やグニャグニャに曲がりくねった自転車、どれも使えるものはない。今日こそは金目になる物を掘り出さないと、あと少しで欲しいDVDが手に入るんだ!
「劇場版セイバージャスティス」のDVDだ。コイツは、数ある特撮物の劇場シリーズの中で名作として呼び名が高い作品なのである。その後の他作品や続編であるジャスティスライダーもその影響を受けて、やや話の濃いい内容になっているのだ。
早く、手に入れて早速隠れ家で見たいものだ。
「……あ!」
そのとき、ガラクタを漁る最中にふと目についた物が見つかった。傷も汚れも目立たないワンセグである。
「こ、こいつは……!」
俺は、それが金に換えられる代物だとすぐに見抜くと、歓喜に飛び上がった。
「いよっしゃあー!」
何度も確認し、どこも異常がないことを確認する。なんと、電源を入れればまだ使えるのだ。こいつは、予想以上に良い値段がつくだろう。
案の定、千円ほどで買ってくれた。元がブランドのメーカーらしく意外と値を付けてくれた。
これで、欲しかったDVDが手に入る! 金を受け取ったら即行に近場の書店へ向かった。
書店では、本を中心にDVDやゲーム、CDなどが売られている大型店舗だ。ゲームやCDの店頭PVが甲高く鳴り渡る中を速足でいき、周囲に目がいくことなくDVDコーナーへたどり着いた。
「えーっと……あ、あった!」
最後の一枚。それを取ろうと背を伸ばしてDVDのケースへ手を添えようとしていたときだった。
「あっ……」
彼の手が、もう一つの手と重なり合った。
「え?」
自分の手と重なった手は、柔らかみのある白い手であり、その主は……少女であった。
青い紙に眼鏡をかけた根暗っぽい雰囲気を漂わせる物静かな少女であった。
背丈も、俺の胸元ぐらいの大きさである。
「「……」」
しばし、沈黙が訪れたのちに、口を最初に開いたのは少女のほうだった。
「あ、あの……よかったら、どうぞ?」
「え? あ、ああ……」
しかし、今時男である俺に譲るか? 今のご時世相手が男だったら容赦なく譲らないくせに。珍しい女もいたもんだ。
「……」
俺は、ジロリとそんな少女を見た。
「あ、あの……」
恥ずかし気に目をそらす少女に、俺はこういった。
「マジか……?」
「は?」
「いやさ? 今時……譲ってくれる女って初めて見たよ俺」
「えっ?」
「珍しいってことだよ……?」
「……」
すると、少女は俺の顔を不思議そうに見つめた。
「好きなのか? ジャスティスセイバー」
「う、うぅ……」
しかし、彼女は恥ずかしがってしまい、喋らなくなってしまう。しかし、顔を赤くする彼女はおどおどしながらも小さく頷いた。
「へぇ~? 好きなんだ? 女でも好きなんだな? ヒーローものが」
「……」
どうせ、馬鹿にされるのかと少女は沈んだ表情をするも。
「やっぱ、カッコいいよな? ジャスティスセイバーってさ?」
「……?」
しかし、からかわれるかと思ったら、逆に興味を示してくれた大柄な青年を目に少女は目を丸くした。
「シリアスなだけにコミカルさがあってさ? リアルタイムで見たときマジで引き込まれたっつーかさ?」
「……」
「主役の正義タダシ役の俳優もいいけど、やっぱライバル役の黒井マサルをやった人も最高だよな?」
「あ、あの……」
「あ?」
すると、俺の話に何やら言いたいような顔をする少女は、モジモジしながらもこう返した。
「その……私は、最後のギガント戦で戦死した戦友の加藤ジョウジさんをやった俳優が、好きです……」
「おおー!」
すると、俺は目をキラキラさせて、熱く語りだしてしまう。
「やっぱ、あのシーンは涙なくして見れねぇよな~!」
「……で、でも。悪役だったギガント皇帝の王子も嫌いじゃありませんでしたよ……?」
「うん! うん! あの王子が最後父親の皇帝を説得させようとした場面もよかったよな~?」
「そ、それに……主人公がヒロインと最後のやり取りも好きです……!」
顔は赤くも、好きなことになったら少女は積極的になって話してくる。
「おう! 最後の結婚エンドは俺も泣いたって!」
「でも……一番好きな場面は、囚われのヒロインをジャスティスセイバーが助け出すシーンが一番……」
「あ! そこ、俺も超大好き!!」
「あ、あの……お客様?」
ヒトヒトと、俺の肩をつつくのは書店の店員だった。
「周りのお客様のご迷惑になりますので、もう少しお静かに……」
「あ、すみません……!」
つい、やってしまったと俺は顔を赤くして詫びた。
長居しづらくなった俺は、彼女と一緒に外で話すことになった。
とりあえず、ベンチに座って先ほどの熱き語りを再開している。
「やっぱ、あの作品を超す特撮ってないよなぁ~」
「は、はい! 私も、あの作品が今でも大好きです……あ!」
それから、一時間ほど話した後、彼女は幼児を思い出したような顔をしていきなりベンチから立ち上がった。
「いけない……!」
「ん、どうした?」
「ごめんなさい……そろそろ行かなきゃ」
「そうか、じゃあな? また話そうぜ?」
「うん、それじゃあ……」
少女はこの場を後にして、俺の前から去っていった。さて、俺も早いとこ家に帰ってDVDを見ないとな……
俺もベンチから立って、公園を出ようとしたときだった。
「……?」
ふと、周囲の風がざわめき始めた。それは次第に音が増し、その違和感に俺はあたりを見渡した。
「なんだ……?」
俺以外の周辺の人々もその異様な空気に何かを感じたらしく、俺と同じようにあたりを見回す。
「!?」
刹那、俺は上空より飛来する巨大な影を目撃する。次第とその影は降下するにつれて巨大さを増していき、地響きと共に公園の地面へ着地したところには、やく五メートル近い人型の何かとなっていた……
――あ、IS……!?
俺はその黒いシルエットを目にハッとした。しかし、全身装甲に包まれたその人型をISを呼ぶのはやや抵抗がある。
「……」
黒い人型は、俺の方へ見るなりその巨大な両椀部をこちらへ向けてきた。まさか……!
「!?」
その巨大な掌から眩い光が放出され、それは図太いビームとなってこちらへ突進してくるのだ。
「うわっ……!?」
咄嗟に両腕で顔をかばう体制をとるが、そんなことしても助かることはない。何が何だかわからないまま、俺はその光に飲み込まれそうになったのだが……
「え……!?」
しかし、そのビームの行方は俺かと思ったのだが、直前にそのビームは俺の直前で大きく頭上へ湾曲したのだ。
――な、なにが起きてんだ!?
湾曲したビームは俺ではなく、真上の上空に浮かぶ入道雲を貫いて巨大な風穴を作らせた。そんな光景が周囲の人間をくぎ付けにして、大衆がざわめいた。
「な、何なんだよ……!?」
まさか、日本では起こりえないかと思っていた、ISによる爆撃テロだというのか!?
「やっばぁ……!」
俺は隙を見て、ISに背を向けて走り出した。それを知ってかISは俺だけを狙ってビームを撃ちまくる。
しかし、俺に当たるはずのビームは次々に行方を変えられ見当違いの方向へ飛んで行ってしてしまう。
「くそっ……一体何なんだ!?」
俺は遮二無二逃げ続けた。しかし、奴は次々にお構いなくビームを連射していく。そうこうしているまに、あたりの街中は瓦礫だらけとなった。
――こんな時に爺ちゃんが居てくれたら……
困ったときは何でも頼りになるお茶目な祖父を思った。しかし、こんな時に爺ちゃんが来てくれるわけでもない。
と、しかし……
『了! 了!? 聞こえるか!?』
何処からもなく爺ちゃんの声が聞こえてくる。幻聴か? いや、現実だ!
「爺ちゃん!?」
『ほれ見たことか……いいか! わしのいう通りに動くんじゃぞ!?』
「え? つうか、あれなんだよ!? さっきから追いかけてくるんだけど!?」
『今はわしの言う通りにしろ!? さすればこの状況を脱することができる!!』
爺ちゃんの怒号に俺はビクッとし、大人しく彼に従った。
「わ、わかった……どうすればいい!?」
『いいか! 両方のこぶしを互いにぶつけ合うんじゃ……』
「え、え!? なんだよ、わかんねぇよ!?」
『いいから両腕をグーにして、そのグー同士を強くぶつけるんじゃ!!』
「え、えっと……こうか!?」
両手の拳を互いにぶつけ合った。
「!?」
突如、俺に異変が起きた。ぶつけ合って両腕の拳から発生した青い光に包まれると、ぶつけた両腕に何かが装着されるのがわかる。
銀色のゴツい、ガントレットであった。
「こ、これは……!?」
しかし、その両腕の成りに戸惑う俺の背後からISの巨体が忍び寄った。俺はその殺意に感づいてとっさに振り向くが、ISの巨大な両腕が俺の頭上へ振り下ろされる。
「うぐぅ……!」
俺は、再びガントレット越しの両腕で頭上を防ぐと、その攻撃はピタリと止まりだした。
「……!?」
恐る恐る頭上を見上げると、巨大な腕は俺のガントレットによってあっけなく受け止められていたのだった。
「な、なんだ……!?」
『今じゃ! 了、反撃を……』
「!?」
爺ちゃんの声に我に返った俺は、奴の腹部へ蹴りを入れ込んだ。ISから距離をとるためにやったことだが、それは違った。距離を取ったのはISの方だった。いや、距離を取られた? 俺の蹴りでダメージともに距離を取られた。俺に蹴り飛ばされたのだ。
「こ、これは……!?」
『それが、「RS」の力じゃ……!』
「あ、RS!?」
『話はあとだ! 了、トドメを!?』
「ッ……!!」
そして、俺は蹴り飛ばされたISを見た。今はどうこう言っている間はない。俺は地面を強く蹴り上げて奴の元へ飛び込んだ。
「うおぉ!!」
右腕の一撃が、ISの腹部を貫いた。IS……いや、内部は千切れあった配線やショートする光がチカチカと見える。もしや、ロボットか?
その、ロボットは膝を落として倒れ、爆発した。それなりに激しい爆風が周囲を飲み込む。
「俺が……やったのか?」
『ふぅ……どうにか、切り抜けたようだな? 了』
「そ、それよりもこれは何なんだよ!?」
『たわけ! それはこっちの台詞じゃ! 勝手に、ワシのとこから凱錬(がいれん)を持ち出しおって!!』
「が、凱錬……・?」
このガントレットの事か? しかし、先ほどはこいつのおかげで命が助かった。感謝しつつも、俺は凱煉を両腕から取り外そうとしたが…・…
「なんだ!?」
途端、凱煉は急に光りだしたと思えば俺の両腕へ溶け込む様に消えてしまい、残されたのは両腕の素手だけだった。
『了……やはり、おそかったか?』
何やら爺ちゃんがそう言う。俺はそれに慌てながら問う。
「どういうことだよ!?」
『そのままの意味じゃ。RSは手にしたものをふさわしき主人と認めてその体内に溶け込んで主と一体化することができるのじゃ。だが、ISの適性を持った人間に対しては拒絶反応を起こしてRSは起動しないがな』
「……」
俺は今一度自分の両手を見つめた。この凱煉との出会いが、俺にとって何らかの運命的なものを引き寄せるやもしれないと……

その後、俺は家に戻って爺ちゃんにお説教を受けた。だが、こうなってしまった以上は仕方ないと爺ちゃんは頷くと、彼はその後、電話で誰かへ連絡を取り始めた。何やら気まずい雰囲気だ。まるで、俺が何か罪を犯しちまった気分だ。
それから数時間の沈黙が流れた。爺ちゃんは相変わらず表情を険しくさせて、俺を睨むように見つめている。いや、睨んでいるに違いない。だって、俺が軽い気持ちで爺ちゃんの大切な発明品をクスねちまったんだから……
それから、沈黙の間が終わりを迎えて我が家にある来客が訪れた。白衣を羽織い、青い髪で眼鏡をかけた若い青年である。
「やぁ……君が、了君だね?」
「あ、ああ……そうだけど? あんたは?」
「申し遅れた。僕は、エリア14の統括者をしている魁人・セカンドだ……」
「え、エリア14!?」
「それでは、九蔵博士?」
「うむ、よろしく頼む……」
俺は腰が抜けるほど仰天した。エリア14といったら、日本で最も治安のわるい居住エリアじゃないか? いや、下手すりゃあ、そこは日本とは別世界なんだと思った方がいい……
そんな「魔界」を取り仕切る統括者がどうして爺ちゃんと知り合いなんだ? いや、そもそも俺はこれまで爺ちゃんの本職が発明以外しか知ることはなかった。いろいろな発明をしているから、何を専門かもわからない。
「……では、了君? ついてきてくれ?」
「あ、あの……! どこへ!?」
「安心したまえ? 君をエリア14へ連行しようなんてことは考えていないからさ? 君をこれから日本支部の要塞へ連れて行こうと思ってね?」
「よ、要塞……?」
けど、俺の顔は真っ青なままだった。このまま要塞という場所へ連れていかれたら……二度と表に出てこれなくなるとか?
「安心せい? その男を信じろ、決して悪いようにはせぬ」
と、爺ちゃんまでも言う。しかし……
「だ、だけど……」
いつの間にか弱気になる俺に、爺ちゃんはため息交じりに魁人にヒソヒソ耳打ちする。何だか気分が悪い。
「ああ……単純ですね?」
「じゃろ? いい年して、戦隊モノなんかも観ておるし……」
「マニアですか?」
「オタクと呼ぶんじゃよ? オ・タ・ク……」
「な、なにヒソヒソしてんだよ!」
すると、魁人は俺に振り向き直るとこうニヤニヤしながら、言い出した。
「まぁ、信じれもらえないなら君の好きな選択をするがいい。だが……君? 一様問うけど、特撮とか好き? っていうか、大好き?」
「へっ?」
俺はキョトンとした。
「変身ヒーローや、変身ヒーローが乗るバイクマシンや飛行マシンとか好きかい?」
「な、なんだよ……いきなり?」
緊張の中、俺の趣味の話に代わると、俺は次第に警戒を解き始めた。
「っていうか、君? 前々から『ヒーロー』になってみたいって思ったことないかい?」
「だ、だから何なんだよ! さっきから!?」
「私の所へ来ないか? もし、来てくれるのなら……君を『セイバージャスティス』に変身させてやれなくもないんだがね?」
「せ、セイバージャスティスに!?」
俺の目がピカッと光った。
「君、セイバージャスティスになって、この世の悪女共(IS)を倒して世界に平和を取り戻したいと思わないかね!?」
「お、おお……」
俺は次第に興奮しだす。胸の底から熱い何かが込みあがって……
「さぁ! ともに立ち上がり、この世界に正義のリベリオンを示すのだぁー!」
「おおぉー!!!」
気が付けば、俺も一緒になって興奮し、いつの前にか「ついていきます」って話になってしまった。
だが、後悔はしない! 俺は……俺は……
――セイバージャスティスになれるんだぁ~!!
目をキラキラさせて周りのことなんて見えなかった。
「……どうするんじゃ? 本人、それになりきった気になっておるぞ?」
はしゃぐ俺を後ろに爺ちゃんは魁人に問う。
「一様、その変身ヒーローに似せたメカスーツを用意しましょう? オタクなら、細かいところを気にしそうなので、より精密に作らなければないか……」
ある意味、面倒な奴が凱錬の装着者になってしまったとため息をつく魁人。しかし、それはそれで、娯楽感覚で面白そうだからこれはこれでいいかと片付けた。


 
 

 
後書き
次回
「断罪騎士セイバージャスティス!」 
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