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ドリトル先生と春の花達

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第六幕その四

「あの、今日は」
「はい、お誘いして頂き有り難うございます」
「来て頂いて」
 笑顔で言う日笠さんでした。
「嬉しいです」
「そうなのですか」
「とても、それでなのですが」
 日笠さんは頬を赤くさせつつ言っていきます。
「この海ですが」
「いい海ですね」
「和歌のインスピレーションもですね」
「はい、得られますね」
「そう思いまして」
 お誘いをかけたというのです、ですが日笠さんの目的はそれだけではありません。だからこそ先生にこうも言いました。
「お誘いをかけましたが。ただ」
「ただ?」
「この海はです」
 その須磨の海についてさらにお話するのでした。
「先程先生もお話されていましたが」
「動物の皆とですね」
「源氏物語の舞台の一つでして」
「源氏の君も観ていた海ですね」
「物語のことですか、ただ」
 それでもというのです。
「ロマンがある場所であることは事実ですね」
「そうですね」
「先生はロマンはお好きですか?」
「ロマンが好きでないと文学の面白みはです」
 源氏物語もというのです。
「かなり減るかと」
「そうですよね」
「恋愛は人の心を素晴らしくもさせますし」
「文学もですね」
「華やかにもします」
 そうしたものだというのです。
「僕もそう思います」
「そうですか」
「はい、ただ」
「ただ?」
「僕には残念ですが」
 このことは苦笑いの先生でした。
「全く縁がないですね」
「ロマンは」
「恋愛のそれは、昔からです」
「源氏物語の様なものは」
「とんと縁がありません」
 そうしたものだというのです。
「子供の頃から」
「そう思われていますか」
「はい、そうです」
 まさにというのです。
「僕はこの外見でスポーツも全く駄目なので」
「昔からもてないと」
「もてたことは一度もないですよ」
 全くとです、先生は確信しているのでした。
「それこそ」
「果たしてそうなのか」
「違うと」
「思われたことは」
「いえいえ、見ればわかりますから」
 周りの女の人達をというのです。
「もてたことはないです」
「一度も」
「ラブレターや義理のプレゼントを頂いてはいます」
 そうしたものはです、先生にしましても。
「ですがそれ以外のものは」
「頂いたことはないと」
「はい、悪戯らしきもの位しか」
 先生ご自身ではこう思っています。
「そうしたものです」
「確かに先生は源氏の君ではないです」 
 先生は先生です、このことはもう絶対のことです。
「ですが先生を嫌う人は少ない筈です」
「はい、幸い嫌われたことはです」
「ないですね」
「このことが本当に有り難いです」
 先生はこのことも幸せに感じています、大抵の人は嫌われるよりも好かれる方がいいのです。 
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