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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第二話



――ルバーブ連山


『クキャアァァァァッ!!』


「くぅっ…!せいっ!!」


衛司は斧のような嘴を振り落としてきた鳥型の魔物『アックスビーク』の攻撃を何とか手にした木刀で受け払い、隙ができたアックスピークの腹へと突きを放つ。

『クゲッ!?クキャキャァァァッ!!』



衛司の攻撃は見事にアックスビークの腹に入り、アックスビークは一旦怯み、奇声を上げると攻撃体制に入ろうと上空に飛び上がる。

そして攻撃に移ろうとした瞬間――


「そこだ、ライトニング!!」


声と共に上空に上がったままのアックスビークに雷が落ち、アックスビークは高い奇声の後、消えていった。


「――……ふぅー…ナイスアシスト、カノンノ」


「ん、ナイスサポートだよ、衛司」


カノンノに振り返ってそう言い合うと二人でハイタッチした。


――――――――


「――…よし、これで終わりかな。…それにしても」


山道を歩いていると隣を歩くカノンノから不意に声が掛かり、「ん?」と声を出しカノンノを見る。


「衛司も大分仕事に馴染んできたね」


「んー…まぁ、ね。当初が当初で酷かったから」


微笑んでそう言ってきたカノンノに小さく苦笑で答える。
そう、今でこそアックスビークに勝てたが、本当に当初は僕はダメダメであった。


「あはは……あれは…仕方ないよ。うん、記憶が無い状態だから、闘うのが初めてだったんでしょ?」


「うん。でも…だからと言って…オタオタに惨敗なんて……」


僕のその一言でカノンノも思わず苦笑いしてしまう。
そう、先程言ったように…僕は初めての依頼である『オタオタ十匹討伐』の際、オタオタ約四体に俗に言う『フルボッコ』され、痛い目にあった事がある。
流石にオタオタにフルボッコされた時は本当に死にたくなった。

幾ら現実で剣道を習っていたとは言え僕の実力は言うなれば『下の下』。それに幾ら抗おうと剣道はあくまで剣『道』であり、剣『術』とは違い、不殺の……此方で言うなれば所詮『叩き合い』。




いつもはゲームで簡単だと思っていた戦闘も、リアルでやれば恐ろしいくらい、オタオタの強さが分かった。
オタオタ苛め、ダメ、ゼッタイ。
そして、今僕が心から泣きたい理由は『コレ』だ。


「し、仕方ないよ!それに武器が……ほら……」


「……木刀だからね」


そう、『木刀』。『木刀』と書いて『ウッドブレード』とも呼べる代物。別に仕込み刀な訳でも、特殊な能力が着いている訳でもない、敢えて言うなら強度高めの木刀である。

ロックスさん曰わく、僕が海に浮かんでいる時、大事そうに握っていたそうだが、初めてみる木刀だし。どんな理由だろうと魔物相手に木刀は無いと思う。




「――…それでも、今戦えるのってやっぱり…」


「うん……。師匠達のおかげ、かな」


小さく首を傾げて言い掛けたカノンノに苦笑してそう答える。
師匠、とは…僕がアドリビトムに来た時点でギルドにいた、『ファンタジア』のクレス・アルベイン、『ディスティニー』のスタン・エルロン、『レジェンディア』のセネル・クーリッジ、『シンフォニア』のクラトス・アウリオンの事だ。

何故師匠か、というと…無論、オタオタにフルボッコされた僕を見るに耐えかねた結果である。おかげ様で、自分で言うのは何だけど…まだまだ実力は浅いがギルドで上手くやっていけるようにはなってきた。
セネルには驚いたなー…。『お前の攻撃は型になりすぎて、俺の知り合いより分かりやすい』って、避けられてフルボッコされたもん。


「……衛司、なんかかなり遠い目してるけど…大丈夫?」


「ゴメン、なんか色々思い出して泣きたくなってきた。…とにかくこの話は切り上げよう。お願いします」


「…なんかゴメン。それじゃ、早く船に戻ろっか」


二人で苦笑しあい、カノンノがそう言って再び歩き出そうとした所であった。


――…突如、僕達の上空を大きな光が飛んでいった。


「…!?今の……何だろ…?」


「まさか……とにかく行ってみよう!!」



不思議そうに光が飛んでいった方向を見ていたカノンノの手を取り、その方向へと走り出す。
何かカノンノが驚いてるみたいだけど、気にしない。

もしかしたら…あれが『今作』の……?



――――ルバーブ連山『ルバーブ峠』



光が飛んで行った場所に着くと、まるで僕達を待っていたかのように、光はその場所で止まり輝き続けていた。

「何だろう……あれ……?」


「とりあえず、近付いてみよう」


僕の言葉にカノンノは頷くと光が輝き続けている元へと歩みよる。


「……あれは…」


「人…、だ!?空から人が降りて…」

そう、『やはり』光の正体は人であった。つまりあれが…『今作のディセンダー』。

ゆっくりと降りてくる者を僕が抱き抱えるように受け止め支える。

流れるような長い金の髪、小さく整った顔立ち。服装はどこか和風な……ぶっちゃけると『朱雀の衣』装備。よくよく見れば……降りてきた『ディセンダー』はどうやら『少女』らしい。

「衛司……その子…」


「……大丈夫。ちょっと眠ってるみたい。とりあえず、目が覚めるまで待ってみよう」


心配そうに眠る少女を見るカノンノにそう言うと近くの平らな場所にゆっくりと少女を寝かせる。
……とりあえず…遂に原作スタートって訳か。





―――――――――


「―ぁ……衛司!目が覚めたみたいだよーっ!」


暫くして、カノンノのそんな声が聞こえ近付くと、先程の少女が目を覚まし不思議そうに此方を見ていた。


「もう大丈夫?驚いたよ、だって空から降りて来たんだもん。あれは、何かの魔術なの?」



「……魔、術…?」


「違うの?私、スゴイ魔術で空を飛んだのかなぁって思ったんだけど」


「はいはい、カノンノ。目が覚めたばっかりなんだし…あんまり質問攻めしないでおこう」


「ぁ、そうだね。…そうだ。私はカノンノ。カノンノ・グラスバレーだよ。それで、コッチは衛司、乾 衛司。あなたは?」

「…カノンノ……衛司……私……メリア」


少女、メリアはカノンノと僕を交互に見て僕達の名前を復唱した後、自分の名前を言った。


「メリア…か。中々良い名前じゃないか。…とりあえず、目が覚めたようなら早く山を降りよう。魔物出るからね」

「ん、そうだね」


「………?」


僕の言葉にカノンノは小さく頷き、メリアは小さく首を傾げていた。


―――――――――



山を降りていると案の定、橋の前を魔物『オタオタ』が一匹塞いでいた。うん……トラウマだ。


「あっちゃあ…、魔物だ」


「あの様子は……通してくれそうに無さそうだね」

その場から動かずに此方を見ているオタオタに僕とカノンノが苦笑いしながらそう言葉を出す。
そう言っていると、不意に服の袖を引っ張られる感覚に振り返ると、メリアが此方を見て、短剣のようなものを出した。


「……私…武器、持ってる」


「メリア…闘う、って言うの…?」


「…………(コクリ)」


メリアのその一言に僕が言うと、メリアは小さく頷く。短剣って言うと…職業は盗賊、かな?


「ホント!?じゃあ、私と衛司もサポートするから、ここは頑張ろう!」



「カノンノ…君って密かに戦闘狂だったりする?」


「え?何で…?」


「いや、いいや。じゃ、メリア。僕とカノンノも最低限サポートするから、頑張って行くよっ!」


「……ん…!(コクッ)」



僕の言葉とメリアの返答を合図に僕達は武器を手に取り、戦闘を開始した。




―――――――――――




――簡単に結果を言おう。メリアの一撃で一瞬で片が付いた。戦闘開始、確かに僕の隣を走っていたメリアが突然消え、一瞬でオタオタを切り裂いた。

これで判明した事は彼女の職業は『盗賊』や『海賊』ではなく『忍者』である事。
そして彼女がかなり強い事。
よくゲームでは主人公であるディセンダーは強い、と言われていてその具体性は分からなかったが今回でよく分かった。




正直、オタオタに苦戦している自分が泣きたくなるぐらい。


「メリア……スッゴく強いね!」


「………そう…?」


「うん、そうだよ!あ、衛司、そろそろ船が到着する時間じゃないかな?」


「ん、あぁ、もうそろそろだね。なら、少し急ごうか」


カノンノが思い出したように言うと僕は頷いてそう答える。正直言うと、もう軽くオーバーしてるんじゃないかな?


「あ、船に乗ったら、メリアの希望する場所へ送ってもらえる様に伝えるから」


「……希望する、場所……?」


「うん。どうかしたの?」


「………………」





カノンノがメリアを見て言うも不思議そうな表情をしたままのメリアにカノンノが首を傾げる。
此処は…僕がフォローする場所かな?


「……もしかして、だけど…メリアは何処に行けばいいか分からないんじゃないかな?」


「…………(コクリ)」


「ええっ!?それって……。そ、それじゃあ、どうしようかな」


僕の言葉にメリアも理解出来たのか頷くのをカノンノが見ると驚き、困惑する。


「……とりあえず、船まで連れて行こう。もしかしたら、アンジュが何か考えてくれるかもしれないし」


「ん……そうだね。メリアもそれでいいかな?」


「……………(コクコク)」


「ん、それじゃあ、行こう!」

僕の提案に少し考えた後、カノンノは頷くとメリアに問い、メリアの反応を確認するとそう言って再び山を降りる事になった。



――――――――――



その後、度々現れるオタオタを相手にするも、なんとか無事船の到着場所である下流へと付いた。だが案の定、船の姿はまだ無かった。


「――あれ?まだ船が到着してない」


「意外に僕達の方が先だったみたいだね」


「……ねぇ、衛司。ひょっとしたらメリアって……」


「……多分、記憶喪失だろうね」


不意にカノンノが言ってきた言葉に先にそう言葉を出す。まぁ、『あくまで』理由が分かっている僕はそう言うしかない。
今、『彼女はディセンダーなんだよ』なんて言って通じる訳でも無いし、それに、まだ確実に彼女がディセンダーだ、とは言い切れないからだ。その彼女は現在、下流を流れる川を物珍しそうに眺めている。


「理由は全然分からないけど……やっぱりあの時メリアを包んでいた光に原因があったりするのかなぁ」


「どうだろう、ね。……あ、船が来たんじゃない?」


「あ、本当だ!」


不意に耳に届いて来た機械音に空を見上げると、ゆっくりと僕達の乗る船兼ギルド『バンエルティア号』が降りてきていた。





――――――――――



「カノンノに衛司、二人共お疲れ様。あなた達が魔物を討伐してくれたお陰で、ペカン村の人達の移民は無事に済んだわよ。ところで、そちらの女性は?」


船に乗り、アンジュに依頼が終わった事を伝えた後、そう言われるとアンジュは僕達の後ろで船の中を物珍しそうに見回しているメリアを見てそう言ってきた。


「彼女とは、ルバーブ連山で出会って…」


「それじゃ、自己紹介からね。私はアンジュ・セレーナ。あなたの話を聞いてもいいかな?」


「……アンジュ…私、メリア。……その……あの……」



「ぁー。……詳しくは分かる範囲で僕達が説明するよ。実は―――」


笑顔で問うアンジュに少し困惑しながらメリアが説明しようとするも上手く説明できなかったみたいなので、僕とカノンノが何とか見てきた内容で説明する。


「―――そう。記憶が無いなら、どこに行っていいかもわからないよね。――記憶が戻るまで、ここに置くのは構いません」

「え、いいの、アンジュ?」


「えぇ、当たり前じゃない。それに、衛司も記憶喪失なんだし、一緒にいてあげてたら案外、衛司の記憶も戻るかも知れないでしょ?」


――あぁ、そう言えば僕そうだったっけ。最近ギルドに馴染みすぎてその事スッゴく忘れてたんですけど。


「でも、話を聞く限り体力には自信がある様だし、働いてもらいましょうか。それじゃあ、今からあなたをギルド『アドリビトム』の一員として迎えるね」


こうして、ディセンダー(であるであろう)の少女、メリアはアドリビトムへと入った。



―――そして、物語の歯車は廻り始めた―――





 
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