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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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遺体のない葬儀編-2-

楽しい食事を終えた後、食器の片づけをしているムラクモの傍により

「ムラクモさんちょっといいですか?」

一緒に食器を片づけながら聞いてみる。

「この街にどこかお勧めの本屋さんとかありませんか?」

街の探索行こう! 張りきったところまでは良かったが、自分達はド田舎出身のおのぼりさん。
都会の怖さを知らない。都会の歩き方を知らない。都会の怖い人に絡まれた時の対処法を知らない。
なので詳しそうなムラクモに聞いてみたのだ。

「本屋……ですか?」

んーと暫く考え込んだ後、ハッとした顔をして

「あの裏路地にある本屋はどうでしょう」

思い出すように、独り言を呟くかのようにムラクモは言った。

「本当ですかっ、あの案内してもらってもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。ルシアさま達の行きたい場所へ案内するのも私の仕事のですから」

優しく微笑むムラクモにルシアも頬を緩める。

「むぅー」

楽しそうに会話している二人を不機嫌に睨みつけているのはランファだ。
どうしたのとシレーナが聞いて見ると、頬を膨れ上がらせたまま

「あの二人お似合いすぎるぅー」

むすっと言った。

「……そうだね」

なんだかシレーナの顔までむすっとしているように見えるのは気のせいだろうか。

片付けが終わるとすぐに

「では行きましょうか」
「はーい」

部屋を出て階段を下りると出迎えていた宿の従業員総出て送り出してくれた。
さすがは最高峰のお宿、サービスが徹底されている。ルシア達の姿が見えなくなるまで九十度に曲げた腰を上げなかった。頭は地面すれすれにまで下したままだった。

ちょっと場違いすぎて気恥ずかしい気もするけど。






                      †






「やっぱ人が多いねー」

リムジンの中で見た時も思ったがさすが大都市ゼルウィンズ、様々姿の種族、様々職業の人たちが自由に行き交い、自由に売り買いしている。

しかもいつ何時、どんなことが起こっても安心なように雪のように白色に蒼い海のような縦縞(たてしま)、背中にあるマントには国鳥の不死鳥が描かれている鎧を着た雪白の騎士たちがパトロールしているから安心だ。

「異常はあるか」
「なにも異常はありません!」

新米騎士とベテラン騎士だろうか。
新米騎士はまだ頼りない感じで鎧を着ているというより、鎧に着られていると言った印象を受ける。
ベテラン騎士は見ていてそこが違う。屈強な身体は戦でついたものか、傷だらけで着ている鎧もまた傷だらけで歴戦の戦士を思わす風格漂う。

「そうか次はあっちだ!!」
「はい!」

新米騎士はビシッとした見事な敬礼を見せると、街の人々は彼に頑張れなどと声援を送る。
この国にとって騎士とは、英雄(ヒーロー)のような存在なのだ。

「この道を真っ直ぐ進んだ先に目的の店がありますよ」

ムラクモが指さすのは繫華街から離れたとある裏路地。
溝鼠(ドブネズミ)などが沢山いそうな薄暗いだ。でも目的の本屋へ行くにはこの道を通って行くしかないため仕方なく通ることに。

案の定、鼠と蜘蛛の巣だらけの最悪な道だったが。




                      †



ムラクモに案内の元に薄暗い裏路地を歩いていると一歩の通りへと出た。
目の前には寂れ朽ち果てたような、潰れかけの本屋が一軒建っていた。

「まさか」
「……ここ?」

いやそんなまさかね……と、苦笑いし顔を見合わせていると

「いえここですよ」

きっぱりとした口調でムラクモは言い切った。
……まさかこんなまだやっているのか、もう潰れているのかも分からない本屋に連れて来られるとは思ってもみなかった。

「見た目はこんな、ですが品揃えは評判良いんですよ?」

苦し紛れの言い訳のように言っている。
まあ確かに人は見かけによらないと言うし、本屋だって外観だけで判断してはいけないのかも、しれない。

「気に入る本があればいいね」

横にいるシレーナに声をかけると

「……ん」

頷きカラカランとドアを開け本屋の中へと入って行った。
シレーナにとっては本屋の外装なんてどうでもいいことだったようだ。
興味があるのは置いてある本だけ。新しい本との出会いだけのようだ。

なんというか素直な子だ。

先に入ったシレーナの後に続けて本屋に入ろうとすると

「それでは私はここから少し離れた場所で待っているので終わったら声をおかけください」

そう言ってこの場から離れようとするムラクモを呼び止めると

「私はこの店には入れないんです」

振り返えらないまま寂しげな声で彼女は答えた。

「一緒に来ればいいのに……へんなの」

不思議そうな表情で去ってゆくムラクモの背中を見つめるランファにルシアはそうだねと言い頷く事しか出来なかった。

本当は知っている。昨夜ムラクモが話してくれたドラゴンネレイドと壊楽族の因縁の話に関係しているのだろうと。
でもそれを何も知らないランファに教えることは出来なかった。
言えない理由は自分でもよくわからなかったが、この事実は自分の胸の中にそっと仕舞い込んでいた方が良いと思ったから。

ランファの身体をくるりと回転させ背中を押してシレーナを追いかけ本屋の中へと入った。
 
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