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ヘタリア大帝国

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206部分:TURN20 エルミーの来日その七


TURN20 エルミーの来日その七

「ドクツ潜水艦隊の旗艦です」
「ではこの艦にですか」
「私は乗っています」
 まさにそうだというのだ。
「何でしたら中に入られますか?」
「宜しいのですか?」
「同盟国として。技術援助も兼ねての来日ですから」
 それ故にだ。エルミーはそれもいいというのだ。
「ですからこちらとしてもお願いします」
「わかりました。では好意に甘えまして」
 秋山はエルミーのその提案に応えた。こうしてだ。
 日本帝国軍の主立った幹部達がその潜水艦フォルケーゼの中に入った。エルミーの案内でだ。その中には科学技術長官の平賀もいる。
 平賀は潜水艦の狭く機能的な艦内を見回す。そうしてだった。
「凄いな」
「凄いですか」
「これは天才の造るものだ」
 こう言うのだった。ただしそれは平賀が言うのでなかった。
 久重だった。彼が今回も平賀の言葉を代弁していた。
「ここまで画期的な艦はかつてなかったものだ」
「そうですか。ところで」
「ところで?」
「何故猫が喋っているのですか?」
 エルミーは平賀の頭の上にいる久重を見て言う。お互いに小柄なのでエルミーの頭の高さに久重を見る形になっていた。彼をやや見上げている。
「先程もしゃべる犬や猫がいますが」
「ああ、アストロコーギーにアストロ猫に」
「パンダに猿も」
「彼等は私と同じなんですよ」
 久重は自分の言葉でエルミーに話す。
「津波様に喋る様にしてもらったんです」
「平賀博士にですか」
「はい、脳と声帯を改造してもらいまして」
「それで貴方もですか」
「私は津波様の代弁役です」
 そうだとだ。久重はまた自分から話す。
「以後お見知りおきを」
「はい。日本帝国には色々な動物がいますね」
 言いながらだ。エルミーは柴神も見た。
「犬と人の合いの子の方も」
「いや、私は合成獣ではなく元からこの姿だ」
「犬人ですか」
「言うなら犬神か」
 やや不吉な祟り神ではない。文字通りのそれだというのだ。
「私はそれになるか」
「神だというのはですか」
「君達の概念で言えば神になるか」
「そうですか」
「そう考えてくれていい。だが特別視しないでもらいたい」
「神でもですか」
「私は私だ。飾ることもしないしな」
 だからだ。人間達も敬うこともだというのだ。
「そうしてくれ。普通に接してもらいたい」
「わかりました。それじゃあ」
「それではな。しかしだ」
 柴神も潜水艦の中を見回す。そうして言うのだった。
「画期的な兵器だ。しかしだ」
「しかし?」
「危うくもあるな」
 こうも言ったのだった。
「この兵器はな」
「危うい。そうですね」
 エルミーも柴神のその言葉に応えて述べる。
「一歩間違えればそのまま別の次元に言ってしまいますので」
「これまでのテストでそうなってしまった艦はあるか」
「機械操作で何度も」
 あったというのだ。
「流石に人ではありませんが」
「よかったな。それは」
「はい。ただ何度か危うい場面はありました」
「そうか」
 エルミーのその話を聞いてだ。柴神は犬のその顔に暗いものを見せた。
「気をつけてくれ。若しも向こうの世界に行けばだ」
「向こうの世界とは?」
「いや、何でもない」
 自分が言おうとしていることにだ。柴神は気付いた。それでだ。
 己の言葉を止めてだ。こう言ったのだった。
「とにかくだ。この兵器をか」
「日本でも開発できるでしょうか」
「私は新たな兵器の開発は不得意だが」
 平賀が言ってきた。やはり久重の口で。
 
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