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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第13話:材料探しはリゾート探し!?(その3)+イベント発生!?

 
前書き
嬉し、楽しいイベント発生?
やっぱりファンタジーと言ったらこの人たちの出番でしょう。
なんて、個人的感情ですが・・・。 

 
 お早うございます。アルバートです。

 ボンバード伯爵領の屋敷から『ヴァルファーレ』に乗って、ゲルマニアからガリアの国境添いに南下し、南の海辺まで資源を探してやって来ました。
昨日は海岸の砂浜で野宿したので、今は2日目の朝になります。
 穏やかな海鳴りに夢も見ないでぐっすりと眠り込んでしまい、朝の光で気持ちよく目覚める事が出来ました。流石に夜になっても寒くなる事はありませんでしたが、今日も良い天気になりそうです。
きっと暑くなるんでしょうね。

 昨日、流木をくべておいたたき火はまだうっすらと煙を上げていて、火の気が残っている事を主張しています。
ちょっと不精をして毛布をかぶって横になったまま、木の枝で少し突っついて風を送り込んでやると、赤い火種が生き返って枝が燃え始めました。さらに枝を追加して火の勢いを強くして少し太い木をくべておきましょう。
 大きくのびをして毛布から出ると、『ヴァルファーレ』と目が合いました。もう起きていたようですね。

「『ヴァルファーレ』お早うございます。」

[良い朝じゃ。主もよく眠れたようじゃな。]

「はい、ぐっすり寝る事が出来ました。今日も一日頑張りますよ。」

 それから砂を練金して真鍮の洗面器を作ります。その洗面器に海の水を入れて真水に変えて、口をすすぎ顔を洗いました。
 昨日と同じメニューですが、朝食を食べて椰子の実のジュースを飲みます。綺麗な自然の中で食べる食事は、御馳走でなくても美味しく感じられるから不思議です。
 その後、一休みしてから一通り身の周りを片付けて、寝る時に作った壁を砂に戻しました。きちんと元通りにならしておきましょう。そのままにしておいて誰かに見られると面倒ですからね。また必要な時に作るとして、今は調査に入る前に軽く体操もしておきます。

「『ヴァルファーレ』、そろそろ調査を始めたいと思いますが、周囲の状況は変化ありませんか?」

[人間の気配は全くないようじゃ。獣の類は昨日も感じられたものだけだが、位置はやや東の方に移動しているようじゃな。距離が遠いので気にする事もないであろう。]

「判りました。それでは又監視をお願いしますね。」

 そう言って、僕は昨日見つけたゴムの木の有る場所に向かって、林の中に入っていきました。

 木の幹に着けた目印を頼りに、しばらく歩いてゴムの木の所に着きます。
見てみると昨日幹に括り付けておいた容器に、ゴムの樹液が3/4位溜まっていました。一晩で結構溜まるものですね。
樹液の出が悪くなっているようなので容器を幹から外し、新しく持ってきた容器を別の場所に括り付けます。容器のすぐ上の部分に剣で傷を付けて出来上がりです。樹液の入った容器は羊皮紙を使って蓋をして紐で縛っておいて、ベースキャンプに戻る時に持って帰れるようにしておきます。

 さて、あらためて昨日作った地図を広げて調査する範囲を考えてみます。あまり知識がないので確かな事は言えませんが、ゴムの木も乾燥した土地よりもある程度湿度のある土地の方が自生し安いのではないでしょうか?
この付近の土地の湿めり具合から考えると、あの空き地にある池から流れ出る小さな川の流れる方向が気になります。まず現在地から西南の方向を調べてみましょう。多分そっちの方に川が流れているはずです。

 そう決めると、現在地から地図に書いた「W1」までの間と、ベースキャンプから現在地まで来た道(仮に南道とします。)の間をジグザグに調べていきます。
 ゆっくりと探して歩きましたが、「W1」と南道の間には見つけられませんでした。そのまま、次の「W2」方へと同様に進みます。すると大体「W1」と「W2」の中間辺りから南道に入った辺りで2本目のゴムの木を見つける事が出来ました。
最初のゴムの木から約10メールといったところでしょうか。やはり割と近くに生えていたのですね。「W1」から「W10」まで歩いた時に見つけられなかったのは、薄暗いのと木が多くて見通しが悪いのが原因だったのだと思います。
 2本目のゴムの木の位置を地図に書き込んで、さらに探して先に進みます。

 この調子で調査を続け、午前中一杯で結果、10本のゴムの木を見つける事が出来ました。細かく調べればもっと沢山の木を見つけられるかもしれませんが、一人ではこれ位が良いところでしょう。今度、ゴムの樹液を採取に来る時は何人か連れてくるつもりなので、その時にもう少し細かく調査しようと思います。
 地図に見つけたゴムの木の位置を書き込んでベースキャンプに戻ります。

「『ヴァルファーレ』、ただ今帰りました。何か変化はありましたか?」

[東の方10リーグに人のような気配がしているが、今のところ此方に近づいてくる様子はないようじゃ。そちらはどうであった?]

「ゴムの木を10本見つける事が出来ました。これだけあれば差し当たって充分でしょう。午後からもう一度廻って、樹液を取る準備をしてきます。ところで、人の気配ですか?此方に来て初めての事ですね。近づいてくるか注意していてください。」

 この後、昼食を取って一休みしました。もうサンドイッチは無いので、持ってきたハムの塊を薄くスライスして、チーズと一緒にパンに挟んで即席のサンドイッチを作り食べました。途中の池で水をくんできたので、飲み水には困りません。
 持ってきた食料は、固定化の魔法も掛かっているので保存状態も良く、あと2日分位はありますから帰るまで猟をする必要はないと思います。しかし、一人で来ているからこれ位の食料で間に合いますが、ゴムの樹液や椰子の実の採取に大勢で来ると、食料の調達が一番の問題になりそうですね。
 食用に適した動物が近くにいれば猟も出来るでしょうが、あまり大っぴらに猟などをしては色々問題になるかもしれません。かといって人数分の食料を輸送するのも大変なので工夫が必要になります。

 1時間ほど休憩を取って、再度林の中に入っていきます。
 午前中に見つけたゴムの木を廻って、一本ずつ容器を幹に固定しては、その少し上の幹に傷を付けて樹液がにじみ出てくるのを確認します。
 2時間弱で10本の木に樹液採取の容器を取り付けることが出来ました。これで今日やることは終わりです。ベースキャンプに戻りましょう。

「『ヴァルファーレ』、今日の作業は終わりました。人の気配の方はどうですか?」

[大分此方に近づいてきているようじゃ。東に3リーグ位まで来ている。人数は1人のようじゃが、少し小さい動物が10匹ほど付いて来ているようじゃ。こんな所まで何をしに来た事やら。」

「人は1人ですか?変ですね。一緒にいる動物が気になります。大体ただの人ではこんな所まで来ることは出来ないでしょう。一応迎える準備はした方が良いようですね。」

 椰子の木近くの地面に練金を掛けて小さめのゴーレムを作ります。そうするとゴーレムの分だけ地面に穴が出来ますので、さらにゴーレムを使って穴を深くします。身体が入る位の穴になった所でゴーレムの練金を解き穴の人が来る方に積み上げます。この状態で固定化を掛け崩れないようにすれば、簡単な塹壕の出来上がりです。

「『ヴァルファーレ』は目立ちすぎますから一旦異界に戻ってください。危なくなったらすぐに呼びますから。」

[大丈夫かえ?誰であろうと我が吹き飛ばしてしまえば終わりであろうに。]

「いえ、一応話し合いで友好関係が結べるのならば、その方が良いですから、問答無用に攻撃することは出来ません。自分の身を守る位は出来ますから安心してください。」

[判った。危なくなる前に我を呼ぶのじゃぞ。]

 そう言って『ヴァルファーレ』は異界に戻りました。さすがにあの巨体では隠れることは出来ませんからね。
 こちらは魔法で防衛できるように準備するのと、万一を考えて「王の財宝」から手榴弾を3個出しておきます。手榴弾はただ投げても子供の力では遠くまで届きませんが、レビテーションを使えば何処にでも飛ばすことが出来ますから、結構使えると思います。

 さて、そのまま塹壕に隠れていると、ここから300メール位離れた東方の林から人影が現れました。遠目で判りませんが、少しふらついているようです。疲れているのか怪我でもしているのかと考えていると、その人影を追うように4足動物が飛び出してきました。『ヴァルファーレ』が言っていたように10匹位いますね。どうやら先に出てきた人が後から出てきた動物に追われているようです。動物の方は狼か野犬でしょうか?

 人影はよろめきながらも此方に向かって走り始めます。まだ僕には気付いていないのでしょう。砂の上で走りにくいのもあるでしょうが、このままでは僕の所に来る前に後ろの動物に追いつかれるのは確実です。敵か味方か判りませんが、一応人のようなので援護することにしました。

 まず、人影と動物の間に練金で壁を作ります。
突然目の前に壁が出来たので、避けきれなかった何匹かが突っ込んで犬のような悲鳴を上げました。
これで少し時間を稼ぐことができ、人影と動物の間が開きます。そこで動物の鼻先めがけてベギラマを唱えました。そのとたん動物たちの前に炎の帯が出現し、3匹位が火だるまになりました。
流石にこの炎を超えてくることは出来ないようで、炎に突っ込むことを避けられた動物たちは、炎の壁の向こう側で取り残されています。

 ここで、僕も塹壕を飛び出しました。人影が躓いて倒れたのです。急いで側に行くとレビテーションを掛けて浮かび上がらせ、塹壕の後方に運んで、そっと降ろしました。すぐに僕も塹壕に飛び込んで、動物の方に向き直ります。
 ちょうどベギラマの炎が消えて、さっき炎を避けることが出来た7匹の動物たちが此方に向かってくる所でした。こうなれば遠慮はいりません。

「『ヴァルファーレ』おいで!」

 見る間に空に裂け目ができ、『ヴァルファーレ』が飛び出してきます。『ヴァルファーレ』は一目で状況を確認すると、通常技(ソニックウィング)を発動しました。すると炎を受けて倒れていた3匹も、此方に向かってきていた7匹も併せて砂煙と共に吹き飛んでしまいました。
 やっぱり、普通の動物などにはあの子の技はオーバーキルになりますね。これでもうこっちに来ることはないでしょう。

「『ヴァルファーレ』、有り難う。もう大丈夫です。」

[うむ。あのような獣など、何匹来ようとあっという間に蹴散らしてみせるわ。」

 ほっとして、後ろの人を見ると気を失っているようです。かなり怪我をしているようですし、逃げ回って疲れたのでしょう。さっきは急いでいたので気が付きませんでしたが、耳の形からエルフのようです。しかも女性ですね。
初めて見るのでエルフの年は判りませんが、見た目は20歳前に見えます。ここはベホマを掛けてみましょう。すると見る間に傷は治って、呼吸も楽になったようです。この分ならすぐに目を覚ますでしょう。

 さて、ちょっと疲れましたし、もう夕方ですから夕食の準備をしましょうか。昨日と同じようにフライで飛んで椰子の実を4個取ってきます。今日はお客さんの分もいりますからね。
 練金でお皿を作って、その後、竈を作って火をおこし、ハムを厚めに切って炙ります。パンを切って炙ったハムを乗せ、その上にチーズを切って乗せました。他には大事にとっておいた野菜を出して、適当にちぎってお皿に乗せてマヨネーズを掛けておきます。ちゃんとフォークもありますからね。食材については固定化の為、品質には何も問題有りません。

 そうこうしているうちに、お客さんの目が覚めたようです。通じるか判りませんが、友好の為にも声を掛けましょう。

「目が覚めましたか?獣たちは追い払いましたからもう大丈夫ですよ。僕はアルバート・クリス・フォン・ボンバードといいます。何処か痛い所とか有りませんか?」

「あなたが助けてくれたのか?あれだけの獣で逃げ切れず、もうダメだと思っていたが、助けて頂いて感謝する。私はアルメリアと申します。有り難う。」

「どう致しまして。怪我の方も治療しておきましたが、どうですか?」

「驚いたな。何処も痛い所がない。こんなに綺麗に直るなんて、あなたは優秀な水メイジのようだ。」

「それは良かった。疲れてお腹も減っているでしょう。ちょうど夕食の準備ができた所ですから、一緒に食べませんか?」

 そんなことを話していたところ、ようやく『ヴァルファーレ』に気付いたようで、口を開けて目が点になってしまいました。やっぱり初めて見る人はみんな似たような反応をするんですね。

「驚かせて済みません。この子は『ヴァルファーレ』と言って、僕の使い魔です。決して危険はありませんから安心してください。」

 そう紹介すると、はっと気が付いたようです。

「これが使い魔か?初めてみた。なんて大きくて、立派なんだろう。こんな幻獣がいるなんて驚きだ。」

「皆さんそう言います。僕の国では人気者で、時々背中に人を乗せて飛んであげたりしているんですよ。」

「背中に乗れるのか?空を飛べるなんて気持ちいいだろうね。」

「最高の乗り心地ですよ。それよりも此方にどうぞ。食事にしましょう。」

 どうやら友好的に話が出来そうです。これで、やっと落ち着いて夕食が食べられますね。

 そんな訳で、エルフの女性と初めて会って、一緒に夕食を食べています。話に聞くとおりすごい美人さんですね。スリムな体型ですが、胸は普通にCカップ位のようです。ルクシャナは胸に劣等感を持っていたようですからエルフの胸はあまり発達しないと思っていました。ティファニアは例外中の例外でしょう。
 獣たちに追われて走り回ってよほどお腹が減っていたようで、用意した分の食事では足りなくて、追加で3回分の材料を使ってやっと間に合いました。エルフっていつもこんなに食べるのでしょうか?スリムな体でどこに入っているのか悩みます。

 夕食後は椰子の実のジュースを飲みながら、お話タイムです。
 お互い、何でこんな所にいるのかから疑問に思っていたので、質問合戦になっています。

「あなた方の国では、エルフは恐れられていたと思うが、私とこんなに近くにいて怖くないのか?」

「確かに僕たちの国の方ではエルフは恐怖の対象になっています。でも話を聞いていると此方が一方的に攻めて行っているようで、エルフ側から手を出すことはなかったように覚えていますから、エルフが悪いとは思えないんですよ。それに会ったこともないエルフでも、同じ世界に住んでいるのですから話ができない訳がないと思っていました。」

「非常に、公平な見方だと思う。そう言ってくれる人間がいるのは嬉しいことだ。」

 美人が微笑むとすごい威力です。思わず見とれてしまいました。
 その後、僕がここまで来た理由を話しました。

 ………かくかくしがじか………。

「なるほど。あなたの国では、そのような改革が始まっている訳か。その改革に必要な資材を探してこんな遠方に来ていると。失礼だが、あなたはまだ子供のように見えるのだが、いくつなのかな?」

「見たとおりの子供です。今年7歳になりました。今回の改革については僕の発案ですし、僕には『ヴァルファーレ』という高速の機動力がありますから、こういった調査には率先して出ようと思っているんです。その方が効率が良いでしょう?」

「それは組織の上に立つものとしては好ましい考えだと思うが、7歳の子の親としては家で心配して待っているだろう。それとも、よほど普段から信用があると言うことかな?」

「それはどうでしょうか?それなりに自由にはさせて貰っていると思いますが。ところでアルメリアさんはどうしてこんな所まで来ていたんですか?」

「私は生態系の研究者でな。私の国はもっと東の方にあって、此方の方には殆ど人が住んでいないので調査した者がいないんだ。そこで私が調査に出てきたんだが、まさか研究対象に襲われることになるとは思わなかった。可愛い子犬かと思って近づいていったら、いつの間にか私の後ろに親が来ていて、いきなり襲ってきたからものだから不覚を取ってしまった。」

「アルメリアさんも一人で来るなんて無茶をしますね。誰か一緒に来る人は居なかったのですか?」

「なかなかこういった研究に興味を持つ仲間がいなくてな。一人でも大丈夫と出てきたのだが失敗だったな。まあ、不意を突かれなければそれなりに戦うことができたんだが、油断しすぎた。」

 この夜は、結構遅くまで話をしてしまいました。いい加減眠くなったので休みましたが、日付が変わっていたでしょうね。 
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