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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第135話

~隠者の庭園~



「わ、わたしやレンちゃん、ユウナちゃんぐらいの女の子………?」

「あれ…………?一体誰だろう………?」

(あら、彼女は……)

「………もしかして異世界のみなさんのお知り合いですか?」

封印石が解放され、光の中から現れようとした人物を見たティータは戸惑い、エステルは首を傾げ、唯一光の中にいる人物に見覚えがあるレンは目を丸くし、リースはティア達に視線を向けて尋ねた。

「いえ、我々の知り合いの中でも彼女のような人物はいません。」

「という事は知り合いが誰もいない俺のようにイレギュラーな形で巻き込まれた人か……?」

(いや、お前が巻き込まれる事になった原因はここにいるんだけどな……)

リースの問いかけに対してジェイドが代表して答え、ジェイドの答えを聞いて考え込みながら呟いたロイドの推測を聞いたフレンは苦笑していた。そして光の中から銀髪の少女が現れた。



「……っ……今の光は………閃光弾(フラッシュグレネード)……!?――――え。」

地面に跪いていた少女はすぐに立ち上がると共に背後へと跳躍して双銃剣(ガンナーソード)を構えたがエステル達に気づくと呆けた声を出した。

「変わった武装ですわね……短剣にも見えますし、銃にも見えますわ。」

「フム……武装の形態からして、あの武装は恐らく両方を兼ね備えた武装なのでしょうね。」

「しかし……彼女は一体何者だ?」

「さっきの身のこなしといい、そこらへんの武器屋では見かけない武器(モノ)を持っている事からして、少なくても一般人じゃない事は確実だな。」

少女が持つ武器を見て目を丸くしているナタリアの疑問にジェイドが答え、真剣な表情をしているミュラーの疑問にアガットは答えた後真剣な表情で少女を見つめ

「え、え~と……あたし達は敵じゃないわよ?貴女は一体どこの誰かな?」

「…………わたしからしたら、貴女達――――特に”遊撃士の存在自体”が敵みたいなものだから、遊撃士である貴女のその言葉、全然信用できないんだけど。」

エステルは戸惑いながら少女に声をかけたが、エステルの服に付いている”支える篭手”の紋章に気づいた少女はエステル達にとって予想外の答えを口にした。

「へ………」

「”遊撃士”を知っているという事は彼女は私達の世界の方なんでしょうけど………」

「フム、しかしその”遊撃士”関連で気になる言葉を呟いたね。」

「彼女にとって”遊撃士の存在自体が敵”とはどういう事だ……?」

「”遊撃士の存在自体が敵”……―――!まさかとは思うけど、貴女………」

「!その紋章は確か……―――なるほど。君はゼノさんやレオニダスさんが”所属している団”の人なんだね。」

少女の答えにエステルが呆けている中クローゼは不安そうな表情をし、オリビエの言葉に続くように答えたユリアは戸惑いの表情で少女を見つめ、少女の答えを聞いてある事を察したシェラザードは真剣な表情で少女を見つめ、少女をよく見て何かに気づいたヨシュアは静かな表情で呟いた。



「ふえっ?ゼノさんとレオニダスさんって、確か”導力停止現象”の時マルガ鉱山でわたし達を手伝ってくれた………」

「ゼムリア大陸最大の猟兵団の片翼――――”西風の旅団”の猟兵達ね。という事は彼女も”西風の旅団”の”猟兵”なんでしょうね。」

「”西風の旅団”……ああ、ユウナがエステル達のママにけしかけた人達を殺した人達ね。」

ヨシュアの言葉を聞いたティータはかつての出来事を思い出し、静かな表情で呟いたアーシアの言葉を聞いたユウナは目を丸くして少女を見つめ

「何だと!?」

「猟兵――――しかも”西風の旅団”か………やれやれ、このメンツを考えると連中も”異変”に関わっていたから、今回の件に巻き込まれる可能性はありえなくもないが……」

少女が猟兵である事を知ったアガットは厳しい表情で声を上げ、ジンは真剣な表情で呟いた後疲れた表情で溜息を吐いた。

「ゼノとレオがリベールのマルガ鉱山で貴女達を………?―――ああ、なるほど。という事は貴女達がわたしが”剣聖”の妻の護衛をしている間にゼノとレオが手を貸した遊撃士達か。」

「へ……お、お母さんを!?という事は貴女がゼノさんやレオニダスさんと同じ、Ms.L―――レンに雇われていた残りの猟兵の人だったの~~~!?」

少女の言葉を聞いたエステルは呆けた後信じられない表情で声を上げた。

「わたし達が”レンに雇われていた”……?しかもその”レン”が正体不明にして世界一の資産家のMs.Lってどういう事?」

「あ。」

「んもう、エステルってば、余計な事を口走ってくれたわね………仕方ないわね。半年前に貴女達”西風の旅団”が請けた”依頼”の件も含めて、今回の件も説明してあげるわ。」

少女の疑問を聞いたエステルが呆けた声を出したその時レンは呆れた表情で溜息を吐いた後、少女に事情を説明し、それぞれ自己紹介をした。



「……………なるほど。まだわかんない事もあるけど、とりあえず今の状況が貴女達によるものではないとわかった。そっちは敵対するつもりもないみたいの上非常事態だし、こっちも無闇に敵対するつもりはない。」

「よ、よかった~………そう言えばまだ名前を聞いていないけど、確かエステルちゃん達の話によるとレナさんの護衛をしていた”西風の旅団”はさっきの話に出た二人と”西風の旅団”の団長―――”猟兵王”の娘だって事だから、貴女がその”猟兵王”の娘なの?」

事情を聞き終え、武器を収めた少女の様子を見て安堵の表情で溜息を吐いたアネラスはある事を思い出して少女に問いかけた。

「ん。わたしの名前はフィー。フィー・クラウゼル。二つ名は”西風の妖精(シルフィード)”。」

「うふふ、誤解も解けてお互いの事も解ったし、”西風の妖精(シルフィード)”―――いえ、フィー、だったかしら?早速で悪いけど”ビジネス”の話をしてもいいかしら?」

少女―――フィー・クラウゼルが名乗るとレンがフィーに話を持ち掛け、レンの様子にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ビ、”ビジネス”って……」

「このガキは……」

「レンちゃ~ん……」

「うふふ、レンはどんな”ビジネス”をするのかしら?」

我に返ったロイドは困惑の表情をし、アガットは厳しい表情でレンを睨み、ティータは疲れた表情で呟き、ユウナは興味ありげな様子で見守っていた。

「……”ビジネス”の内容は?」

一方フィーは動じておらず、冷静な様子でレンに問いかけた。

「貴女がこの”影の国”から脱出しようとしているレン達の探索、戦闘を含めたあらゆる活動に協力する事。報酬は様々な施設を含めたこの拠点―――”庭園”を貴女も使える事と、”影の国”からの脱出方法が見つかった時、必ず貴女にもその方法を教える事。それでも足りなければ、”影の国”から帰還した後レンのポケットマネーで貴女の言い値の”報酬”を支払うわ。これでどうかしら?」

「…………ん。今の状況を考えたら、当面の拠点や施設の確保と脱出方法を知る事だけで十分。」

「うふふ、”契約成立”ね。あ、ちなみにレンの正体とかを黙っていてほしい”契約”も結びたいから、その件に関しては後で相談させてもらっていいかしら?」

「ん、いいよ。―――――そういう事だから、今後はわたしも貴女達の探索に加勢するからよろしく。」

レンとフィーのやり取りを見たその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中フィーは静かな表情で協力を申し出、フィーの申し出を聞いたその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいた。

「こ、この腹黒妹は……別に協力してもらわなくても、”庭園”を使う事や脱出方法を教えてあげるのが当然なのに、何でわざわざそんな事をするのよ……」

「まあまあ。レンの行為も彼女―――フィーにとっては意味がある行為でもあるよ。」

「な、なんか”詐欺”みたいな”取引”だな……」

「ハハ……まあ、猟兵のあの嬢ちゃんからすれば”天敵”の遊撃士達に囲まれている状況なんだから、レン嬢ちゃんの取引だったら安全の確保やこの世界からの脱出を確実にできるから、本人にとっては意味のある取引だと思うぜ?」

「クスクス………ねえねえ、レンは目の前で猟兵と取引したけど、猟兵を雇う事を法律で禁止しているリベールのお姫様は今の取引を見て何もしないのかしら?」

「え、えっと………厳密に言えばこの”影の国”はリベールではありませんから、レンちゃんの行為は”法律違反”にはなりませんので………」

「そもそもレン君には遊撃士協会本部が発行したあの”許可証”があるしな………」

ジト目でレンを見つめるエステルをヨシュアは苦笑しながら諫め、疲れた表情で呟いたロイドにフレンは苦笑しながら指摘し、小悪魔な笑みを浮かべたユウナに話を振られたクローゼは苦笑しながら答え、ユリアは疲れた表情で呟き

「というか、あの年齢で傭兵どころか暗殺者まで余裕で雇えるような財産を持っているってとんでもないお嬢ちゃんだな……」

「レンさん、凄いお金持ちですの!」

「むしろ、大貴族並みの資産を稼いでいるのに、どうして”遊撃士”をやっているのかあの娘の思考が全然理解できないわ……」

「ハッハッハッ、”天才”の思考は常人には理解できないという話を実際に体現していますねぇ。」

「ねえねえ、ルーク~。あの生意気なルークの妹の弱みって、な~に?」

「脅して金を取る気かよ………それ以前に、レンの弱みなんてむしろ俺の方が聞きたいくらいだっつーの。」

ガイは疲れた表情で呟き、ミュウは尊敬の眼差しでレンを見つめ、ティアは呆れた表情で呟き、ジェイドが呑気に笑い、笑顔のアニスの問いかけにルークは呆れた表情で答え

「ふう………よろしくお願いします。」

リースは溜息を吐いた後気を取り直して静かな表情でフィーに会釈をした。



その後リース達は探索を再開した後、迷宮内でまた封印石を見つけ、庭園に戻って解放した。



「ふ~ん……わたしもこうやって”解放”されたんだ。」

「今度は誰が出てくるのでしょうね?」

「少なくても、アリエッタ達がいた世界の人は、これ以上、現れないと、思います。」

「フッ、わからんぞ?現に今も敵対中の者達も現れたのだから、例えばシンクあたりが出てくるかもしれんぞ?何せ奴はお前達とも因縁があるし、導師ともある意味深い関係がある者だしな。」

「アハハ………」

「うげっ……この世界だと冗談にならないから、そんな洒落にならない事を言わないでよ~。」

「第一それを言ったら私と縁が深かった兄さんや教官が出てくる可能性もあるわよ……」

「まあ、あの3人の場合ですと、戦闘になる確率は高いでしょうから、あの3人の誰かでない事を祈るしかありませんねぇ。」

「うふふ、そろそろレーヴェが出てくれないかしら?カリンお姉さんもそう思わない?」

「え?そ、そうね……レーヴェが味方になってくれたら、とても心強いのだけど……」

(あら、彼女は……もしかしてレンかオリビエお兄さんの縁かしら?)

封印石が解放される様子を見つめていたフィーは静かな表情で呟き、ナタリアの疑問に答えたアリエッタの答えに口元に笑みを浮かべて指摘したバダックの推測を聞いたイオンは苦笑し、アニスは嫌そうな表情をし、ティアは呆れた表情で呟き、ジェイドは呆れ半分の様子で答え、小悪魔な笑みを浮かべたユウナに話を振られたカリンは戸惑いの表情で答えた後”黒騎士”の姿を思い出して複雑そうな表情を浮かべ、光の中から現れようとする人物を見たレンは目を丸くした後考え込んだ。そして光が消えると地面に跪いている金髪の娘が現れた。



「……………………」

「綺麗な人………」

「なっ!?あ、ありえん……!あの”容姿”は……!」

金髪の娘の容姿を見たオリビエが呆け、カリンが娘の容姿に見惚れている中ミュラーは信じられない表情をし

「少佐……?もしかしてお知り合いなのですか?」

「あ、ああ………だが、”あの方”は既に……」

自分の様子が気になって訊ねてきたユリアの問いかけにミュラーはオリビエを気にしながら複雑そうな表情で答えた。

「………くっ……何だったの、今の光は……?まさか……閃光弾!?何者!?何が目的で――――――え。」

「……初めまして。私の名前はリース・アルジェント。七耀教会、”星杯騎士団”の従騎士です。我々は貴女の”敵”ではありません。」

目覚めた後鞘から身の丈程ある刀―――”大太刀”を抜いた娘だったが、リース達を見ると呆け、呆けている娘にリースは自己紹介をした後自分達に敵対の意志がない事を伝えた。

「―――うふふ、まさかこんな所で会う事になるとは、レンにとっても想定外だったわ、リズ。」

「レン………この状況は一体………」

「へ………その人、レンの知り合いなの!?」

金髪の娘と知り合いでいる様子の会話を交わしているレンを見たエステルは驚きの声を上げた。

「まあね。リズ、予め言っておくけどエステルを含めたここにいる人達はレンが”L”である事を知っているから、レンとの関係を隠す必要はないわよ。」

「そう………それじゃあ、彼女が以前話してくれた貴女の………―――初めまして。私の名はリーゼロッテ・レンハイム。レン―――いえ、”Ms.L”の秘書よ。」

「へ………」

「ハアッ!?Ms.L―――レンの秘書ですって………!?」

「Ms.Lは世界一の資産家だから秘書の一人や二人、いてもおかしくはないけど………」

「その件も気になるが、彼女の”名前”も気になるな。」

「”レンハイム”って事は、まさかお前の関係者か?」

レンに促されて自己紹介をした娘――――リーゼロッテの事を知ったルークは呆けた声を出し、シェラザードは驚き、アーシアは考え込み、ジンは真剣な表情で呟き、アガットは困惑の表情でオリビエに問いかけた。

「…………いや、アルノール家の女性に、彼女のような容姿を持つ人物は”今は存在しない”よ。」

「…………………」

アガットの疑問にオリビエが静かな表情で答えるとミュラーは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「という事はただ、偶然リベールでの旅行の頃にオリヴァルト殿下が名乗っていたファミリーネームと同じであるだけなのでしょうか……?」

「うふふ、それを知っているのも全てレンでしょうけど…………レン、一つ聞いていいかしら?」

クローゼの推測を意味ありげな笑みを浮かべて指摘したユウナはレンに視線を向けた。



「何かしら?」

「どうしてそんな人を従えているのに、わざわざ”西風の旅団”や”銀”を雇ったのかしら?その人、あくまでユウナの推測だけどレーヴェ―――いえ、”結社最強”と呼ばれている人物とも互角に渡り合えるのじゃないかしら。」

「ええっ!?」

「け、”結社最強”って………!」

「!!ユウナ……それは本当なのかい?」

ユウナのレンへの指摘を聞いたカリンやアネラスが信じられない表情をしている中ヨシュアは血相を変えてユウナに訊ねた。

「ええ。あのリーゼロッテって人、”彼女”同様あらゆる手段を使っても、”絶対に勝てない”イメージしか浮かばないもの。」

「レンと同じ容姿で、優れた分析に処理能力………なるほど、貴女が”結社”の”殲滅天使”ね。フフ、かの”剣帝”や”結社最強”と呼ばれている人物と同格だなんて、光栄ね。」

ユウナの分析を聞き、ユウナの正体を察したリーゼロッテは静かな表情で呟いた後ユウナに微笑んだ。

「うふふ、リズったら、相変わらず自己評価が低いわねぇ。リズは東ゼムリア大陸にその名を轟かせている”(つるぎ)の聖女”なんだから、レンみたい―――いえ、レン以上に自分の”力”に自信を持つべきよ?」

「ええっ!?」

「”剣の聖女”だと!?」

「まさか貴女があの”剣の聖女”だなんて……」

「へえ……道理で貴女の戦闘能力が全然わからないわけだ。」

レンのリーゼロッテへの指摘を聞き、血相を変えたアネラスとジンは驚きの声を上げ、ヨシュアは信じられない表情で、フィーは興味ありげな表情でリーゼロッテを見つめた。

「え?え?アネラスさん達はリーゼロッテさんの事を知っているの?」

「うむ………カルバード共和国の更に東にある大陸――――”東ゼムリア大陸”に突如現れた”史上最強の遊撃士”―――それが”剣の聖女”だ。」

「噂によると彼女が繰り出すその剣技は次元違いと言える程の絶技ばかりで、性格はとても高潔かつ力無き者達―――つまり民間人には非常に優しい事から、”剣の聖女”の異名で呼ばれるようになったとの事だ。」

「それと”剣の聖女”は東ゼムリア大陸の様々な国々が抱えていた問題を解決した事から、S級正遊撃士の昇格が何度も打診されたそうだけど………本人はそれを固辞した上、3ヵ月前くらいに突然遊撃士協会を去った事から、色々な意味で有名なんだ。」

「し、”史上最強の遊撃士”~~~!?って事はリーゼロッテさんって、遊撃士だったの!?」

「しかもS級正遊撃士の昇格が打診されていたって事は、冗談抜きでカシウス先生クラスって事じゃない………」

「3ヵ月前………なるほどね。”剣の聖女”はすぐにリベールに来れない状況だったから、わたし達を雇ったんだ。」

「ハハ、これは参った。”Ms.L”の情報も当然集めていたが、まさかかの”剣の聖女”と主従関係があったとは、予想もしていなかったよ。」

「何でそんなとんでもない女が遊撃士を辞めて、こんなガキの秘書をやっているんだ?」

「レンの事だから、何か弱みでも握って、その人を従わせているんじゃないの~?レンって、滅茶苦茶腹黒だし。」

自分の疑問に答えたバダックとジン、アネラスの答えを聞いたエステルは驚き、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、フィーは納得し、リシャールは苦笑し、アガットは困惑の表情でリーゼロッテに問いかけ、アニスの推測を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「アニス、貴女ね……」

「貴女も他人の事は言えませんわよ。」

「まあ、腹黒の具合で言えばレンの方が遥かに上なのは事実ですけどねぇ?」

「そうか~?俺はいい勝負をしていると思うぜ?」

「というか旦那も十分腹黒いから、旦那も他人の事は言えないだろ……」

ティアは呆れた表情で頭を抱え、ナタリアはジト目でアニスを見つめ、呆れ半分の様子で呟いたジェイドの推測にルークとガイはそれぞれ疲れた表情で指摘した。

「んもう、みんな、レンの事を何だと思っているのよ。」

「フフ………貴女達が邪推しているような事は一切ないわ。レンは私にとって”命の恩人”だもの。」

「ふえ………?レンちゃんが”命の恩人”って、どういう事なんですか?」

レンが頬を膨らませている中苦笑しながら答えたリーゼロッテの答えを聞いたティータは不思議そうな表情でリーゼロッテに訊ねた。

「私は幼い頃に親が死んでからレンに拾われる前はスラムで”浮浪児”として、明日を生きれるかどうかわからない暮らしをずっと続けていたの。」

「スラムで………」

「……………………」

リーゼロッテの話を聞いたクローゼは辛そうな表情をし、リーゼロッテとかつての自分を重ね合わせたシェラザードは複雑そうな表情をした。

「そしてある日、運悪く食料が全然手に入らなくて、空腹で倒れている所をたまたま通りかかったレンが自分が携帯していた昼食や非常食を分けてくれてね……それで事情を説明したら、色々と便宜を図ってくれたのよ。」

「”便宜を図った”って、レン、一体何をしたの?」

「”色々”よ。住居や戸籍の確保は当然として、毎月生活費を送ってあげたり、レンの”伝手”を使って様々な分野の家庭教師もつけてあげたわ。それと武術はレンが教えてあげたし、戸籍に関してはリズは一応”リベール王国人”よ?」

「え………そ、そうだったんですか!?」

「戸籍がリベールならば、何故リーゼロッテ殿は東ゼムリア大陸に………リーゼロッテ殿程の使い手ならばリベールの遊撃士協会は当然として、王国軍も歓迎すると思うのだが………」

リーゼロッテの説明を聞いて疑問が出て来たエステルの問いかけに答えたレンの話を聞いたクローゼは驚き、ユリアは戸惑いの表情でリーゼロッテに問いかけた。

「……私にはある目的があってね。その目的を果たす為には自分自身をもっと鍛える必要があるから、レン―――いえ、”Ms.L”の力を借りる事が厳しい東ゼムリア大陸で活動する事にしたのよ。東ゼムリア大陸には西ゼムリア大陸と違って、”Ms.L”が関係している企業とかは一切なかったしね。」

「に、”西ゼムリア大陸とは違って”って事は、まさかとは思うけど西ゼムリア大陸のあらゆる国にアンタの息がかかった企業があるの!?」

リーゼロッテの答えを聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ジョゼットは信じられない表情でレンに訊ね

「うふふ、それはヒ・ミ・ツよ♪」

レンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「この腹黒妹は………」

「あの反応だと、西ゼムリア大陸の各国に絶対”Ms.L”が掌握している企業があるんだろうね。」

「前々から思っていたけど、色々と俺達の常識外れな事ばかりしている女の子だな……」

「ハッハッハッ、いや~、さすがはあの宰相殿も一目置く程だね~。」

「……洒落になっていないぞ。」

エステルとフィーがジト目でレンを見つめ、ロイドが疲れた表情で溜息を吐いている中呑気に笑っているオリビエの言葉を聞いたミュラーは呆れた表情で指摘し

「ハハ………そう言えば”目的”があるって言っていたけど、その”目的”って何なんだ?」

「………悪いけど、その件に関しては黙秘させてもらうわ。――――最も、何か悪い事を企むとかそう言った事じゃないから、安心していいわ。」

苦笑していたフレンは気を取り直してリーゼロッテに問いかけ、問いかけられたリーゼロッテは静かな表情で答えた。

「……リーゼロッテさんは遊撃士協会を辞めて、今はレンさん―――Ms.Lの秘書を務めていると仰っていましたが、もしかして彼女から受けた”恩”を返す為ですか?」

「ええ、そんな所よ。」

「それよりも先程から気になっていたのですが、どうしてレンは七耀教会の福音施設に彼女を預けなかったのですか?」

「そう、ですね。教皇にも伝手があるMs.Lでしたら、わざわざ自分のお金を使ってまで、彼女を育てなくても、教会が経営している福音施設でも、一番良い施設に預ける事も、できましたね。」

「何か深い理由でもあったのかしら?」

リースの質問にリーゼロッテが頷いたその時、イオンが新たな質問をし、イオンに続くようにアリエッタは静かな表情で呟き、カリンは不思議そうな表情で訊ねた。

「ああ、それは元々リズをレン―――いえ、Ms.Lを絶対に裏切らない仲間にするつもりだったもの。ほら、命を救ってくれた上どん底だった自分の生活を変えてくれた挙句大金をはたいてまで色々と自分の世話をしてくれた恩人なら、普通に考えたら誰も裏切らないし、その恩人に尽くすでしょう?」

「このガキは………」

「そんな事を考えていたんだ、レンちゃん………」

「うふふ、その結果その拾った”仲間”はとんでもない”化物”に仕上がっちゃったみたいだけど………果たしてレンに、そんな”化物”の手綱を握れるかしらねぇ?」

レンの説明を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アガットはレンを睨み、ティータは疲れた表情で呟き、ユウナは小悪魔な笑みを浮かべてレンに問いかけた。

「そうなのよねぇ………リズの成長は完全にレンの想定外だったもの。うふふ、何か欲しい物はあるかしら、リズ?」

「もう……子供じゃないんだから、そんなあからさまな手には乗らないし、そもそも私は貴女を裏切るつもりなんて全然ないわよ。――――それより状況を教えてくれるのかしら?」

ユウナの指摘に疲れた表情で同意した後小悪魔な笑みを浮かべたレンの問いかけに呆れた表情で溜息を吐いて答えたリーゼロッテは気を取り直してレン達に事情の説明を要求した。その後リース達は事情を説明した。



「……………そう。わかったわ、レンも手を貸しているようだし、私も今後の探索に協力するわ。これからよろしくね。」

「こちらこそよろしくお願いします。”史上最強の遊撃士”と謳われている程の力、期待させて頂きます。」

事情を聞き終えた後協力を申し出たリーゼロッテの言葉に会釈をして答えたリースは静かな笑みを浮かべてリーゼロッテを見つめ

「だから今は遊撃士を辞めてレンの秘書なんだけどね……とは言っても、”一応今も遊撃士”でもあるから、私が遊撃士である事は否定できないのよね……」

「へ………”一応今も遊撃士”ってどういう事?」

疲れた表情で溜息を吐いたリーゼロッテの言葉を聞いてある事が気になったエステルは不思議そうな表情で訊ねた。

「私が遊撃士協会を辞めると知ったレマン自治州の遊撃士協会本部の上層部の人達がわざわざ私に遊撃士協会を抜ける事を思いとどまらせる為の説得に来たのよ。で、交渉の結果”特別措置”として、遊撃士は”副業”として私の手が空いている時でいいから、遊撃士協会に協力するという事になったのよ。しかもランクは辞めた時のランク―――A級のままでね。」

「ゆ、遊撃士が”副業”で、手の空いている時でいいから遊撃士協会に協力していい事で、しかもランクはA級って……!」

「ったく、そのガキが持っている”許可証”の件といい、本部の連中は何を考えていやがるんだ?」

「……それだけ、彼女に遊撃士協会を抜けて欲しくなかったのだろうな。カシウスの旦那が……S級遊撃士が一人脱会するという出来事もあったから、もしかしたらその件も関係しているかもしれんな。」

リーゼロッテの話を聞いたアネラスは信じられない表情をし、呆れた表情をしたアガットの疑問にジンは複雑そうな表情で答えた。

「ええ、そちらの”不動”の言う通りよ。レンの父親―――”剣聖”カシウス・ブライトが抜けた穴は私に補って欲しかったらしくて、説得するのに随分と骨が折れたわ………」

「あの不良親父はどれ程人に迷惑をかければ気がすむのよ……」

「ハハ……まさか本当に父さんの件も関係していたとはね。」

リーゼロッテの説明を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中エステルはジト目で呟き、ヨシュアは苦笑し

「……………………………」

(オリビエ………)

僅かに辛そうな表情でリーゼロッテを見つめているオリビエの様子に気づいたミュラーは複雑そうな表情をした。



その後リース達はメンバーを編成し、リース、エステル、ルーク、ティア、リシャール、ユウナ、フィー、リーゼロッテのメンバーで探索を再開し、そして終点に到着した。



~光迷宮・終点~



「あ……!」

次の星層へ行く転位陣を見つけたエステルは声を上げた。

「どうやらあれがこの星層の出口のようだな。邪魔者が現れない今の内に中に入った方がいいんじゃ―――」

そしてルークが提案をしたその時!

「………待って下さい。」

「みゅっ!?凄い邪悪な気配がするですの~!?」

「ええ………しかも相当な力の持ち主ね。」

リースが制止し、ある気配を感じ取ったミュウとティアはそれぞれ警告し

「へ………みんなどうしたの?」

リース達の様子に気付いたエステルは首を傾げて尋ねた。

「………間違いない。これは冥府の匂い………どんどん強くなっている………」

「なっ………!?」

「来るとしたらやはり魔法陣か!?」

そしてリースの言葉を聞いたエステルは驚き、ルークは仲間達と共にお互いの背中を守りながら武器を構えて真剣な表情で声を上げた。



「いえ、これは……………」

「――――上よ!」

ルークの推測にリースが考え込んだその時、リーゼロッテが警告した。するとエステル達の頭上から大型の蜘蛛が3匹降りてきて、敵達に気付いたエステル達はその場を飛びのいた!

「な、な、な………!」

「……状況を考えたら、あれが今までの”星層”の出口を守っていたっていう門番の”悪魔”か………確かに、迷宮を徘徊していた悪魔や魔獣とは桁違いの強さだね。」

「蜘蛛か………!」

「うふふ………なかなかの迫力ね。」

敵達の登場にエステルは口をパクパクさせ、フィーは敵達の強さを分析して警戒の表情をし、リシャールは声を上げ、ユウナは不敵な笑みを浮かべた。

「悪夢の紡ぎ手ども。迷宮に迷い込んだ魂を喰らう恐るべき三姉妹。聖典に記された七十七の悪魔の眷属、”暴食”のアルケニー!」

「この禍々しさ………あれが本物の悪魔なわけね。」

「邪魔をするんなら、倒すだけだ!行くぜっ!」

リースの説明を聞いたエステルは敵達を警戒し、ルークは声を上げ

「ええ………!」

ルークの言葉に頷いたリースはルーク達と共に戦闘を開始した――――――




 
 

 
後書き
という訳でついに閃シリーズからフィーが3rdにフライング登場&パーティーインですwwなお、今回の話で登場した新オリジナルキャラの容姿等は後の設定に書いておきます。また、新オリジナルキャラ、リーゼロッテの3rd後の再登場は菫の軌跡の閃篇の後半(ルーレでの特別実習あたり)です。 
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