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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百二十八話 突入


遅くなりました。
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第百二十八話 突入

帝国暦483年8月5日 午後0時20分

■オーディン ノイエ・サンスーシ 強襲揚陸艇バート・デューベン   アルノルト・フォン・オフレッサー

いよいよ、宮殿に突入だ。我々の行動により皇帝陛下をお助けする事に成るのだから、決して負けられない戦闘だ。思えば、貴族とは名ばかりの帝国騎士に生まれたこの俺が、此処まで皇帝陛下のお役にたてる事があるだろうか。

俺の生まれた頃の我が家は、戦死した親父が残してくれた幾ばくかの資産をすり減らしながら細々と暮らしていたものだ。そんな中この俺は、人並み外れたこの体を持って生まれたために、軍に入り体を鍛えて装甲擲弾兵として戦い始めた。

初めての戦闘では、ビビってバウムガルテンに助けられたものだが、それも今となっては良い思い出だ、叛徒共は、戦闘ではローゼンリッターを先頭にして帝国人同士を戦わせる戦法をとりやがる、自由だなんだなどと言いながら、結局は厄介者扱いですり減らされるのだから哀れな事だ。

俺が最初に殺した奴も帝国人だった、あの時以来、殺した数は数知れずだが、叛徒より、帝国人の方が多いとは、何とも言えない感覚だ。今回の敵も、クロプシュトック侯、リューネブルク、そして皇太子殿下だ、此ほどの事が起きる事態希であるのに、まさかこの俺が、引導を渡す役目になるとは。

皇太子殿下、貴方はいったい何がしたかったのですかな?
俺から見た貴方は、世間知らずのお坊ちゃまでしたな、皇帝陛下の影に隠れ、全く表には存在感すら感じさせない御方、そして人畜無害な無気力な御方でした。

しかし、次期皇位継承者として、お待ちに成って居れば、全てが済むのにもかかわらず、この様な大それた事をしでかすとは、儂には理解できません。しかし、大恩有る皇帝陛下、テレーゼ皇女殿下の暗殺を企むとは、例え皇太子殿下と言えでも、此のオフレッサー全力を持って、炭素クリスタル戦斧の染みにしてみせましょう、せめてもの情けで即死させて差し上げます。

しかし、思えば我ら装甲擲弾兵は、宇宙軍からは『地べたを這いずる汗臭い連中』と馬鹿にされ、貴族共には脳筋と蔑まれてきたが、あの日の皇帝陛下とテレーゼ皇女殿下の装甲擲弾兵訓練御視察で全ての流れが変わった。

あれ以来、装甲擲弾兵は軍内部からも一目置かれるようになり、勅命による士官学校の再教育カリキュラムを我々が当たる事になり、大いに面目を上げたものだ。その逆恨みで我が家が襲われる事件も起きたが、陛下や殿下のご配慮で事なきを得た上に、首謀者たるフレーゲル男爵を厳しく処分なさって頂いた。

今までで有れば、ブラウンシュヴァイク公の甥であるフレーゲル男爵の処分などせず、有耶無耶になるような事を成らなかったのだから、此ほど公平にして頂き、我ら一同感謝の念で一杯でありました。

それ以来、テレーゼ皇女殿下に我が家を御訪問頂き、殿下の御出掛けにもお供してきましたが、殿下は非常に気さくな方で、俺のような無骨で強面の者も全く動じずにお話しくださる。殿下の御共は面白い事ばかりでございましたな。

しかし、先ほどの暗殺未遂は俺の一生の不覚にございました。ズザンナが居なければ、殿下を害し奉ろうとした不逞の輩を倒す事が出来なかったのだから、殿下が御無事で有ったのが全て良い方へと流れているはずだ。陛下御救出も殿下無くてはこうまで早くは進まなかったであろう。

戦艦の突入、強襲揚陸艇のでの宮殿突入など、俺では考えも着かない作戦だから、殿下の冴えは素晴らしきモノだ。しかも、殿下は我らに頭を下げて、陛下をお救いしてくれと、我々に頼まれてきた。その様なお姿を我らの前でさらけ出すなど、何という恐れ多い事をと思ったが、殿下の真摯が判り我ら全員感動に包まれた。

この殿下ならば我が命捧げるに相応しい主君を得たと感じたのだ。惜しむらは殿下が女子であることか、男児であれば間違えなく皇太子殿下に相応しい御方なのに、真持って残念だ。

さて、そろそろ突入だ。皇帝陛下、お待たせしておりますが、今暫くお待ちください、必ずやお助け致します。ライムバッハー閣下、宜しく頼みますぞ、そして皆、頼むぞ。大神オーディンよ我らに力を与えたまえ。



帝国暦483年8月5日 午後0時20分

■オーディン ノイエ・サンスーシ 強襲揚陸艇バート・デューベン   ズザンナ・フォン・オフレッサー

父さんとの初仕事がまさか、皇帝陛下をお助けする事とは思っても見なかった。数年前までの父さんは、装甲擲弾兵副総監で大将なのに貴族や宇宙艦隊の軍人から、馬鹿にされ続けていたのに、それに不満を持つ事もなく、『言いたい奴には、言わせておけ。必ず見ている方は見ていてくれる』と言って居たけど、真逆、皇帝陛下とテレーゼ皇女殿下が見ていたと知ったときは、あの強面の父さんが照れたりしていたんだから、始めてあんな顔を見て、母様と二人で後で笑ったものです。

それ以来、殿下が我が家に御訪問してくださったり、襲撃犯と戦ったりしたけど、未だにあの襲撃犯に言われた事を気にしてるけど、17歳の今じゃ立派なCカップに育ったんだい、エッヘン!未だ未だ母さんの胸囲には負けるけどね。

身長は既に157cm母さんを抜いて170cmになったんだよね。体重は内緒だけど、父さん譲りで筋肉の付きが良いからね、爺やのバウムガルテンが関心してくれるほどだよ。

おっといけない、今日は殿下の危機でビックリしたから、直ぐに体が動いたよ、時代錯誤としか言えないような黒マントの暗殺者に対して、父さんと母さんとバウムガルテンから習った戦闘方法でアッサリ倒したんだけどね、もう少し骨のある奴は居ないのか成って思ったよ。

テレーゼ皇女様をお守りしているのが、父さんじゃ、宇宙艦隊でも持ってこない限りは殿下の安全は保証されたようなものだからね、しかし、皇太子殿下は何を考えて居るのやら、ほっといても皇帝陛下に何れ成れるのに、何を焦っているんだか判らないよね。

うちみたいな、最下級貴族じゃ判らない葛藤とかがあるんだろうけど、それにしても政敵と一緒に叛乱起こすなんて、何考えてるんだか。呉越同舟も良いところだよね。

さて、そろそろ突入だね、陛下の恩顧を少しでもお返しするために大暴れしますかね。
テレーゼ皇女様、あなた様のお父上を必ずお助けしますから、待っていてくださいね。


帝国暦483年8月5日 午後0時20分

■オーディン ノイエ・サンスーシ 謁見の間

「さて、そろそろ、宇宙艦隊もクロプシュトックの艦隊の奇襲で潰えている事でしょう、あの様な何処の馬の骨とも判らない平民の指揮官では高貴なる貴族の指揮する艦隊には、ひれ伏すしか無いのですからね、たかだか6,000隻の平民艦隊など鎧袖一触でしょう」

皇太子の独白は延々と続いており、クロプシュトックもリューネブルクもそして皇帝ですら呆れて居たのであるが、構わず独白させているのである、クロプシュトック側と皇帝側では、それぞれ思惑は違うにしても。

「だいたい平民の権利を拡大などすれば、奴等は嵩にかかって更に権利を主張するでしょう。平民などといいう犬畜生にも劣る存在は我らのありがたい慈悲で生きているのですから、父上の考えは帝国の為になりません。それを是正するのは皇太子たる私の責務ですからな」

一人陶酔している皇太子としらけた雰囲気のその他の者達、そして情報を見ている者達も、皇太子に呆れていた。この皇太子はダメだと。

「殿下、陛下の御心中を察して頂きたい」
皇太子は、リヒテンラーデ侯の言葉にも全く動じずに睨み付けるだけである。
「さて、お喋りはこの辺にしておきましょう、恐れ多くもリヒテンラーデ侯が、グリューネワルト伯爵夫人と共謀し皇帝陛下の弑逆をしたのですからね、リューネブルクお前の出番だ」

皇太子の言葉に、リューネブルクは応えて皇帝に向けた銃の引き金に手をかけたが、クラーゼン元帥が完全に皇帝を護り体をどかさない。
「クラーゼン退け、此は新帝ルードビッヒの勅命ぞ」

皇太子に言われながらも、クラーゼン元帥は微動だにせず、皇太子とリューネブルクを睨みまくりながら、叫ぶ。
「皇太子だと、笑わせるな!貴様など、皇太子と呼ぶのも烏滸がましいわ!この逆賊が!!」

蝶よ花よと奉られてきた皇太子にとって初めてと言うほどの罵声に、彼は顔を真っ赤にして怒り狂い始めた。

「リューネブルク、構わん不敬罪でクラーゼン元帥の職を解く先に奴を処刑せよ!!」
「御意」

不敵に笑うリューネブルクの銃口がクラーゼン元帥に向き、引き金が引き絞られようとした瞬間、大音響と共に天井と外壁が崩れ、更に外壁から強襲揚陸艇の突入口が外壁内壁を溶解しながら着きだしてきたのである。

狙ったように、天井からはライムバッハー上級大将率いる、装甲擲弾兵の猛者達10名が装甲服を着て飛び降り皇帝陛下と皇太子の間に躍り出る。後方からはキルドルフ大佐の工兵により大穴が作られ、ランズベルク伯達が炭素クリスタル戦斧やビームライフルを持って次々に躍り出てくる。そして、強襲揚陸艇からは、オフレッサー大将率いる猛者達10名+ズザンナ+ルッツが躍り出てきた。

既に謁見の間控え室に到着していたノビリンク大佐達4名も大音響を聞き、押っ取り刀で謁見の間に侵入してきたが、其処で見て感じた事は、濛々たる粉塵とモワッとするほどの熱であった。

「皇帝陛下、御無事でございますか!」
粉塵の中、ランズベルク伯の声が響き渡っていた。

 
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