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レインボークラウン

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第四百八十二話

              第四百八十二話  目だけでなく
 美奈子は周りをよく見ながら進む、しかしその美奈子に華奈子が言った。
「道の片方に寄りましょう」
「片方って」
「後ろ見て」 
 怪訝な声を出した美奈子にそっと囁いた、美奈子は華奈子の囁きを受けて後ろを見ると自転車が来ていた。
 その自転車を見てだ、美奈子も頷いた。
「そういうことね」
「そう、今は右に寄りましょう」
「それじゃあ」
 美奈子は頷き華奈子と一緒に道の右に寄って自転車を先に行かせた。
 その後でだ、美奈子は華奈子に尋ねた。
「よくわかったわね」
「美奈子後ろは見てなかったでしょ」
「真後ろまではね」
「あたしも見てなかったけれど」
「それでもなの」
「ここ使ったから」
 自分の左耳を指差して美奈子に話した。
「耳をね」
「あっ、華奈子耳いいから」
「あたしはいつも聴いたらね」
「それを頼りにして動いているのね」
「そうしているから」
「今みたいになのね」
「そう、すぐに動けるの」
 後ろから来る自転車を見ずに把握出来るというのだ。
「耳を使ってるから」
「そういうことね、そういえば私は」
 美奈子は華奈子の耳のことを見て聞いて考える顔になって述べた。
「耳はね」
「これといってなのね」
「使ってこなかったわ」
 目で見ることはしていてもというのだ。
「意識してね」
「じゃあこれからはね」
「耳で聴くことにも力を入れたら」
「いいと思うわ」
 そうだというのだ。
「そうすればね」
「じゃあお互いに目と耳を使えば」
「そうすれば余計にいいわね」
「そうね、慎重に進みながらね」
 華奈子ににこりと笑って応えた、今度は美奈子が華奈子に教わった。
 それでだ、こう華奈子に言ったのだった。
「私も華奈子に教えられたわね」
「あれっ、そうなるの?」
「ええ、耳もよく使うことをね」
「あたしは美奈子に目のことを教えてもらって」
「私は華奈子に耳のことを教えてもらった」
「お互い様だってことね」 
 華奈子は美奈子のその言葉に笑って応えた、そうして自転車を先に行かせた後も道を進み遂に塾に着いた。


第四百八十二話   完


                 2017・9・17 
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