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舞台で注意すること

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第三章

「私は」
「まだあのこと気にしてるの」
「だってスカート穿いてたら」
 見れば画面に小学校低学年の頃の七瀬が出ている、顔立ちはあまり変わっておらず童顔のままである。
「風でめくれてね」
「一瞬じゃない」
「ちょっとでも見えてたのよ」
「だからなのね」
「そのドラマは見たくないわ」
「そんなの覚えてる人いないでしょ」
「私は覚えてるの」
 当人はというのだ。
「だからね」
「嫌だっていうの」
「そうよ、まさか自分が見えるなんて」
「女優さんとかアイドルの人じゃよくあることよ」
「そうかも知れないけれど」
「自分が見えたら嫌?」
「いいって人いないでしょ」
 それこそと母に言う。
「お母さんだってそうでしょ」
「それはね、やっぱりね」
「だからその別の番組見て」 
 そのドラマでなく、というのだ。
「そうして」
「仕方ないわね」
「他のドラマならいいけれど」
 七瀬が出ているドラマはだ。
「将来もっと大きな役で出られたら余計にね」
「それは頑張ってね、けれどあんたこのドラマ見てからよね」
 自分が出ているそのドラマにだ。
「もうずっとズボンよね」
「ええ、スカートの時は下に穿くし」
「ガードしてるのね」
「だって見えるの嫌だから」
 それ故にというのだ。
「そうしてるのよ」
「気にし過ぎでしょ」
「それだけ見られるのが嫌なの」
 あくまで言う七瀬だった。
「私はね」
「そうなのね、それでズボンか下に穿く様にしてるの」
「そういうことなの、もうすぐその場面だから」
 まだ小学校低学年の頃の自分、テレビの画面の中にいる自分自身を見ての言葉だ。
「替えてね」
「はいはい、仕方ないわね」
 リモコンを手に取ってだ、母は娘に応えた。
「じゃあクイズ番組見るわね」
「そっちの方にしてね、じゃあ私今から劇団のレッスンに行くから」
「頑張ってね」
「ええ、今日もね」
 挨拶はにこりとしている七瀬だった、そうして家を出るがこの時もズボンだった。ズボンを可愛く穿きこなしてレッスンに向かったのだった。


舞台で注意すること   完


                    2017・11・24 
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