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提督がワンピースの世界に着任しました

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第29話 革命軍からの依頼

「誘拐された少女たちの救出、ですか?」
「あぁ、そうだ。君たちには、シャボンディ諸島で行われる人間オークションの競売に掛けられるであろう少女達を助け出してほしい」

 向かいに席に座る革命軍のリーダーであるドラゴンからの依頼とは、誘拐されたという三人の少女たちの救出だった。

 一週間に一度程の頻度で実施している革命軍との情報交換を目的にした会談。普段は連絡係の男が一人やって来て軽く話す程度だが、今日は革命軍のリーダーであるドラゴンが自ら神威島の鎮守府へとやって来ていた。

 普段とは違う様子に何事かと思っていたら、今回は重要な頼みごとがあるらしく顔を合わせての話し合いがしたいという事だった。そして、彼の言う重要な頼みごとというのが少女達の救出だという。

 話し合いを行うのは、鎮守府にある応接室。その部屋へと案内して、今日の秘書官を務めてもらっている艦娘の加賀と妖精さん達にも同席してもらい、向こうも革命軍の一員であるらしいフードを被って顔を隠した男が一人立ち会いのもとに会談がスタートした。

「その少女たちは一体何者なんです?」
「拐われたのは女ヶ島に住むアマゾン・リリーと呼ばれる女系の戦闘民族出身である少女たちだ。九蛇海賊団と名乗って活動していたが、人攫い屋の手によって売り飛ばされた。今はオークションの行われるシャボンディ諸島に移動させられている。これがその三名の少女達の顔写真だ」

 そう説明しながらドラゴンは、テーブルの上へと三枚の写真を差し出して俺たちに見せた。そこに写っているのは、まだまだ子供の12,3歳ぐらいの少女達だった。人攫いに誘拐されたということは、奴隷にされるということだろうか。

「もちろん成功した場合の報酬は弾む。こちらは、これだけ用意している」

 ドラゴンは俺が黙り込んで考えているのを依頼を受けるのを渋っていると感じたのか、成功報酬だと言って目録を記した紙を目の前に差し出してきた。俺は紙を受け取って内容にじっくりと目を通して確認していく。

 渡された目録に書かれていたのは多数の食料に武器、それから悪魔の実を数個。依頼を受けるには十分なほどの報酬だった。いや、報酬には多すぎるように思えた。

 つまりこの依頼は、これほどの報酬を出すほどに重要な作戦なのか、それとも成功させるのが難しい危険な作戦なのか。俺には後者のように思えた。

「これほどの報酬を出せるのなら、こちらが依頼を受けるのではなく自分たちの組織で救出作戦を実行したほうが安く済ませられるのでは?」

 依頼を受けるのに少し危険を感じて、意地が悪く遠回しに断るような言葉を口にする俺だった。だがドラゴンは表情を一ミリも変えることなく、引き続き依頼に関する説明を続けた。

「これだけの顔立ちだ。おそらく天竜人の目に留まり、彼らが少女達を落札するだろうと予想される。それを阻止したいが、我々は天竜人と敵対できるほどの戦力を未だ保持していない。まだ組織は準備段階で作戦を行うような余裕がない」

 革命軍にいる人材は、諜報活動や破壊工作がメインであり戦闘力は高くない者ばかりだと彼は説明する。だからこそ、戦うのに適した戦力である艦娘を頼ってのお願いだった。

 天竜人の目的を阻止する。こちらの世界に何も分からないまま来てから、オハラの研究者達を仲間にして革命軍との関係も築いてきた今、少しずつだけれど世界の常識を学んで以前とは状況が変わった。

 それによって、天竜人に手を出すという危険性を少しは理解しているつもりである。最終的には革命軍の世界政府を打倒するという目的に沿って敵対する相手ではあるだろうけれど、今はまだ早いのではないかと感じるようになっていた。

「なら、三人の少女を助けるためだけに天竜人と敵対する危険を犯すべきではない。この作戦を実行する機会では無いのではないか?」

 非情な言い方だが、見知らぬ少女達を助けるよりも身近な人達の安全のほうが優先するべき事柄だろうと俺は考えている。だから少女達を見捨てて作戦は見送るべきだと意見する。するとドラゴンは、この少女たちを助け出す理由についての説明に入った。

「我々は世界政府打倒を目的にした同盟を組もうと、各方面から協力を得るために交渉を続けている。そしてアマゾン・リリーも交渉相手の一つだが、うまく事が進んでいない。彼女たちは独立性を重んじる民族であり、交渉が難航しているのだ。そこで、この誘拐された少女たちを交渉の切り札に出来ないかと考えている」
「つまりは革命軍の仲間を増やすために、この救出作戦を行うということですか」
「そういうことだ」

 最近はゴール・D・ロジャーの処刑という出来事と、彼の残した言葉によって海が荒れていた。そんな海の治安維持活動が忙しくなったのか、それとも一向に成果の出ない調査に中止命令が出たのか、神威島にやってくる不審船は居なくなっていた。ということで、俺たちも補給の目処がストップしてしまって次の一手を考える必要がある時期たった。

 それに革命軍の仲間を増やすためということは、今後は俺達の力になる可能性もある。敵は強大であるから仲間は多いほうが良い事は明らかだった。

 手元にある成功報酬に目を向けて悩む。危険だけれど成功した場合のリターンが魅力的だった。横に同席していた加賀に目を向けると、無表情だがよく見ると目の奥からやる気十分だという感情が見て取れた。彼女は今回の依頼を受けるのには賛成のようだった。

 妖精さんも依頼を受けましょうという考えを表すように、ウンウンと頷きを繰り返している。彼女たちの反応に俺は決意を固めた。

「わかりました。今回の依頼を受けましょう。ただ、全力を尽くしますが成功するとは限りません。私達の安全を第一に考えて作戦を実行します」
「あぁ、それでいい」

 俺の言葉に無表情だったドラゴンはニヤリと笑い了承した。合意したことを示すように、俺達は握手をかわす。内心では、これは事前の準備を念入りに行って事に当たらなければならないと決心させられながら。 
 

 
後書き
17/11/06 ゴールド・D・ロジャー → ゴール・D・ロジャーに修正しました。 
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