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ナニイロセカイ

作者:猫丸
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*サクラ色の世界





サクラの花びらが舞う季節



満開の桜が綺麗 絶好のお花見日和




今日 わたしは通っていた小学校を卒業します_。





「ううぅ。寂しくなるね」

「みんな元気でね」

「――ちゃんもね!」

色々やることが終わって最後に教室で行われる涙のお別れ会。みんな涙を流して顔がぐちゃぐちゃ。

「皆さん中学校に行っても元気でね…シクシク」

あ。先生まで……。
皆涙を流して仲のいい子達は抱き合ったりして別れを惜しんでいます。
わたしも空気を読んで泣いたりした方が良いのかな?
と、思い頑張って泣こうとしてみたけど、涙は流れませんでした。
色々試行錯誤して悲しい気持ちなろうとしたけど、どうしても涙は出せませんでした。

「――ちゃん!」

顔も知らない。
名前も知らないクラスメイトと呼ばれるAさんがわたしの名前を呼んでます。

「離れ離れになっちゃうけど元気でね!」

両手でしっかりとわたしの手を握りしめて涙ながらに何かを言っています。

「バイバイッ」

名無しの誰かは一通り何かを言い終わると満足そうな顔をして他の友達の所へ走って行きました。
あの子は誰だったっけ? 
顔も名前も知らない名無しの子。

「みんなとの別れはもういいの?」

迎えにやって来たお母さんの所へ行くと第一声がこれでした。

「もういいの?」

もういいの? …よくわからない。
なにがもういいのか。
どうなったらもうだめなのか。
この時のわたしには意味がよくわかりませんでした。


今日で仲の良かった友達の半数とお別れしました。


知り合いの大半は同じ中学校に通います。


新しい学校での新しい生活が始まります_。











―始まりは嫌いです。








―新しいことは嫌いです。







ー新しい学校





ー新しい教室






―新しいクラスメイト






―新しい友達








全部。全部。全部。全部大嫌い。























満開に咲いたサクラが散りました。




先週降った大雨のせいで満開に咲き誇ったサクラの花びらは全て地面に叩き落とされて枝にはもうなにもありません。

真っ裸になったサクラの木。そしてわたしの心と同じどんより曇り空。

わたしが泣けない代わりにお空が泣いています。大粒の涙を流して泣いています。

大きな体育館。

大きすぎて自分は小さなアリさんになってしまったのかな、と錯覚してしまいそうなくらい広くて大きな体育館。
緑色のシートが床に広げられ、沢山のパイプ椅子が並べられています。

「じゃあ順番に座ってってー」

先生の指示のもと。言われるがままに指定された席に座りました。
周りを見れば知らない子ばかりで少し不安な気持ちになります。

「じゃあ。あともう少ししたら入学式が始まりますからね」

と言っている先生の声も聞こえない程、体育館の中はがやがやしています。
うるさい。こわい。沢山の人に囲まれてきもちがわるい。

"タスケテッ”

と心の中で叫んだわたしの悲鳴は誰の耳にも届きません。

入学式が始まって、校長先生の気が遠くなるような長い話、よくわからない退屈なカルキュラムが全て終わったところで入学式が終了。

はぁーやっと終わった。解放されると息をついたつかの間のこと。

今度は教室案内。

自分の教室を自分で探さなければいけない。

あー。いつになったらこの地獄から解放してくれるのでしょう?

北にある校舎の三階に一年生の教室があるらしいです。
一歩、一歩、丁寧に階段を上がっていきます。
ああ……気が重い。あと階段がきつい。どうせなら二階がよかった、もしくは一階。

心の中で文句を言いながら三階に辿り着くと、沢山の生徒達で溢れかえっていました。
……このまま引き返そうかな? 
とも思ったけどそうはいかない。仕方なく教室の出入り口の引き戸に貼ってあるというわたしの名前を探します。

教室は全部で七つ。
七つもあるんだ……多いよ。
しかもひとクラス四十人って多すぎだよ……窮屈すぎて吐きそうだよ……。

人込みをかき分け一つ一つ、貼り出された紙を見て行きます。

ない。

ない。

ない。

ない。

あった。

五つ目の教室でわたしの名前がありました。

わたしの苗字は中間あたり。
だからいつも探すのが大変。
あいうえお順で席に座るとだいたい真ん中の方の先生と真っ直ぐ見つめ合う席になるから、すごくいや。
目立つから。
わたしは目立ちたくないのに。ずっと日陰で静かに暮らしていたいのに……。

知らない人ばかりのクラスはいやだな……他に知っている人の名前はないのかな……と探そうとしたけど、

「邪魔よっ」

他の人に押されて逃げるように教室の中へ入ることしか出来ませんでした。

「でさー」
「わーい」

教室の中も中でずっこく賑やかでした。うるさいです。
そして知っている顔は何人かいました。
でも顔は知っているというだけで名前はおろか話したこともない人ばかりでした。

ああ_オワッタな。ただ単純にそう思いました。

「えーあたし達席とーい」
「ほんとだー最悪~」

黒板の前に人が集まっています。
話している内容を聞いてみると、自分の席が書かれている紙が貼り出されているそうです。

教室探しの次は席探しか……なんとも疲れる学校です。

また人込みをかき分けて黒板の前へ。左端から上下に順番に見て行きます。

ない。ない。な――あった。

男女二人。横に隣り合わせになった席の列をひとつと数えてそれが廊下、教室の中央、窓側の3列。
夏は日差しが熱いくてかなわない窓側の席、授業中先生にあてられる確率が高い中央の席、冬は隙間風が寒い廊下側の席。
うん、どれもどっこいどっこいですね。微妙です。まだ出入り口に近く、登校して来たらすぐに席に座れて、帰りのHRが終わったらすぐに帰れる、廊下側も後ろから二番目の席になったらは不幸中の幸いということにでもしておきましょう。
じゃないと悲しすぎて落ち込みます。

自分の席に座ってスイッチオフです。シャットダウンします。机の上にうつ伏せになって、瞼を閉じるんです。
自分の世界にこもってしまえば、煩わしい外の雑音なんて聞こえてこないから。
音の無いわたしの世界はとっても素敵な場所ですよ__?

 
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