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キコ族の少女

作者:SANO
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第5話「変態、現る」

 突然だけど、この間のキツネリスは私のペット……いや、相棒になりました。
 保護と言うのも変だが俺に馴れて欲しいと思っていたので、この結果は純粋に嬉しい事だ。
 まあ、予想以上にベッタリと懐いてくれて、若干だが反応に困ったりはするけれどね。あっ、ちなみにオス。

 当然(?)ながら、名前は『テト』である。
 くっそぉ、本当にメー○ェがあれば……念で再現するか?いやいやいや、それこそ能力の無駄遣い。馬鹿の考えはやめよう。
 というか、主人公と俺の容姿からしてぜんぜん似てないし、性格も段違いだ。

 そして、この件に関連した事件が旅団内で起きた。
 それは、数日後の団員召集についていった時であり、あえて名前をつけるとすれば

 『ノブナガ、強○疑惑事件』

 テトを落ち着かせるために抱きしめた際、彼の爪で怪我をした肌を見て、パクがノブナガが俺に対して修行と言ってヒドイ事をしているのではないかと、“面白半分で”疑惑を持ち出して大変なことになったらしい。
 必死に弁解するノブナガだけど、マチとパクは分かってて疑惑に満ちた瞳で見るわ、状況を理解して悪乗りしたウボォー達は笑い声と批難の声を浴びせたとか……ちなみに団長は傍観。

 この騒ぎは、マチと共に買い物から戻ってきた俺が、テトとの経緯を話すまで続いたとさ……
 意外(?)とノリがいい団員だなと思ったよ。
 それにしても、慌てていたノブナガ……意外と面白かったなぁ~

 っと、話が変な方向に行ってる。修正修正。
 前回、豚との戦闘で”流”の未熟さを痛感し、戻ってからは通常の修行を3割で残りを”流”の鍛錬に費やした。
 早く強くなりたいから、こんなところで止まりたくはないのだけど、


「アホか」


 というノブナガの言葉とゲンコツを一発もらい、考えを改めました。
 うん、焦りは禁物だよね………と言うか、仮にも女の子の頭をグーで殴るのはどうかと思う!!
 まあ今回からは、テトが慰めようと頬を舐めてたり擦り寄ってきたりして、癒されるので問題ない。

 ああ~、本当に癒される~。


「集中しろ」


ゴンッ


「~~~っ!!」


――――――――――

――――――――

――――――

――――

――


 ”流”を中心にした修行を始めて半年程の月日が流れていった。
 その間に、旅団は”緋の目”を取ってきたり、見たことのある団員が入団したりと、だんだんと原作の状況に近くなってきた。
 “緋の目”については、何時の出来事か分からなかったし、分かった所で意見を言える立場ではない。
 そもそも現在の目的は原作の悲劇を回避する事ではなく、自身の命を守れる手段を手に入れる事である。
 旅団憎しの復讐鬼が誕生したことで、旅団の保護下にある俺も、クラピカの抹殺リストに登録されるかもしれないが、会わなければいいだけのことだし、偶然に出会ったとしたとしても旅団関係者だと判らなければ大丈夫なはずだ。
 撃退?あの能力相手に勝てる気がしない。
 というか、全系統の熟練度が100%になるとかチートすぎなのは原作を読んでいる時も思ったが、念の鍛錬をしている現在は改めてチートすぎることを実感している。ズルい。

 といった心配を心の片隅に残しつつ修行に明け暮れていたある日、ノブナガが久しぶりに皆の所へ向かうというので俺もついていくことになった。
 到着した早々すぐに何か話し合いを始めてしまったので、団員で無い俺はノブナガに一言断りを入れて、仮宿である廃ビルの屋上で”流”の鍛錬で時間つぶしをすることにした。

 別に聞いててもいいとは言われてるけど、物騒すぎて少し怖い。
 R15は当然で、当たり前のようにR18以上のグロテスクな話やブラック過ぎる話が出てくるから聞いて楽しいものじゃない。
 興味本位で聞いてた内容を思い出して、軽くゲンナリしつつ、指先の一つに”疑”をして、それを他の指先へ”流”を行うという鍛錬を両手同時に行っていく。
 ある程度の“慣らし”が終わったら、今度は小指から親指までの往復する速度をドンドンとあげていく。
 目標は1秒で1往復だ。
 
 テトは、黙々と鍛錬に励む俺を眺めながら日当たりのいい所で日向ぼっこ。
 傍目にはノンビリとした時間が過ぎていく中、ウトウトしていたテトが突然飛び起きると、下の階へと続く扉に向かって毛を逆立てながら威嚇を始めた。


「テト?」


 ここは仮とはいえ、旅団のアジト。
 今いる団員の殆ど――フェイタン等は例外――にはこんな警戒したりしないはず……となると侵入者?
 不可能だ。団員がほぼ全員集合しているビルの中に許可無く侵入すれば、誰かが必ず気づくはずなのに、下の階からは不穏な気配を感じない。
 それじゃあ、テトは何に対して警戒している?……まさか、幽r―――


「やあ、君がユイかい?」
「……っ!?」


 テトに倣って扉へ注意を向けていた俺の耳元で、背筋にゾクッと悪寒が走るような色声が響いた。
 警戒していながら何者かに後ろを取られたことに動揺しながらも、前に飛び出すようにして距離をとると共に、戦闘態勢をとりつつ相手の姿を確認するが、予想外の相手だったために驚きから動きが止まってしまう。

 金髪のオールバックにピエロを思わせる服装、そして気味の悪い笑みを貼り付けたイケメン顔。

 ひっ、ヒッ、ヒソカだーーーーー!!
 何しに来やがった!?というか、何でココにいるんだ!?


「そんなに怯えないでよ。そんな目を見てると虐めたくなるじゃないか?」
「ひぃっ……」
「何やってるんだ」
「の、ノブナガ!」


 舐めるような視線に悪寒が全身を駆け巡り、思わず両腕で身体を抱いて後ずさる。
 しかし、扉の方から聞きなれた声が聞こえ、心の中で数多の感謝を叫びながら脱兎のごとく声の主―――ノブナガの後ろへと避難する。
 テトは俺の肩に乗りながらも威嚇を継続中だが……尻尾が後ろ足の間に挟まれて、虚勢を張っているだけであるのがバレバレである。


「残念。嫌われちゃった」
「おめぇのオーラが気持ち悪ぃからだ」


 隠れても感じる舐めるような視線に悪寒と新たに加わった気持ち悪さから、自然と涙目になるものの、ノブナガに同意するため必死に首をコクコクと縦に揺らす。
 そんな俺から視線を外したヒソカは、ノブナガへ視線を変えつつ天気の話をするかのよな気楽さで会話を続ける。


「君が師匠してるって聞いたから、どんな子を育ててるのか気になっただけだよ?」
「嘘付け。てめぇ、ユイのことずっと前からつけてただろうが」
「はい!?」


 何それ!?
 俺ずっと前から目をつけられてたの!?
 驚きで、思わずヒソカへ視線を送ると、ノブナガを見ていた筈の視線と目がバチッと合ってしまい。


「美味しそうだ……」
「………」
「気ぃつけろ。アイツはなんでもいけるからな」


 さっ、最悪だーー!!
 何こいつ! 何こいつ!! 何こいつ!!!!

 幼女に欲情するなんて、変態にもほどがある!
 いや、原作ですでに分かってることだけどね!!
 でも、被害者側になってみて分かる、こいつの変態度合いと異質なオーラ!!
 

「今はまだ早いから、挨拶だけ」
「ふん。ユイに手ぇだしたら殺すぞ」
「怖い怖い」


 ドッとノブナガのオーラ量が増すと、ヒソカが放っていた纏わり付くようなドロっとした圧迫感が消えて、代わりに安心感を感じる暖かさが俺を包み込んだ。
 
 ぉぉぅ……惚れてもいいですかノブナガさん。
 アンタ格好良すぎです。

 ヒソカはそんなノブナガのオーラを、軽く手を広げて真正面から恍惚した表情で受け止める。

 ……こっちは変態すぎる。


「じゃあまたね。ユイ」
「~~~っ」


 舐めるような視線と背筋が凍るような声+αを最後に、ヒソカは普通に歩いて屋上から姿を消した。
 あの野郎、最後の最後で気持ち悪いオーラをぶつけていきやがって……
 ノブナガから出ていた安心感で気が緩み、”纏”しか行っていなかった俺はそのオーラに当てられて、ノブナガの裾を掴んでいないと立っていることが不可能になるほど、足が震え上がってしまった。
 場所的に巻き添えを食らったテトは、俺の服の中へ避難している……まあ、中でまだ唸ることで抵抗の意思を見せてはいるけれど、野生の本能には勝てなかったということだね。


「平気か?」
「……へ、平気」


 半年前の豚の件以来久しぶりに聞く優しい声に答えたいがために、ヤセ我慢して無事なように見せる。
 声が震えていたのはご愛嬌ということで……ぐっ、笑われた。

 苦笑するノブナガを見なかったことにして、俺はふと疑問に思ったことを口にする。
 というか、早く話題を変えないと気分が沈む。


「そういえば……なんで、屋上に?偶然じゃ、ないよね?」
「おっと、忘れるところだった」
「??」
「団長が次の仕事で、お前も同行するようにとさ」
「え? もう?」


 実は、前から仕事に参加して見ないかと誘われていたのでそんなに驚きはしないが、今頃なぜという疑問が沸く。
 それなりにという前文がつくレベルだが力を認めてもらえているが……もしかして、開発段階の能力団員の皆に見せているから、あれが判断材料になっているのだろうか?


「少し前なら、オメェの能力上達を優先させてたが”流”も上達してきたし、そろそろ空気にも慣れさせて方がいいと思ってな」
「空気……仕事の?」
「ああ。それと、念を使った戦闘の空気だな。当然だが、模擬戦と実戦は違う」
「……日時は?」
「マチが連絡する」
「んっ、分かった」


 初の実戦……だよね?
 皆に見せた能力からして、積極的な戦闘参加はしないかもしれないけど……近いうちに戦闘に対応できる能力を考えないと、戦術の幅が狭いままだと戦うのはもちろん逃げる際にも困ることになる。
 しかし、こんな俺がついていって邪魔にならないのだろうか?
 ヒソカに悪意(?)ある念を当てられれただけでこの体たらくだし……


「気にすんな。アイツがおかしいだけだ」
「……そだね」


 何気なく心を読まれたが、そこはスルーだ。
 念は精神の状態で力が上下するから、万全の状態で望まないとね。
 平常心、平常心。


「まだ俺は団長と話があるからな、終わるまで下にいる他の奴と話でもしてな」
「え?でも鍛錬中……」
「その震えてる足でか?」
「っ!?」


 気を緩めてしまったために、再び小さく震え始めていた足を両手で抑えると、無理やり震えを収める。
 バレているのは分かっていたが、改めて指摘されると若干顔が熱くなっていき、赤くなっているという自覚がさらに顔を熱くさせる原因になる。


「気にすんなっていっただろうが」
「ぅぅ~っ」


 ポンポンと軽く頭を叩かれると、そのまま「他の奴の所で待ってろよ」と言い残して下へと降りていった。
 屋上に残されたのは顔の赤い俺とテトのみ、もう平気になったのか服の中から顔を出すと、首をかしげて俺を見つめる。
 そんな仕草に、恥ずかしさはどこへやら……


「……この可愛いやつめ!」


 ワシャワシャとテトと戯れることで気分を紛らわした後、ノブナガの指示に従って下へ続く階段へと向かった。



――――――――――

――――――――

――――――

――――

――



「よおユイ、久しぶりだな」
「フランクリン!!」


 少なくない時間を過ごした旅団内で、一番親しいフランクリンを見つけて、俺は思わず彼の名前を叫びながら胸元へダイブした。
 テトは俺の行動を予測して、服の中から脱出すると俺の頭上へと避難を済ませている。
 弾丸のように突撃して自分の首に抱きついてきた俺を、彼は笑いながら受け止めると、大きな手で頭をテトを潰さないようにし避けつつ、撫でてくれながら話しかけてくる。


「お前、少しデカくなったんじゃないか?」
「分かる?最後に会った時から2センチも伸びたよ!!」
「ほう、そりゃあデカく感じるわけだ」


 傍から見れば、お爺ちゃんと孫の会話に聞こえなくも無い雰囲気に呆れた声でパクが乱入。


「貴女、本当にフランクリンの事好きね」
「あ、パクももちろん好きだよ」
「はいはい」
「本当だってば!」
「はいはい、信じてるわよ」


 ……俺の精神年齢が少し下がってように見えるけど、これは肉体に精神が引っ張られているだけだからね。
 決して原作キャラと仲が良くて、舞い上がってるわけじゃないからね!!
 脳内で、誰にしているのか分からない言い訳を並べていると、フランクリンの後ろにいたマチが俺に声をかける。


「ユイ。次の仕事の件、聞いた?」
「ついさっき、ノブナガから聞いたよ」
「私とシャルの班に入ってもらうから、そのつもりでね」
「……それじゃあ」
「サポート役だね」


 俺の能力を考えるとやっぱりそうなるのか……
 参謀役のシャルを補佐することになるのかな?


「まあ、今回はそんな難しいものじゃないから、実力試しにはちょうどいいね」
「ヤバくなったら俺が援護するし、安心しなって」
「ぅぃ~~っ」

 今だにフランクリンの首にぶら下がっている俺の頬をグニグニともて遊びながら、シャルが声をかけてくる。
 背中とお尻をフランクリンに支えられているので、首から手を離して拒絶する事も出来るが、別に不快じゃないし一種の触れ合いだと分かってるので、遊ばれたままの状態でシャルの言葉に応答する。


「うん。れも、てひるらけ、しふんてやってひる」
「ま、頑張れ」


 その後、他の団員とも軽く話をしたあと、俺はノブナガと一緒に現在の修行場所へと帰っていった。
 仕事が控えてるから、ちゃんとマチにはどこで修行しているか話をしてね。 
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