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とある3年4組の卑怯者

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41 助人

 
前書き
 笹山を人質に取られ、解放の条件に本を持っていくリリィ。その途中、藤木と山根に遭遇するも、口止めをされている為、二人には何も言えずに神社へ向かう。藤木が彼女の心中を見抜き、山根と共に追跡し、リリィと笹山を助けに向かうが、自分もやられてしまい、山根も胃腸を痛くして動けなくなってしまった!! 

 
 山根が胃腸を抑えてその場にいると、まる子とたまえがその場を通りかかった。
「あ、さくら、穂波・・・!!」
「あれ、山根、胃腸が痛いの?」
 たまえが心配して聞いた。
「ああ、それより誰か助けを呼んでくれ!藤木君達が大変なんだ!」
 山根は公園の方を指さしながら必死に叫んだ。その場では藤木とリリィ、そして笹山が上級生にやられている様子が見えた。
「わ、分かった!誰か助けを呼ぶよ!」
 まる子はそう言って慌てて走った。
「あ、まるちゃん!!」
 たまえも追うようについて言った。
「くそ、早く、頼む・・・」

 藤木は立ち上がると、笹山に近寄った。
「笹山さん、大丈夫かい?もういいよ、君もリリィと一緒に逃げてくれ・・・」
「え・・・?」
「ここは僕が犠牲になるから」
 藤木は理子に向かって殴る真似をした。
「また殴んのか?暴行罪だぞ!」
「じ、自分だってリリィや笹山さんに乱暴しているじゃないか。それは別にいいとでもいうのか!?」
 笹山は藤木に任せて逃げられるわけがなかった。藤木はこの問題に直接関係があるわけではないのに必死で自分とリリィを庇ってくれている。しかし、笹山は一方的に藤木がやられるまま去ることなどできず、したくもなかった。
「るせえんだよ!」
 その時、茉友という女子が後ろから藤木の尻を蹴った。藤木が尻を抑えてしゃがみ込む。笹山は「藤木君!」と嘆き声をあげてそばによる。
「僕の事はいいから、早くリリィと逃げてくれ・・・」
 藤木が笹山に言う。
「できないわよ!藤木君がこんなにやられているのに見過ごすなんてできないわよ・・・」
「でもリリィが・・・」
 その間にリリィは女子に詰め寄られていた。
「ほら、よこせ!」
「いつまでウジウジしてんだ、この外人め!」
 藤木はリリィを守ろうとして立とうとしたが、尻の痛みで動けない。リリィは本を抱える。
「ほら、早く渡せよ!日本語わかんねえのか、外人!!」
 二人組の上級生は容赦なくリリィを追い詰める。リリィが背を向ける。そして茉友という女子がリリィの髪を引っ張った。
「おら、持ってきたんだろ!何で出さねえんだよ!卑怯者だな!」
(ひ、卑怯者・・・!)
 藤木はリリィが自分のもう一つの名前を言われることに気に食わず、叫ぶ。
「リ、リリィは卑怯者なんかじゃない!!人の(もの)取り上げるなんて君たちの方が卑怯者だ!君たちは泥棒だ!」
「あ!?」
 笹山が立ち上がる。
「そうよ!貴方達はこんなことして最低だわ!!」
「吠えてんじゃねえ!クズどもが!」
「リリィさんを放して!」
「るせえんだよ!」
 藤木がようやく立ち上がった。
「藤木君、大丈夫なの?」
「うん・・・」
 藤木は尻の痛みでよろけながら上級生たちに近づいた。笹山も近づく。
「あー、だりーな・・・。クソったれが!」

 まる子とたまえは助けを呼べる人を探しに走った。誰なら助けてくれるのか。大野と杉山を探すか。それとも自分の親でも呼ぶか。どうするかわからずにいながら走ると、ある集団に遭遇した。それは、まる子の姉、さくらさきことその友人の6年生の集団だった。
「あ、お姉ちゃん!」
 まる子は泣くように自分の姉を呼んだ。
「まる子、それにたまちゃん!?どうしたの!?」
「大変なんだ!藤木と笹山さんとリリィが・・・、ウチのクラスメイトが知らない上級生にいじめられているんだ!!助けて!!」
「え・・・!?」
「さくらさん、まるちゃんたち相当慌てているみたいよ。私も行くから、助けてあげようよ!」
「よし子さん・・・」
「うん、その上級生は女子だから女子同士なら何とかなるかも・・・!!」
 たまえも言った。
「さくら、俺も行くよ!」
「まる子ちゃんが困っていることなら助けようぜ!」
「小山君・・・、根岸君・・・。分かったわ、まる子、たまちゃん、その場所へ案内して!」
 まる子とたまえはさきことその友人らを藤木らがいる神社へと誘導した。

 藤木と笹山は上級生達に近づいた。
「ったく、しつけーな!こいつが雑誌渡してくれりゃ丸く収まんだよ。バカじゃねえのか!?」
「じゃあ、泥棒として先生に言いつけるぞ」
「先生ってどの先生だよ!?」
「どの先生にでも言うさ・・・」
「だが、おめえだって理子たちを殴っただろ?今更チクったって意味ねーだろ!?叱られんのはおめーだぜ!」
「うるさい!」
「そうよ!そっちこそ暴力振っているじゃない!」
「おい、それ以上近づいたらこいつもボコボコにすんぞ!」
 茉友がリリィの髪を掴んだ手を二人の前に出した。
(くそ、もう助けられないのか!どうすればいいんだ!?)
 藤木は焦っていた。
(ええい、イチかバチかでリリィを助けてみるか!)
 藤木は脅しを無視して特攻を試みた。
「あ、近づいたな!」
 理子が横から藤木に蹴りを入れる。が、笹山が理子に体当たりして妨害した。茉友がリリィの髪を掴んだままリリィを地面に叩きつける。
「リリィ!やめろ、この!」
 藤木は左手で茉友がリリィの髪を掴んでいる手の手首を掴み、もう片方の手でリリィの髪を抑え、茉友の手を強引に引き離した。その際、リリィの髪の毛が数本ブチッと抜ける音がした。藤木は茉友を突き飛ばした。そしてリリィに声をかける。
「リリィ!痛かったかい!?」
 藤木はリリィが髪を引っ張られて痛かったのではないかと心配した。
「大丈夫よ、藤木君、ありが・・・」
 その時、理子が笹山を振り払って藤木の後頭部を蹴り飛ばした。リリィが「キャア!」と悲鳴をあげた。笹山が藤木の元へ駆け寄る。
「藤木君!」
 その時、反対側から茉友の蹴りが藤木を庇おうとする笹山の左のこめかみに直撃した。

 山根はまる子とたまえが戻ってくるのを待っていた。二人が戻ってきた。
「山根!ウチのお姉ちゃん達を連れてきたよ!」
「ありがとう・・・、藤木君たちはあそこに・・・!」
「分かったわ、ありがとう」
 そう言ってまる子の姉、さきこは友達と共に神社に入った。 
 

 
後書き
次回:「最上級生(ろくねんせい)
 まる子の姉達六年生が救援に訪れる。理子と茉友に襲われる藤木、リリィ、笹山は助かるのか。そしてその後、笹山は藤木に対してある事を考える・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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