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ドリトル先生と春の花達

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第三幕その九

「本当にね」
「先生嫌いな人はいないし」
「好きな人は凄く多いわよ」
「そしてその中には」
「そうなんだよ」
「好かれているなら有り難いよ」
 このことには素直に感謝する先生でした。ですがそれでも本当位こうしたことには気付かないのです。
「けれどそうした好かれ方はね」
「ないんだ」
「そう言うのね、あくまで」
「皆に好かれているならこれ以上のことはないよ」
 ここで無欲さも出した先生でした。
「もうそれで充分じゃないかな」
「いやいや、そこでそう言う?」
「そこで満足って」
「先生って無欲だから」
「それはいいことだけれど」
「嫌われてなくて」
 そしてというのです。
「好かれているならもうね」
「それで満足で」
「もうそれ以上は望まない」
「そうなのね」
「もうこれでいいのね」
「うん、只でさえ幸せなのに」 
 先生が今いる状況はです。
「いいお仕事とお家と食べものにお酒にお友達に家族に」
「それで好かれている」
「それならなんだ」
「もう最高だと思うよ」
 そうした幸せの中にいるというのです。
「だったらね」
「もうなんだ」
「そこから先は求めなくて」
「それで満足」
「そうなのね」
「実際に満足しているしね」 
 だからこそというのです。
「もう僕はいいよ」
「やれやれね」
「先生は無欲さもいいけれど」
「その無欲さも過ぎるとね」
「困るわ、私達も」
「本当にね」
「それに今だってな」
 桃も梅も見てのお言葉です。
「こうしてお花見も出来ているじゃない」
「梅や桃を」
「そのことも幸せだから」
「だからいい」
「そうも言うのね」
「うん、最高の幸せの中にあるから」
 だからだというのです。
「これ以上を望むつもりもないよ」
「そこを少しだけって思えば」
「また違うのに」
「自分をもっとよく観るのと併せて」
「ほんの少しそれを出せば」
 そうした欲をというのです。
「違うのに」
「先生は困った人だよ」
「どうしたものかしら」
「だから欲は出すものじゃないよ」
 先生の無欲さは変わりません、このことは確かにいいことなのですがよく悪くもそうなのです。
「だからいいんだ」
「やれやれだよ」
 また言った皆でした。
「そこを何とかって思っても」
「当の先生がこれじゃあ」
「困ったわね」
「これからも大変ね」
「僕達も苦労するね」
「そして日笠さんも」
「ああ、日笠さんっていうと」
 この人の名前を聞いてふと思い出した先生でした。 
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