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緋弾のアリア ~とある武偵の活動録~

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prelude
  ~The tragedy comes suddenly~

「…………ヤバい。ダラダラし過ぎたな…遅れる!」

現在、7時57分。急いで玄関から外へ出る
―とそこにはキンジの後ろ姿があった。


「アイツは階段か… ワイヤーで飛び降りるか!」

そう言って、ベルトに装着してあるワイヤーを伸ばす。

―ヒュン キュルルルル… スタッ

今、まさにバスが発車しようとしているところだ。

―全力疾走!ー

「ハァッハァッ…間に合うか!?」


―そんな俺の思いも虚しく、プシュー… という音を立ててバスの扉が閉まる。

「自転車通学か…」

仕方なく自転車を取りに行こうと振り返ると、

「彩斗、お前もか…」

―と、キンジ。

結局2人揃って自転車通学ですよハイ。



「キンジ、たまには自転車でも良いんじゃないか?」

「ん、まぁ悪くはないな。」

そんなことを話しながら、近所のコンビニとビデオ屋の前を通り、台場へ続くモノレールの駅を潜る。
その向こうには海に浮かぶような東京のビル郡。

ここ、武偵高はレインボーブリッジの南に浮かぶ南北およそ2km、東西500mの人工浮島(メガフロート)の上にある。
学園島と称されたこの人工浮島は『武偵』を育成する総合教育機関だ。
武偵とは凶悪化する犯罪に対抗して新設された国際資格で、武偵免許を持っている者ならば武装を許可され、逮捕権を有するなど警察に準ずる活動が出来る。
ただし警察と違うのは金で動くことだ。金さえもらえれば、武偵法の許す範囲内なら何をしてもいい。
荒っぽい仕事でも、下らない仕事でも、な。
要するに『便利屋』だ。 武偵は。

そしてこの東京武偵高には通常の一般科目(ノルマーレ)に加え、武偵活動に関わる科目を履修できる。
専門科目にもいろいろあるが、今横を通りすぎたのが
探偵科(インケスタ) 探偵術や推理学を学ぶ。
その向こうに通信科(コネクト)鑑識科(レピア)、そして―俺が在籍している強襲科(アサルト)がある。

「なんとか始業式には間に合うかな?」

「間に合わなきゃ困る。こんな学校とはいえ、初日から遅刻するのはごめんだ」



―不意に後ろから声がした。

「その チャリ には 爆弾 が 仕掛けて ありやがります」


「…なぁ、キンジ。 この声ってどのボイスロイドだっけ? 脅迫文の手紙みたいな声してるが」

「…あまり詳しくないから分からん」


「チャリを 降りやがったり 減速 させやがると 爆発 しやがります 」


「「ー爆発…だと…………?」」

急いで辺りを見回す ―と

「キンジ、後ろ!セグウェイだ!」


「助けを 求めては いけません。 ケータイを 使った 場合も 爆発 しやがります」


本来 人が乗るべき場所は無人で、代わりにスピーカーと
1基の自動銃座…が乗っていた。

「……ッ、UZI!」

―UZI。 秒間10発の9mmパラベラム弾を撃ってくる、イスラエルIMI社の傑作品だ。

「なっ…なんだ!なんのイタズラだっ!」

キンジが叫ぶ。

「キンジ。…サドルの裏。触ってみろ 」

「サドル…? 何があるって…ん…だ!?」

「分かったか? 恐らく、プラスチック爆弾(composition4)だろう」

―そう。世にも珍しいチャリジャック…だ。

「この爆弾を仕掛けたのは誰か分からないが… 武偵殺しの模倣犯と考えるべきだな」

「クッソ… 朝、白雪が武偵殺しの模倣犯が出るかもしれないって言ってたの他人事にするんじゃなかった…」

「とりあえず、解決策をだ。
―今思い付いたんだがキンジ、『あれ』は今出来るか?
何かやたら強くなるやつ」

「…ッ!? 無理だ!やれるとしても条件が…」

危ねー。キンジのやつぺダル踏みそこねたぞ。

「その条件って何だ?」

「…………言えん」

何か顔が赤いが…… そんなに恥ずかしいことなのか?

「それなら彩斗、お前だってあるだろ。俺と似たようなのが 」

「…………どうしても俺にやらせるつもりか…。…なるべく運転に集中しながら聞いてろ。いくぞ?
まず、俺は2つ特性を持ってる。1つ、神経系。脳内物質βエンドルフィンを分泌させると、常人の30~50倍もの量の神経伝達物質を媒介し、大脳・小脳・脊髄などの中枢神経 他運動神経の活動を亢進させる。

2つ、筋繊維。筋フィラメントってバネが普通は1つ折りで2の出力なんだが…………まぁ、ややこしいからそこら辺は省く。常人の100倍近くの筋力を持ってるって考えればいい。

俺のは医学用語でExcessive secretion syndrome。
短縮して、ESSだ。

因みにこういう人のことを『乗能力者』って呼ぶ。
お前も恐らく似たようなものだろう」

「…………さっきβエンドルフィンっていったな?
トリガーはなんだ? 」

「自分に快楽、喜び、楽しみを与えればいい。
身近なのは音楽を聞くとか。あとは…………性的興奮だな」

キンジがメッチャ驚いた顔してる…… 何だろう、共通性を見つけたときの驚きかたと似てるな。
まさか……?

「とりあえず、これは彩斗、お前に任せる。今の俺には何も出来ないからなっ」

―……ハァ。結局こうなるのか。

チャキッ…と懐からベレッタを抜こうとしたのだが、

「……?」

ありえないものを見た。

グラウンドの近くにあるマンション…たしか女子寮だったか―の屋上の縁に武偵高(ウチ)のセーラー服を着ている女の子がいた。遠目でも分かる、ピンクのツインテール。

「彩斗!女子寮の屋上に女の子がッ」

親方!空から女の子が! みたいな言い方だな

「飛び降りるつもりか……」

―予想通り、飛び降りた。ウサギみたいにツインテールをなびかせて虚空に身を踊らせたその女の子は

―ファサーッ。

と、滞空準備させてあったらしいパラグライダーを空に広げていった。
そして、ツインテールをなびかせ、あろうことかこっちに向かって降下してきた。

「バッ、バカ!来るな!この自転車には爆弾が―」

キンジが必死に怒鳴る
―が、間に合わない。女の子の速度が異様に速い。
ぐりん。ブランコみたいに体を揺らしてL字に方向転換したかと思うと、右・左と大型拳銃―コルト・ガバメントか―を抜いた。

そして―

「ほら、そこのバカ共!さっさと頭を下げなさいよ!」

バリバリバリバリッ!

俺達が頭を下げるより早く、問答無用でセグウェイを銃撃した。 あぶねぇなッ!

拳銃の平均交戦距離は、7mと言われている。だが、女の子とセグウェイの距離はその倍以上あった。
不安定なパラグライダーから、おまけに2丁拳銃の水平撃ち。 2丁拳銃は俺も出来るが、パラグライダーからの銃撃はびっくりした。

―上手い。なんて射撃の腕だ。あんなのが、うちの学校にいたのか?

くるっ、くるくるっ。2丁拳銃を回してホルスターに収めた女の子は、今度は、ひらり。
お尻を振り子みたいにして険しい顔のまま、飛んでくる。
そして数瞬、俺とキンジを見て、迷ったような顔をした。

―分かった。この女の子が何をしようとしているか。

『救助』(セーブ)だ。

ただ、いっぺんに2人は助けられないようだ。
そうなると…………

「おい、俺のことは心配しなくていい!それより、隣のやつを救助しろ!」

そう言うと、女の子は少し困った気な顔をしたが、キンジを救助するほうに決めたらしい。
それと同時に、物凄い睨んできた。 こわっ!
恐らく、『死ぬな』的な感じだろうか。

「よし…」

―と意気込んで、必死にペダルをこいで逃げる。
チラッとキンジの方を見ると…某国民的アニメ映画のワンシーンみたいになってる。

その直後、

―ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

「やっぱり本物だったか…」

こっちも早めに終わらそう。
―全力でペダルをこぐ。最高速度までスピードを上げる。
それと同時にβエンドルフィンを分泌させる。


…あともう少し…………よしっ、かかった!


すかさず自転車を乗り捨て、全力でダッシュする。


―ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


ズザッ ザッ ザザザザザザ……


「…………ッ、痛ってぇ……」

全身打撲。かすり傷…………ひでえな、これ。制服も汚れたし。

……それに追い討ちをかけるようにさらに10台のセグウェイが俺の前に立ちはだかる。

神様、俺何か悪いことしました……?


ーチャキッ。懐からベレッタを抜―こうと思ったのだが、


バババババババババババババッ!


すかさずUZIが9mmパラベラム弾をぶっぱなしてきた。

普通の人間なら、死んでいるだろう。確実に。
だが今は脳内物質βエンドルフィンを分泌させている。
そのお陰で、中枢神経・運動神経は常人の域を遥かに越えている。

照準は頭一点。なら簡単だ。体を反らして弾を避ける。

ズガガガガガガガガガガガガガンッ!

そして、体を起こすと同時にベレッタをクイックドローし、フルオートでUZIの銃口目掛けて撃った。

パパパパパパパパパパンッ!

そして、

ドオオオオン!

爆発した。 やったぜ。

さて……後始末は鑑識科に頼もう、そうしよう。



「とりあえず、キンジのとこだな」

―どこらへんに行ったっけ……


いた。体育倉庫だった。
だが、キンジの姿はなく 代わりにあの女の子がいるだけだった。 キンジどこ行った?

「あら、生きてたのね」

生きてちゃダメなんですか!?

「生きてる。あのくらいで死にはしない。あと…さっきはありがとうな。助けようとしてくれたんだろ?俺とキンジを」

「別に。武偵憲章1条、仲間を信じ 仲間を助けよ。 それを遂行しただけよ」

その女の子…名札を見ると、神崎・H・アリアっていうのか-がそっぽを向く。 顔赤いぞ?ツンデレか?

「それにしても…あのくらい、ねぇ。あれを1人で倒したっていうなら大したものね… 」

「アリア、何をボソボソ言ってる… あ、名前で呼んでいいか?」

「別にかまわないわよ?だったらアタシもアンタのこと彩斗って呼ばせてもらうわ」

「どうぞ御自由に。ところでキンジどこにいったか知ってるか? 」

「あんなヤツの居場所なんて知るかっ!」

…………何があった……? 
 

 
後書き
誤字脱字はコメントにて。 
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