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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0221話『霰と過ごす静かな時間』

 
前書き
更新します。 

 




今日は特に珍しい子が秘書官を務めていた。
今ではもう改二になってしまい被らなくなってしまった大潮も被っていたその帽子がトレードマークの艦娘、霰。
霰は秘書官の椅子に座りながらどこかボーっと部屋の中を眺めていた。
だからか部屋の中は少しだけ静かだ。
だけどそれといって悪い空気ではないのが不思議なんだよな。
霰特有の空気がこの執務室に居ついているんだろうか。
私がそんな事を思っていた時だった。

「司令官……」
「なんだい?」

呼ばれたので慌てずに返事をする。
なにか用があるのなら頼ってほしいからな。

「うん……。後明日になれば限定作戦が開始される……だから少しだけ満潮姉さんが心配です……」
「そうかー……そうだよな。西村艦隊として活躍してもらう予定だけど朝潮型でもあるからな」
「うん……」

霰は静かに頷いた。
そして今日送られてきた電文を見ながら、

「なにかまた新しい陸軍戦闘機が手に入るらしいです……」
「なんていう名前なんだ?」
「うん……。『四式戦 疾風』っていう名前らしいの……」
「疾風か……またネームドの機体だな」
「そうみたい……それと限定作戦に合わせて海軍が各作戦名を2海域までなら発表したみたい。はい……」

霰は私に電文を渡してきた。
そこに書かれていたのはE1海域の作戦名は『第二遊撃部隊、抜錨!』。
そしてE2海域の作戦名は『捷一号作戦、発動準備』。
というらしい。

「これはそろそろ青葉も聞いてきそうな感じだな。明後日あたりにはいつも通りに執務室に突入してくるだろうな」
「大変だね……司令官」
「いつもの事だからな」
「そう……」

それで用は済んだのか霰はまたボーっとしだし始めた。
うーん、やっぱり少しだけ物静かな感じだよな、霰って。
言葉数が少ないから尚更な感じだ。それでいていざとなったら鋭いツッコミも披露してくれるから結構傍観しているところなんだろうな。朝潮型のポジション的には。
そんな事を思っているとそこに扉がノックされたので私は返事をする。

『司令官。霰はいるかしら……?』

この声からして噂の満潮かな?

「ああ、いるよ。入っても大丈夫だから」
『わかったわ』

そして満潮が執務室の中に入ってきた。

「霰、探したわよ?」
「今日は秘書官だって言っていなかったっけ……?」
「聞いてなかったわよ。あなたは言葉数が少ないんだからもっと伝わる努力をした方がいいわよ」
「んちゃ……頑張る」

満潮の少し呆れの入った口調で霰は帽子を少し下げながら返答していた。
うーん……この姉妹関係も中々複雑な物なんだな。

「ところで司令官。大本営からなにか情報は入っているの……?」
「ああ。もう電文が来ているから見るかい?」
「ええ。見させてもらうわ」
「わかった」

私はそれで今現在通達されている情報の束を満潮に渡した。
満潮はそれを一枚一枚確認していきながら、

「へぇ……また海防艦の子が仲間になるのね」
「そうだな。択捉型七番艦の対馬らしい」
「これはもう対潜に関しては海防艦の子達に譲るしかないかしらね……?」
「そんな事もないと思うぞ?」
「うん……朝潮姉さんはまだまだ現役で活躍できているから……」
「それもそうね」

私と霰にそう言われて満潮は素直に納得していた。

「あぁ、それと……分かっていると思うけどこの遊撃部隊って奴には私達西村艦隊を必ず使ってよね?」
「そのつもりだよ。みんなで、乗り越えような……」
「ええ。そのつもりよ……!」
「満潮姉さん……ファイト、だよ……」
「ありがとね、霰」

それで満潮は表情を綻ばせて笑みを浮かべる。
それは果たして西村艦隊で戦えることが嬉しいのか、それとも霰に応援されて嬉しいのか……。それは満潮だけが知っている事だ。

「後は……そうね。司令官、霰の進水日のお祝いの品はもうあげたんでしょうね……? 忘れているって言ったら承知しないわよ?」
「満潮姉さん……大丈夫。司令官……もうくれたから……」

霰はそう言って大事そうに小包を手に出して満潮に見せていた。
それを見て満潮も満足したのか、

「合格よ。さすがこの私も認めている司令官だわ」
「お褒めにあずかり光栄だよ。罵倒の言葉が来ないだけ認めてもらっているって実感が持てるからな」
「ふんっ……いい事? 少しでもいい加減な事をしたらまた霞と一緒に言葉責めしてあげるんだからね?」
「おー……それは怖いな。肝に銘じておくよ」
「よろしいわ。霰もなにか不満があったら言うのよ? 今はこうだけど司令官たらたまに抜けているから」
「大丈夫……霰は、司令官の事を信頼している……から」
「そう……。それならいいわ。それじゃ暇が出来たら朝潮姉さんの部屋に来なさい。進水日のお祝いをしてあげるから」
「うん……必ず行くね……」
「それじゃ邪魔したわね」

そう言って満潮は執務室を出て行った。
静かだった執務室の中はまるで台風でも通り過ぎたかのような錯覚を覚えるくらいだった。満潮が出て行った事でもうもとの静かな雰囲気に戻っているからな。

「ゴメンね、司令官……」
「ん? なにがだい……?」
「満潮姉さんも優しいんだけど……司令官の前だと感情が先に出ちゃうから……」
「それか。大丈夫だよ、あれも満潮の良さの一つだから気にしていないから」
「そう言ってもらえると……嬉しいです……」
「霰は姉妹たちの事が好きなんだよな」
「うん……みんな大好きです……」

少しだけ笑みを浮かべてそう言う霰は本当の事を言っているのだろうな。
多分だけどまだ部屋の外にいるだろう満潮にも聞こえているから今頃顔を赤くしているだろうな。

「満潮が聞いていたら顔を赤くしているだろうなー」

と、わざとらしく言ってみたら外で『ガタッ』という音がしたので私は思わず笑みを浮かべてしまった。
霰も気づいたのか少し顔を赤くしているしな。
とにかく、

「とりあえず……改めて進水日おめでとう、霰」
「うん……ありがとう司令官……」

こんな感じで今日も執務は捗っていったのであった。


 
 

 
後書き
霰回でした。
なにげにまた初めてかもしれなかったですね。
霰は静かな子ですからからみがあんまりないですから。





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