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DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)

作者:あちゃ
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第四話:ペット自慢は程々に……

(トラペッタ地方)
ラングストンSIDE

トロデ殿の癇癪も無理矢理落ち着かせる事が出来、我々は取り敢えず一緒に行動するべく、トラペッタの町から南へ向かって歩いている。
この地方にはスライムやドラキーと言った、我々異世界組にも馴染みがあるモンスターも居れば、串刺しツインズやびっくりサタンと言う初めて見る敵も存在する。

だがこの近辺の敵はそれ程強くはなく、戦局全体を見渡す為に後方へ引くウルフ殿の力を借りる事無く、容易に排除する事が出来ている。
トロデ殿の様な素人には、戦いから逃げている様に見えるでしょうけど、万が一を考えての行動である事は明白です。

なのでトロデ殿に文句を言われた時は、彼の行動を弁護しようかと考えたのですけど、よくよく考えたら彼を弁護するのは嫌なので、宰相閣下の口の悪さを温かく見守る事にしました。弁護してやる義理も無いですし。

「あの~……あれは何ですかねぇ?」
私がウルフ殿への義理立てを考えていたら、近くの大木の根元に置いてある道具袋に気が付いたリュリュさんが、発見物を指差しながら可愛く疑問を発した。

「知らね。ゴミじゃねーの?」
「ウルポンって自分に関係なさそうな事には凄く冷たいよね。もう少し興味持とうよ、色んな事に」
ウルフ殿らしく、リュリュさんらしい遣り取り。

「ゴミじゃなきゃ誰かの忘れ物だろ。関わりたくない」
「忘れ物だとしたら、忘れた人は困ってるでしょ! 届けてあげた方が親切だと思うんですけど!?」
止せば良いのに、ウルフ殿に噛み付くリュリュさん。嫌な思いするだけなのに……

「忘れ物じゃ無く捨てたゴミだとしたら、届けられてもハンパなく迷惑だと思うけど? まぁ、あの男の娘なら他人に迷惑をかける事くらい何とも思ってないだろうから、『忘れ物ですよ♥』って言って自己満足の為だけに届けてやっても良いかもね」

「ホント……ムカつくわぁ……」
「見る限り綺麗な状態なので、多分忘れ物でしょうし、届けてあげる方が良いでしょうね。まぁ私の主観ですけど……」
私がリュリュさんに出来るのは、少しでも彼女の意見を支持する事だけ……

「届けるったって、何処に居るのか判らない奴に届けるのは大変だと思いますけど?」
「そんなの……道具袋の中を確認してみないと分からないでしょ! もしかしたら持ち物に名前を書く人かもしれないじゃないの!」

「幼児の持ち物じゃねーんだぞ。そんな律儀な奴だったら、忘れ物する訳ねーし!」
「まぁまぁ……現物が直ぐそこにあるんですから、確認してから結論を論じましょうよ」
口喧嘩じゃ絶対にリュリュさんは勝てないだろうから、早々に事態を進める様に動く。

「じゃぁお前が取って来いよ」
「やれやれ……このくらいの距離を面倒がらないで貰いたいですね」
目的物は目と鼻の先……それなのに面倒事を回避しようと私に押し付けるなんて。

「そうじゃねーよ。あれがもし、中途半端に知恵がある馬鹿の罠だったらどうする? 道具袋に手を伸ばした途端……落とし穴に嵌まったらさ(笑)」
「じゃぁそこで見てて下さい。落とし穴に嵌まる私の姿を……」

「落とし穴に落ちたら、速攻上から土被せてやる(笑)」
なんて性格が悪いんだ。私やリュリュさんと違って、ラーミアに巻き込まれたのでは無く、リュカ様の所為でこの世界に送り込まれてしまったから、余計に捻くれたんだろう。
これで本当に父親になれるのか?



「やはり罠なんてありませんよ」
流石に悟られない様に罠の存在を警戒しながら道具袋に近付き、ビビってない素振りで目的物に手を伸ばし、最初から罠なんか気にしてない体裁で皆様の下に戻った私は、案の定罠なんか無かった事に失笑を浴びせた。

「当たり前だろう……唯の道具袋なんだから。何ビビってんの?」
「このガキ……」
本当にムカつく。お前が言い出したんだろ! 存在を無視したいが為に『罠かも?』と言い出したんだろ!

「さぁ……誰の忘れ物ですかねぇ?」
話しの流れを変えたくて、リュリュさんが慌てて私の手にある道具袋の中を覗く。
「ゴミだろ? 中には使い古したカピカピのエロ本が入ってるんだよ」
だとしたらお前に投げつけてやる。

「ゴミじゃ無いですよぉ。ノコギリとかハンマーとかが入ってます」
「本当ですね。未だ真新しいですし、ゴミでは無いでしょうね。落とした人は困ってるでしょうねぇ……」
お前の見立ては全てハズレだと知らしめる様に発言。

「じゃぁ元の場所に戻しておこうぜ。落とし主が探しに来るかもしれないじゃん。持って行ったら余計に困るんじゃね?」
「え~……届けてあげようよぉ! その方が親切でしょ」
やっぱりリュリュさんは優しいなぁ……

「何処の誰の物か分からねー物を、如何やって届けるんだよ!? ちょっとは脳味噌にも栄養を分けてやれよ……乳ばかりにじゃなくてさ」
「ごめんねぇ……ボウヤには刺激が強かったわね♥」
リュリュさんは両腕で胸を隠す仕草をして、一児の父になる男を見下し嘲笑う。

因みに、この世界の住人達は先程のトロデ殿とウルフ殿の遣り取りを聞いてた為、下手に口を挟まない方が被害が少ない事を悟り、黙って呆れてくれている。
有難い事ですね。

「あ! これ……道具の一つ一つに名前が書かれてるわ」
「え……マジで?」
え、マジでですか!?

「ほらぁ……それどころか住所までも書いてある」
ウルフ殿の疑いの台詞と、私の疑いの眼差しを振り払うかの様に、リュリュさんは道具袋の中から道具を一つ取りだして見せ付ける。

「“ドドン・ガアデ”って名前の下に“滝の洞窟の上に住んでる。拾った方は届けてね”って、住んでる所まで書いてあるよ」
「何コイツ……無くす事前提で名前と住所を明記してるの? 几帳面なのか杜撰な性格なのか解らんな」
流石にウルフ殿と同意見になりますね。

「でも届け先も解ったんだし、届けてあげようよ。どうせ滝の洞窟に用があるんでしょ? 序手でに届ければ良いだけじゃない。ウルポンは知らないだろうけど、良い事をすると気持ちいいんだよ」
「本当かぁ? 落とし物届けてやったのに、こちらの気分を悪くする様な奴だったら、俺の気分直しに乳揉ませろよ」

「死ね♥」



(滝の洞窟の上)

「おお、これは何処かで無くした俺の道具袋! 拾ってくれたのか? ありがとう」
道具袋の持ち主ドドン・ガアデ殿は、豪快に身体を震わせ、無くし物が届いた事に喜びを溢れさせる。
見た目はドワーフみたいで怖そうだが、性格は良さそうな人だ。

「お礼なんて良いんですよ。落とし物を落とした人に届けるのは、人として当然の事ですから」
爽やかな笑顔を振りまいてドドン・ガアデ殿の言葉に謙遜する素振りでチラリとウルフ殿に視線を向け、嫌味っぽく鼻で笑うリュリュさんがステキすぎ。

「いやいや、ここまでしてくれる人間は凄く稀だ。何か礼をしないと俺の気が済まないぜ」
本当に感謝してるらしく、意地でもお礼をしたい気持ちになっている。
それを見たウルフ殿が小声で「うぜぇ……」と呟いた。同感です。

「おい金髪坊主。お前の肩に乗ってる猫は普通の猫じゃないな?」
「何を以て普通と表現するのか解らないが、少なくともコイツは猫じゃない。ベビーパンサーだ」
ウルフ殿の『うぜぇ』が聞こえた訳ではないのだろうけど、肩に乗せてるソロ殿に気付いたドドン・ガアデ殿は、目敏くその存在に着目する。

「そうか……地獄の殺し屋と呼ばれたキラーパンサーの子供ベビーパンサーか。そっちの赤いバンダナの兄ちゃんのポシェットに隠れてるネズミに危害を加えるんじゃねーか?」
ソロ殿の正体を知った所で、アハト殿が飼ってるネズミのトーポ殿に着目。

「舐めんなよ。ソロはお前より利口だから、無闇やたらに動物を襲ったりしないんだよ」
「それは如何か分からんだろ。だがバンダナ兄ちゃん……これさえあれば安心だ」
ドドン・ガアデ殿は失礼な振る舞いのウルフ殿を気に止めず、奥の棚からチーズを6つ持ってきた。

「これは何ですか?」
気にするのはアハト殿。
差し出されたチーズを受け取り、チーズである事以外を確認する。

「おう、それは特別なチーズだ。お前さんのネズミにそれを食べさせれば、大抵の猫であれば一撃で撃退出来るぞ!」
「だから、ソロはトーポの事を襲わねーって言ってんだろ!」
ソロ殿がトーポ殿を襲う事前提で話を進めるドドン・ガアデ殿にご立腹のウルフ殿。

「くそっ……気分悪ーオッサンだなぁ」
(むにゅ♥ もみもみ♥)
「きゃあぁぁぁ!!」

多分『うぜぇ』の一言が聞こえてたのだろう。
ウルフ殿を無視して話を進めるドドン・ガアデ殿に気分を害した彼は、気分直しにリュリュさんの胸を無遠慮に揉んだ。

「こ、このエロガキ! 何しやがる!?」
「言っただろ! ムカつく奴だったら、気分直しに乳揉ませろって!」
「私も言っただろ! 死ねって!!」
「殺してみろ変態女!」

リュリュさんとウルフ殿が互いに罵り始めた。
あぁ……面倒臭い。
ティミー殿下あたりが突然現れて、二人の仲裁をしてくれないかな。

「ちゅちゅっちゅぅ」
「え、マジですか!?」
二人の泥沼の様な口論を傍観してると、普段大人しいトーポ殿が突然鳴き出し、それを聞いたリュリュさんが驚く。

「アハト君、トーポちゃん貸して!」
ふんだくる様にトーポ殿を借りたリュリュさんは、貰ったばかりのチーズをトーポ殿に食べさせて、ウルフ殿の方に向けた。

(ぼわぁぁぁぁ!!)
すると突然トーポ殿が炎を吐く!
「うわぁ、何だ!? ヒャド!!」

「危ねぇな……俺んちでやるんじゃねーよ!」
「わぁお、ドドン・ガアデさん……これ凄い」
どうやらこのチーズを食べるとトーポ殿は火を吹ける様になるらしい。

「トーポちゃんが『そのチーズ食べたら火を吹けるよ』って言うから、試してみたら本当だったわ」
ああそうか……
リュリュさんはモンスターや動物とお喋り出来るんでしたね。

「お前……俺を殺す気か!? 俺が天才で強くてイケメンだったから大丈夫だったけど、危ねーだろ!」
イケメンは無関係な気がするが、流石はウルフ殿だ……トーポ殿の炎をヒャドで相殺させ、事なきを得た。凄い反射神経だ。

「え~、イケメンが殺せっつたしぃ」
「勢いで言ったに決まってんだろ! 本当にアホだな。少しで良いから無駄にデカイ乳の栄養を能に回せよ!」
ある意味リュリュさんのアイデンティティーだから、それはダメだろ。

「はっはっはっ。うるせぇよヘタレ、イケメン」
リュリュさんはウルフ殿との口論になると、途端に口が悪くなる。
もうそろそろ退散した方がいいきがする。かなり我々(リュリュさんとウルフ殿)は迷惑だ。

「あのリュリュさん……トーポを返してくれますか?」
「あぁどうぞ」
「おいソロ……あのネズミには近付くなよ。危険だ!」

「いや……トーポは危険じゃないでしょう。危険なのはアンタ達ですよ」
「一緒にするな! 俺は被害者だぞ」
(ひと)の乳揉んどいて被害者面すんな。一番の被害者は私よ」

一番の被害者はドドン・ガアデ殿だと思う。
これ以上は本当に迷惑だが、リュリュさん達を説得するのも面倒だから、ここは黙って退室するに限る。そうすれば自然に状況を把握するだろう。

ラングストンSIDE END



 
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