| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

リトルガーデンへ

 ルフィ達はメリー号をリトルガーデンの沿岸へと停泊させる。
 ゾロが舵を降ろし、サンジが風で流されることを防ぐべく帆をたたむ。
 ルフィ達の眼前には見渡す限りの広大なジャングルが生い茂っていた。

 眼前には百獣の王であるライオンが血だらけで地に倒れ伏し、地表には巨大な生物の足跡が見受けられる。
 また、明らかに大古の時代に生息しているはずの生物も先程から姿を見せており、この島の異常性を際立たせていた。

 これら全てが偉大なる航路(グランドライン)の出鱈目な気候による影響であると考えると恐ろしいものである。

 太古の時代の生物と植物が今なお生き続けている島

 此処は全てが外界から完全に隔絶され、過酷な生存競争が続く弱肉強食が法である世界だ。
 如何なる者であろうとも足を踏み入れることなど許されない絶海の孤島、それがリトルガーデンである。

「ここがリトルガーデン……」
「皆、聞いてくれ。実は俺"この島に入って行ったら死んでしまう病"になっちまったんだ」

 ナミとウソップの2人はリトルガーデンの存在感に圧倒され、余程怖いのか体を大きく震わせている。
 ウソップに至っては奇妙な新病を発症していた。

「サンジ、海賊弁当!冒険のにおいがプンプンするぞ!」
「もう島を散策する気かよ、ルフィ?」
「おう!当たり前だろ!」

 我らが船長ルフィにはそんな2人(ナミとウソップ)の言葉は聞こえていなかった。

 ルフィは今すぐにでもこの島を探検したいのか満面の笑みを浮かべ、目を輝かせている。
 もはや彼の目には眼前の島しか映っていなかった。

「それなら、私もお弁当を作ってもらっていいかしら、サンジさん?」

 以外にも乗り気な王女ビビもこの島の上陸に名乗りを上げる。
 流石は敵の組織に単独で乗り込んでいただけのことはある。

「もちろんだよ、ビビちゃん♡」
「さあ一緒に行くわよ、カルー」
「くェッ!?」

 カルーをサラッと道連れにするビビ
 カルーは驚きにより口を大きく開け、涙を流していた。

「カルー、尋常じゃないくらい震えてるけど……」

 ナミの言う通りカルーは生まれたての小鹿のごとく足を震わせている。
 カルーの表情からはビビ(飼い主)に対する涙ながらの強い否定の懇願の意志が見て取れた。

「大丈夫よ、こう見えてカルーは強いから」

 ビビはカルーの逃げ道を完全に防ぐ。
 これでカルーは主人の提案を断ることができなくなった。

 そこには逆らうことのできない主従の関係があった。
 まるで断頭台へと上がる犯罪者のごとく蒼白な表情をカルーは浮かべている。

 カルーはビビ(飼い主)の安息のための犠牲になったのだろう、そう犠牲にな



 その後、ルフィとビビの2人はカルーを引き連れ意気揚々とメリー号から降り、島の探索へと駆け出していった。
 如何なる無茶な飼い主の求めにも応じるカルーは正にペットの鑑である。
 さすがカルー、略してサスカル

「なら俺も行きますかね」

 次に動いたのはゾロ
 気怠そうに立ち上がり、島の大地に船から飛び降りる。

「少し待て、ゾロ。島に行くなら食料になりそうな獣の肉を()ってきてくれないか?」
「ん?おお、分かった。お前じゃ到底不可能な獲物を狩ってきてやるよ」
「……あ?」

 ゾロはサンジを煽り、サンジは額に青筋を浮かべる。
 両者は互いに鋭い眼光で睨み合う。

「……テメェ、今、何つった?俺じゃ到底不可能な獲物だと!?」
「ああ、それが何か?」
「ふざけたこと抜かしてんじゃねェぞ!?」
「事実だろ」

 馬が合わないこの2人
 正に水と油の関係であるゾロとサンジはお互いに売り言葉に買い言葉を押収する。
 もはや彼らの勢いは止まらなかった。

「上等だ。てめェと俺で狩り勝負だ!!」

 ゾロとサンジの2人はナミとウソップの呼び声を無視し、狩り勝負をすべく島に繰り出していった。

「皆、俺達を置いていっちまった……」
「ええ、そうね。私達はこのままこの島の猛獣達の餌になってしまうのよ」

 ナミとウソップの2人はメリー号の甲板の上で途方に暮れる。
 お互いの顔を見てため息をつくことしか出来ない。
 お互いに頼りにならない。

「それじゃあ、船番を頼む、ナミ、ウソップ」

 アキトも同じくこの島の散策に向かうべくメリー号の甲板から身を乗り出す。
 アキトは心なしか楽し気に前方のリトルガーデンを見据えていた。

「……手を離してくれないか?」

 しかし、アキトはその場から動くことが出来なかった。
 後ろを振り返ればナミとウソップの2人が自分を引き留めていた。
 ナミは右手を、ウソップは左手を握りしめている。

「アキト、お願い!私達を置いて行かないで!」
「そうだ!か弱い俺達を1人にしないでくれー!」

 ナミとウソップの涙ながらの必死の懇願
 アキトはどうしたものかと困惑する。
 島の散策にも行きたいがナミとウソップのことも同じくらい心配である。

 しばし思案顔で考え込むアキトを固唾を飲みながらナミとウソップは見詰める。
 メリー号の甲板はしばしの間静寂に包まれた。



「でぇーじょーぶだ。ウソップがいるだろ?」

 どうやらアキトのなかで島の散策に天秤は傾いたようだ。
 結論としてウソップへの丸投げである。

「不安しかないわ!今頼りになるのはアキトだけよ!!」
「ひでェーな!?だが、確かにナミの言う通りだ!!アキト、お前が俺達の最後の希望なんだ!!」

 ナミとウソップは鬼気迫る表情を浮かべながら、アキトへと詰め寄る。
 2人の迫力に押され少し距離を取るアキト

「いや、でもな、俺もこの島を散策したいんだが」
「それなら俺の冒険物語を聞かせてやるから!」
「それは丁重にお断りする」
「それなら私と一緒に本を読みましょ!今ならみかんも付けるわよ!」

 いくら2人の頼みとはいえアキトはリトルガーデンを散策したくて仕方がない。
 これならルフィとビビと一緒に散策へと出掛けた方が良かったかもしれない。

「どうしても駄目か?」
「「駄目よ/だ!!」」
「本当に?」
「「駄目!!」」
「本当の本当に?」
「「当然!!」」

 アキトはナミとウソップの静止の声を聞きながらもリトルガーデンへと歩を進める。
 ナミとウソップを置いていくのは心苦しいことだが仕方ない。
 必要な犠牲なのだ。

「アキト!?言動が一致していないぞ!?」
「離さないわよ、絶対に!?」

 筋力で劣っているナミとウソップはアキトに引きずられるがままである。
 だが、彼らはアキトの手を離さない。
 もう自分たちには後がなく、頼れるのはアキトだけなのだ。

「はぁ、分かったよ。じゃあ、こうしよう。この島を散策したら直ぐに俺はメリー号に戻ってくるからそれで納得してくれないか?」
「ああ、それなら……、ってさっきと言っていることと何も変わらねェーよ!?」
「……」
「うぉぉおい!?」

流石に騙せなかったか。さてどうしたものか……

 アキトは2人を如何に上手く説得して島に繰り出すかを頭の中で模索する。

「アキト、あんたが何て言おうと行かせないわよ!!」
「そうだぜ、アキト!!」
「……」

 絶対に逃さないとばかりにアキトに抱き着く2人

 ナミの年に似合わない豊満な肢体を直に感じることが出来るのは素直に嬉しい。
 ただしウソップ、テメーはダメだ。
 自分は男に抱きつかれて喜ぶ趣味などない。

 これでは話は平行線を辿るだけであると判断したアキトは妥協案を出すことにした。

「俺と一緒に島を散策するというのは?」
「こんな危険な島を探検するわけないだろ!?」
「そうよ!!」

 本格的にどうすればいいのだろうか。
 自分と一緒に島へと繰り出すのも駄目となるともう放置してもいいだろうか。

「もう行ってもいいか?」

 アキトの実質的な見捨てられ宣言に絶望の表情を浮かべるナミとウソップ

 見れば2人は捨てられた子犬のような表情をしていた。
 ナミにいたっては目に涙を浮かべている。これでは断ろうにも断れない。

「……分かった、分かったから。俺もメリー号に残るから」

 遂にアキトは折れた。
 ため息を吐き、その場で脱力する。
 今だ島の方を名残惜しそうに見ていたが

 対するナミとウソップは満面の笑みを浮かべていた。

「さっすが、アキト!俺はお前なら頷いてくれると信じていたぜ!!」
「アキト、私もよ!!」
「はぁ……」

 アキトは肩を落としため息を吐く。
 今のアキトの心に渦巻いているのはルフィ達と一緒に行けば良かったという後悔の念とどや顔を浮かべているウソップへのどうしようもない苛立ちのみである。

この憎悪、生半可なものでは収まらぬぅ!!

「そんな落ち込むなよ、アキト!俺様の勇姿を聞かせてやるから!!」
「そ れ は や め ろ」

 気分が落ち込んでいる今の自分にそれは効く。
 丁重にお断りする。

「あっちに座るわよ、アキト!!」

 アキトは力無くナミに手を引かれる形で船の奥へと歩いて行った。

 畜生、畜生ぉ……



「俺達ウソップ海賊団は8000人の部下たちと共に凶悪な海賊達を……」

 メリー号の甲板の上で自身の冒険物語()を饒舌に語るウソップ
 先程から彼の語りは勢いが衰えることなく永遠と続いている。
 まるで壊れたラジカセだ。

 アキトとナミの2人は……

「このみかん美味しいな」
「当然でしょ?ベルメールさんのみかんよ」

 アキトはみかんを美味しそうに食し、ナミはメインマストに背中を預け本を読んでいた。
 終始、この2人はウソップのことなど気にも掛けていなかった。

「これは絶品だわ」
「まだあるわよ」
「それじゃあ遠慮なく」
「……」

 今でもアキトとナミは会話に花を咲かせており、ウソップは普通に無視されている。
 途端、真顔になり2人を見つめるウソップ

「……」
「ナミは何の本を読んでいるんだ?」
「え~と、確かこの本のタイトルは……」
「少しは俺の話を聞いてくれよ!?」

 遂にウソップは我慢出来ずに絶叫する。
 髪を掻き毟り、アキトとナミに近付いてきた。
 目は血走っており普通に怖い。

「何よ、ウソップ?あんたまだ話してたの?」
「話してたわ!?お前らが仲良くみかんを食べている間ずっとな!!」
「どうせ全部嘘なんでしょ?」
「ぬぐっ!」

 ウソップの心にナミの正論という名の刃が突き刺さる。
 やはり嘘であったようだ。
 目をウロウロとさせたウソップは次に黙々とみかんを食べているアキトに狙いを定めた。

「アキト、お前なら俺の話を聞いてくれるよな!?」
「悪い、ウソップ。興味ないわ」

 アキトに縋るも一蹴
 アキトの一言(とどめ)で甲板に崩れ落ちるウソップ
 ナミは終始無視を決め込んでいる。

すまない、ウソップの話に微塵も興味が湧かなくて本当にすまない

「……っ!」
「……ナミ?」
「やばいわっ……!リトルガーデンって名前、どこかで聞き覚えがあると思ったのよ!」

 どうやらナミはその真偽を確かめるために本を読んでいたようだ。
 それにしても彼女のこの怯えようはどうしたのだろうか。

「よく聞いて!この島がリトルガーデンと呼ばれている理由はこの島の住民達にとってこの島が小さな島であるからなのよ!!」
「つまりどういう意味だよ?」

 復活したウソップが疑問の声を上げる。

「この島には巨人族がいるってことよ!!」
「巨人って、あの巨人かっ!?」
「ちょうど後ろにいるぞ、その巨人」

 アキトは蜜柑を咀嚼しながら、呑気に後方を指差す。
 メリー号の後方からジャングルの木々をなぎ倒し姿を現していた。

 人間の数十倍の体格、右手に斧にも似た巨大な武器を握り、遥か頭上から此方を見据えている。

「いやあああああっ!!!出たーっ!!?」
「ギャあああああ!!!」
「落ち着け」

 恐怖の余りナミとウソップはアキトに抱き着く。
 ウソップは抱き着くことが出来ないように顔面を掴まれていたが

 眼前の巨人はこちらに顔を近付け、笑みを浮かべながら此方に話し掛けてくる。

「酒を持っているか、お前たち?」
「す、少しだけなら……」

 怯えながらもアキトの肩からひょこっと答えるナミ
 とても庇護欲を掻き立てられる仕草である。
 今すぐ抱きしめたい気持ちに駆られてしまう。

「そうか、そうか!持っているか!!肉も先程()れた、もてなすぞ客人よ!!我こそはエルバフ最強の戦士ブロギーだ!!!ガバババババ!!!」

 眼前に突き出されるは恐竜の頭部
 生首を突き出し客人を歓迎する新しい挨拶の仕方だ。

 ウソップは甲板の上で死んだふり、ナミは自分の背中に怯えた様子で隠れている。
 島を散策したくてたまらないアキトにとって目の前の巨人の提案を断る理由などあるはずもなく、即決する。
 瞳の奥を輝かせ、アキトは先程までの落ち込みぶりが嘘のように霧散した。

 考えを改めさせようとアキトに詰め寄るナミとウソップ
 しかし、アキトに2人の言葉が届くことはない。
 今の彼には眼前の島しか見えていない。

 その後、アキトたちはブロギーと名乗る巨人の案内のもと眼前の島に降り立つことになった。




 巨人ブロギーの家にて……

「さあ、遠慮などせず食え!!うまいぞ恐竜の肉は!!!」
「それでは遠慮なく」

 焚き火でこんがりと焼いた恐竜の肉をアキトは何の躊躇いもなく食べる。
 まさか恐竜の肉を食べる日が来ようとは予想出来なかった。

うむ、恐竜の肉は初めて食べたが意外とイケる

 ナミとウソップの2人はアキトを挟む形で両側に座っている。
 未だに眼前の巨人に怯えているのだろう。

「え、えっと、ブロギーさん。この島の記録(ログ)は一体どれくらいでたまるのでしょうか?」

 ナミが恐る恐るといった様子でブロギーに尋ねる。
 ウソップも気になるのか耳を傾けていた。

「1年だ。まあゆっくりしていけ、ガバババババババ!!!」
「1年っ!?そんなに待たなくちゃいけないのか!?」

 巨人ブロギーの口から語られる衝撃的な真実

 1年もの間この島に居続ければアラバスタ王国はB・W(バロックワークス)の手によって支配され、新国家を建設されてしまうだろう。

 ナミとウソップは驚きで言葉が出ない。
 アキトは本格的にアラバスタ王国まで能力で空を飛んでいくことを選択肢に入れ始めた。

「ブロギーさんはこの島で何をしているのですか?」

 アキトは食事を一旦中断し、当初から気になっていたことをブロギーに問いかける。

 いくら巨人と言えど外界から完全に隔絶されたこの島で生き続けることは困難を極めるはずだ。
 きっと彼にはこの島に居続ける特別な理由があるのだとアキトは推測を立てる。

「決闘だ。ある男との戦いを制すために100年は俺たちはこの島で戦っている」
「100年も!?ブロギーのおっさんたちは決闘のためにこの島でそんなに長い間戦っているのか!?」

 ウソップが驚愕の真実に驚きの声を上げる。
 それはそうだろう。
 いくら巨人とはいえ100年もの間戦い続けるなど正気の沙汰ではない。

 驚愕に驚きを隠せないウソップの背後で火山が勢いよく噴火する。

 それは幾度となく繰り返されてきた戦いの合図
 ブロギーは自身の武器を手に持ちその場から立ち上がる。

「……さてと戦いの合図も鳴った。行くとするか」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!ブロギーのおっさんは何でそんなに長い間戦い続けているんだ!?」
「理由か……」

 両者は向かい合う形で対峙する。

「「理由などとうに忘れた!!!」」

 互いの武器をぶつけ合い、己の誇りを胸に掲げ2人の巨人は戦い始めた。







▽▲▽▲







 ブロギーが決闘へと赴いた後、アキト達はブロギーの居住から立ち去っていた。

 ナミとウソップの2人は今後の方針を話し合っている。
 アキトは呑気に空を見上げながら恐竜の肉を頬張っていた。

 空に広がるは満点の大空

 太陽光が今なお眩しく自分たちを照らし続ける。
 上空には通常の鳥の何倍もの大きさを誇る大型の鳥が雄叫びを上げ、各地で恐竜が跋扈していた。

 空を見上げるアキトの視線の先に突然人の姿が映る。
 見間違いではなければ此方にもの凄い勢いで突っ込んできた。

「ああああああ───!!そこをどくのだがね────!!!」

あっぶねっ

 アキトは反射的に飛来した男の顔面を蹴り飛ばす。
 一応手加減を加えたつもりだが歯を数本折ってしまった感触がある。

 アキトに蹴り飛ばされた謎の男は地面に何度かバウンドして土煙を上げながら転がっていった。
 男は気を失ってしまったのか動く素振りを見せない。

 アキトとナミ、ウソップの3人は顔を見合わせ、取りあえず眼前の謎の男に歩み寄ることにした。
 見れば案の定蹴り飛ばされた男は気を失っている。

「誰だ、こいつ?」
「私は知らないわ」
「同じく」

 眼下で鼻血を流しながら倒れている男性

 頬には誰かに殴られたのか痛々しい傷痕が見受けられる。
 余程の威力でここまで飛ばされたのか眼鏡は悲惨にも割れていた。

 特に酷いのは歯が数本折れているせいで顔面が血だらけになっていることである。
 一体だれがこんな酷いことをしたのだろうか。

 気絶しているのか先程からピクリとも動かない。
 まるで死人のようだ。

「つーか、スゲー髪型だな。これ数字の3そのままだぜ」
「そうね、何て斬新的な髪型なの」

 ウソップとナミの意見には全面的に同意する。
 どのような意図で自分の髪型を3にセットしているのだろうか。
 時代の先を行く斬新的な髪型だ。

「……取りあえず放置で」
「ええ、そうね」
「だな」

 眼前のこの男は華麗にスルーし、放置することが決定した。
 助ける義理はないし、この男はB・W(バロックワークス)の追っ手な気がしてならない。

「俺達は何も見なかった、良いな?」
「ええ」
「おう」

 アキト達は何も見なかったことにしてその場から立ち去るのであった。



「さっきの男は何だったんだ?」
「私の推測では、あの3の男はB・W(バロックワークス)の追っ手の1人よ」

 忘れてはならない。
 相手は国を乗っ取ろうとしている巨大な組織だ。
 加えて、社長(ボス)はあの七武海の1人であるクロコダイルである。
 そう考えればこの対応の早さも頷けるというものだ。

 途端、此方に近付いてくる何者かの気配を感じた。

 見ればおぼつかない足取りで周囲の木々にぶつかりながらも、全力疾走でこちらに走り寄ってくるカルーの姿が見えた。
 傍に主人であるビビの姿は見えない。

「クエッ、クエ───ッ!!クエ─────ッ!!!」

 邂逅一番の鳴き声

 カルーが何を言っているのか理解することは出来ないが、必死でこちらに助けを求めていることは伝わってくる。
 よく見ればカルーは血を流しており、至る所に怪我を負っている。

 カルーの傍に主人であるビビの姿がない。
 メリー号から島に降り立ったときは一緒にいたはずであり、このことから予想されることは……

「お前の主人であるビビに何かあったのか?」
「クエッ!!!」

 アキトの問いかけにカル―は力強く首肯する。

 やはりビビの身に良くないことが起きたらしい。
 そうなれば先程蹴り飛ばした男はB・W(バロックワークス)の追っ手であった可能性がかなり高くなってくる。

 しかし、今は推測の域を出ないことよりもビビの安否を確認することが先決だ。

「お前の主人の場所に案内してくれるか?」
「クエッ!!」

 カルーはアキトの求めに力強く頷き、こちらに背を向けて元来た道を引き返し始めた。 その速度は凄まじく、主人であるビビのことを深く心配していることが伺える。

 アキトはナミとウソップを脇に抱え上げ、カルーの後を追いかけた。



 カルーの案内もと急いで現場に駆け付けたアキト達

 眼前では何故か見知らぬ少女と顔の表情筋を全力で使いお茶を美味しく飲んでいるルフィの姿があった。
 一体どういう状況なのだろうか、理解が追い付かない。

「お茶がうめェ……!」
 
 普段のルフィらしからぬ姿にナミとウソップは困惑する。
 
「おい、あれ!?」
「まさか、あれってゾロとビビなの……!?」

 ウソップは前方を指差した状態で固まり、ナミは驚きの余り地面に座り込む。

 前方ではゾロとビビの2人が何らかの能力で身動きが封じられ、剥製の如く固められていた。
 全身が白色の状態であり先程から身動きの1つも起こさない。

 ただならぬ事態だ。
 周囲にはブロギーがゾロ達と同様に固められ、彼の隣には相方の巨人が血を流し倒れている。

「予想通り、あのカルガモ仲間を引き連れて戻ってきたぜ」
「そうみたいね、Mr.5。キャハハハハ」

 此方を得意げな顔で見てくる2人組
 
 どうやらカルーは彼らにわざとこの場から逃がされたようだ。
 先程自分が蹴り飛ばしたあの3の男もこの2人組の仲間であり、この場にゾロ達を助けるべく居合わせたルフィと戦い、敗北したのだろう。

 アキトとMr.5ペアが互いに睨み合う。
 この一連の出来事が全てこいつらの仕業だと理解したアキトの視線は自然と鋭いものになった。

 周囲に剣吞な雰囲気が漂う。
 後ろのナミとウソップはただアキトの背を見据える。

 かくしてB・W(バロックワークス)の追っ手たちとアキトたちはリトルガーデンで邂逅することになった。 
 

 
後書き
今作ではアン・ラッキーズによる情報リークがアキトによって阻止されているため、Mr.3お手製のルフィとナミの人形は出てきません。
ビビはカルーならぬ鳥質で、ゾロは迷子になっていたところを唯一顔がばれているビビの人形により捕縛された次第です。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧